【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~

蓮美ちま

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渦巻く独占欲《Side遊人》

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彼女は俺がC健に異動した年の夏に中途採用で入所してきた。事務をしていた女性が2人一気に退所してしまい、慌てて部長が募集をかけた次の日に応募してきたのが彼女、中原朱音だった。

実は辞めた事務の女性ふたりとも一度ずつ関係を持っていて、それが原因で彼女達は仲違いをし、互いに気まずくなった為辞めると本人から恨みがましく聞かされた。俺からしたら『バカバカしい』の一言に尽きる。

所内でどんな噂になっているのか、周りからどう思われているのかは知らないが、別に特段女好きというわけではない。

営業という仕事柄、人当たりのいい態度はもはや職業病で、会社では本音を隠した上っ面の会話しかした記憶がない。

それは女性に対しても同じことで、寄って来られれば断るのも面倒なので『一度だけ。恋人にはならない』という割り切れる子だけを相手にしてきた。単なる性欲処理。

中には同じ職場内で誘ってくるツワモノもいて、ちょっとしたスリルを味わうのもいいかと軽い気持ちで手を出したこともある。

それが今回ふたり一気に辞める原因になったわけだが、俺としては最初に割り切った関係を望んでいると明言していたはずなので、当人同士のいざこざは無関係だと主張したい。

誰かを特別扱いしたことは1度もないし、こういう諍いが面倒で同じ女は2度と抱かないと決めているのに、それでも問題が起こるのならやはり職場で安易に手を出すのはやめるべきかと思っていた。

秋の繁忙期を目の前に辞めた無責任な2人に代わって入ってきたのは、小柄だがキリッとした意志の強そうな女性だった。

入所当時は営業と事務ということで全く接点はなかったが、くるくるフロア内を動き回る彼女はよく目に入ってきた。

所内の業務に慣れてくる頃には秋の繁忙期がやってきて大変だっただろうに、楽しそうに働く彼女に目を奪われることが多くなった。

そんな彼女、朱音ちゃんとの初対面はなんとも形容し難い、いわゆる「やっちまった」という最悪なものだった。

前からずっと誘われていた三階の外来にいる看護師についに捕まり、地下にある資料室へ連れ込まれた。

聞けば旦那と上手くいっていないらしく、スリルのあるセックスで思いっきりストレス発散がしたいという。そこらへんの男だと後々面倒になりそうだが、俺なら後腐れがなさそうだという何とも分かりやすい理由だった。

毎度お馴染みの『一度だけ。恋人にはならない』というセリフを一応人妻である彼女にも伝え、了承を得た上で据え膳を頂いていた時、内鍵を閉め忘れたらしく入ってきてしまったのが朱音ちゃんだった。

さすがに所内の事務の女性に見られたのはまずいと思ったのか、名も知らぬ看護師はそそくさと身なりを整えると出ていってしまった。きっともう誘われることはないだろう。

そして入ってきたのが彼女だと分かった瞬間、俺はとんでもないことを口走った。

『君が代わりに続きシてくれる?』

我ながら最低だと思う。他の女を抱こうとしていた直後に、こうして彼女に声をかけるだなんて。

『……はい?』
『俺は君なら大歓迎だけど』

なぜ誘うような事を言ってしまったのか。自慢じゃないが、これまで自分から女を誘ったことなんかない。口説いたこともない。

なのになぜか彼女をこの場から立ち去らせてしまうのが惜しくて、そんな事を口走ってしまった。

しかし彼女から返ってきた返事は『仕事したいので出て行ってくれますか?』という辛辣なものだった。

すぐに応じてくれると思っていたわけではないが、頬を染めたり何かしらアクションがあると自惚れていた俺は、朱音ちゃんの心の底から軽蔑したような冷たい視線に心底驚いた。

最低な男だとレッテルを貼った以降の彼女は、俺に対し歯に衣着せぬ物言いで接してくる。それが新鮮で、何かと声を掛けては邪険に扱われるのを繰り返してきた。

どれだけ冷たくあしらっても懲りずに構ってくる俺に辟易しながらも、なんだかんだ会話してくれる朱音ちゃんが可笑しくて可愛い。

さらに彼女が『そうだ! DTにしよう!』というとんでもない標語をひとり口にした際も居合わせてしまい、上っ面だけで接している他の同僚にはない親しみを感じて、今まで以上に彼女から目が離せなくなった。

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