事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監

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第一章 二重生活

1ー13 領都ザッセンハイムにて

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 元教会の僧侶にお願いして、俺はギルドマスターと相談した翌々日の朝には診療所に告知文を張り出して、領都へと出発したよ。
 今の段階ではいつ戻れるかはわからないんだが、できるだけ早めに戻って来るつもりだ。

 出発が少し遅くなったのは俺の準備のためだ。
 お貴族様の前に出るにはやっぱり普段の俺の格好じゃまずいそうなんだよ。

 で、止むなく古着屋に行って、古着屋の主人とギルマスに、貴族の前に出ても恥ずかしくない衣装を選んでもらったというわけだ。
 これがまた高いんだぜ。

 古着なのに大金貨一枚半ほどむしり取られたぜ。
 こんなに出費していたら、普通の冒険者じゃ絶対に借金をすることになるぜ。

 俺が何となくぶすっとしていると、そん気配を察したのか、ギルマス曰く、『お前は金持ちなんだから、こういう時にはケチらずに吐き出せ。』と言うしなぁ。
 確かに俺と同年代の冒険者に比べたら、俺は大金持ちなんだ。

 まぁ、別の機会に使えるかもしれないし、これも必要経費ということで諦めざるを得なかったよ。
 ギルマスからは、領都の冒険者ギルドに俺の出発と到着予定の連絡を入れてくれることになっているし、翌々日からはピンチヒッターの元僧侶だったクレイグさんが俺の診療所で待機してくれることになっている。

 カルヴィアから領都ザッセンハイムまでの旅路は至って平穏だった。
 グルヌベルヌ村までの道と違って、道路が整備されているので、馬車の旅も順調に進む。

 但し、馬車ってのがサスペンションが効いていないんだよなぁ。
 だから馬車のベンチに座っていると尻が痛くなるんだ。

 まぁ、俺はある意味でレベルアップの所為で身体が相当に鍛えられてるから良いけれど、女子供はかわいそうだよな。
 朝出発して夕刻前には宿場町に到着するので、その間だけ我慢すればよいことではあるのだが、途中二度ほど休憩があり、所謂お花摘みもその時に住ませておかねばならないんだ。

 休憩場所にトイレがあるかって?
 そんなものあるわけがない。

 裕福な商人とか貴族とかは自前の馬車を持っていて、馬車の下にオマルを用意してあるらしいが、乗合馬車にそんなものが用意されている筈も無い。
 どっちにしろ、人目を避けた野原のっぱらでするしかないんだから、旅ってのは大変だよな。

 道の駅とかあればよいのにと思うが、交通量の多い場所ならともかく、一日に精々十数台かそこらの馬車が通るだけの道であれば、そんな店や休憩所的なものを開設しても儲けになるかどうかわからないんだよな。
 まぁ、近郊の町まで歩いている人はそれなりに居るんだぜ。

 でも、これまで旅で特段の不便を感じていないなら、作っても閑古鳥が鳴くだけに終わるだろうな。
 旅人ってのは、財布のひもが固いんだ。

 そうでもなければ、金がいくらあっても足りないからな。
 いずれにしろ、ガタゴト揺られて三日目の夕刻には領都ザッセンハイムに着いたよ。

 宿をとってから、冒険者ギルドへ顔を出し、メッセンジャーボーイを頼んで領主邸に伝言をお願いする。
 領主のいる領都の各ギルドには、そのための使い番のような若い子がいるそうだ。

 こいつはカルヴィアのギルマスからくどいほどに言われていることだから、確実に実行しなければならないんだ。
 招請状があったにしても、俺自身がいきなり領主館に直接行ってはいけないのだそうだ。

 俺が到着した旨を領主館に伝えると、翌日には迎えもしくは先触れの使者が来るそうだ。
 領主様の予定が合えば翌日にも謁見できるし、都合がつかなければ何日か宿で待機しなければならないようで。その期日を先触れしてくれるそうだ。

 やれやれ、ヤッパリ貴族様は面倒なようだな。
 この辺はある意味でしきたりだから、平民の俺はそれに従うしかない。

 ◇◇◇◇

 翌日、領主感から迎えの馬車がやってきた。
 うまいこと、領主様の都合が良いときに巡り合ったらしい。

 勿論普段着というわけには行かないから、用意していた上等な衣装を着用して、馬車に乗り込んだ。
 女性のように面倒な化粧などの支度はいらないんだが、衣装を着用するために5分かそこらの時間を要したな。

 その間、迎えの馬車を待たせているのが気がかりなんだが、迎えに来た執事と思しき人物は一向にそんなことを気にしてはいないようだった。
 馬車に乗り込んで10分ほどで領主であるアブシオン伯爵の館に到着した。

 周囲に堀を巡らせ、上げ下げできる大きな木製の橋を渡らなければ中には入れない造りであり、周囲は高い石造りの壁で覆われているから館というよりも中世ヨーロッパの城塞という感じだな。
 間違いなく日本風の城ではない。

 内部に入るとさらに門があって、その奥によく手入れされた庭園が広がっていた。
 さらにその奥に三階建ての大きな館があった。

 侍従と思しき人物の案内で、俺はその内部に足を踏み入れ、謁見場所となる大広間に連れて行かれた。
 正面に大きな椅子が有って、そこがこの館の主人であるアブシオン伯爵が座る場所なのだろう。

 大広間の壁際には20名ほどの騎士が完全武装で並んでいるが、ある意味で権威付けなんだろうな。
 そのまま立っているわけにも行かず、さりとて俺には椅子なんか用意されていないから、その場で片膝ついて立膝の上に腕を置いて待つことにしたよ。

