二つの異世界物語 ~時空の迷子とアルタミルの娘

サクラ近衛将監

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第七章 二つの異世界の者の予期せざる会合

7-4 アリス ~勧誘

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 オールバンド島に戻った三人であるが、マーサはすぐに自分の世界に戻って行った。
 夫であるデニスに報告し、その後でエドガルドに報告するためである。

 二人はすぐにベッドに入り、し残した夫婦の営みを始めて、二時間後就寝した。
 オールバンド島での4日目はそんなわけで昼まで寝ていた。

 オールバンドでの滞在も残り二日だけになっていた。
 私とマイクは、オールバンドに来た目的の一つをまだし残していた。

 オールバンドには一人際立ってオーラの大きな人物がいるのである。
 その人物にあって、その人となりを確かめ、その上で場合によっては新しい事業に参画させようと言う心づもりだった。

 彼又は彼女の名前、年齢、仕事も判ってはいない。
 島の西端にある集落に住んでいるらしく、オールバンドのリゾート地にも時折来るようである。

 昼食を食べた後で、二人は浮上車を借りてその集落へ向かった。
 集落の名はバンドリスク。

 漁港を中心に数十戸の集落が固まっている漁村のようだ。
 集落の外れの空き地に浮上車を置いて、海岸縁の道路を散歩がてら歩き始めた。

 目当ての人物は三軒目の小さな家にいるようだ。
 その家から家族が出て来た。

 40代と思われる男性は普通の人である。
 同じく40代と思われる女性はその妻であろうか、かなりのオーラを持ってはいるが、超能力の発現には至らないだろう。

 その次に出て来た娘は14歳ぐらいで40台の女性と同じぐらいのオーラである。
 もう一人若い娘が若い男と出て来たが、夫婦にしては男の方が若すぎる。

 精々17歳ぐらいにしか見えない。
 若い娘は私と同じぐらいの年頃である。

 皆が作業着に着替えているところから見ると、これから漁に出かけるのかもしれない。
 5人は下りの道を辿って漁港に向かっているようだった。

 私達二人はその後をついて行った。
 無論、かなり距離は開けているので、5人をつけているとは誰も思わないはずだ。

 物珍しがりやの観光客が遠出してきたものと思う筈だ。
 5人は小さな漁船の近くにある小屋から色々なものを引き出して、漁船に乗せて行く。

 やはりこれから出漁のようだ。
 30分ほどすると準備ができたようで、漁船はエンジンをかけた。

 5人のうち女ばかり三人が陸に上がった。
 男二人は船に乗ってそのまま防波堤をかわして沖へ出て行った。

 微笑ましい光景である。
 夫の出漁に息子が付き添い、妻と娘たちが見送っているのだろう。

 私達は二人で近寄った。
 怪訝そうな顔で見ていた三人だが、やがて一番若い娘が大きな声で言った。

「あーっ、もしかして、MAカップル?」

 二人は顔を見合わせて苦笑した。
 どうやら本当に世間が狭くなったようだ。

 クレアラスから随分離れているこんな島の漁村にまで顔が知られているようだ。

「こんにちは。
 そうですね。
 マイクとアリスのカップルです。」

「うわーっ、こんなところで会えるなんて夢じゃないでしょうね。
 私、サリー・コシガン、14歳です。」

「初めまして御嬢さん。
 そちらのお二人はお姉さんとお母様かしら。」

「ええ、母のミシェリーと姉のロクサーヌです。」

「初めまして、ミシェリーさん、それにロクサーヌさん。」

 二人はおずおずと挨拶をした。

「あの、何でこちらに?
 ここは余り観光客の方が来るようなところではないのですけれど・・。」

 と、ミシェリーがそう尋ねた。

「ええ、実は御嬢さんのロクサーヌさんに御話がありまして。」

「はて、ロクサーヌに?
 どんな話でしょうか?」

「はい、ロクサーヌさんを私が始める事業に参画しては頂けないかと思い、尋ねて参りました。」

「そりゃぁ、無理だよ。
 ロクサーヌは網本の息子のところに嫁に行く話が来ているから・・・。」

 途端にロクサーヌは反論した。

「お母さん、その話は断ってと言ったでしょう。
 私、あんなろくでなしのところに嫁に行くなんて嫌よ。」

「そんなこと言っても、網本のところには150万からの借金がある。
 それを棒引きにしてやると言われたら断れないよ。
 断ったらすぐにでも借金を返せって言うんだから。」

