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第一部閑話・勇者パーティの評価を巡らす。【全5節】
04クライス・カイル。
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クライス・カイル。
勇者パーティの回復役。
公国で一番大きい公都の教会で神官をやっていたが、医学に精通し回復系最高位スキルの『聖域』を持ち常軌を逸した治癒力によって国から勇者パーティへと招集された。
スキルの『聖域』は、回復魔法の効果を飛躍的に向上させ消費魔力量が極端に下がり効果の範囲もかなり拡がり非接触での回復も行えて、回復魔法に限り完全な無詠唱で発動できるというもの。
まあ端的に言えば、俺は彼を舐めていた。
正直、回復の方も『復元』を持つキャミィより多少上くらいで想定していたし、教会に篭っていた神官様に戦闘的な素養はないと考えていた。
これは俺が浅かった。
この勇者パーティにおいて最も根性があり、闘争に向いていて、心に熱を帯びていたのは彼だった。
まずその回復魔法についてだが、キャミィとは比にならない。
回復魔法は医学的な知識、つまり人体の構造やその働きなどを正確に理解して的確に効果をイメージすることで効果が変わる。
キャミィも独学とは言えそれなりに医学的な知識があって『復元』もあり大抵の怪我なら綺麗さっぱり治せた。
だがクライス君は、確実に死に至るであろう致命傷ですら完璧なまでに治してしまう。
もちろん『聖域』の補正もあるが、やはりその異常なまでの医学的な知識量によるものが大きい。
まだ若いのに、まるでそれ以外のことを今までやってこなかったような練度だ。
信仰を舐めていた。
真摯に何かを信じて、自身を思想に投じ続けることで生まれる力を侮っていた。
何より特筆すべきは根性。
治療や回復しかやってこなかったクライス君は、端的に言って素人も素人だった。
ぶっちゃけ、運動競技に興じる体育会系の学生の方が全然動けるくらいだ。
すっげえ回復魔法を使える宗教家の冴えない青年、そんな風に評価していた。
勇者パーティの穴、純然たる事実として顕著な虚弱性だった。
とりあえず基礎として最低限の身体操作と、杖術を教えた。
ブライの武術理論は流石に戦士向け過ぎだし、回復役に攻撃魔法などを仕込んでいざ回復が必要な時に魔力が足りないなんてことがあってもダメだ。
回復役は連携の要。
居るか居ないかじゃあ全体の戦闘継続能力に雲泥の差がある。
何が何でも生き延びる術を身につけなくてはならない。
だから最低限、俺が使う合気ベースの杖術を教えた。
まあ、そっから合気的な受け身や体捌きをコツコツ覚えて貰おうと思っていたのだが。
根性の桁が違った。
俺は一日三時間、週に六日で三ヶ月、つまりざっくりとみっちり二百十数時間使って身体操作を叩き込もうとカリキュラムを組んでいた。
それを二週間、過剰なオーバーワークである程度身につけた。
元々医学的な心得があり、自分の身体との対話が出来たのと、後は異常な根性でただひたすら教えた通りに、俺が見せた動きに重なってそれが何を意味するのかを理解するまでただひたすら繰り返した。
当初組んだカリキュラムもかなり厳しめというか、ストイックに向き合わないとこなせないくらいに設定したはずだった。
さらに、ブライとブラキスと俺で仮想クロウとしての模擬戦で。
クライス君はブラキスの一撃を、回復魔法で耐えきって見事に一泡吹かされた。
ブラキスの一撃は必殺だ。
模擬戦出力とはいえ、有り得ない。
リコーですら盾を構え身体強化を使ってギリギリ耐えきるくらいだ。まともに喰らえば吹き飛ぶ、それは確定事項だった。
それを常軌を逸した回復速度と、過剰で異常な根性で耐えきった。
勇者パーティの中で、本物、唯一事実として最強という称号を冠するに値する。
間違いなく世界最強の回復役だ。
正直、クライス君には特に言うことはない。
もちろんまだまだ立ち回りだったり、身体操作や技に磨きをかけるべきだが。
後衛回復役としての本質、最も大切なものを既に備えている。
