事後

さくら優

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2.盗聴

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壱琉の部屋を出てから、雅は近くの駐車場に車を止め、鞄から取り出したイヤフォンをはめた。

『はぁ、雅⋯』

詰めた吐息と、途切れ途切れに自分を呼ぶ声がイヤフォンから流れてくる。思わずフッと口を歪めた。

壱琉が時々、こうして自分が帰った後に自慰をしていることは知っていた。以前、壱琉の部屋を出た後に忘れ物に気付いて取りに行った際に、壱琉が一人でしているのをドア越しに聞いてしまったのだ。

どうしてそんなことを、とその時はかなり戸惑ったがそれ以上に、無意識なのかなんなのか、何度も甘えるように雅の名前を呼ぶ壱琉があまりにも可愛くて、しばらくその場を動かずに壱琉の声を聞いていた。

それから、後日こっそり、ベッドのヘッドボードに見つからないように盗聴器を取り付け、以後こうして車の中で壱琉が一人でするのを聞いている。

『や、あ⋯、み、やび⋯、雅ぃ⋯っ』
「か~わい」

微かにバイブのような音も聞こえる。おそらくベッドの下に隠してあった玩具の類だろう。

こんなことをしているのだ。壱琉が物足りないと思っているのはわかっている。仕事があるからと理由を付けているが、本当はそれだって、壱琉の家から仕事に行けばいいだけで、絶対に帰らなければならない理由にはならない。

それでも雅は、平日はいつも帰っていた。理由はいくつかある。
一つは、一緒にいると翌朝仕事に行くのがものすごく嫌になるから。朝まで一緒にいたら離れ難くなる。

二つ目は、以前、自分の欲望を押し付け過ぎて振られてしまったことがあったから。
どんなに美味しいものでも、常に大量に食べ続けていたら飽きてしまうかもしれない。ちょっと物足りないと思うくらいがちょうどいいと思う。
壱琉なら大丈夫だとは思うけれど、万が一振られたりしたら自分はもう生きていけない。

そして何より、こうして離れていても自分のことだけを考えている壱琉が、可愛くてたまらないからだった。

『はぁ、き、もちい⋯』
「ふ⋯」

壱琉は、性器を撫でてやると素直に気持ちいいと言う。ほかのところはまず言わないのに。何度かこうして盗聴しているが、一人でする時もそれは変わらないようだ。

さっきあんなに可愛がってやったのに。次に会った時は今日以上に感じさせてやらなければ。

壱琉が達ったのを聞いてから、イヤフォンを外してハンドルに突っ伏した。知らず溜息が漏れる。

「早く週末になんないかな⋯」
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