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第一部16・そういう生き方しかできない奴はそういう死に方をする。【全10節】

04人間はそんなに浅くねえ。

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 このままだと俺は一秒以内にブチ切れてしまう。
 それを回避するにはさっさと修了ってことにして講習を終わらせてこいつらを帰らせることも全然ありな気がするが。
 俺が基礎講習を担当したジャリ共がすぐ死んだら、俺の怠慢ってことになってクビになる可能性がある。

 ブチ切れず、暴れず、畳まず。
 穏便にクソ雑魚な彼らが講習を受けようとしてくれるようにするにはどうするべきか。

 なんて考えている間にとっくに一秒が経ってしまって、ジャリ共を畳んでしまった。

 ああ、ダメだ。やはり俺は物事の解決に暴力を用いること以外、出来ねえ。

 どうすっか、やっちまったもんは仕方ねえ。
 俺はうずくまるジャリ共を蹴りで起こして、首に木剣を押し当て。

「……まずは素振りだ。剣握れ、才能ねえんだから努力しろ雑魚」

 容赦なく講習の続きを命じた。

 まあおかげで言うこと聞くようになったので、とりあえず剣を振らせた。
 何日かで何だかんだでかたちになって、多少マシになったので修了とみなした。

 まあ、これで死んだら運が悪かったってなるだろう。

 こんな感じで、俺は結局暴力を用いて仕事をこなしていたある日。

「ブライ、ちょっとうちの戦士鍛えてくんない? 

 ギルド本部にかつてのパーティメンバーであるメリッサが現れて言った。

 メリッサは『盗賊』が『勇者』になったとかで、公国で優秀なスキルを持つ輩と勇者パーティとやらを組んでいる。

 公国最強の最高戦力。

 貴族相当の権力も与えられる。
 ちょっと前にメリッサは公都上空に戦略級魔法を展開させて問題になったが訓練中のミスということで片付けられる程度には権力者だ。

 メリッサがちょろっと言うだけで、ギルド本部は俺を出向扱いで勇者パーティの訓練場へと派遣した。

 どうにも、冒険者ギルド……

 まあ公的機関である限り、公爵家やらの主要貴族が政治を行うこの国ではそりゃ仕方ないんだが……、わりとしょうもない決定や依頼の優先度なんかもギルドは断れない。

 トーンの町でクロウがどれだけギルド職員や冒険者の追加を嘆願しても叶わなかったのも、どうやら貴族からの圧力があったらしい。

 クロウはどうにも、ある貴族家、しかもかなり主要で権力を持つ家から嫌われていたようだ。
 何でクロウが貴族なんかに目をつけられたのかは知らねえ、大方どっかの貴族の娘でもこましたのか爵位持ちの野郎でもぶっ飛ばしたのか……何をやったのかしらねぇが、あいつのことだ。何をしていてもおかしくねえ。

 まあ、腕が動かねえのは煩わしい。治せるんなら治してえ。給料も貰えるし、断る理由はねえ。

 そこで会ったのはダイル・アルター。
 なんか『万能武装』だとか言う、俺の『双剣士』だとか武器依存するような職モノスキルの最上位とされるスキルを持つ勇者パーティの戦士だ。

 まあ、クソ生意気だったんで一回畳んでおくことにした。

 確かにスキル補正で動きは速いし技も鋭いし力もかなりのものだ。
 でもそれだけ。
 スキルなしで剣一本の俺でも全然畳める雑魚だった。
 
 正直手加減してやっても良かったが、腹も立っていたしメリッサが抱える俺の右腕を治せるというヒーラーの技量とやらを確認しておくために通常であれば半年は入院して半年はリハビリが必要なくらいに身体中の骨を砕いた。

 だが、ものの数十分程度でダイルは起きてきた。

 なるほど、勇者パーティの回復役であるクライス・カイルは確かに超絶優秀らしい。

 そこから適当に畳んだりしながら身体操作を中心に教えた。
 スキルに依存して強いやつなんか居ねえ、クロウもバリィもアカカゲも、別に『加速』や『狙撃』や『忍者』じゃなくても関係なく強かったはずだ。

 もちろんスキルによる補正も重要な要素ではあるが、絶対じゃあない。
 スキルはあくまでも自身の強さにおける一つの要素に過ぎない、基本は身体操作と思考と判断と攻略と経験……、ステータスの数字やスキルの優劣だけで人間を測れる訳がねえ。人間はそんなに浅くねえ。
 スキル至上主義のこの国ではあんまりその辺を重視しないというか軽視しているところがある。

 その国が選んだ最強のパーティ…………、まずは自分たちが馬鹿な選ばれ方をしたことを認識してもらう必要があった。

 毎日ブチ切れながらダイルを畳んで、数ヶ月でかなり動けるようになり。
 お仲間との連携もあり、俺は見事に一泡吹かされた。

 ああ、腹が立つ。

 その憂さ晴らしに、右腕を治してもらった直後にメリッサをボッコボコにしてやった。
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