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第八章 対独参戦
8-6 ソ連の迷走
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欧州で、ソ連の蛮行に関するニュースが流れた頃、モロゾフを含めたソ連代表団はドイツをすでに離れ、バルト海の船上にあったが、この報道を苦々しくラジオで聞いていた。
モロゾフは、スターリンにどう釈明すべきかを懸命に考えていた。
外交上できることはない。
が、何らかの責任は取らされるかもしれないのである。
国内の政敵粛清もポーランドにおける虐殺もスターリンが自ら指令したことであるから、全てはスターリンが招いたことである。
だが、あの独裁者はそれを認めないだろう。
モロゾフは保身を考えねばならなかった。
だが、モロゾフが考えていた以上にことは深刻であった。
モロゾフがソ連にたどり着く前に、日本はソ連に対して警告を発したのである。
今後一週間以内に無条件でシベリア抑留中の政治犯とドイツ軍捕虜の釈放をしなければソ連に対して日本は宣戦布告すると言うのである。
ソ連は国家存亡の危機に立たされた。
ドイツとの戦争に勝利したのもつかの間、日本が宣戦布告をしてくるなど思いもよらぬことであった。
スターリンが考えていたドイツ占領についての思惑も日本軍の邪魔立てで完全に外れてしまった。
ソ連と日本は同盟関係ではないが、少なくとも不可侵条約は結んでいる。
ソ連からはいつでも放棄できるものであったが、まさか日本側から破棄してくるとは思っていなかった。
日本の戦力が途轍もないものであることは十分に承知していた。
あれほど手を焼いたナチスドイツ軍をわずかに十日で打ち破った相手である。
しかもソ連国境は巨大な戦士によって完全に封鎖され、ソ連軍の南下を物理的に止められている。
今のところ、この不気味な相手は国境線から動こうとしないし、ソ連側はただの一兵たりとも国境線を越えることはできていなかった。
仮にこの戦士たちが北上を始めた場合、ソ連軍に押しとどめる戦力はないと言っても過言ではないだろう。
日本軍は巨大な重爆撃機を持っているらしく、ドイツへの正式参戦直後にドイツ国内の兵器工場や戦略拠点が叩かれている。
その破壊力の凄まじさはスパイから情報が得られているが、モスクワの街区が一発の爆弾で破壊される代物であり尚且つ極めて正確な照準であるという。
ラジオ放送で予告された場所に正確に落とされているようである。
1万メートルを超える超空から落とされたのでは従来の高射砲も戦闘機も全く手も足も出ない。
なおかつティーゲル戦車を凌ぐ戦車があり、戦車を攻撃できるヘリコプター、音速を超えるジェット戦闘機、巨大戦艦に巨大空母、さらには超巨大な潜水空母まで保有している日本軍と戦争などできるわけがないのである。
だが、国際社会にここまで醜態をさらけ出して、黙っていては沽券に関わるというものであった。
スターリンは悩んだ。
スターリングラードに到着したモロゾフを待っていたのは、KGBではなくスターリンその人であった。
モロゾフは驚いた。
まさかスターリンが出迎えるとは予想だにしなかったのである。
車に乗ってスターリングラードから専用列車でモスクワに向かう途上、スターリンから非難の言葉はなかった。
だが、日本からの要請にどう答えるべきかを尋ねられた。
「同志スターリン、・・・。
共産党の威信を守ろうとするならば戦わねばならないでしょう。
だが、今の日本と戦っても勝てる見込みは皆無です。
わが軍はさんざんに打ち破られるでしょう。
ドイツとの戦には冬将軍が味方したが、日本にも冬将軍が味方するとは限らない。
冬将軍がやってくる前に日本はモスクワにまで侵攻できるはずです。
彼らが戦をちらつかせたということは其の準備ができていることを示している。
今は夏の盛り、大地はぬかるみ、機甲師団の動きは鈍くなるが、彼らは強大な航空戦力を持っている。
フジヤマ基地にあるという大型重爆撃機を投入されれば、我々には逃げ場がない。
日本から、はたまた英国から飛来する超重爆を阻止する手段はないのです。
奥地にある油田地帯と工場群を破壊されたら我々に継戦能力は残らないでしょう。
もって2週間、遅くとも晩秋が来る前にソ連は崩壊する。
それでも戦われますか?」
「いや、無駄だろうな・・・。
ドイツ軍捕虜は返さねばならないだろうが、政治犯を釈放したにしても一部でごまかせないか?
