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4.繋がり
4-5
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ベッドの横たえられ、ゆるく抱き締められる。うなじや首筋にキスされながら、ゆっくりと服を脱がされ口付けが下りていく。
溜息を吐きながら喉を反らすと、そこにも唇が押し付けられた。
初めてなわけでもないのに、心臓が破裂しそうなほどドキドキしている。肌がびりびりと過敏になっていて、服の上から撫でられるだけで背中に震えが走った。
思わずしがみつくように抱き付くと、何度も唇に軽くキスをされた。東藤は、今まで見たこともないくらい優しい表情をしている。その眼差しで見つめられるだけで、胸が締め付けられたみたいになる。
こうして抱き合ってみて、改めて実感した。
賭けの代償に自らの身体を差し出すなんてことが軽々しく出来たのは、なんの経験もなかったからだ。何も知らなかったから、大したことはないだろうと高を括っていられた。
一度こうして好きな相手に抱かれてしまったら、もう他の人になど考えたくもない。
「ん…はぁ、あっ」
つーっと脇腹を舌で辿られ、声が漏れた。
下半身の服も脱がされ、一糸纏わぬ姿にされてしまうと、羞恥と、不安と、期待と、様々な感情がない交ぜになって襲ってきた。
すでに硬く勃ち上がっている屹立に触れられた時のことを頭が勝手に想像して、頬が熱くなる。けれど、東藤の指が触れたのは、そこよりもさらにもっと奥だった。
「えっ? あ…やっ」
いきなり後孔の入り口に触れられ、那智は逃げるように身体を引く。
「と、東藤さん……?」
「今日は俺が我慢出来ないから、先に挿れさせて」
膝が胸につくくらいまで身体を折り曲げられ、秘部が東藤の目の前に晒されて、羞恥で全身が赤く染まる。ふっと息を感じると同時に濡れた感触があり、そこを舐められているのだとわかった。
「あっ、はあ、んっ」
那智は顔を背けて手の甲を唇に押し付けた。いつもみたいに、快感でとろとろにされてから後ろを弄られるのと、理性が残っている今のような状態でそこに触れられるのとでは、恥ずかしさが桁違いだった。
舌を差し込まれ、唾液を塗り込められるたびに中が綻んでいくのが自分でもわかってしまう。すると、今度はそこに指を差し込まれた。
「ぁ、あぁ! っ…!」
探るように中で指を動かされると、くちゅくちゅといやらしい音が耳に届いた。
弱い部分をこりこりと刺激され、いったん抜いて本数を増やした指で奥を突かれる。
「やあぁっ! あ、も、い…から」
「那智…」
びくびくと脚を震わせると、宥めるように太腿の裏側を撫でられた。膝裏をくすぐられ、自分でも知らなかった性感を次々に暴かれていく。
我慢出来ないから、という言葉の通り、押し付けられた東藤のものは火傷しそうなほど熱かった。首に腕を回すと、抱き締められ唇を塞がれる。
「ん、んぅ──。ふぁ」
入り口が目いっぱい広げられる感覚に、那智は眉を顰めた。けれど、中が馴染んできて苦痛が治まってくると、胸に熱いものが込み上げてきて、つい溜息が零れる。
嬉しい。やってることはこれまでと同じなのに、心が通じ合っているのといないのとでは、こんなにも差が生じるのか。
那智の心は東藤にも伝わってしまったらしく、彼は耳許でくすりと笑う。
「中、すごい絡み付いてくる」
喜んでるみたい、とからかうように言われ、恥ずかしさに耳まで真っ赤になった。
「っ! ばかっ…あっ」
照れ隠しのように拳で胸を叩こうとすると、その手を掴まれベッドに押し付けられてしまう。
「や、やだっ、なに…?」
「もっと気持ちよくしてあげる」
「えっ、あ…っや!」
