名探偵の条件

ヒロト

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29犯人候補がいない?

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「70点!?
何でそんなに点数低いんだよ!?」
ショックで僕の声が震える。

「いや~、70点ってかなり高い得点だと思うよ。
実際問題として、あの少ない情報からここまで考えられるようなやつには、今まで会ったことがないからね。

というよりも、大体の人間は、

『自分には関係ない』
『どうせ考えたって分からない』

といって、考えようともしない。
冗談抜きで弘幸はえらいと思うよ。」


「・・・いろいろ言いたいことはあるけど、とりあえずは『足りない30点』について話してもらおうか。」

「まあ、それでもいいんだけど・・・まずはヒントをあげるよ。
一番のヒントは・・・『時間』だよ。」


「時間?」


「弘幸が自分で言っていたじゃないか。
『犯人には、凶器を外に捨てに行く時間はなかった。』
『30分も職場を離れていたら疑われてしまう。』

・・・確かに言っていたよね。」

「ああ。でも、冬弥も同じ意見だと思っていたんだけどな。
違うのかい?」

「違わないさ。ここまでは弘幸と同じ考えだよ。
でも・・・おかしいと思わないか?」

「何が?」


「犯人は、どうやって犯行のための時間を確保したんだい? 
凶器を隠しにいく『30分』という時間すら作れないっていうのにさ。」

「・・・・・・!」

「普通に犯行の手順を考えてみれば

『手袋や車椅子、ビニールや鉈を犯行現場に運ぶ』
『被害者を201号室に連れて行く・・・または呼び出す』
『薬を使って気を失わせる』
『両腕を切断して被害者を殺害する』
『被害者の血が止まるまで待つ』
『被害者を車椅子に乗せる』
『206号室まで死体を運ぶ』
『車椅子から死体をおろす』
『返り血を浴びた自分の衣服を始末する』

少なく見ても、このくらいの行程は必要なわけだ。
・・・全部やるのに、どのくらいの時間がかかると思う?」


「・・・・・・」


「まあ、30分は余裕でかかるんじゃないかな。
でも、犯人が『内部犯』なら30分も姿を見せていなければ疑われてしまう・・・そういう話だったよね。

まあ、内部の人間のアリバイについては、後で羽鳥さんに聞けば詳しくわかるんだろうけど・・・この忙しい病院だ。

おそらく、30分も消息不明になっていられた人はいないんじゃないかな。


さっきの凶器の話で『外部犯』の可能性がなくなった。
そして、今度の時間の話で『内部犯』の可能性もなくなった。

・・・おかしいね。犯人の候補がいなくなっちゃったよ。」


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