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第三章 ニオルカンのマルコ
3ー10 大公の娘
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私は、シルヴィアです。
建前上、エジンバル男爵家の娘であるということになっていますけれど、実際はマーモット王国の大公エシャール・ファブレ・サリバンの妾腹の次女なのです。
身分を偽っているのは事情がありますけれど、それはまた別の話ですね。
今日は、同級生のマルコに思い切って話しかけてみました。
為せば成るでしょうか。
当のマルコは、案外あっさりと私を受け入れてくれました。
但し、なんだか私の素性を知られているような気がします。
「シルヴィアさんは、ちょっと得体の知れないところがありますね。
魔法の発動も遠慮していたでしょう。
此処の先生方はちょっと心配なので、きちんとシルヴィアさんの魔法適性がはっきりとわかるまでは無理をして魔法を発動する必要はありません。」
「その魔法適性って、マルコでもわかるの?」
「ええ、多少なら・・・。
シルヴィアさんの場合は、火と風に適性があり、水と土も扱えますけれど、この二つについては火と風ほどの適性はありません。
ですから、火と風を中心に伸ばして行ったら良いと思いますよ。
水と土については、火と風に影響を及ぼすかもしれませんのでほどほどにした方が良いでしょう。」
マルコは、大公家のお抱え魔法師のレオン様と同じことを言いました。
私がこのニオルカンに来る前に大公家で適性を見てもらったのです。
レオン様は、王宮魔法師団でも隊長を務めたことのある優秀な魔法師です。
その方と一緒の判定ができるなんて、とても平民の七歳児とは思えません。
正直なところ、この第一学院は魔力量の少ない子達ばかりなのでちょっとがっかりしていました。
王都ならば同じ年頃でもっと魔力の高い子もたくさん居たような気がします。
中央と地方ではこれほどの差があるのだろうかとも思っていました。
でもマルコには驚きです。
実のところ、私は他人の魔力の多寡を目で見ることができるんです。
でもマルコには全くそれが感じられませんでした。
以前、魔力を感じ取れることについて、レオン様にそのことで聞いたことがあるんです。
「レオン様は他の方に比べると魔力が大きくないように感じられるのですが何故なのでしょうか?」
「ほう、シルヴィア嬢は魔力の量が見えますか・・・。
それは魔眼という特殊な能力の所為ですね。
そうして魔法師にもそのような能力を備えた者が居るのです。
ですから私たち魔法師はできるだけ自分の魔力量を知られないように隠しているのです。
その為にさほど大きくは見えないということですね。
シルヴィア嬢も結構魔力は大きいからいずれはそれを隠すことを覚えると良いでしょう。
でも、それは今ではありません。
そう・・・。
学院に入って少なくとも1年は修練を続けないといけませんね。
その上で魔力を隠す方法を覚えられると宜しいでしょう。」
レオン様はそのようにおっしゃっていましたけれど、実は私の目ではマルコの魔力量が見えないのです。
多分、マルコにも在るのだと思いますよ。
でも何というか身体にぴったりと張り付いて表に出ていないので、その大小が全く分からないのです。
でも、あの契約魔法陣を作った時と、青白いファイアボールを放った時だけは一瞬彼の魔力が膨れ上がったように見えました。
多分、マルコは巧妙に隠しているのです。
その隠し方が上手いのでまるで魔力が無いように見えたのですが、とんでもない話ですね。
レオン様だって小さく見せかけるだけだったのに、マルコは魔力が無いように見せかけることができるんです。
まるで詐欺だと思いました。
でも私もそんな風にしてみたいと思います。
今のままでは、私は貴族とも平民ともつかないどっちつかずなんです。
でも魔力を隠すことが出来たら、平民として市井に埋もれることもできるんじゃないかと思ったりもします。
生憎と、そんなことは、お父様が許してくれそうにありませんけれどね。
マルコは、私が貴族の娘だからと言って分け隔てなく接してくれます。
そうして彼の友人であるアイリスとハリーという平民の人達とも仲良くなれました。
アイリスとハリーは、私との会話の中でどうしても貴族に対する対応から抜けきれないのですが、マルコの場合は何というか貴族への対応というより女性へのいたわりを感じる扱いです。
勿論、貴族への言い回しである丁寧語は避けられないのですけれど、私とアイリスについては同等に扱ってくれているように感じました。
貴族社会ではよくあることなのです。
女性に対する気遣いができる者ほど貴公子と呼ばれる存在に相応しいとされています。
彼は貴族ではないのに、言葉の端々、動きの様々な場面でそうした気遣いを感じられるのです。
彼が貴族であったなら、私のお婿さんに迎えても良いと思えるぐらいなんです。
あら?