ふいに乳首に吸い付かれて、ビクッと大げさに身体が震えた。今まで放って置かれていたところに直接的な刺激を与えられ、そこはすぐに硬く尖ってしまう。
唇で挟まれ舌で突起を転がされると、声が抑えられなかった。
「ああぁっ! は、ん、んあっ」
後孔に入れられた東藤のものも、ゆっくりと出し入れされ掻き回される。内壁を余す所なく擦り立てられ、強烈な快楽に逃げるように腰を引くと、逃がさないとばかりに奥まで突き立てられた。大きく開かされた脚の先が、弱々しくシーツを蹴る。
舐められていない方の乳首も、指でそっと摘んで引っ張られた。
「ぃやあっ」
「お前、こうされるの好きだったよな」
「や、やだっ、それ…、だめぇっ」
いやいやと首を振っても、東藤はやめるどころか、さらに那智が感じるように触れてくる。涙で潤んだ瞳で見上げると、手首を押さえていた方の手がはなされ、指を絡めるようにしてぎゅっと手を握られた。目尻に唇が触れ、滴を吸い取られる。
「あ、東藤さ…」
「イけそうか?」
「う、ん…は、ぁあっ」
「じゃあ、一緒にイこうな」
そう囁く東藤の声も、熱く掠れていた。
張り出した部分で核の所を擦り上げられ、胸の突起を強く吸われる。
那智が悲鳴のような声を上げて達するのとほぼ同時に、最奥に白濁を叩き付けられた。
息を荒げて呼吸を整えていると、唇が重なってくる。上手く息が継げなくて、長く口付けていられないのが悔しかった。
「大丈夫か?」
「ん…ぁ、っ…」
慎重に中のものが抜かれていき、那智は息を詰める。離すまいと襞が絡み付くのを無視して、東藤は自身を抜いてしまった。切なげにそこが収縮する。
那智が不安げに顔を上げると、東藤は今までずっと放って置いた前の方に手を伸ばしてきた。
「あっ、ぁああん!」
達した直後で過敏になっているものを撫でられると、キツいほどの快感が襲ってくる。
「いっぱい出したな」
「ああっ! や、んぅっ」
東藤は自分のと那智のものを一緒に握ってきた。熱く硬いもので裏側を擦られ、全身に震えが走る。そのまま、指の腹で溢れた蜜を塗りのばすように、先端の溝の部分をくりくりと撫で回される。
「ひぅっ! や、やあぁっ! …れ、それ、だめっ」
神経に直接触れられているような強過ぎる刺激をなんとか追い払おうと、首を左右に振って荒い呼吸を繰り返した。けれど、快感が頂点に届きそうになると、根本を強く抑えられ射精を封じられてしまう。
「ああっ! やだ、な、んでっ」
「那智の、すごく気持ちいい。ずっとこうしてたいくらい」
「っ! や、ぃやぁ…っ」
東藤の声に微かな本気を感じ取って、目尻に新たな滴が浮かんだ。怯えの滲む瞳で見上げると、優しく微笑む東藤の顔がある。さすがに那智も学習した。こういう状況で優しそうな顔をする東藤は、ろくなことを考えていない。
けれど、逃げる隙も与えられないうちに、性器の先端同士が触れ合うようにされて、更なる愉悦を与えられる。
互いの蜜口がキスするみたいに重なり合った瞬間、
「ひゃっ! ああぁーっっ!」
突然、下半身に熱湯をかけられたような熱さを感じ、那智は悲鳴を上げた。一瞬何が起こったのかわからなかったけれど、触れ合ったままの先端部分から、この状態で吐精されたのだと悟る。重ねられていた蜜口から白濁を注がれ、他人の精液が精路を逆流する感覚に、全身に痺れが走った。
痛みなのか快感なのかもわからない、強烈過ぎる感覚に、那智はわけがわからなくなって啜り泣きを漏らし始める。
「ん、うぅ…。は、も、やだ…」
子どもみたいに拳で目元を拭っていると、大きな手のひらで頭を撫でられた。
「那智、ごめんな、びっくりした?」
「ふ、ぅん…熱ぃ…」
「熱かったか? 那智も出していいよ」
「あっ、ぁん…っ」
