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第三章 ニオルカンのマルコ
3-4 学院の騒ぎ
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「ねぇねぇ、私は?」
「アイリスか…。
お前さんは、水属性魔法に適性があるほか、光属性もわずかながらありそうだ。
だから治癒師とか薬師に向いているが、・・・。
もしかして薬師希望なのか?」
「うん、両親ともに薬師だからね。
私もできれば薬師になりたいと思っている。」
「アイリスも精進すればよい薬師になれると思うぞ。
水属性魔法なら攻撃魔法も一応使えるようになるだろう。
でも戦闘系よりは治癒や薬師系に特化した方がいいと思うよ。」
その後は、練習場から教室に戻って、自習ならぬマルコが臨時講師になって魔法の座学が為されたのである。
マルコは、順を追って魔法発動までの準備過程を分かりやすく説明し、また、同期生達の適性についても教えてあげた。
すでにかなり手遅れ感のある貴族の子女もいるが、これからでもある程度の伸びしろは得られるので、必要な修正と訓練の仕方を教えてあげたのである。
頼られてしまうとやはり見捨てることのできないマルコであった。
◇◇◇◇
一方で学校側では騒ぎになっていた。
ペシャワルから報告を聞いた教頭が校長にまで報告を上げたのだが、ペシャワルの報告の仕方が悪く、マルコが勝手に壊したことになっていたのである。
領主から任命を受けているサリバス学院長がそれを聞いてペシャワルに言った。
「ペシャワル、今の報告に間違いは無いのか?
もし、お前の言うことが本当ならば、魔法学校としてはそのマルコに対して損害賠償を請求せねばならぬが、万が一それが間違っているのであれば、的を全て壊すほどの優秀な魔法師の卵を失う事にもなりかねない。
当時の状況は追って生徒たちにも確認するが、念のために、いま一度聞く、マルコがお前の言うことを聞かずして勝手に魔法を放ち、標的を破壊したのだな?」
「は?
いえ、そうでは・・・。
そうではなく、私の教え方に水を差したので、腹が立ち、魔法を放って的を壊したならお前の言うことも聞いてやろうと言いました。」
「お主の説明ではよくわからぬ。
いきなりそんなことになるはずもないだろう。
初めから、もう少し詳しく説明なさい。
先ず何があって水を差された?
また、その際にマルコとやらからは何と言われたのだ?」
ペシャワルは経緯を詳しく話さざるを得なかった。
説明の途中にも遠慮なく校長が口を挟むので、その都度修正をしたペシャワルである。
いかなる報告書でも、これほどに詳しくは記載しなかったであろうと思えるほどに追求されてしまった。
全ての報告を確認した後、校長はため息をついた。
「アマリール教頭。
我が学院は、昔からそのような教えを為していたのかね?
マルコの言ったように子供の適性を確認しつつ、何を伸ばすべきかを指導するのが教師の仕事だ。
何も教えずに勝手に魔法を放てなどと、決してそのような無茶を言ってはならない。
訊けば、マルコは誓約魔法の魔法陣を造れるほどの力量をもっているのであろう?
仮にそのマルコが怒りに任せて全力で魔法を放てば練習場そのものが吹き飛んでいた可能性すらあるのだぞ。
魔力保有量が多い者が無暗に魔法を放てば、周囲に居る者も巻き込まれることすらある。」
教頭が若干冷や汗をかきながら口を挟んだ。
「まさか、・・・。
確かマルコという子は、入学式の折に、試しの魔法を放つことさえしなかった子ですが。」
「うん?
何だ?
その試しの魔法とは?」
「入学する者の力量がいかなるものかを観るために、前々学院長の発案で始めたものです。
決して生徒に強制するものではないのですが、適性試験の後で生徒たちの内で魔法を放てる者に標的目がけて魔法を放たてさせ、どれほどの魔法を放てるかを見極め、以後の授業に資するものでございます。
まぁ、実際に魔法を放てるのは家庭教師を付けられる者、若しくは両親あるいは従者などで魔法を教えることのできる貴族の子に限られますが・・・。」
「なんと、これまでそのような馬鹿な真似をしていたのか?