本当に強いて言うなら、この本物の世界最強がメリッサという未熟な勇者にはやや手が余ることくらいだろうか。
勇者パーティの回復役。
公国で一番大きい公都の教会で神官をやっていたが、医学に精通し回復系最高位スキルの『聖域』を持ち常軌を逸した治癒力によって国から勇者パーティへと招集された。
スキルの『聖域』は、回復魔法の効果を飛躍的に向上させ消費魔力量が極端に下がり効果の範囲もかなり拡がり非接触での回復も行えて、回復魔法に限り完全な無詠唱で発動できるというもの。
まあ端的に言えば、俺は彼を舐めていた。
正直、回復の方も『復元』を持つキャミィより多少上くらいで想定していたし、教会に篭っていた神官様に戦闘的な素養はないと考えていた。
これは俺が浅かった。
この勇者パーティにおいて最も根性があり、闘争に向いていて、心に熱を帯びていたのは彼だった。
まずその回復魔法についてだが、キャミィとは比にならない。
回復魔法は医学的な知識、つまり人体の構造やその働きなどを正確に理解して的確に効果をイメージすることで効果が変わる。
キャミィも独学とは言えそれなりに医学的な知識があって『復元』もあり大抵の怪我なら綺麗さっぱり治せた。
だがクライス君は、確実に死に至るであろう致命傷ですら完璧なまでに治してしまう。
もちろん『聖域』の補正もあるが、やはりその異常なまでの医学的な知識量によるものが大きい。
まだ若いのに、まるでそれ以外のことを今までやってこなかったような練度だ。
信仰を舐めていた。
真摯に何かを信じて、自身を思想に投じ続けることで生まれる力を侮っていた。
何より特筆すべきは根性。
治療や回復しかやってこなかったクライス君は、端的に言って素人も素人だった。
ぶっちゃけ、運動競技に興じる体育会系の学生の方が全然動けるくらいだ。
すっげえ回復魔法を使える宗教家の冴えない青年、そんな風に評価していた。
勇者パーティの穴、純然たる事実として顕著な虚弱性だった。
とりあえず基礎として最低限の身体操作と、杖術を教えた。
ブライの武術理論は流石に戦士向け過ぎだし、回復役に攻撃魔法などを仕込んでいざ回復が必要な時に魔力が足りないなんてことがあってもダメだ。
回復役は連携の要。
居るか居ないかじゃあ全体の戦闘継続能力に雲泥の差がある。
何が何でも生き延びる術を身につけなくてはならない。
だから最低限、俺が使う合気ベースの杖術を教えた。
まあ、そっから合気的な受け身や体捌きをコツコツ覚えて貰おうと思っていたのだが。
根性の桁が違った。
俺は一日三時間、週に六日で三ヶ月、つまりざっくりとみっちり二百十数時間使って身体操作を叩き込もうとカリキュラムを組んでいた。
それを二週間、過剰なオーバーワークである程度身につけた。
元々医学的な心得があり、自分の身体との対話が出来たのと、後は異常な根性でただひたすら教えた通りに、俺が見せた動きに重なってそれが何を意味するのかを理解するまでただひたすら繰り返した。
当初組んだカリキュラムもかなり厳しめというか、ストイックに向き合わないとこなせないくらいに設定したはずだった。
さらに、ブライとブラキスと俺で仮想クロウとしての模擬戦で。
クライス君はブラキスの一撃を、回復魔法で耐えきって見事に一泡吹かされた。
ブラキスの一撃は必殺だ。
模擬戦出力とはいえ、有り得ない。
リコーですら盾を構え身体強化を使ってギリギリ耐えきるくらいだ。まともに喰らえば吹き飛ぶ、それは確定事項だった。
それを常軌を逸した回復速度と、過剰で異常な根性で耐えきった。
勇者パーティの中で、本物、唯一事実として最強という称号を冠するに値する。
間違いなく世界最強の回復役だ。
正直、クライス君には特に言うことはない。
もちろんまだまだ立ち回りだったり、身体操作や技に磨きをかけるべきだが。
後衛回復役としての本質、最も大切なものを既に備えている。
本当に強いて言うなら、この本物の世界最強がメリッサという未熟な勇者にはやや手が余ることくらいだろうか。
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