今度は那智のものだけを手で包まれ、散々苛められた先端部を撫でられた。促されるままに達して、背中にしがみ付いたままぽろぽろと大粒の涙を溢す。強く抱き締められ、くすりと笑う東藤の声が耳許の空気を揺らした。
「可愛い」
「ぁ…と、どうさ…」
「ん?」
「…ぃれて。も、こっちがいい…」
脚を開いて自分の手で後ろを指し示す那智の媚態に、東藤は唾を飲み込んだ。
「いいよ。じゃあ、今度はこっちにいっぱい出してあげる」
「あっ! ぁああっ!」
すでに理性など完全に砕け散ってしまっていて、宣言通り何度も最奥に注がれる熱を感じながら、那智も頂点までかけ上がった。
✦✦✦
「東藤さんは、なんで俺にコンビ打ち誘ってきたの?」
天井の模様をぼんやり見つめたまま呟く。すぐ隣で、半身を起こして何か書類のようなものに目を落としていた東藤が、こちらに視線を向けてくるのを感じた。書類から一旦目を離すと、少し考える素振りを見せた。
「最初はね、本当にただ興味があっただけなんだよ」
東藤にとって、麻雀はただの遊びだった。敷かれたレールの上を歩くだけの退屈な人生に、少し刺激を与えてみたくて手を出したギャンブルだったのだ。
そこで、自分を犠牲にして必死で金にしがみついている子どもを見つけた。
「それだけ?」
自分のことで精一杯だった那智には、いまいち理解出来ない。
「一緒にいるうちに、意外と子どもなんだなって思って」
「悪かったな、子どもで」
「うん。かわいいなって思って、好きになった」
「……」
そんなことは訊いていない。
赤くなった顔を隠すように那智は布団を引き上げた。
「そういえば園長がさ」
気を取り直すように話題を変える。
「東藤さんに会いたいって言ってたよ」
「もうずいぶん会ってないからな」
東藤は那智の髪に手を伸ばし弄ぶ。くるくると指先に絡め、梳くように何度も撫でられた。
行為の後、気を失ってしまった那智は、ついさっき目が覚めたばかりだ。どうやらまた、気絶している間に身体を拭いてくれたようだが、それについてはもう考えないことにする。
「最初はよく遊びに来たのに、そのうち全然来なくなって、薄情な奴だって言ってた」
「…なんか脚色してない?」
「あれ? バレた?」
「那智ー」
軽く髪を引っ張られて、那智はくすくすと笑った。
東藤は、昔を懐かしむような、ほんの少し寂しげな目をする。
「義父さんに、あんまり行くなって言われちゃったからな」
「…え?」
「環境が大きく変わると、馴染むまでに時間がかかるだろ。断ち切っちゃった方が順応するのも早い」
だから東藤は、大企業の息子という環境に馴染むために、思い出を封印したのか。きっと彼は彼なりに、いろいろ大変だったのだろう。
(まあ、今はずいぶん好き勝手やってるみたいだけど)
もともと要領がいいのだろう。利用出来るものはとことん利用していく性格。その辺りは自分と少し似ているのかもしれない。
自分よりもずっと大人で、地位も名誉もある人と似ている所があるということに、那智は少し嬉しくなった。
それに、大人だと思っていても、彼だって園長には未だにちゃん付けで呼ばれているわけで。
「…ぷ」
思い出してつい吹き出してしまうと、東藤が不審な目を向けてくる。
「え、この話の流れでなんで笑ってるんだよ」
「ごめん、なんでもない」
「那智ぃー」
「もう、髪の毛引っ張るなってば。抜ける」
髪を押さえて顔を背けると、東藤は意外にもあっさりと手を離した。
嫌な予感がして振り返ると、ニヤリと口許に笑みを浮かべた東藤の顔が目に入った。
「そうだね。じゃあ、こっちにしようか」
「え? あっ、ちょ…やだっ」
布団の中に潜り込んできた手で胸元を探られ、那智は慌てて両手で胸を隠して身を捩った。気を失うほどのセックスをされた後で、身体は疲れきっている。その上、胸元を少し撫でられただけで力が抜けてしまい、簡単に侵入を許してしまった。
