50 / 230
2章
0.3
「く……、ぅッ!」
くん、と腰が反る。
幾度目かの絶頂。
硬直した身体が弛緩する前に、ユーグレイはその背中に手を回して支えた。
子どものようにへたり込んだアトリの局部は、常とは異なり僅かに兆している。
触れたいが、それをすると彼は理性を失うだろう。
話が出来ない状態では意味がない。
「っ、ぅ………、う」
「そんなに良いのか」
まだ小さく痙攣する下腹部を撫でる。
アトリはユーグレイの問いに返事をせず、けほと咳き込んだ。
浴室に響いたのが嫌だったのか。
声を抑えようなどと無理をするからそうなる。
顎を持ち上げて指先で唇を開かせると、アトリは反抗的な瞳をした。
優しくしたいはずなのに、こんな風に触れてばかりだ。
ただ、止まれない。
「……あ、のな!」
軽く手を払われて、ユーグレイは笑う。
抵抗する気力があるのならそれも良いだろう。
振り払われた手を、鼓動を確かめるようにその胸に置いた。
先端を摘むと、アトリは小さく息を飲む。
「い、ッ!! やめろ、お前っ」
「痛いからやめて欲しいのか、気持ち良いからやめて欲しいのか。どちらだ」
「…………だ、から」
「言ってくれなければ、伝わらない」
もっと酷くしても良いのか、と囁いて爪を立てる。
流石に、ユーグレイが本気で言っていることに気付いたのだろう。
アトリは慌てたように首を振る。
ただ、思い知って欲しかった。
ユーグレイは構わず、柔らかい突起を強く引っ掻く。
「ッ、…………ぁう、う」
堪え切れなかったアトリの声に、腰が重くなった。
今このまま身体を重ねることが出来たら良かった、と口惜しく思う。
痛いほどに張り詰めた自身を意識の外にやって、ユーグレイは責めるような愛撫を続ける。
嫌だと訴えるアトリの目元が赤く染まって、思わず奥歯を噛んだ。
明らかに苦痛を孕んだ喘鳴。
アトリは絞り出すように「まだ、だから」と懇願する。
まだ?
指先の動きを止めると、アトリは泣きそうな顔でユーグレイを睨んだ。
だから、と言って深く息を吸う。
「だからぁ、まだ……、完全に、反応してねぇの!!」
反応していない、とは。
「君、さっきから随分達していると思うが」
「っ! 違ぇよ馬鹿! 防衛反応が、ってこと! 普通に気持ち良いのにナカでもイッてるし、全然……っ、収まんないし! しんどい!」
自棄になったように叫んで、アトリは膝を立てて俯いた。
呼吸の度に、その肩が震える。
確かに普段より抵抗すると思ったが。
「そうか」
「そうかぁ!? お前、なぁっ……!」
く、と続くはずの言葉を飲んで、アトリは背中を丸めた。
重そうに持ち上げた手がユーグレイの肩を掴む。
突き放す気配はない。
もう片方の手が、脚の間に落ちた。
単調に流れ落ちる湯の音に、くつりと粘り気のある水音が混ざる。
ああもう、と諦めたような吐息が溢れた。
「どーすんだよ、これぇ」
膝を割り開かなくても、アトリが自身に触れたのだとわかった。
防衛反応で快感を得てもそれは反応しないのだと、ユーグレイもすでに知っている。
だから男性として兆している時点で気付くべきだったのだろうが、こちらも冷静ではなかったのだから致し方ない。
触れたら耐えられなくなったのだろう。
生々しい水音は、次第に大きくなる。
「辛くはないのか?」
「……つ、辛い、けど」
じゃあ無理をするなと言うと、アトリは俯いたまま「お前のせいだろ」と消え入りそうな声で言い返した。
もう出したいのだろう。
アトリは苦しそうに息を吐きながら、少しだけ視線を上げる。
「ユーグ、見過ぎ……っ」
「見るなと言うのは無理があるな」
「お前、意外と、変態」
今更、とユーグレイは笑う。
アトリは言うだけ無駄だと悟ったのか、掠れた声で呻いた。
「無理だって、言ったのに。これ……、した方が楽だったろ」
「君が全く反省もせずに、肝心なことを口にしないからだろう。して良いのなら、するが」
「……しない。お前、もー、ちょっと、黙ってろよ」
防衛反応の暴走に飲まれてしまえば、抵抗のしようもなく快感を享受するしかなくなる。
ただこの状態では、理性が歯止めをかけてしまえるのだろう。
大きくなる水音に対して、未だ吐精までは至っていないように見える。
アトリは濡れた頭を小さく振った。
ぱたぱたと水滴が落ちる。
「く、苦し、い……、ユーグ」
縋るように名前を呼ばれて。
何かがぷつりと切れたような気がした。
気を遣う余裕もない。
ユーグレイはアトリの膝を乱暴に押さえ、脚を開かせる。
咎める声を、聞き入れるはずもなかった。
その下腹部には押し込んだユーグレイの指の跡が淡く残っている。
性器を握ったアトリの手は、酷く濡れていた。
「い、あっ!?」
夢中だった。
ユーグレイはアトリの手ごと、勃ち上がったそれを握り込む。
とろりとした白濁が指の間から溢れた。
肩を掴んだアトリの手が震える。
加減せずに擦り上げると、手の中のものは一瞬で弾けた。
「ン、う、ーーーーッ!」
痙攣する身体を抱き寄せる。
相当に気持ち良かったのだろう。
アトリはユーグレイの肩に顔を埋めて、絶頂の名残に耐えているように見えた。
宥めるように背中を撫でているうちに、ぎゅうっと肩を掴んでいたアトリの手が不意に力を失う。
「……アトリ?」
乱れた呼吸に、緩やかに長く息を吐き出す音が混ざる。
ぐらりと傾いだ頭をはっとして支えた。
腕の中の身体が脱力する。
微睡む暇もなく、意識が落ちたのだろう。
瞼を閉じたアトリはやはり幼く無防備で、牙を剥く衝動は行き場を失って解けていく。
「全く、君は」
これで少しは懲りただろうか。
いや、またどうせこういうことがあるような気もした。
指先を擦り合わせると、まだあたたかい粘液が微かに音を立てる。
恐らくその時はこれくらいで退いてやれないだろうと、ユーグレイは苦笑した。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた
歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)