教頭から上げられた計画書にはそのようなことは記載されていなかったが・・・。
その際に立ち合いの教員にも子供たちにも注意は与えておるのか?
無暗に魔法を放つと、場合により魔力の伸びが少なくなるから、その様な場合は抑制した環境下で為すものだが、この学院にはそうした制御結界はあるのかね?
そのような話は、前回の施設見学では全く訊いていないのだが・・・。」
「は?
いや、あの、そのようなことがあるのですか?」
学院長は大きくため息をついた。
「教頭すらも知らないとは・・・・。
子供達は未だ成長しきっていないのだよ。
そこに無理な負荷をかけると、ある意味で能力が開花せずに固定されてしまい、成長の伸びが無くなる恐れがある。
王都エムシャールでは当然の常識だったのだが、ここでは違うのかね?
それに系統立てて教えて行くなら良いが、各家庭で勝手に教えたりすると場合によっては、本来持ち合わせている適性が偏向することさえあるから、エムシャールの貴族は魔法学院入学前には決して魔法を使わせないのだが、ニオルカンでは違うのだな?
公爵殿が言っていた最近魔法師の実力が落ちているという原因はこれなのか?
教師が魔法を教えるに際して適切な配慮を為さず、公爵麾下の貴族が勝手に魔法を我が子に教える。
その方法が適切であればよいが、下手をすると元には戻れぬぞ。」
「あの、左程に問題があると?」
「知らぬことが最も重大な問題なのだよ。
アマリール教頭。
至急、教師全員を集めなさい。
教える教師たちが実際にどれほどのことを知っているのか早急に確認する必要がある。
今行っている授業は取り敢えず中止、場合によっては休業としても差し支えない。」
サリバス学院長は、王宮魔法師団の副師団長を務めたことのある人物であり、ニオルカン公爵に見込まれて、この第一学院の学院長に就任したばかりだったのである。
幸いなことに第一学院にも良識のある人は居た。
これによってマルコが濡れ衣を被される心配はなくなったのである。
しかしながら、一方で王都エムシャール及び王宮魔法師団に縁故を持つ学院長にマルコの存在を知られてしまったのであった。
「アイリスか…。
お前さんは、水属性魔法に適性があるほか、光属性もわずかながらありそうだ。
だから治癒師とか薬師に向いているが、・・・。
もしかして薬師希望なのか?」
「うん、両親ともに薬師だからね。
私もできれば薬師になりたいと思っている。」
「アイリスも精進すればよい薬師になれると思うぞ。
水属性魔法なら攻撃魔法も一応使えるようになるだろう。
でも戦闘系よりは治癒や薬師系に特化した方がいいと思うよ。」
その後は、練習場から教室に戻って、自習ならぬマルコが臨時講師になって魔法の座学が為されたのである。
マルコは、順を追って魔法発動までの準備過程を分かりやすく説明し、また、同期生達の適性についても教えてあげた。
すでにかなり手遅れ感のある貴族の子女もいるが、これからでもある程度の伸びしろは得られるので、必要な修正と訓練の仕方を教えてあげたのである。
頼られてしまうとやはり見捨てることのできないマルコであった。
◇◇◇◇
一方で学校側では騒ぎになっていた。
ペシャワルから報告を聞いた教頭が校長にまで報告を上げたのだが、ペシャワルの報告の仕方が悪く、マルコが勝手に壊したことになっていたのである。
領主から任命を受けているサリバス学院長がそれを聞いてペシャワルに言った。
「ペシャワル、今の報告に間違いは無いのか?
もし、お前の言うことが本当ならば、魔法学校としてはそのマルコに対して損害賠償を請求せねばならぬが、万が一それが間違っているのであれば、的を全て壊すほどの優秀な魔法師の卵を失う事にもなりかねない。
当時の状況は追って生徒たちにも確認するが、念のために、いま一度聞く、マルコがお前の言うことを聞かずして勝手に魔法を放ち、標的を破壊したのだな?」
「は?
いえ、そうでは・・・。
そうではなく、私の教え方に水を差したので、腹が立ち、魔法を放って的を壊したならお前の言うことも聞いてやろうと言いました。」
「お主の説明ではよくわからぬ。
いきなりそんなことになるはずもないだろう。
初めから、もう少し詳しく説明なさい。
先ず何があって水を差された?