それに・・・。
ポーランドの一件を何とか君の力でごまかすことはできないか?」
「言葉で否定するのは簡単です。
ですが、会議をボイコットして帰りの船の中で聞いたラジオによれば、彼らは真実を知っているし、すでに証拠を公表もしているようです。
国際社会は言葉だけの否定を信用するわけがないのです。
私の推測にしか過ぎませんが、おそらく、日本はシベリア抑留中の政治犯すべてを把握しているのではないかと思います。
仮に政治犯の一部のみの釈放を実施したところで、ごまかしきれないだろうと思います。
ポーランドの一件は、事実をなかったことにはできません。
可能だとすれば現場指揮官の独断専行としてモスクワは知らなかったことにするぐらいでしょうか。
ただし、同志スターリン、まさか命令書などは出していないでしょうね。
「命令書?
そんなものは・・・。
いや、待て、・・・・確か電報を打った。
捕虜の扱いについて第二〇軍から打診があったときだ。」
「どんな内容ですか?」
「確か、・・・後腐れの無いように処分せよ・・・だ。」
「暗号ですか?」
「無論だ。」
「ふむ、日本側が万が一その電文を解読していれば、拙いことになりますね。」
「そんなものは勝手に司令部が打ったことにすればいい。」
「では責任者を処分しなければならないですが、それができますか?」
「止むを得ないな。
国家存続のためには多少の犠牲も必要だ。」
スターリンはニヤッと笑った。
モロトフにもスターリンが替え玉を立てて処刑する腹であることがわかった。
モスクワに専用列車が着くとすぐに、スターリンは車内から電話を何本かかけた。
三日後、モスクワでモロトフが記者会見を開いた。
モロゾフは、スターリンにどう釈明すべきかを懸命に考えていた。
外交上できることはない。
が、何らかの責任は取らされるかもしれないのである。
国内の政敵粛清もポーランドにおける虐殺もスターリンが自ら指令したことであるから、全てはスターリンが招いたことである。
だが、あの独裁者はそれを認めないだろう。
モロゾフは保身を考えねばならなかった。
だが、モロゾフが考えていた以上にことは深刻であった。
モロゾフがソ連にたどり着く前に、日本はソ連に対して警告を発したのである。
今後一週間以内に無条件でシベリア抑留中の政治犯とドイツ軍捕虜の釈放をしなければソ連に対して日本は宣戦布告すると言うのである。
ソ連は国家存亡の危機に立たされた。
ドイツとの戦争に勝利したのもつかの間、日本が宣戦布告をしてくるなど思いもよらぬことであった。
スターリンが考えていたドイツ占領についての思惑も日本軍の邪魔立てで完全に外れてしまった。
ソ連と日本は同盟関係ではないが、少なくとも不可侵条約は結んでいる。
ソ連からはいつでも放棄できるものであったが、まさか日本側から破棄してくるとは思っていなかった。
日本の戦力が途轍もないものであることは十分に承知していた。
あれほど手を焼いたナチスドイツ軍をわずかに十日で打ち破った相手である。
しかもソ連国境は巨大な戦士によって完全に封鎖され、ソ連軍の南下を物理的に止められている。
今のところ、この不気味な相手は国境線から動こうとしないし、ソ連側はただの一兵たりとも国境線を越えることはできていなかった。
仮にこの戦士たちが北上を始めた場合、ソ連軍に押しとどめる戦力はないと言っても過言ではないだろう。
日本軍は巨大な重爆撃機を持っているらしく、ドイツへの正式参戦直後にドイツ国内の兵器工場や戦略拠点が叩かれている。
その破壊力の凄まじさはスパイから情報が得られているが、モスクワの街区が一発の爆弾で破壊される代物であり尚且つ極めて正確な照準であるという。
ラジオ放送で予告された場所に正確に落とされているようである。