最初から勝ち目などない。指先で軽く乳首を撫でられ、那智はあっけなく降参した。
「やぁっ、あ、いう、言うからっ」
すぐに手が離れていき、那智は背を向けて息を整える。すると、背中から抱き締められ掛け布団の上から宥めるように体を撫でられた。優しげなその行為に、那智は逆に身を硬くする。嘘を吐いたらどうなるかわかったものではない。
「ただの思い出し笑いだよ」
「内容は?」
「…東藤さん、園長に蓮ちゃんって呼ばれてたから」
「あー」
やっと腕が離れていき、那智はようやく緊張を解いた。
「別に那智も呼んだっていいけど」
「へっ?」
意外過ぎる言葉に、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「蓮ちゃんって?」
「いや、ちゃんは取って欲しいかな」
「……」
要するに名前で呼び捨てにしろということか。
面白みのない展開に、那智は溜息を吐いてベッドに潜り込んだ。
「それは…そのうちね」
「そうだな。そのうちね…言わせる方法はいくらでもあるし」
「今なんか言った?」
何か不穏なことを言われた気がして布団から顔を出すと、東藤はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。
「なんでもないよ?」
「…ずるい」
「じゃあ那智も同じことするか?」
ご自由にとばかりに両腕を広げる東藤を一瞥して、ぷいと顔を背け布団を被り直した。
「いい。勝てない勝負はしない主義だから」
どうせ途中で形勢逆転して、六回戦目だか七回戦目だか、数はよく覚えていないけれどそれに持ち込まれてしまうことは目に見えているのだ。
「ずるいよ。なんで俺ばっかり」
「それは、那智が敏感で可愛過ぎるのがいけないんだよ」
拗ねたように唇を尖らせると、東藤はくすくすと笑みを溢した。
そのまま唇が近付いてきて、那智は抵抗するのも面倒になり、小さく溜息を吐くと目を閉じて東藤の背中に腕を回した。
END.
溜息を吐きながら喉を反らすと、そこにも唇が押し付けられた。
初めてなわけでもないのに、心臓が破裂しそうなほどドキドキしている。肌がびりびりと過敏になっていて、服の上から撫でられるだけで背中に震えが走った。
思わずしがみつくように抱き付くと、何度も唇に軽くキスをされた。東藤は、今まで見たこともないくらい優しい表情をしている。その眼差しで見つめられるだけで、胸が締め付けられたみたいになる。
こうして抱き合ってみて、改めて実感した。
賭けの代償に自らの身体を差し出すなんてことが軽々しく出来たのは、なんの経験もなかったからだ。何も知らなかったから、大したことはないだろうと高を括っていられた。
一度こうして好きな相手に抱かれてしまったら、もう他の人になど考えたくもない。
「ん…はぁ、あっ」
つーっと脇腹を舌で辿られ、声が漏れた。
下半身の服も脱がされ、一糸纏わぬ姿にされてしまうと、羞恥と、不安と、期待と、様々な感情がない交ぜになって襲ってきた。
すでに硬く勃ち上がっている屹立に触れられた時のことを頭が勝手に想像して、頬が熱くなる。けれど、東藤の指が触れたのは、そこよりもさらにもっと奥だった。
「えっ? あ…やっ」
いきなり後孔の入り口に触れられ、那智は逃げるように身体を引く。
「と、東藤さん……?」
「今日は俺が我慢出来ないから、先に挿れさせて」
膝が胸につくくらいまで身体を折り曲げられ、秘部が東藤の目の前に晒されて、羞恥で全身が赤く染まる。ふっと息を感じると同時に濡れた感触があり、そこを舐められているのだとわかった。
「あっ、はあ、んっ」
那智は顔を背けて手の甲を唇に押し付けた。いつもみたいに、快感でとろとろにされてから後ろを弄られるのと、理性が残っている今のような状態でそこに触れられるのとでは、恥ずかしさが桁違いだった。
