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第一部21・勇者とは勇敢な者であり強いかどうかは関係がない。【全10節】
09ギリギリ間に合った。
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ポピーは私のカバーが望めないと判断して、クライスに駆け寄る。
賢者で『大魔道士』を持ち、全系統の魔法を使えるポピーが回復魔法を使えないわけがない。
ポピーは医学的な知識は学んできておらず、完全に専門外な為に使ってこなかったがそれでもある程度の回復は問題なく行える。
普段はクライスがいるし、私もいるので後衛火力としての役割に専念しているにすぎない。
私はこのままポピーがクライスを回復する時間を稼いで、さらにそのままクライスがダイルを起こす時間を稼ぐ。
やることは変わらない、私がクロウさんを抑える。
身体強化や魔力感知と観察魔法をフル稼働させて、多角的飛んでくる『棒ヤスリ』を躱しながらクロウさんを厳しく攻め続ける。
ぶっ飛ばすなんてぬるいこと言ってられない。
私は今、トーン最弱の小娘じゃなくて勇者パーティの勇者。
パーティのリーダーとして、全員生存の上で目標達成することだけを考えろ。
ぶっ殺す。
もう、迷わない。
ナイフを的確に首や腋、内腿や肋骨の隙間を通すように狙う。
対人戦は私の専門、ブライとセツナとアカカゲ、それにクロウさん。あんたたちから学んだんだ。
クロウさんは私の攻めをギリギリで、時には服にかすらせながら躱しつつ。
もうちょいで届くかも感を出して、私が前のめりになるのを誘ってくる。
これは私も望むところだ。
私はその誘いに乗って、前のめりに突っ込む。
それと同時にクロウさんは全く起こりの無い、予備動作も気配もなく、リコーがライラの口元を拭く時のような無意識の一撃を放つ。
見えなかったし、もちろん反応も出来なかったけど。
私は消滅纏着を使った。
ギリギリ間に合った。
これは対クロウさん用に開発した魔法だ。
最強攻撃魔法である消滅魔法を身体に纏うというものだ。
バリィとの模擬戦で高濃度酸素対策に風魔法を身体に纏ったことにヒントを得て生み出した。
単純なものだが、完成させるのはめちゃくちゃ大変だった。
何回も消滅の出力や動きへの追従をミスって腕がちぎれかけたり脇腹が欠けたり……。
クライスが夜まで一人居残って棍を振ってなかったら私はとっくに死んでいた。
だが消滅纏着は完成した。
クロウさんとの戦いはこの集団擬似加速改を用いて同速で戦うことが前提となる。
そうなれば、遠中距離の魔法戦にはならず必ず接近戦があると思った。
そして、私は必ずクロウさんの攻撃を貰うことになる。
つまり、必ず間違いなく確実に接触する瞬間が訪れるということだ。
だったら、触れないようにしてやろうというのがこの策だ。
しかもギリギリまで、魔力感知もさせない、接触する寸前での展開。
消し飛んだ左手は、気が向いたらクライスに治させるよ。
私は勝利の確信をして、ゆらりと迫る左手を顔面で消し飛ば――――――。
「eえEぇっ⁉」
私は思わず声を上げる。
クロウさんの左手が消滅纏着を貫いて、私の顔を鷲掴みにする。
理解が追いつかない、消滅魔法を素手で貫く? 意味が――――あ。
混乱する私をよそに、クロウさんは集団擬似加速改の魔力消費を加速させる。
これは前回会った時、鬼神スノウにやっていた、あれだ。
そうか。これを狙っていたんだ。
ダイルを潰し、クライスを誘い出し、ポピーを引き付けて、私を孤立させる。
超人……いや怪物だ。
魔力切れで集団擬似加速改が解かれたのと同時に、私は瓦礫の山へと投げられ。
「がふ……っ」
「あがっ!」
「かは……っ!」
間髪入れずに、三人も瓦礫の山へと弾き飛ばされる。
同時にダイルが弾いた『棒ヤスリ』が音を立てて周りに散らばった。
「……メリッサ、今のはマジで良かった。本当に強くなった」
クロウさんが少し疲れた声で私に向けて語り出す。
「魔法融解。一部の大きな鳥のような魔物が使うもので、魔法自体を分解して魔力として散らしてしまう完全魔法防御魔法だ。それを使った。もしこれがなければ僕は左手から消し飛んでいたし、そこから生まれる隙で多分戦況はひっくり返っていた」