「だから、その分は私がリゾートホテルの従業員になって返すから。
 お願いだからこの話は断ってよ。」

「お前が働いても150万の金を造るのに何年かかると思う?
 ここんとこ漁がいいから利息だけは何とか払っているけれど、不漁になればまた元の木阿弥だよ。」

「お母さん、私の一生を決める話なのよ。
 娘を身売りするみたいなことはしないでよ。」

 そんな親子げんかにマイクが介入した。

「ミシェリーさん、どうでしょうか。
 私どもがその150万ルーブの借金を肩代わりするというのは。
 その代りロクサーヌさんを私どもの事業で採用します。
 150万ルーブは支度金としてお渡しします。
 ロクサーヌさんの給与は少なくとも月額で4万ルーブにはなると思いますが、今の段階では明確には決められません。」

 呆気にとられた様子でミシェリーが尋ねた。

「何でそんな金を・・・。」

 ロクサーヌも言った。

「私はハイスクールしか出ていません。
 第一私に仕事ができるかどうかも分からない筈なのに、そんな娘に月に4万ルーブなんて・・・。
 それに支度金150万ルーブなんて多過ぎませんか?」

「そうですね。
 普通の方ならそんなに出しません。
 でもロクサーヌさんなら1000万ルーブの支度金を出しても是非雇いたいと思っています。
 私達二人がそれだけロクサーヌさんを買っているんですよ。」

「だって、見ず知らずの私なんか・・・。」

「お姉ちゃん、MAカップルはほとんど無名のハイスクールの吹奏楽部をブラビアンカで優勝するまでにした人たちだよ。
 その人の目が間違っているなんて私は思わない。
 お姉ちゃん綺麗だし、頭もいい。
 お金が有ったら大学にも行けたはずなんだけど、うちにお金が無かったから行けなかっただけだもの。
 どこでお姉ちゃんのことを知ったのかはわからないけれど、私がお姉ちゃんの立場なら、二人の申し出を受ける。」

「応援ありがとう、サリー。
 君のお蔭でお姉さんの支度金が倍の300万に跳ね上がったよ。」

「ええっ?
 何で?」

「君も可愛いし、頭がよさそうだから、ハイスクールで成績が良ければ大学にも行けるように奨学金の代わりかな。
 大学に入れたなら多分お姉さんがもっと援助してくれるだろう。
 で、ロクサーヌさんどうでしょうか?」

「どうって言われても、急な話なので・・・。
 少し考える時間を頂けますか?」

「ええ、構いません。
 私達二人はティワナ・ホテルの2001号室に泊まっています。
 明日の夜まで宿泊していますが、明後日の朝早くには出発しなければなりません。
 出来ればその前にご返事を頂ければいいのですが。」

「わかりました。
 明日の朝には父と弟が漁から戻ってきます。
 二人にも相談して、明日の夕刻までにはご返事するようにします。」

 それを機に、私とマイクは三人に別れを言って、帰途に就いた。
 翌日午後二時にロクサーヌはホテルに現れた。

 部屋に招き入れられたロクサーヌは堅い表情である。

「あの、私なんかでよければ昨日の御話はお受けしたいと思います。
 でも、本当に私でいいのでしょうか?」

「昨日も言ったけれど、貴方には価値があるんです。
 だから、貴方に会いに行った。
 そうして今日はわざわざホテルまで来て君がいい返事を聞かせてくれた。
 だからご褒美ではないが、500万の支度金を上げよう。
 150万は借金で返さなければならないだろうから、小切手を3枚作った。
 150万が2枚に200万が一枚。
 後は君が思うように配分してくれていい。
 弟や妹の将来のために預金していてもいいし、君個人の必要な蓄えとして残してもいい。
 そうしてできる限り早くクレアラスの私の家に来てくれるかな。
 当座住む部屋は用意しておこう。」

 マイクはクレアラスの住所と電話番号を記載した紙と小切手三枚をロクサーヌの前においた。
 目を丸くして、小切手の額面に驚いていたがやがて言った。

「あの、あの、・・・。
 私はどんな仕事をすればいいのでしょうか。」

「当座は、仮事務所が有るので、そこで庶務係のような仕事をしてもらうことになるかな。
 クレアラス郊外に今建設中の社屋が出来たなら多分、秘書のような仕事が中心になる。
 会社の名前はPMA航空宇宙研究所で発足するけれど、最終的には宇宙船の造船所を造ることになるだろうね。
 あ、これはどこにも内緒にしているから家族にも内緒にしておいてほしい。
 時期がくれば、報道機関にも公表することになる。」

「はい、誰にも言いません。
 でも、私は工学系統の話は全く知りません。
 そんな私で務まるのでしょうか?」

「大丈夫。
 心配しなくても、必要に応じてそんなものは覚えられる。
 ただ、さっきも言ったけれどできるだけ早くクレアラスに来てほしい。」

「わかりました。
 明日は無理ですけれど、三日後にはここを発ってクレアラスに参ります。
 お世話になりますが、どうぞよろしくお願いします。」

 こうしてロクサーヌは、小切手と連絡先の紙を鞄に入れて戻って行った。
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