何ということでしょう。
私、マルコのことが好きになったみたいです。
まさか、学院生活でそんなことが起きるなんて思いもしませんでした。
お父様への報告・・・、どういたしましょう?
お友達になったら報告するつもりでいたのですけれど・・・。
マルコの特別な能力を伝えるとしても、彼の力量が良くわかりません。
契約魔法陣って何属性なのかも私は知りません。
彼が的を壊した魔法は間違いなく火属性魔法だと思うのですけれど、あんな青白い炎のファイアボールは見たことがありません。
普通のファイアボールより明らかに小さく、速度がものすごく速かったのを覚えています。
それに私や同級生の魔法適性を的確に教えてくれるなんてそうそう簡単にできるものじゃないはずです。
私がマルコの前で見せたのは、わざと威力を落としたエアーバレットだけです。
でも、私の適性を聞いたなら、火と風、それに水と土の適性まで言い当てましたから、彼が魔法師としても極めて優秀だとはわかりますけれど、彼の適性については何も知りません。
うん、お父様に報告するにしても、もう少し彼のことを良く知ってからにしましょう。
当座はお友達ができたことだけお父様に知らせておきます。
もし聞かれれば正直に答えることにしますけれどね。
◇◇◇◇
ー サリバス学院長の視点 ー
私は、第一学院の学院長をしているサリバスだ。
私の知り合いに助っ人を頼み、その尽力により第一学院の教師陣が少しずつ変わりつつある。
従来から居る教師陣で能力の低いモノについては配置替えとなり、その多くは補助講師となっている。
その代わりに新たに採用された者は、そのほとんどが私の縁故で引っ張ってきた人物であり、人格・能力共に優秀なもので占められている。
但し、そのほとんどが年寄りであることが玉に瑕である。
私は、取り敢えず、ここ数年間での学院再建を考えていたのである。
その数年間を何とか講師として耐えられる人材が集まれば、取り敢えずその数年間は時間的余裕が生ずる。
勿論、応急的な方法だけでなく、若手で優秀な人材を集めることも徐々に進めるつもりではあるのだが、そちらはとても急にできることではない。
少なくとも王都若しくはその周辺での魔法学院の扱いを十分に承知している人物が居なければ、今この危機を乗り越えることができないと言っても過言では無い。
正直なところ、現在の教師陣で以前から居た者が数年先にも残れるかどうかは甚だ怪しいものがある。
逆に言えば、これまでの教師陣が如何にお粗末であったかであり、教頭からして、とても厳正な監督無しでは教育を任せることのできる様な人物ではない。
なぜこのような事態になったのかは不明だが、少なくとも三代前の学院長の放漫経営から始まっている様だ。
今残っている教師陣で古手の者は、その半分が三代前の学院長が採用した人物である。
どうも貴族社会にありがちな縁故によるものらしい。
能力はさておき、有力な貴族若しくは従貴族の次男、三男辺りが押し込まれているような感じである。
こうした学院の教師になるためには、通常の場合、貴族家との縁を切らねばならないのだが、それが満足にできていないところに根深いものがありそうだ。
ニオルカン公爵領においては、陰湿な派閥争いは無いものの、間違いなく貴族の派閥は存在する。
学院で手掛けなければならない最初の問題が、教師と出自貴族家等との切り離しをせざるを得ないというのは、百年前の時代に戻ったようでもあり、何とも情けない話ではある。
非常に古い昔にそうした問題があって、王家が率先して事態の収拾を図ったことがあるのをサリバス学院長は知っている。
その時代の魔法教育は、正しく縁故による贔屓が蔓延っており、出自貴族家と敵対する派閥出身の教師に出会ったりすると切実な虐めがあり、評価点数の不法な減点も有ったやに聞く。
その逆に、同じ派閥の教師に出会うと依怙贔屓の加点が横行していたと聞く。
従って、この時代の学校又は学院の評価は、その一切が全く信用できないモノだったそうだ。
王宮魔法師団ですら能力の無い人物が採用されるようになっては、国力にもろに響いて来る。
その為に王家自らが音頭を取ってそうした犯罪紛いの行為の粛清を図ったのだ。