淡々とさっきの決まり手の種明かしをする。
賢者で『大魔道士』を持ち、全系統の魔法を使えるポピーが回復魔法を使えないわけがない。
ポピーは医学的な知識は学んできておらず、完全に専門外な為に使ってこなかったがそれでもある程度の回復は問題なく行える。
普段はクライスがいるし、私もいるので後衛火力としての役割に専念しているにすぎない。
私はこのままポピーがクライスを回復する時間を稼いで、さらにそのままクライスがダイルを起こす時間を稼ぐ。
やることは変わらない、私がクロウさんを抑える。
身体強化や魔力感知と観察魔法をフル稼働させて、多角的飛んでくる『棒ヤスリ』を躱しながらクロウさんを厳しく攻め続ける。
ぶっ飛ばすなんてぬるいこと言ってられない。
私は今、トーン最弱の小娘じゃなくて勇者パーティの勇者。
パーティのリーダーとして、全員生存の上で目標達成することだけを考えろ。
ぶっ殺す。
もう、迷わない。
ナイフを的確に首や腋、内腿や肋骨の隙間を通すように狙う。
対人戦は私の専門、ブライとセツナとアカカゲ、それにクロウさん。あんたたちから学んだんだ。
クロウさんは私の攻めをギリギリで、時には服にかすらせながら躱しつつ。
もうちょいで届くかも感を出して、私が前のめりになるのを誘ってくる。
これは私も望むところだ。
私はその誘いに乗って、前のめりに突っ込む。
それと同時にクロウさんは全く起こりの無い、予備動作も気配もなく、リコーがライラの口元を拭く時のような無意識の一撃を放つ。
見えなかったし、もちろん反応も出来なかったけど。
私は消滅纏着を使った。
ギリギリ間に合った。
これは対クロウさん用に開発した魔法だ。
最強攻撃魔法である消滅魔法を身体に纏うというものだ。
バリィとの模擬戦で高濃度酸素対策に風魔法を身体に纏ったことにヒントを得て生み出した。
単純なものだが、完成させるのはめちゃくちゃ大変だった。
何回も消滅の出力や動きへの追従をミスって腕がちぎれかけたり脇腹が欠けたり……。
クライスが夜まで一人居残って棍を振ってなかったら私はとっくに死んでいた。
だが消滅纏着は完成した。
クロウさんとの戦いはこの集団擬似加速改を用いて同速で戦うことが前提となる。
そうなれば、遠中距離の魔法戦にはならず必ず接近戦があると思った。
そして、私は必ずクロウさんの攻撃を貰うことになる。
つまり、必ず間違いなく確実に接触する瞬間が訪れるということだ。
だったら、触れないようにしてやろうというのがこの策だ。
しかもギリギリまで、魔力感知もさせない、接触する寸前での展開。
消し飛んだ左手は、気が向いたらクライスに治させるよ。
私は勝利の確信をして、ゆらりと迫る左手を顔面で消し飛ば――――――。
「eえEぇっ⁉」
私は思わず声を上げる。
クロウさんの左手が消滅纏着を貫いて、私の顔を鷲掴みにする。
理解が追いつかない、消滅魔法を素手で貫く? 意味が――――あ。
混乱する私をよそに、クロウさんは集団擬似加速改の魔力消費を加速させる。
これは前回会った時、鬼神スノウにやっていた、あれだ。
そうか。これを狙っていたんだ。
ダイルを潰し、クライスを誘い出し、ポピーを引き付けて、私を孤立させる。
超人……いや怪物だ。
魔力切れで集団擬似加速改が解かれたのと同時に、私は瓦礫の山へと投げられ。
「がふ……っ」
「あがっ!」
「かは……っ!」
間髪入れずに、三人も瓦礫の山へと弾き飛ばされる。
同時にダイルが弾いた『棒ヤスリ』が音を立てて周りに散らばった。
「……メリッサ、今のはマジで良かった。本当に強くなった」
クロウさんが少し疲れた声で私に向けて語り出す。
「魔法融解。一部の大きな鳥のような魔物が使うもので、魔法自体を分解して魔力として散らしてしまう完全魔法防御魔法だ。それを使った。もしこれがなければ僕は左手から消し飛んでいたし、そこから生まれる隙で多分戦況はひっくり返っていた」
淡々とさっきの決まり手の種明かしをする。
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