 この辺は、ギルマスの指導が随分と役立っているんだぜ。
 そのまま待つことしばし、どうやらアブシオン伯爵がお見えになったようだ。

 こんな時は顔を伏して待つのが礼儀だとギルマスからは教わっている。
 そうして、すぐに声がかけられた。

「その方が、グルヌベルヌのケントじゃな?
 面を上げい。」

 目の前には四十代後半の精悍な顔つきの男が椅子に座っていた。
 俺は、返事をした。

「グルヌベルヌ村よりカルヴィアの町に来て冒険者をしているケントにございます。
 此度は伯爵様のお呼びにより、かく参上しました。」

 伯爵が鷹揚おうように頷いて、続けた。

「此度は、数万もの魔物の集団がカルヴィアの町を襲ったそうだが、そなたの機転と行動により、その集団のボスを見事に討伐して街を救ったとカルヴィアの駐屯騎士団長レズランから報告を受けた。
 そなたの英雄的行動が無かりせば、カルヴィアの町が滅び、場合によってはザッセンハイムや他の領地にまで危害が及んでいたかもしれぬ。
 少なくともレズランからは討伐がなされたのは国崩しとも呼ばれるオーガの最上位種ではなかったかと思われる旨報告がなされているが、そなたの見立てではどうか?」

「はい、ボスはオーガ・ロードであり、その側にはジェネラル・オーガとオーガ・ウィザードもいました。
 これらを全てを倒したところ、指揮官を失った魔物の集団は潮が引くようにカルヴィア周辺から引き揚げて行きました。
 今後とも周囲の魔物討伐を継続する必要があるものと考えております。
 集団の指揮を執る魔物が現れれば、またもスタンピードは起きる可能性がございます。」

「なるほど、オーガ・ロードとな?
 まさしく国崩しとも呼ばれる集団の頭じゃな。
 カルヴィアの周辺はそれほどに危険な場所なのか?」

「普段は左程に危険な魔物が大量に跋扈ばっこする場所ではないのですが、ゴブリンが住み着き大量に繁殖した事例もありますので、おそらくは瘴気なり魔素なりが溜まりやすい場所があるのかもしれません。
 カルヴィアの町の冒険者ギルドのギルドマスターの話では、それゆえに魔物退治を継続して彼らの中に強大なボスが出現しないようにするのが大事だと申しています。」

「なるほど、冒険者たちにも苦労を掛けるが、今後とも領内の安全を守るために働いてほしい。
 いずれにせよ、国崩しとまで言われるほどの魔物を討伐したそなたの功績は非常に高い。
 故に儂から褒章を授けたいと思うが、何か望みのものはあるか?」

「はい、伯爵様に申し出るのは非常に心苦しきものがございますが、可能であれば、錬金術師ギルドと薬師ギルドの試験を受けるための便宜を図ってはいただけないでしょうか?
 私の場合、カルヴィアの冒険者ギルドの中に診療所を設けていることから、あまりカルヴィアを離れるわけにはまいりません。
 此度は冒険者ギルドのギルマスやその他の方々の支援を受けて領都とまで出てまいりましたが、私がカルヴィアを離れると、カルヴィアの町で傷病人が難儀をします。
 生憎とカルヴィアの町では教会にも治癒ができる僧侶を配置していないのが現状でございます。
 これもある意味で私の診療所が教会の僧侶の仕事を奪ってしまったからでございますが、さりとて、治癒師のいない町を放置はできません。
 聞くところによれば、錬金術師ギルドも薬師ギルドも一年に二回ほどギルド会員になるための試験を行っているとのことですが、薬師ギルドは先月の15日に、錬金術師ギルドは来月の10日に試験があるそうにございます。
 薬師ギルドの試験は半年ほども待たねばなりませんし、仮に来月の錬金術師ギルドの試験を受けるにしても、そのためにカルヴィアの町を8日から9日ほども不在にすることが私にとっては気がかりでございます。
 ですから、此度、このザッセンハイムを訪れる機会がございましたので、できればこの機会に、錬金術師と薬師の試験を特別に受けられないかと、非常に厚かましいお願いながら、叶うなればそれを望みといたしたく存じます。」

「ほう、そなたが薬師と錬金術師の適性を持つというか?
 錬金術師ギルドの長も薬師ギルドの長も、儂が良く知っておる人物じゃからそれなりの口利きはできようが、そのためには二つの条件が入用じゃな。
 ケントよ。
 そなた、怪我人の手当てのみならず病をも癒せる能力が有ると漏れ聞いておる。
 教会の治癒師たる僧侶が行えるは、怪我などで会って病には薬師が対応することになっておるのだが、そなたは治癒魔法で病をも癒せるのか?」

「さすがに全ての病が治せるとも申せませぬが、ある程度原因のわかっている病であれば、その根源を叩くことにより、病を治せる可能性はございます。」

「ふむ、儂の長女が不治の病にかかっておるのじゃ。
 薬師の見立てではもって数か月の命じゃと言われておる。
 一つ目の条件は、そなたの治癒師の力で娘の病を快癒させてみよ。
 また、二つ目は、儂が口添えする以上は、必ず合格せねばならぬ故、その力量を儂に見せてみよ。
 この二つの条件が満足できるならば、二つのギルドには儂から口添えいたそう。」

 おやおや、とんでもない課題を振られてしまいましたね。
 でも、最初からできないと断るわけにも行きません。

 多分薬師からはさじを投げられているのでしょう。
 治せるかどうかは、実際に診てみないとわかりませんよね。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 新作を始めました。
 「戦国タイムトンネル」
 https://www.alphapolis.co.jp/novel/792488792/120012757

 チート能力を持って逆行転生をするお話です。
 宜しくどうぞ。

  By サクラ近衛将監
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