この学院ではそこまで酷くはないが、一方で放任しすぎるきらいがある。
学院が「教える場」では無くて、単なる演習場と能力披露の場になってしまっているのだ。
伸びるべき子供がこのような扱いを受けていれば、素質が有っても潰れてしまう。
その結果、公爵家全体の魔法師の力量が非常に落ちているのだった。
これから伸びる可能性のある子は別としても、二年生、三年生の矯正はほぼ手遅れの勘が強く、時間的に無理とは思われるが、サリバスの最も信頼するホービット老に委ねるしかない。
新入生で可能性のある者は確かに多くは無いのだが、残りの者も矯正ができる子は救ってやらねばなるまい。
王都の魔法学院辺りに比べると粒が小さいというのが私(サリバス学院長)の率直な感想だな。
新入生の中では、シルヴィア嬢とマルコが際立っており、他の者達よりも数ランクも抜きんでている。
シルヴィア嬢については魔力が多く、柔軟な思考力が有るので適切に導けば魔法の伸びも早いだろう。
マルコについては正直なところ私にも良くわからない。
間違いなくシルヴィア嬢に勝る魔力を持っていると思われるのだが、その大きさを確認できないのだ。
このような事例は私も初めて経験する。
7歳児であるにもかかわらず、まるで老練な魔法師を相手にしているかのような錯覚を覚えるのだ。
できるだけ彼の周囲に在って、当人達に気づかれないように授業の風景なども見ているのだが、マルコは他の同級生たちへの指導も的確なのだ。
これまでのさばっていた程度の低い教師陣とマルコを交替させてやりたいほどなのである。
シルヴィア嬢も、マルコを通じて平民のハリーとアリシアという二人の友人を得たようで、マルコについている限り心配は無いだろうと思っている。
建前上、エジンバル男爵家の娘であるということになっていますけれど、実際はマーモット王国の大公エシャール・ファブレ・サリバンの妾腹の次女なのです。
身分を偽っているのは事情がありますけれど、それはまた別の話ですね。
今日は、同級生のマルコに思い切って話しかけてみました。
為せば成るでしょうか。
当のマルコは、案外あっさりと私を受け入れてくれました。
但し、なんだか私の素性を知られているような気がします。
「シルヴィアさんは、ちょっと得体の知れないところがありますね。
魔法の発動も遠慮していたでしょう。
此処の先生方はちょっと心配なので、きちんとシルヴィアさんの魔法適性がはっきりとわかるまでは無理をして魔法を発動する必要はありません。」
「その魔法適性って、マルコでもわかるの?」
「ええ、多少なら・・・。
シルヴィアさんの場合は、火と風に適性があり、水と土も扱えますけれど、この二つについては火と風ほどの適性はありません。
ですから、火と風を中心に伸ばして行ったら良いと思いますよ。
水と土については、火と風に影響を及ぼすかもしれませんのでほどほどにした方が良いでしょう。」
マルコは、大公家のお抱え魔法師のレオン様と同じことを言いました。
私がこのニオルカンに来る前に大公家で適性を見てもらったのです。
レオン様は、王宮魔法師団でも隊長を務めたことのある優秀な魔法師です。
その方と一緒の判定ができるなんて、とても平民の七歳児とは思えません。
正直なところ、この第一学院は魔力量の少ない子達ばかりなのでちょっとがっかりしていました。
王都ならば同じ年頃でもっと魔力の高い子もたくさん居たような気がします。
中央と地方ではこれほどの差があるのだろうかとも思っていました。
でもマルコには驚きです。
実のところ、私は他人の魔力の多寡を目で見ることができるんです。
でもマルコには全くそれが感じられませんでした。
以前、魔力を感じ取れることについて、レオン様にそのことで聞いたことがあるんです。
「レオン様は他の方に比べると魔力が大きくないように感じられるのですが何故なのでしょうか?」
「ほう、シルヴィア嬢は魔力の量が見えますか・・・。
それは魔眼という特殊な能力の所為ですね。
そうして魔法師にもそのような能力を備えた者が居るのです。
ですから私たち魔法師はできるだけ自分の魔力量を知られないように隠しているのです。