舌を差し込まれ、唾液を塗り込められるたびに中が綻んでいくのが自分でもわかってしまう。すると、今度はそこに指を差し込まれた。
「ぁ、あぁ! っ…!」
探るように中で指を動かされると、くちゅくちゅといやらしい音が耳に届いた。
弱い部分をこりこりと刺激され、いったん抜いて本数を増やした指で奥を突かれる。
「やあぁっ! あ、も、い…から」
「那智…」
びくびくと脚を震わせると、宥めるように太腿の裏側を撫でられた。膝裏をくすぐられ、自分でも知らなかった性感を次々に暴かれていく。
我慢出来ないから、という言葉の通り、押し付けられた東藤のものは火傷しそうなほど熱かった。首に腕を回すと、抱き締められ唇を塞がれる。
「ん、んぅ──。ふぁ」
入り口が目いっぱい広げられる感覚に、那智は眉を顰めた。けれど、中が馴染んできて苦痛が治まってくると、胸に熱いものが込み上げてきて、つい溜息が零れる。
嬉しい。やってることはこれまでと同じなのに、心が通じ合っているのといないのとでは、こんなにも差が生じるのか。
那智の心は東藤にも伝わってしまったらしく、彼は耳許でくすりと笑う。
「中、すごい絡み付いてくる」
喜んでるみたい、とからかうように言われ、恥ずかしさに耳まで真っ赤になった。
「っ! ばかっ…あっ」
照れ隠しのように拳で胸を叩こうとすると、その手を掴まれベッドに押し付けられてしまう。
「や、やだっ、なに…?」
「もっと気持ちよくしてあげる」
「えっ、あ…っや!」
ふいに乳首に吸い付かれて、ビクッと大げさに身体が震えた。今まで放って置かれていたところに直接的な刺激を与えられ、そこはすぐに硬く尖ってしまう。
唇で挟まれ舌で突起を転がされると、声が抑えられなかった。
「ああぁっ! は、ん、んあっ」
後孔に入れられた東藤のものも、ゆっくりと出し入れされ掻き回される。内壁を余す所なく擦り立てられ、強烈な快楽に逃げるように腰を引くと、逃がさないとばかりに奥まで突き立てられた。大きく開かされた脚の先が、弱々しくシーツを蹴る。
舐められていない方の乳首も、指でそっと摘んで引っ張られた。
「ぃやあっ」
「お前、こうされるの好きだったよな」
「や、やだっ、それ…、だめぇっ」
いやいやと首を振っても、東藤はやめるどころか、さらに那智が感じるように触れてくる。涙で潤んだ瞳で見上げると、手首を押さえていた方の手がはなされ、指を絡めるようにしてぎゅっと手を握られた。目尻に唇が触れ、滴を吸い取られる。
「あ、東藤さ…」
「イけそうか?」
「う、ん…は、ぁあっ」
「じゃあ、一緒にイこうな」
そう囁く東藤の声も、熱く掠れていた。
張り出した部分で核の所を擦り上げられ、胸の突起を強く吸われる。
那智が悲鳴のような声を上げて達するのとほぼ同時に、最奥に白濁を叩き付けられた。
息を荒げて呼吸を整えていると、唇が重なってくる。上手く息が継げなくて、長く口付けていられないのが悔しかった。
「大丈夫か?」
「ん…ぁ、っ…」
慎重に中のものが抜かれていき、那智は息を詰める。離すまいと襞が絡み付くのを無視して、東藤は自身を抜いてしまった。切なげにそこが収縮する。
那智が不安げに顔を上げると、東藤は今までずっと放って置いた前の方に手を伸ばしてきた。
「あっ、ぁああん!」
達した直後で過敏になっているものを撫でられると、キツいほどの快感が襲ってくる。
「いっぱい出したな」
「ああっ! や、んぅっ」
東藤は自分のと那智のものを一緒に握ってきた。熱く硬いもので裏側を擦られ、全身に震えが走る。そのまま、指の腹で溢れた蜜を塗りのばすように、先端の溝の部分をくりくりと撫で回される。
「ひぅっ! や、やあぁっ! …れ、それ、だめっ」
