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2章
0.3
しおりを挟む「く……、ぅッ!」
くん、と腰が反る。
幾度目かの絶頂。
硬直した身体が弛緩する前に、ユーグレイはその背中に手を回して支えた。
子どものようにへたり込んだアトリの局部は、常とは異なり僅かに兆している。
触れたいが、それをすると彼は理性を失うだろう。
話が出来ない状態では意味がない。
「っ、ぅ………、う」
「そんなに良いのか」
まだ小さく痙攣する下腹部を撫でる。
アトリはユーグレイの問いに返事をせず、けほと咳き込んだ。
浴室に響いたのが嫌だったのか。
声を抑えようなどと無理をするからそうなる。
顎を持ち上げて指先で唇を開かせると、アトリは反抗的な瞳をした。
優しくしたいはずなのに、こんな風に触れてばかりだ。
ただ、止まれない。
「……あ、のな!」
軽く手を払われて、ユーグレイは笑う。
抵抗する気力があるのならそれも良いだろう。
振り払われた手を、鼓動を確かめるようにその胸に置いた。
先端を摘むと、アトリは小さく息を飲む。
「い、ッ!! やめろ、お前っ」
「痛いからやめて欲しいのか、気持ち良いからやめて欲しいのか。どちらだ」
「…………だ、から」
「言ってくれなければ、伝わらない」
もっと酷くしても良いのか、と囁いて爪を立てる。
流石に、ユーグレイが本気で言っていることに気付いたのだろう。
アトリは慌てたように首を振る。
ただ、思い知って欲しかった。
ユーグレイは構わず、柔らかい突起を強く引っ掻く。
「ッ、…………ぁう、う」
堪え切れなかったアトリの声に、腰が重くなった。
今このまま身体を重ねることが出来たら良かった、と口惜しく思う。
痛いほどに張り詰めた自身を意識の外にやって、ユーグレイは責めるような愛撫を続ける。
嫌だと訴えるアトリの目元が赤く染まって、思わず奥歯を噛んだ。
明らかに苦痛を孕んだ喘鳴。
アトリは絞り出すように「まだ、だから」と懇願する。
まだ?
指先の動きを止めると、アトリは泣きそうな顔でユーグレイを睨んだ。
だから、と言って深く息を吸う。
「だからぁ、まだ……、完全に、反応してねぇの!!」
反応していない、とは。
「君、さっきから随分達していると思うが」
「っ! 違ぇよ馬鹿! 防衛反応が、ってこと! 普通に気持ち良いのにナカでもイッてるし、全然……っ、収まんないし! しんどい!」
自棄になったように叫んで、アトリは膝を立てて俯いた。
呼吸の度に、その肩が震える。
確かに普段より抵抗すると思ったが。
「そうか」
「そうかぁ!? お前、なぁっ……!」
く、と続くはずの言葉を飲んで、アトリは背中を丸めた。
重そうに持ち上げた手がユーグレイの肩を掴む。
突き放す気配はない。
もう片方の手が、脚の間に落ちた。
単調に流れ落ちる湯の音に、くつりと粘り気のある水音が混ざる。
ああもう、と諦めたような吐息が溢れた。
「どーすんだよ、これぇ」
膝を割り開かなくても、アトリが自身に触れたのだとわかった。
防衛反応で快感を得てもそれは反応しないのだと、ユーグレイもすでに知っている。
だから男性として兆している時点で気付くべきだったのだろうが、こちらも冷静ではなかったのだから致し方ない。
触れたら耐えられなくなったのだろう。
生々しい水音は、次第に大きくなる。
「辛くはないのか?」
「……つ、辛い、けど」
じゃあ無理をするなと言うと、アトリは俯いたまま「お前のせいだろ」と消え入りそうな声で言い返した。
もう出したいのだろう。
アトリは苦しそうに息を吐きながら、少しだけ視線を上げる。
「ユーグ、見過ぎ……っ」
「見るなと言うのは無理があるな」
「お前、意外と、変態」
今更、とユーグレイは笑う。
アトリは言うだけ無駄だと悟ったのか、掠れた声で呻いた。
「無理だって、言ったのに。これ……、した方が楽だったろ」
「君が全く反省もせずに、肝心なことを口にしないからだろう。して良いのなら、するが」
「……しない。お前、もー、ちょっと、黙ってろよ」
防衛反応の暴走に飲まれてしまえば、抵抗のしようもなく快感を享受するしかなくなる。
ただこの状態では、理性が歯止めをかけてしまえるのだろう。
大きくなる水音に対して、未だ吐精までは至っていないように見える。
アトリは濡れた頭を小さく振った。
ぱたぱたと水滴が落ちる。
「く、苦し、い……、ユーグ」
縋るように名前を呼ばれて。
何かがぷつりと切れたような気がした。
気を遣う余裕もない。
ユーグレイはアトリの膝を乱暴に押さえ、脚を開かせる。
咎める声を、聞き入れるはずもなかった。
その下腹部には押し込んだユーグレイの指の跡が淡く残っている。
性器を握ったアトリの手は、酷く濡れていた。
「い、あっ!?」
夢中だった。
ユーグレイはアトリの手ごと、勃ち上がったそれを握り込む。
とろりとした白濁が指の間から溢れた。
肩を掴んだアトリの手が震える。
加減せずに擦り上げると、手の中のものは一瞬で弾けた。
「ン、う、ーーーーッ!」
痙攣する身体を抱き寄せる。
相当に気持ち良かったのだろう。
アトリはユーグレイの肩に顔を埋めて、絶頂の名残に耐えているように見えた。
宥めるように背中を撫でているうちに、ぎゅうっと肩を掴んでいたアトリの手が不意に力を失う。
「……アトリ?」
乱れた呼吸に、緩やかに長く息を吐き出す音が混ざる。
ぐらりと傾いだ頭をはっとして支えた。
腕の中の身体が脱力する。
微睡む暇もなく、意識が落ちたのだろう。
瞼を閉じたアトリはやはり幼く無防備で、牙を剥く衝動は行き場を失って解けていく。
「全く、君は」
これで少しは懲りただろうか。
いや、またどうせこういうことがあるような気もした。
指先を擦り合わせると、まだあたたかい粘液が微かに音を立てる。
恐らくその時はこれくらいで退いてやれないだろうと、ユーグレイは苦笑した。
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