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●ターニャ視点●
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ウィステリアお嬢様との出会いは、お嬢様が奥様と街に買い物に来ていた時でした。
私は孤児院で育ち、仕事がなく稼いだとしても、ほぼ一つのパンに消えてしまう。そんな生活を送っていました。
なんとか路銀を稼ぐためにあちこちの商家にあたってみても門前払いされてしまう。
幸いに孤児院は、畑を持っていたから、孤児院総出で草取り、作物を育てていたけれど、それでも人数が多ければ採れた作物も行き渡る量は限られている。
最年長である私が皆の為に稼ごうとしても、『身なりが汚い』『孤児院育ち』とレッテルを貼られ、得られる収入も他の人に比べて少なくされる。
他の人は働いて1日貰えるお金は、5ベリルなのに、『身なりの汚いお前を雇ってやったんだ』と言って3ベリルしか貰えない時がある。3ベリルはまだ良い方で、ひどい時は1ベリルの時もある。
2ベリルあれば、パンが買えるからそのパンを孤児院の皆で食べて飢えを凌いだ時もあった。
この街を治めていた貴族が不正を働き、粛清に遭ったという話が街の中で流れた。
新しく統治者となった貴族は前の貴族よりはマシだったが、孤児院の対応は変わらなかった。
採れる作物も限りがある。皆声には出さないでいるが、限界に近づいてきている時だった。
「はぁ。今日も稼ぎは少なかったけれど、なんとか1日過ごせそうね。」
「ターニャお姉ちゃん。大変だよー!」
シスターが何やら慌ただしく動き始めたところに、籠いっぱいに入ったパンやお菓子を持っている女の子?男の子?とその子のお母さんが立っていた。
「今日から、この孤児院の経営者となりましたフィーア・ブラン・アインスバッハと申します。皆様、どうぞよろしくお願いしますわ。」
今までの経営者は、孤児院を等閑にしていた。今度の経営者も変わらないと決めつける子達も少なくなかった。
フィーアと名乗った女性の側にいた子が籠いっぱいにあるパンを見つめて食べたそうにしている。
焼き立てなのかしら。まだ湯気が上がっており、見れば見るほど美味しそうなパンね。でも、私は、ここ何年も温かいパンを口にしたことは無いわ。
小さな子達は、食べたくて仕方がなく指を加えている子や、ウズウズしている子達もいる。
「私の名前は、ウィステリアと言います。どうぞ。みなしゃまで食べてください。」
フィーアとの側に立っていた子が声をかけると、小さい子から順番にパンを配り始めた。
(何故、急に経営者が変わったのかは、分からないけれど、飢えに困らなくなるのは良いことだわ。)
顔を綻ばせ次々とパンを配り、私のところまでやってきた。そのパンは、温かく今まで食べた事がないほど柔らかいパンだった。
パンを食べた子達から、「柔らかい上に温かいパン初めて食べた。美味しい!!」と歓喜があがっている。
シスター達も、久々に美味しいパンが食べれたと喜んでいる。
小さなお嬢様が、私の方をジッと見つめている。パンを見つめているのだろう。
「お姉ちゃんは、お名前何ていうの。私はウィステリアっていうの。」
目を輝かせながら話しかけてくる小さなお嬢様。だが、口元はパンが食べたくて、ちょっと涎が垂れそうなほど見つめてくる。
「ターニャと言います。半分良かったら食べますか?」
パンを半分に分けて渡そうとすると、まだ私の手の中にあるパンに齧りついた。
「ありがとうー。ターニャお姉ちゃん」
貴族の子とは言えど、パンを食べる姿は、この孤児院に居る子達と何一つ変わらない。
美味しそうに食べる小さなお嬢様をひと目見て、半分になったパンを口にした。
中には、とろーり溢れるクリームと呼ばれる物が入っていた。小さなお嬢様曰く、「あたり!だよ」と。クリームは、しつこくない甘さにとろーりと溢れ落ちてしまうほど柔らかい。夢中になって食べていた。食べ終えると、まだ食べ足りないのか、お腹が鳴るほどであった。
「お代わりするほどたくさんありますよ。スープもありますので、此方も召し上がって下さい。」
その言葉を機に、皆パンを2、3個貰って食べていた。特にクリームパンは好評でキラキラと目を輝かせながら食べている。籠いっぱいにあったパンはすっかりなくなっていた。