神経に直接触れられているような強過ぎる刺激をなんとか追い払おうと、首を左右に振って荒い呼吸を繰り返した。けれど、快感が頂点に届きそうになると、根本を強く抑えられ射精を封じられてしまう。
「ああっ! やだ、な、んでっ」
「那智の、すごく気持ちいい。ずっとこうしてたいくらい」
「っ! や、ぃやぁ…っ」
東藤の声に微かな本気を感じ取って、目尻に新たな滴が浮かんだ。怯えの滲む瞳で見上げると、優しく微笑む東藤の顔がある。さすがに那智も学習した。こういう状況で優しそうな顔をする東藤は、ろくなことを考えていない。
けれど、逃げる隙も与えられないうちに、性器の先端同士が触れ合うようにされて、更なる愉悦を与えられる。
互いの蜜口がキスするみたいに重なり合った瞬間、
「ひゃっ! ああぁーっっ!」
突然、下半身に熱湯をかけられたような熱さを感じ、那智は悲鳴を上げた。一瞬何が起こったのかわからなかったけれど、触れ合ったままの先端部分から、この状態で吐精されたのだと悟る。重ねられていた蜜口から白濁を注がれ、他人の精液が精路を逆流する感覚に、全身に痺れが走った。
痛みなのか快感なのかもわからない、強烈過ぎる感覚に、那智はわけがわからなくなって啜り泣きを漏らし始める。
「ん、うぅ…。は、も、やだ…」
子どもみたいに拳で目元を拭っていると、大きな手のひらで頭を撫でられた。
「那智、ごめんな、びっくりした?」
「ふ、ぅん…熱ぃ…」
「熱かったか? 那智も出していいよ」
「あっ、ぁん…っ」
今度は那智のものだけを手で包まれ、散々苛められた先端部を撫でられた。促されるままに達して、背中にしがみ付いたままぽろぽろと大粒の涙を溢す。強く抱き締められ、くすりと笑う東藤の声が耳許の空気を揺らした。
「可愛い」
「ぁ…と、どうさ…」
「ん?」
「…ぃれて。も、こっちがいい…」
脚を開いて自分の手で後ろを指し示す那智の媚態に、東藤は唾を飲み込んだ。
「いいよ。じゃあ、今度はこっちにいっぱい出してあげる」
「あっ! ぁああっ!」
すでに理性など完全に砕け散ってしまっていて、宣言通り何度も最奥に注がれる熱を感じながら、那智も頂点までかけ上がった。
✦✦✦
「東藤さんは、なんで俺にコンビ打ち誘ってきたの?」
天井の模様をぼんやり見つめたまま呟く。すぐ隣で、半身を起こして何か書類のようなものに目を落としていた東藤が、こちらに視線を向けてくるのを感じた。書類から一旦目を離すと、少し考える素振りを見せた。
「最初はね、本当にただ興味があっただけなんだよ」
東藤にとって、麻雀はただの遊びだった。敷かれたレールの上を歩くだけの退屈な人生に、少し刺激を与えてみたくて手を出したギャンブルだったのだ。
そこで、自分を犠牲にして必死で金にしがみついている子どもを見つけた。
「それだけ?」
自分のことで精一杯だった那智には、いまいち理解出来ない。
「一緒にいるうちに、意外と子どもなんだなって思って」
「悪かったな、子どもで」
「うん。かわいいなって思って、好きになった」
「……」
そんなことは訊いていない。
赤くなった顔を隠すように那智は布団を引き上げた。
「そういえば園長がさ」
気を取り直すように話題を変える。
「東藤さんに会いたいって言ってたよ」
「もうずいぶん会ってないからな」
東藤は那智の髪に手を伸ばし弄ぶ。くるくると指先に絡め、梳くように何度も撫でられた。
行為の後、気を失ってしまった那智は、ついさっき目が覚めたばかりだ。どうやらまた、気絶している間に身体を拭いてくれたようだが、それについてはもう考えないことにする。
「最初はよく遊びに来たのに、そのうち全然来なくなって、薄情な奴だって言ってた」
「…なんか脚色してない?」
「あれ? バレた?」
「那智ー」