その為にさほど大きくは見えないということですね。
シルヴィア嬢も結構魔力は大きいからいずれはそれを隠すことを覚えると良いでしょう。
でも、それは今ではありません。
そう・・・。
学院に入って少なくとも1年は修練を続けないといけませんね。
その上で魔力を隠す方法を覚えられると宜しいでしょう。」
レオン様はそのようにおっしゃっていましたけれど、実は私の目ではマルコの魔力量が見えないのです。
多分、マルコにも在るのだと思いますよ。
でも何というか身体にぴったりと張り付いて表に出ていないので、その大小が全く分からないのです。
でも、あの契約魔法陣を作った時と、青白いファイアボールを放った時だけは一瞬彼の魔力が膨れ上がったように見えました。
多分、マルコは巧妙に隠しているのです。
その隠し方が上手いのでまるで魔力が無いように見えたのですが、とんでもない話ですね。
レオン様だって小さく見せかけるだけだったのに、マルコは魔力が無いように見せかけることができるんです。
まるで詐欺だと思いました。
でも私もそんな風にしてみたいと思います。
今のままでは、私は貴族とも平民ともつかないどっちつかずなんです。
でも魔力を隠すことが出来たら、平民として市井に埋もれることもできるんじゃないかと思ったりもします。
生憎と、そんなことは、お父様が許してくれそうにありませんけれどね。
マルコは、私が貴族の娘だからと言って分け隔てなく接してくれます。
そうして彼の友人であるアイリスとハリーという平民の人達とも仲良くなれました。
アイリスとハリーは、私との会話の中でどうしても貴族に対する対応から抜けきれないのですが、マルコの場合は何というか貴族への対応というより女性へのいたわりを感じる扱いです。
勿論、貴族への言い回しである丁寧語は避けられないのですけれど、私とアイリスについては同等に扱ってくれているように感じました。
貴族社会ではよくあることなのです。
女性に対する気遣いができる者ほど貴公子と呼ばれる存在に相応しいとされています。
彼は貴族ではないのに、言葉の端々、動きの様々な場面でそうした気遣いを感じられるのです。
彼が貴族であったなら、私のお婿さんに迎えても良いと思えるぐらいなんです。
あら?
何ということでしょう。
私、マルコのことが好きになったみたいです。
まさか、学院生活でそんなことが起きるなんて思いもしませんでした。
お父様への報告・・・、どういたしましょう?
お友達になったら報告するつもりでいたのですけれど・・・。
マルコの特別な能力を伝えるとしても、彼の力量が良くわかりません。
契約魔法陣って何属性なのかも私は知りません。
彼が的を壊した魔法は間違いなく火属性魔法だと思うのですけれど、あんな青白い炎のファイアボールは見たことがありません。
普通のファイアボールより明らかに小さく、速度がものすごく速かったのを覚えています。
それに私や同級生の魔法適性を的確に教えてくれるなんてそうそう簡単にできるものじゃないはずです。
私がマルコの前で見せたのは、わざと威力を落としたエアーバレットだけです。
でも、私の適性を聞いたなら、火と風、それに水と土の適性まで言い当てましたから、彼が魔法師としても極めて優秀だとはわかりますけれど、彼の適性については何も知りません。
うん、お父様に報告するにしても、もう少し彼のことを良く知ってからにしましょう。
当座はお友達ができたことだけお父様に知らせておきます。
もし聞かれれば正直に答えることにしますけれどね。
◇◇◇◇
ー サリバス学院長の視点 ー
私は、第一学院の学院長をしているサリバスだ。
私の知り合いに助っ人を頼み、その尽力により第一学院の教師陣が少しずつ変わりつつある。
従来から居る教師陣で能力の低いモノについては配置替えとなり、その多くは補助講師となっている。
その代わりに新たに採用された者は、そのほとんどが私の縁故で引っ張ってきた人物であり、人格・能力共に優秀なもので占められている。
但し、そのほとんどが年寄りであることが玉に瑕である。
私は、取り敢えず、ここ数年間での学院再建を考えていたのである。
