母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監

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第三章 ニオルカンのマルコ

3ー3 マルコの学院生活

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 マルコの学院生活が始まった。
 15名の同期生はそれぞれに能力は持っているが、向き不向きをあまり理解していない。

 学院の教師たちが上手く誘導できなければ大成しないで終わるだろう。
 因みに第一学院の先輩を見てみると二年生で11名、三年生で9名が居るのだが、正直言ってこれはと思える人物はいない。

 万華鏡の魔導士として名を馳せたプラトーンの目から評価されてしまう彼らには気の毒なのだが、実際に使い物にはならないという感が拭いきれない。
 適切な魔力を育てていない彼らでは、これから少々精進したとしても中途半端な魔法使いで終わることだろう。

 ふむ、どうやらワルダーと呼ばれる程度の低い教師を筆頭に、教える側にかなり問題がありそうだ。
 本来ならば、口を挟んで軌道修正をさせたいところだが、そもそも冒険者ギルドに入れる年齢になれば、この街を出てゆく予定のマルコである。

 彼らがどのように育てられようと所詮他人事である。
 カラガンダ老のように恩人やその家族・縁者であれば話は別だが、マルコが関わり合う必要性は無いと思えるのだが、それでも彼らが単なる路傍の石ではなくマルコの人生に関わり合った縁者であることには違いなく、見捨てるようなことも気が引けるマルコだった。

 優柔不断のまま、取り敢えず困った問題は先送りして、学院での生活を過ごすマルコだった。
 座学の方は特段の問題もないのだが、十日に一度ある実技の時間になっていきなり困惑しているマルコである。

 教員の一人であるベシャワルが、魔力発動の基礎も教えずに的の前に連れて行って魔法を発動しろと言う。
 まるで入学前の適性試験の再現である。

 本当に彼らは魔法を教えるつもりがあるのかどうかと疑いたくなる。
 で、一応、クレームをつけてみる。

「先生、失礼ながら魔法の発動も含めて基礎的な練習もせずにいきなり魔法発動を行うのは将来に禍根を残します。
 魔力の扱い方、集中の仕方、発動時の呪文や魔方陣の作り方などを教えてから、徐々に魔法を発動した方が良いと思います。」

「ほう、・・・。
 お前、マルコだったな。
 たかだか商人の息子がいい度胸だ。
 魔法のマの字も知らない小僧が知ったかぶりをするな。
 学院は昔からこうやって魔法師を育てているんだ。
 何も知らぬ小僧が減らず口なんぞ挟むな。」

「失礼ながら、それが間違っているならば修正すべきでしょう。
 第一にそれぞれの生徒の適性も確認せずに何をさせようというのですか?
 まず為すべきはそれぞれの生徒の適性を見極め、その生徒に相応しい魔法と発動の仕方を教えるべきです。
 無暗に魔法を発動しても威力は上がりませんし、伸びません。」

「そこまで言うなら、最初にお前が実践してみろ。
 ここから狙って標的の一つでも壊したら、お前の言うことを何でも聞いてやる。」

「そうですか、・・・。
 では魔法陣に誓って今の言葉を守っていただけますね。」

 マルコは、ベシャワルの前に誓約の魔法陣を産み出した。
 ベシャワルの顔が一気に青ざめた。

「何だ?
 これは・・・。
 お前が何でこんな魔法を発動できる?」

「見ての通り、誓約の魔法です。
 この魔方陣に誓約したことは、命に懸けて守らねばなりません。
 先生は、先ほど、ここから的を狙って破壊すれば私の言うことを何でも聞いてやるとおっしゃいました。
 それでよければ、もう一度誓約してください。」

「馬鹿な、生徒との間でそんな誓約ができるか。」

「そうですか、前言を翻すわけですね。
 では、結構です。
 私もこれ以上は申しません。
 但し、あそこに在る的は全て破壊します。」

 マルコはそう言うなり、10個のファイアーバレットを無詠唱で産み出し、一斉に的へ発射した。
 普通のファイアーバレットと異なり、青白い炎のバレットは凄まじい勢いで的へ衝突、盛大に爆発して一気に的を破壊した。

 その威力は桁違いに凄まじく、訓練場の端に居てもその衝撃波と熱波が大いに感じ取れるほどだった。
 生徒達もその光景を見て唖然としている。

 マルコは、教員ベシャワルに腹を立てていた。
 未だ幼い子供を前にしながら、粋がることしかできない低俗者と既に見限っていた。

 この事態に大いに焦ったのはベシャワルである。
 これから授業で使うべき的が、全て一気に破壊されたのだ。

 ここに設置されている的は、ベシャワルが至近距離で全力の魔法を放っても破壊されないはずのものだった。
 しかしながら、この目の前の商人の息子は、30尋ほどもある訓練場の端から狙って、一挙に10個もの的を破壊してしまったのだが、眼前にあり得ない光景が広がっていればさすがのベシャワルも信じざるを得ない。

 破壊してみろと言ったのはベシャワル自身である。
 自分でも不可能なのだから子供にできるわけがないと思っていた故の嫌味をこめた戯言ざれごとだった。

 しかしながら、実際に破壊された的の修復費用はかなりの高額になり、そのツケは自分に跳ね返ってくる可能性がある。
 それを考えてまたまた顔が青くなるベシャワルだった。

 とどのつまりベシャワルは授業と生徒を放り出した。
 何の説明もなく、唐突に「本日は自習」といって訓練場を立ち去ったのだ。

 無論、ベシャワルにも至急にやらねばならないことがある。
 取り敢えず上司へ口頭報告をなし、その後文書での始末書を提出、更には修復のための仕様書、見積書などの作成が指示されるだろう。

 少なくとも三日は丸々かかってしまうことになる。
 取り残された子供たちは一斉にマルコの傍に寄ってきた。

「今の魔法は何だ?」

「どうしたらあんなのが放てる?」

「お前、すごいなぁ。」

「俺(私)にも教えてよ。」

 等々、口々に勝手なことを叫んでいた。
 そんな中でまともなことを言う同期生もいた。

「マルコ、さっきお前が言っていた、それぞれの適性を見てから、相応しい魔法を教えるべきと言っていたようだけど、俺の適性が何か分かるのか?
 もしわかるなら教えてほしいのだけど・・・。」

「ああ、ハリーか・・・。
 お前さんの適性は、火属性魔法と無属性魔法の二つに適性がある。
 魔力容量の方は未だ伸びていない分、これからの訓練次第で伸びるだろう。
 魔法を使える騎士になることも夢じゃないな。」

「さっきお前がやった青白い炎を撃ち出したりできるのか?」

「訓練次第でできるようになるがいきなりは無理だな。」

「そうか、俺にも希望があるんだな。」
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