軽く髪を引っ張られて、那智はくすくすと笑った。
東藤は、昔を懐かしむような、ほんの少し寂しげな目をする。
「義父さんに、あんまり行くなって言われちゃったからな」
「…え?」
「環境が大きく変わると、馴染むまでに時間がかかるだろ。断ち切っちゃった方が順応するのも早い」
だから東藤は、大企業の息子という環境に馴染むために、思い出を封印したのか。きっと彼は彼なりに、いろいろ大変だったのだろう。
(まあ、今はずいぶん好き勝手やってるみたいだけど)
もともと要領がいいのだろう。利用出来るものはとことん利用していく性格。その辺りは自分と少し似ているのかもしれない。
自分よりもずっと大人で、地位も名誉もある人と似ている所があるということに、那智は少し嬉しくなった。
それに、大人だと思っていても、彼だって園長には未だにちゃん付けで呼ばれているわけで。
「…ぷ」
思い出してつい吹き出してしまうと、東藤が不審な目を向けてくる。
「え、この話の流れでなんで笑ってるんだよ」
「ごめん、なんでもない」
「那智ぃー」
「もう、髪の毛引っ張るなってば。抜ける」
髪を押さえて顔を背けると、東藤は意外にもあっさりと手を離した。
嫌な予感がして振り返ると、ニヤリと口許に笑みを浮かべた東藤の顔が目に入った。
「そうだね。じゃあ、こっちにしようか」
「え? あっ、ちょ…やだっ」
布団の中に潜り込んできた手で胸元を探られ、那智は慌てて両手で胸を隠して身を捩った。気を失うほどのセックスをされた後で、身体は疲れきっている。その上、胸元を少し撫でられただけで力が抜けてしまい、簡単に侵入を許してしまった。
最初から勝ち目などない。指先で軽く乳首を撫でられ、那智はあっけなく降参した。
「やぁっ、あ、いう、言うからっ」
すぐに手が離れていき、那智は背を向けて息を整える。すると、背中から抱き締められ掛け布団の上から宥めるように体を撫でられた。優しげなその行為に、那智は逆に身を硬くする。嘘を吐いたらどうなるかわかったものではない。
「ただの思い出し笑いだよ」
「内容は?」
「…東藤さん、園長に蓮ちゃんって呼ばれてたから」
「あー」
やっと腕が離れていき、那智はようやく緊張を解いた。
「別に那智も呼んだっていいけど」
「へっ?」
意外過ぎる言葉に、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「蓮ちゃんって?」
「いや、ちゃんは取って欲しいかな」
「……」
要するに名前で呼び捨てにしろということか。
面白みのない展開に、那智は溜息を吐いてベッドに潜り込んだ。
「それは…そのうちね」
「そうだな。そのうちね…言わせる方法はいくらでもあるし」
「今なんか言った?」
何か不穏なことを言われた気がして布団から顔を出すと、東藤はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。
「なんでもないよ?」
「…ずるい」
「じゃあ那智も同じことするか?」
ご自由にとばかりに両腕を広げる東藤を一瞥して、ぷいと顔を背け布団を被り直した。
「いい。勝てない勝負はしない主義だから」
どうせ途中で形勢逆転して、六回戦目だか七回戦目だか、数はよく覚えていないけれどそれに持ち込まれてしまうことは目に見えているのだ。
「ずるいよ。なんで俺ばっかり」
「それは、那智が敏感で可愛過ぎるのがいけないんだよ」
拗ねたように唇を尖らせると、東藤はくすくすと笑みを溢した。
そのまま唇が近付いてきて、那智は抵抗するのも面倒になり、小さく溜息を吐くと目を閉じて東藤の背中に腕を回した。
END.
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