その数年間を何とか講師として耐えられる人材が集まれば、取り敢えずその数年間は時間的余裕が生ずる。
勿論、応急的な方法だけでなく、若手で優秀な人材を集めることも徐々に進めるつもりではあるのだが、そちらはとても急にできることではない。
少なくとも王都若しくはその周辺での魔法学院の扱いを十分に承知している人物が居なければ、今この危機を乗り越えることができないと言っても過言では無い。
正直なところ、現在の教師陣で以前から居た者が数年先にも残れるかどうかは甚だ怪しいものがある。
逆に言えば、これまでの教師陣が如何にお粗末であったかであり、教頭からして、とても厳正な監督無しでは教育を任せることのできる様な人物ではない。
なぜこのような事態になったのかは不明だが、少なくとも三代前の学院長の放漫経営から始まっている様だ。
今残っている教師陣で古手の者は、その半分が三代前の学院長が採用した人物である。
どうも貴族社会にありがちな縁故によるものらしい。
能力はさておき、有力な貴族若しくは従貴族の次男、三男辺りが押し込まれているような感じである。
こうした学院の教師になるためには、通常の場合、貴族家との縁を切らねばならないのだが、それが満足にできていないところに根深いものがありそうだ。
ニオルカン公爵領においては、陰湿な派閥争いは無いものの、間違いなく貴族の派閥は存在する。
学院で手掛けなければならない最初の問題が、教師と出自貴族家等との切り離しをせざるを得ないというのは、百年前の時代に戻ったようでもあり、何とも情けない話ではある。
非常に古い昔にそうした問題があって、王家が率先して事態の収拾を図ったことがあるのをサリバス学院長は知っている。
その時代の魔法教育は、正しく縁故による贔屓が蔓延っており、出自貴族家と敵対する派閥出身の教師に出会ったりすると切実な虐めがあり、評価点数の不法な減点も有ったやに聞く。
その逆に、同じ派閥の教師に出会うと依怙贔屓の加点が横行していたと聞く。
従って、この時代の学校又は学院の評価は、その一切が全く信用できないモノだったそうだ。
王宮魔法師団ですら能力の無い人物が採用されるようになっては、国力にもろに響いて来る。
その為に王家自らが音頭を取ってそうした犯罪紛いの行為の粛清を図ったのだ。
この学院ではそこまで酷くはないが、一方で放任しすぎるきらいがある。
学院が「教える場」では無くて、単なる演習場と能力披露の場になってしまっているのだ。
伸びるべき子供がこのような扱いを受けていれば、素質が有っても潰れてしまう。
その結果、公爵家全体の魔法師の力量が非常に落ちているのだった。
これから伸びる可能性のある子は別としても、二年生、三年生の矯正はほぼ手遅れの勘が強く、時間的に無理とは思われるが、サリバスの最も信頼するホービット老に委ねるしかない。
新入生で可能性のある者は確かに多くは無いのだが、残りの者も矯正ができる子は救ってやらねばなるまい。
王都の魔法学院辺りに比べると粒が小さいというのが私(サリバス学院長)の率直な感想だな。
新入生の中では、シルヴィア嬢とマルコが際立っており、他の者達よりも数ランクも抜きんでている。
シルヴィア嬢については魔力が多く、柔軟な思考力が有るので適切に導けば魔法の伸びも早いだろう。
マルコについては正直なところ私にも良くわからない。
間違いなくシルヴィア嬢に勝る魔力を持っていると思われるのだが、その大きさを確認できないのだ。
このような事例は私も初めて経験する。
7歳児であるにもかかわらず、まるで老練な魔法師を相手にしているかのような錯覚を覚えるのだ。
できるだけ彼の周囲に在って、当人達に気づかれないように授業の風景なども見ているのだが、マルコは他の同級生たちへの指導も的確なのだ。
これまでのさばっていた程度の低い教師陣とマルコを交替させてやりたいほどなのである。
シルヴィア嬢も、マルコを通じて平民のハリーとアリシアという二人の友人を得たようで、マルコについている限り心配は無いだろうと思っている。
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