親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
110 / 112
第八章 対独参戦

8-5 会議の行方 その二

しおりを挟む
 ソ連代表が質問に立った。

「我が国はドイツ軍の侵攻により多大の被害を蒙った。
 その補償は日本がしてくれるのか。」

「ソ連代表に申し上げる。
 先ほども申し上げたとおり被災国には相応の援助を与えることを我が国は約束した。
 この約束は守られるだろう。
 だが、一方でソ連はドイツと共謀してポーランド侵攻を図った。
 ソ連政府はポーランドに対して何らかの補償をするつもりがあるのですか?」

「あれは正当な戦争の結果であり、我が国がポーランドに補償すべき根拠は無い。」

「ならば、ドイツ軍によって蒙った被害も貴国のいう正当な戦争の結果ではないのか。
 それでいながら、補償を求めるのはおかしいではないですかな。
 貴国のポーランド侵攻とドイツ軍の貴国侵攻の違いがあればご教示願いたい。」

「我々は戦勝国だ。
 ポーランドについてもしかり、戦勝国が敗戦国に補償するなど常識はずれである。」

「ドイツは貴国に降伏したわけではない。
 その事実は貴国も承知のはず。
 いかにもこの場は戦勝国の会議の場であり、戦後処理をめぐっての会議である。
 だが、同時に人道に対する罪を論ずる場所でもある。
 戦勝国と謂えど、人道に対する罪を行っていることが判明すれば、それを断罪することも厭わないでことになるでしょう。
 貴国については、何かと問題がある。
 今ここで詳細に申し上げるつもりは無いが、貴国で残虐な人道に対する罪が行われていることも承知している。
 だが、それを論じる場ではないから敢えて申し上げないでおく。」

「これは異なことを言われる。
 我が国で非道な行為が行われているとはどういうことか。
 我が国を誹謗中傷する言葉は絶対に許せない。
 是非とも納得の行く説明を願いたい。」

「ソ連代表はテロの語源をご存知だろうか。
 フランス革命において生まれた言葉であり、本来は恐怖政治を意味する。
 すなわち敵対する勢力を根絶やしにするために国家反逆罪を乱発して処刑した革命政府のやり方をいうのですが、希代の蛮行として知られているはず。
 ソ連代表はどう思われますかな。」

「フランス革命においては、確かに臨時革命政府の名によって多くの市民が犠牲になっていると聞いており、その大半は無実の罪によりギロチンにかけられたと聞いている。
 それが、我が国と何の関係がある。」

「モロゾフ代表もご存知でしたか、・・・。
 ならば、貴国でも同じ轍が踏まれているようだが、其の点は如何様に考えておられるのか。」

「何のことか、ツァー一族につながる者を処刑したことは断じて誤りではない。
 門外漢の日本代表にとやかく言われることではない。」

「革命前後の混乱期に多少の事件が起こるのは止むを得ないことかもしれない。
 だが、貴国では今でも多数の政治犯と呼ばれる人たちが秘密裏に処刑されているはず。
 しかも、なんら裁判を受けることなく処刑されている事実をあなたはどう釈明されるのか。
 また、ポーランド侵攻において多数のポーランド人捕虜を故なく殺害した事実をどう釈明されるのか。
 モロゾフ代表の説明を伺いたい。」

「何のことか、私には分からない。
 そのようなありもしない疑惑をかけられてまで、この会議に臨む必要性は認められない。
 我が国は退席する。」

「お待ちなさい。
 モロゾフ代表。
 我が国は中傷誹謗でありもしない嫌疑を貴国にかけているわけではない。
 必要ならばいつでも其の証拠を公表する用意がある。
 モロゾフ代表はそれをお望みか。」

「でっち上げの証拠など見たくも無い。
 いずれにせよ。
 ドイツの処理について我が国にとって何らの利益も見出せないこの会議に参加する理由はない。
 わが代表団は即時帰国することにする。」

「再度お伺いする。
 モロゾフ代表がでっちあげと称された証拠を公表しても差し支えないということでしょうか?」

 モロゾフは振り向きもせずに会場を後にした。
 日本側代表団のその日の記者会見は長いものになった。

 新たな国際機関憲章草案が日本代表団により公表され、その趣旨説明がなされたからであり、さらにはソ連国内で起きている虐殺の実態が証拠写真多数とともに呈示されたからである。
 翌日の欧州各国の新聞報道はこの二件が大きな見出しで取り上げられた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...