スープも美味しく、いつも野菜が僅かばかりなスープと違って、野菜が豊富に入っている。
(これも美味しいー。)
私は孤児院で育ち、仕事がなく稼いだとしても、ほぼ一つのパンに消えてしまう。そんな生活を送っていました。
なんとか路銀を稼ぐためにあちこちの商家にあたってみても門前払いされてしまう。
幸いに孤児院は、畑を持っていたから、孤児院総出で草取り、作物を育てていたけれど、それでも人数が多ければ採れた作物も行き渡る量は限られている。
最年長である私が皆の為に稼ごうとしても、『身なりが汚い』『孤児院育ち』とレッテルを貼られ、得られる収入も他の人に比べて少なくされる。
他の人は働いて1日貰えるお金は、5ベリルなのに、『身なりの汚いお前を雇ってやったんだ』と言って3ベリルしか貰えない時がある。3ベリルはまだ良い方で、ひどい時は1ベリルの時もある。
2ベリルあれば、パンが買えるからそのパンを孤児院の皆で食べて飢えを凌いだ時もあった。
この街を治めていた貴族が不正を働き、粛清に遭ったという話が街の中で流れた。
新しく統治者となった貴族は前の貴族よりはマシだったが、孤児院の対応は変わらなかった。
採れる作物も限りがある。皆声には出さないでいるが、限界に近づいてきている時だった。
「はぁ。今日も稼ぎは少なかったけれど、なんとか1日過ごせそうね。」
「ターニャお姉ちゃん。大変だよー!」
シスターが何やら慌ただしく動き始めたところに、籠いっぱいに入ったパンやお菓子を持っている女の子?男の子?とその子のお母さんが立っていた。
「今日から、この孤児院の経営者となりましたフィーア・ブラン・アインスバッハと申します。皆様、どうぞよろしくお願いしますわ。」
今までの経営者は、孤児院を等閑にしていた。今度の経営者も変わらないと決めつける子達も少なくなかった。
フィーアと名乗った女性の側にいた子が籠いっぱいにあるパンを見つめて食べたそうにしている。
焼き立てなのかしら。まだ湯気が上がっており、見れば見るほど美味しそうなパンね。でも、私は、ここ何年も温かいパンを口にしたことは無いわ。
小さな子達は、食べたくて仕方がなく指を加えている子や、ウズウズしている子達もいる。
「私の名前は、ウィステリアと言います。どうぞ。みなしゃまで食べてください。」
フィーアとの側に立っていた子が声をかけると、小さい子から順番にパンを配り始めた。
(何故、急に経営者が変わったのかは、分からないけれど、飢えに困らなくなるのは良いことだわ。)
顔を綻ばせ次々とパンを配り、私のところまでやってきた。そのパンは、温かく今まで食べた事がないほど柔らかいパンだった。
パンを食べた子達から、「柔らかい上に温かいパン初めて食べた。美味しい!!」と歓喜があがっている。
シスター達も、久々に美味しいパンが食べれたと喜んでいる。
小さなお嬢様が、私の方をジッと見つめている。パンを見つめているのだろう。
「お姉ちゃんは、お名前何ていうの。私はウィステリアっていうの。」
目を輝かせながら話しかけてくる小さなお嬢様。だが、口元はパンが食べたくて、ちょっと涎が垂れそうなほど見つめてくる。
「ターニャと言います。半分良かったら食べますか?」
パンを半分に分けて渡そうとすると、まだ私の手の中にあるパンに齧りついた。
「ありがとうー。ターニャお姉ちゃん」
貴族の子とは言えど、パンを食べる姿は、この孤児院に居る子達と何一つ変わらない。
美味しそうに食べる小さなお嬢様をひと目見て、半分になったパンを口にした。
中には、とろーり溢れるクリームと呼ばれる物が入っていた。小さなお嬢様曰く、「あたり!だよ」と。クリームは、しつこくない甘さにとろーりと溢れ落ちてしまうほど柔らかい。夢中になって食べていた。食べ終えると、まだ食べ足りないのか、お腹が鳴るほどであった。
「お代わりするほどたくさんありますよ。スープもありますので、此方も召し上がって下さい。」
その言葉を機に、皆パンを2、3個貰って食べていた。特にクリームパンは好評でキラキラと目を輝かせながら食べている。籠いっぱいにあったパンはすっかりなくなっていた。
スープも美味しく、いつも野菜が僅かばかりなスープと違って、野菜が豊富に入っている。
(これも美味しいー。)
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