1万メートルを超える超空から落とされたのでは従来の高射砲も戦闘機も全く手も足も出ない。
なおかつティーゲル戦車を凌ぐ戦車があり、戦車を攻撃できるヘリコプター、音速を超えるジェット戦闘機、巨大戦艦に巨大空母、さらには超巨大な潜水空母まで保有している日本軍と戦争などできるわけがないのである。
だが、国際社会にここまで醜態をさらけ出して、黙っていては沽券に関わるというものであった。
スターリンは悩んだ。
スターリングラードに到着したモロゾフを待っていたのは、KGBではなくスターリンその人であった。
モロゾフは驚いた。
まさかスターリンが出迎えるとは予想だにしなかったのである。
車に乗ってスターリングラードから専用列車でモスクワに向かう途上、スターリンから非難の言葉はなかった。
だが、日本からの要請にどう答えるべきかを尋ねられた。
「同志スターリン、・・・。
共産党の威信を守ろうとするならば戦わねばならないでしょう。
だが、今の日本と戦っても勝てる見込みは皆無です。
わが軍はさんざんに打ち破られるでしょう。
ドイツとの戦には冬将軍が味方したが、日本にも冬将軍が味方するとは限らない。
冬将軍がやってくる前に日本はモスクワにまで侵攻できるはずです。
彼らが戦をちらつかせたということは其の準備ができていることを示している。
今は夏の盛り、大地はぬかるみ、機甲師団の動きは鈍くなるが、彼らは強大な航空戦力を持っている。
フジヤマ基地にあるという大型重爆撃機を投入されれば、我々には逃げ場がない。
日本から、はたまた英国から飛来する超重爆を阻止する手段はないのです。
奥地にある油田地帯と工場群を破壊されたら我々に継戦能力は残らないでしょう。
もって2週間、遅くとも晩秋が来る前にソ連は崩壊する。
それでも戦われますか?」
「いや、無駄だろうな・・・。
ドイツ軍捕虜は返さねばならないだろうが、政治犯を釈放したにしても一部でごまかせないか?
それに・・・。
ポーランドの一件を何とか君の力でごまかすことはできないか?」
「言葉で否定するのは簡単です。
ですが、会議をボイコットして帰りの船の中で聞いたラジオによれば、彼らは真実を知っているし、すでに証拠を公表もしているようです。
国際社会は言葉だけの否定を信用するわけがないのです。
私の推測にしか過ぎませんが、おそらく、日本はシベリア抑留中の政治犯すべてを把握しているのではないかと思います。
仮に政治犯の一部のみの釈放を実施したところで、ごまかしきれないだろうと思います。
ポーランドの一件は、事実をなかったことにはできません。
可能だとすれば現場指揮官の独断専行としてモスクワは知らなかったことにするぐらいでしょうか。
ただし、同志スターリン、まさか命令書などは出していないでしょうね。
「命令書?
そんなものは・・・。
いや、待て、・・・・確か電報を打った。
捕虜の扱いについて第二〇軍から打診があったときだ。」
「どんな内容ですか?」
「確か、・・・後腐れの無いように処分せよ・・・だ。」
「暗号ですか?」
「無論だ。」
「ふむ、日本側が万が一その電文を解読していれば、拙いことになりますね。」
「そんなものは勝手に司令部が打ったことにすればいい。」
「では責任者を処分しなければならないですが、それができますか?」
「止むを得ないな。
国家存続のためには多少の犠牲も必要だ。」
スターリンはニヤッと笑った。
モロトフにもスターリンが替え玉を立てて処刑する腹であることがわかった。
モスクワに専用列車が着くとすぐに、スターリンは車内から電話を何本かかけた。
三日後、モスクワでモロトフが記者会見を開いた。
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