また、その際にマルコとやらからは何と言われたのだ?」
ペシャワルは経緯を詳しく話さざるを得なかった。
説明の途中にも遠慮なく校長が口を挟むので、その都度修正をしたペシャワルである。
いかなる報告書でも、これほどに詳しくは記載しなかったであろうと思えるほどに追求されてしまった。
全ての報告を確認した後、校長はため息をついた。
「アマリール教頭。
我が学院は、昔からそのような教えを為していたのかね?
マルコの言ったように子供の適性を確認しつつ、何を伸ばすべきかを指導するのが教師の仕事だ。
何も教えずに勝手に魔法を放てなどと、決してそのような無茶を言ってはならない。
訊けば、マルコは誓約魔法の魔法陣を造れるほどの力量をもっているのであろう?
仮にそのマルコが怒りに任せて全力で魔法を放てば練習場そのものが吹き飛んでいた可能性すらあるのだぞ。
魔力保有量が多い者が無暗に魔法を放てば、周囲に居る者も巻き込まれることすらある。」
教頭が若干冷や汗をかきながら口を挟んだ。
「まさか、・・・。
確かマルコという子は、入学式の折に、試しの魔法を放つことさえしなかった子ですが。」
「うん?
何だ?
その試しの魔法とは?」
「入学する者の力量がいかなるものかを観るために、前々学院長の発案で始めたものです。
決して生徒に強制するものではないのですが、適性試験の後で生徒たちの内で魔法を放てる者に標的目がけて魔法を放たてさせ、どれほどの魔法を放てるかを見極め、以後の授業に資するものでございます。
まぁ、実際に魔法を放てるのは家庭教師を付けられる者、若しくは両親あるいは従者などで魔法を教えることのできる貴族の子に限られますが・・・。」
「なんと、これまでそのような馬鹿な真似をしていたのか?
教頭から上げられた計画書にはそのようなことは記載されていなかったが・・・。
その際に立ち合いの教員にも子供たちにも注意は与えておるのか?
無暗に魔法を放つと、場合により魔力の伸びが少なくなるから、その様な場合は抑制した環境下で為すものだが、この学院にはそうした制御結界はあるのかね?
そのような話は、前回の施設見学では全く訊いていないのだが・・・。」
「は?
いや、あの、そのようなことがあるのですか?」
学院長は大きくため息をついた。
「教頭すらも知らないとは・・・・。
子供達は未だ成長しきっていないのだよ。
そこに無理な負荷をかけると、ある意味で能力が開花せずに固定されてしまい、成長の伸びが無くなる恐れがある。
王都エムシャールでは当然の常識だったのだが、ここでは違うのかね?
それに系統立てて教えて行くなら良いが、各家庭で勝手に教えたりすると場合によっては、本来持ち合わせている適性が偏向することさえあるから、エムシャールの貴族は魔法学院入学前には決して魔法を使わせないのだが、ニオルカンでは違うのだな?
公爵殿が言っていた最近魔法師の実力が落ちているという原因はこれなのか?
教師が魔法を教えるに際して適切な配慮を為さず、公爵麾下の貴族が勝手に魔法を我が子に教える。
その方法が適切であればよいが、下手をすると元には戻れぬぞ。」
「あの、左程に問題があると?」
「知らぬことが最も重大な問題なのだよ。
アマリール教頭。
至急、教師全員を集めなさい。
教える教師たちが実際にどれほどのことを知っているのか早急に確認する必要がある。
今行っている授業は取り敢えず中止、場合によっては休業としても差し支えない。」
サリバス学院長は、王宮魔法師団の副師団長を務めたことのある人物であり、ニオルカン公爵に見込まれて、この第一学院の学院長に就任したばかりだったのである。
幸いなことに第一学院にも良識のある人は居た。
これによってマルコが濡れ衣を被される心配はなくなったのである。
しかしながら、一方で王都エムシャール及び王宮魔法師団に縁故を持つ学院長にマルコの存在を知られてしまったのであった。
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