【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~

蓮美ちま

文字の大きさ
25 / 28
オンリーワンになりたくて

しおりを挟む

「ねぇ朱音ちゃん。今思ったんだけど、俺もある意味『Dの男』だと思うんだよね」

いつものヘラっとしら胡散臭い笑顔で私を見た。意味がわからずに首を傾げて彼を見上げる。あなたのどこが童貞なのかと詰め寄りたいのを我慢して説明を待っていると。

「恋愛DT。だって初恋なんだもん」
「……へ?」
「だから俺にも朱音ちゃんの彼氏になる条件は満たしてる。君は俺の『唯一好きになった人』なんだから」

とんでもない屁理屈に聞こえるのに、そう言う彼の声は必死なほど切羽詰まっていて、軽く見せていたへらへらの笑顔は貼り付けていた偽物だとわかった。

「っふふ、ほんとですね。友藤さんも『Dの男』だ」
「朱音ちゃん」

私が笑うと、彼はやっと安心したように本来の笑顔を見せた。雰囲気じゃなく、本物のイケメンの顔。

その笑顔に力を貰って、私は自分の気持ちを伝えた。

「友藤さん。私を、最初で最後の『唯一の彼女』にしてくれますか?」

じわりと滲んだ涙を堪えながら必死で笑顔を作った告白に、友藤さんは「かわいすぎてつらい……」と呟いた後、先程よりも強く抱きしめて「もちろん。一生、朱音だけだ」と答えてくれた。

「朱音も、俺を『唯一の男』にしてね?」

そう言われ、頷き返したい気持ちは山々だけど、彼も知っての通り私には多くはないが元カレがいる。どう返すのが正解なのかと抱きしめられたまま頭をフル回転させていると、耳元で小さく囁かれた。

「初めては怖いだろうし、今日は何もしない。朱音の気持ちが追いつくまで待つって約束する。だから泊まっていかない? もっと一緒にいたい」
「えっ?」

あまりに驚いて腕を突っ張って距離を取った。

『今日は何もしない』っていうのも「女性=セックスの相手」だった友藤さんにとったら大変なことで驚くべき発言だし、いくら金曜とはいえ気持ちが通じ合ったその日にお泊りというのも準備も何もなくて戸惑うところ。

しかし、今私が声を上げるほど驚き戸惑っているのはそこではない。まして『もっと一緒にいたい』という嬉しい発言に対してでもない。

友藤さんの『初めては怖いだろうし』という彼の言葉。

――――え、もしかして友藤さん。私のこと処女だと思ってる?

一体なぜそんな勘違いが成り立ったのかと、これまたフル回転させた頭で考える。

そして思い至ったのは、スパークルに行った時の賢治のクズ発言。

『三ヶ月も付き合って一度もヤらせなかったくせに寝取ったなんて噂を否定もせず逃げやがって!』

……あぁ、きっとコレだ。間違いなくコレを聞いたせいな気がする。

私は訂正すべきか否か考えて、いずれスるなら経験豊富な彼にはバレるだろうと思い、正直に告白することにした。

「……あの、友藤さん」
「ん?」
「私のこと、処女だと思ってます?」
「……え?!」

目の前の彼の顔には「違うの?!」とバカ正直に書かれている。

「え、え?! だって、あいつが……」
「まぁ、賢治とはシてないですけど。私だって恋愛経験くらい人並みにありますよ」
「………」
「あの、友藤さん?」

開いた両膝に肘を乗せ、その間に深く頭を項垂れている。どう声を掛けたものやら。

しばらくそのまま放置して、私も落ち着くために氷が溶けて薄まってしまったコーヒーを飲み干した。

「……言いたいことはいっぱいあるけど」

ようやく話しだした友藤さんの声は引くほど低い。

「あいつのこと、もう二度と名前で呼ばないで」
「……はい」
「あと、俺のこと名前で呼んで。敬語も仕事場以外ではやめて」
「わかり、わかった」
「泊まってくよね?」
「……うん」
「何もしないって言ったの、取り消していい?」
「ダメ」

処女じゃないと知った途端、速攻で約束を破ろうとしてきた友藤さん、もとい遊人さんに冷たい視線を送る。

するとちらりと視線だけでこちらを確認したあと、再び俯いて手のひらで顔を覆った。

「合コンでイケメン紳士に誘われたの?」
「……大丈夫、断ろうと思ってたから」

まぁ。ちょっと流されてみるのもアリだとは思ってたけど。

「あとさ」
「まだあるの?」
「朱音が『Dの男』を求めてた意味がやっとわかった……」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。 そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。

年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25) 「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」 ◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20) 「京都案内しようか?今どこ?」 再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。 「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」 「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」

距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜

葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」 そう言ってグッと肩を抱いてくる 「人肌が心地良くてよく眠れた」 いやいや、私は抱き枕ですか!? 近い、とにかく近いんですって! グイグイ迫ってくる副社長と 仕事一筋の秘書の 恋の攻防戦、スタート! ✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼ 里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書 神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長 社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい ドレスにワインをかけられる。 それに気づいた副社長の翔は 芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。 海外から帰国したばかりの翔は 何をするにもとにかく近い! 仕事一筋の芹奈は そんな翔に戸惑うばかりで……

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

元恋人と、今日から同僚です

紗和木 りん
恋愛
女性向けライフスタイル誌・編集部で働く結城真帆(29)。 仕事一筋で生きてきた彼女の前に、ある日突然、五年前に別れた元恋人が現れた。 「今日から、この部署に配属になった」 そう告げたのは、穏やかで理性的な朝倉。 かつて、将来や価値観のすれ違いから別れた相手だ。 仕事として割り切ろうと距離を取る真帆だったが、過去の別れが誤解と説明不足によるものだったことが少しずつ見えてくる。 恋愛から逃げてきた女と、想いを言葉にできなかった男。 仕事も感情も投げ出さず、逃げずに選び直した先にあるのは「やり直し」ではなく……。 元恋人と同僚になった二人。 仕事から始まる新しい恋の物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

処理中です...