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第一部1・仕事が早いやつは次の仕事も早く回ってきて結局損をする。【全4節】
02それはそれだ。
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さて。
ここから僕は一人で、冒険者兼ギルド運営を行うことになった。
町の人々からの依頼を受理して。
その依頼を一人でこなして。
採集した素材や魔物の死体を自分で解体して。
報告書を書いて本部に提出をした。
その他のギルド業務も経理や掃除を含めた全て。
一人でこなした。
休みどころか寝る時間すらなくなり、隙間があれば気絶するように眠った。
そんな日々が続き、連勤日数を数えるのを止めて久しくなった頃。
「クロウさん! 大変だ! 隣国の奴らが山を越えて攻めてきた!」
ギルド受付で気絶していた僕を叩き起すように町の人が声を上げて乗り込んできた。
ええ……、国境越えて来たんだけど……。
緊急事態に拠点の町を守るのもギルドの仕事ではあるのだが基本は国軍の仕事である。
さっさと寄越しときゃあ良かったのに……最悪だ。
ああ全くちくしょう、文句は言ってもやるしかない。
町の人に連れられ、隣国の騎兵隊の元へと向かった。
「馬上より失礼。私はライト帝国軍、第三騎兵団は山岳攻略部隊、隊長のガクラ・クラックである。リーライ辺境伯領より、領地拡大の為に参った」
馬に乗った大男、ガクラ隊長とやらは堂々と名乗る。
「セブン公国冒険者ギルド所属、極東支部トーンギルド、ギルド長のクロウ・クロスです。現在この町の防衛責任者も担っております」
起きしな走らされ、欠伸を噛み殺しつつ僕も名乗り返す。
「ギルドが防衛責任……、やはり公国は我々が山を越えてくることを想定していなかったようだな」
しみじみとガクラ隊長は仰る通りのことを述べる。
「我々は山岳攻略部隊、山を超える力量を持った屈強な部隊だ。悪いが寄せ集めの冒険者での防衛は困難だろう。こちらも無益な殺生は好まない、抵抗はせずにこの町を貰い受けたい」
続けて、これまた堂々と無茶を宣う。
いやマジに、仰る通りだ。
この山脈はそもそも険しすぎるし、魔物もわりと強めなやつが多い。というかそもそも魔物の遭遇率も高い。
わざわざ山越えて、この町に来るのはコスパが悪るすぎる。
それを難なくやり遂げるこの部隊の練度は相当高い、パーティ単位ならともかく大型の魔物に対してのレイド攻略とかでもない限り冒険者同士の連携は無いに等しい。
だが、この男はまあまあ勘違いをしている。
「現在この町に冒険者は一人も居ないのでそもそも抵抗は出来ません。山を越えた時点であなたたちの勝ちです。おめでとうございます」
僕は真摯に包み隠さずに事実を伝える。
下手にハッタリをかまして町に乗り込まれても困るのだ。
「冒険者がいない……? 何を言ってるんだ? 辺境とは言えまあまあな人口のいる町だろう、ここは」
ガクラ隊長はこれまた当然のことを仰る。
「本当でございます。この町は現在このクロウギルド長一人でなんとか守っている状態でございます……」
町長が僕の後ろから細々と答える。
居たのか町長、まあ町長も現状は把握している。町長経由でも何度も補充要員の申請を出している。
「ギルド運営も一人なのか……? いや、それは……、労りの言葉を向けざるを得んな……お疲れ様」
まさかの外国人に労われてしまった。
ちょっと涙が出そうになるが、それはそれだ。
ここから僕は一人で、冒険者兼ギルド運営を行うことになった。
町の人々からの依頼を受理して。
その依頼を一人でこなして。
採集した素材や魔物の死体を自分で解体して。
報告書を書いて本部に提出をした。
その他のギルド業務も経理や掃除を含めた全て。
一人でこなした。
休みどころか寝る時間すらなくなり、隙間があれば気絶するように眠った。
そんな日々が続き、連勤日数を数えるのを止めて久しくなった頃。
「クロウさん! 大変だ! 隣国の奴らが山を越えて攻めてきた!」
ギルド受付で気絶していた僕を叩き起すように町の人が声を上げて乗り込んできた。
ええ……、国境越えて来たんだけど……。
緊急事態に拠点の町を守るのもギルドの仕事ではあるのだが基本は国軍の仕事である。
さっさと寄越しときゃあ良かったのに……最悪だ。
ああ全くちくしょう、文句は言ってもやるしかない。
町の人に連れられ、隣国の騎兵隊の元へと向かった。
「馬上より失礼。私はライト帝国軍、第三騎兵団は山岳攻略部隊、隊長のガクラ・クラックである。リーライ辺境伯領より、領地拡大の為に参った」
馬に乗った大男、ガクラ隊長とやらは堂々と名乗る。
「セブン公国冒険者ギルド所属、極東支部トーンギルド、ギルド長のクロウ・クロスです。現在この町の防衛責任者も担っております」
起きしな走らされ、欠伸を噛み殺しつつ僕も名乗り返す。
「ギルドが防衛責任……、やはり公国は我々が山を越えてくることを想定していなかったようだな」
しみじみとガクラ隊長は仰る通りのことを述べる。
「我々は山岳攻略部隊、山を超える力量を持った屈強な部隊だ。悪いが寄せ集めの冒険者での防衛は困難だろう。こちらも無益な殺生は好まない、抵抗はせずにこの町を貰い受けたい」
続けて、これまた堂々と無茶を宣う。
いやマジに、仰る通りだ。
この山脈はそもそも険しすぎるし、魔物もわりと強めなやつが多い。というかそもそも魔物の遭遇率も高い。
わざわざ山越えて、この町に来るのはコスパが悪るすぎる。
それを難なくやり遂げるこの部隊の練度は相当高い、パーティ単位ならともかく大型の魔物に対してのレイド攻略とかでもない限り冒険者同士の連携は無いに等しい。
だが、この男はまあまあ勘違いをしている。
「現在この町に冒険者は一人も居ないのでそもそも抵抗は出来ません。山を越えた時点であなたたちの勝ちです。おめでとうございます」
僕は真摯に包み隠さずに事実を伝える。
下手にハッタリをかまして町に乗り込まれても困るのだ。
「冒険者がいない……? 何を言ってるんだ? 辺境とは言えまあまあな人口のいる町だろう、ここは」
ガクラ隊長はこれまた当然のことを仰る。
「本当でございます。この町は現在このクロウギルド長一人でなんとか守っている状態でございます……」
町長が僕の後ろから細々と答える。
居たのか町長、まあ町長も現状は把握している。町長経由でも何度も補充要員の申請を出している。
「ギルド運営も一人なのか……? いや、それは……、労りの言葉を向けざるを得んな……お疲れ様」
まさかの外国人に労われてしまった。
ちょっと涙が出そうになるが、それはそれだ。
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