名探偵の条件

ヒロト

文字の大きさ
20 / 44

20朝食前

しおりを挟む
朝日が眩しかった。

小鳥のさえずりが聞こえる、のどかな朝だった。
しかし睡眠不足の僕にとっては、それはたいしてありがたいものではなかった。

「もっと寝かせといてくれよ。」
これが正直な感想だった。


「しかしまあ・・・これ以上ベッドに入っている訳にもいかないな。」
時計は朝食の時間を示している。

とりあえず上半身をベッドから起こして、やけに重く感じる首を回す。

「やっぱり眠れなくなったじゃないか。
冬弥のやつ、自分だけ気持ちよく寝やがって。

・・・寝顔に悪戯してやろうかと思ったけど、後が怖くてできなかったし・・・まいったね、ほんと。」
 

朝から愚痴をこぼしているのも虚しいので、顔でも洗いに行くことにした。
顔を洗えば少しは頭もすっきりするだろう・・・と頭を掻きながら考える。

隣のベッドを見ると・・・冬弥がいない。

「・・・もしかして、犯行現場にもぐりこみにいったのか。」

・・・冬弥なら、十分にありえることだと思う。


(まずいな。せめて朝食ぐらいはいい気分で食べたいぞ・・・)

もし、朝食前に冬弥に出会ってしまったら・・・

今見てきたばかりといって、喜んで血まみれの部屋だの、死体だのの話をするに決まっている。
そして、それをげんなりしながら聞いている僕。
・・・当然箸は進まないだろう。

しかも、メニューが肉やトマトソースだったら・・・

想像はどんどんと悪い方に進んでいく。


「・・・逃げるか。」

「そんな事言わないで一緒に朝ご飯、食べようよ。」

「!!! いつの間に!」

「・・・弘幸がぼけーっとして歩いてるから、声をかけただけなんだけど?」

「・・・それで『そんなこと言わないで一緒に食べよう』てのは?」


「いや~、話しかけようと近づいたらさ、弘幸が『逃げよう』なんて独り言を言ってるだろ。
弘幸の事だから、朝、僕の姿がベッドの中にないのを見て
『冬弥のことだ。どうせ犯行現場にでももぐり込んでんだろうな。』
『冬弥のことだ。きっと朝飯の時に嬉しそうに、血みどろの部屋について語るんだろうな。』
『これは冬弥から逃げたほうが良いな』
・・・な~んて考えてるんじゃないかなってね。」


「・・・『はずれ』じゃないよ・・・」


「なら問題なしだ。朝飯食べに行こうぜ。
大丈夫、心配しなくても、変な話題は出さないよ。」
満面の笑みの冬弥。

「・・・本当にか?」
疑いの目を向ける僕。

「・・・信用がないってのは悲しいことだね。
大体、今朝だって僕は犯行現場になんか行っていないんだよ。ちょっと、友達に電話してきただけさ。」


肩をすくめ悲しげに首を振る冬弥。


その表情やしぐさを信じる気はまったくないが、もともと喧嘩をしているわけではない。
まあ・・・朝食の誘いを断る必要もないだろう。


「・・・OK。食べに行こうか。」
「ん。じゃあ、早く食べに行こうぜ。正直なところ、結構腹減っているんだよ。」
おおげさにお腹を押さえおどける冬弥。


・・・こういう時は本当に『いいやつ』なんだけどな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...