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第一部番外・だから東に昇って西に沈んだ。【全45節】
26この国は馬鹿が仕切ってんだぞ。
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して、二日後。
装備や武器類と公都までの糧食などを鞄にまとめて空間魔法にぶち込んで、隣で寝ていたキャミィを起こして夜明け前にギルドへと向かった。
煙草に火をつけて吸い終わるまでにぞろぞろと、眠そうな面のままおっさんたちが集結する。
「……眠すぎるが…………、行くふぁあ~~……っ」
全員が集まったのを見て、ジスタはほぼあくびの号令をかけた。
そこに。
「あ、見送りに来たよ。こういうの実は嫌いじゃないだろう」
そう言いながらクロウが現れた。
さらにバリィとリコーとセツナとメリッサとブラキス、意外なところでブライも来ていた。
「まあ、あんたらには世話になったからな。居ない間は何とか回すからさっさと帰ってこいよ。忙しいのは嫌いなんだ」
バリィはそう言って不敵に笑う。
「心配とかはないけどさ、寂しいから早く帰ってきなよ」
リコーはそう言ってにこりと笑う。
「……行ってらっしゃい…………お土産は……食べ物がいいかも…………」
セツナは半分眠りながらそう言ってふらふらと揺れるのをクロウがそっと支える。
「……長い付き合いだし、私はあんたらがどんだけマヌケでヘッポコなの知ってるから心配ではあるけど……まあ無様に逃げ帰ってこれたら上々なんだから、行ってきな」
メリッサはそっぽを向きながらそんな軽口を叩く。
「が、頑張って! 俺は臆病だから、一撃必殺しかない馬鹿だから、行けないけど応援はする! 頑張って!」
ブラキスはやや前のめりに熱く、そう言う。
「…………持ったいねえな。もっとテメーらを畳んで血祭りに上げたかったんだが……、次会う時はあの世……まあ地獄か……、せいぜい楽しみにしておくよ」
ブライは少し寂しそうにそう言った。
「……偉く縁起の悪いこと言ってくれんじゃねーかよ。ありがとよ、次会ったらボッコボコに畳んでやるから楽しみにしてろ」
ジスタはブライにだけそう返したところで。
夜が明けて、真っ赤に照らされ。
「じゃあ公都の西まで送るよ」
そう言って、クロウは高速詠唱なんて嘘でしかない無詠唱の範囲長距離転移魔法を使い。
俺たちと共に、公都の西へと跳んだ。
「……は?」
俺はつい間抜けな声を上げてしまう。
「シャーストには一度行ったことがあるんだけど十年以上前だから転移先が潰れてる可能性があってね。すまないがここからは馬車を使ってくれ」
あっけらかんとクロウは言う。
「おまえ……こう朝日を背に町から去るみたいな情緒を…………まあいいさ。実際、こんな朝っぱらに公都に放り出されることに目を瞑れば……まあ助かってはいるからな。ありがとよ、馬鹿野郎」
ジスタは眉間に皺を寄せて、クロウに返す。
まあ……確かに、トーンから公都まで馬車で二週間はかかる。
公都からシャーストなら馬車で十日ほど。
全く疲労せずに二週間前倒し出来るのは、確かに有難い。
「僕が出来るのはここまでってことだ。町は任せろ、僕がいる限りあの町は平和に残り続けるよ。…………じゃあ、また」
そう言ってクロウは転移魔法で跳んでいった。
そこから馬車を借りて、俺たちは西に向かった。
ここで、クロウから共有された概要の確認。
現在西の果てで大型魔物の大量発生、つまり氾濫が確認され東に向かって少しづつ進行中。
既に小さな村などの集落は氾濫に呑まれ、このまま放置すれば公都にまで被害が及ぶ。
故に西の街であるシャーストを最終防衛ライン兼防衛拠点本部として。
さらに西へと討伐拠点を幾つも張って前線を下げながら、シャーストに辿り着くまでに魔物たちを殲滅する。
大型魔物の討伐には三人パーティを八組以上の中隊規模編成を基本とする。
魔物を各個誘導し、中隊規模編成で毎日複数体ずつ討伐をしていく。
作戦総指揮を騎士団が。
各中隊規模編成の現場指揮を軍が。
んで最前線を冒険者が……って。
「……これおかしくないか? 何で納税者の俺らが前線で、税金で食ってる貴族の騎士団やら軍人が後ろなんだよ。俺らが国家存亡に命懸けるわけねえだろ。ヤバかったらトンズラこくに決まってるし、めんどくせえなら騎士団とかを殺しちまえばいいだけだろ。馬鹿が考えてんのかこれ」
俺は馬車の中で、改めて確認した概要に素直な感想を洩らす。
「ああ、そうだ。この国は馬鹿が仕切ってんだぞ。知らなかったのか?」
ミラルドンは揺れる馬車の中で刀の手入れをしながら返す。つーか、こんなところで抜き身を晒すな、危ねえ。
「これは、この国のスキル至上主義の成れの果て。有能なスキルを持つ者やスキルの理解度が高い者を評価して貴族としての地位を与え、人として価値があると信仰としても掲げている。故に優秀なスキルを持つ者たちが生き残ることを前提とした考え方しか出来ない。つまり馬鹿なんだ」
テラが揺れる馬車の中で本を読みながら、付け加えるように言う。いや酔うだろそれ、本は後にしとけ。
装備や武器類と公都までの糧食などを鞄にまとめて空間魔法にぶち込んで、隣で寝ていたキャミィを起こして夜明け前にギルドへと向かった。
煙草に火をつけて吸い終わるまでにぞろぞろと、眠そうな面のままおっさんたちが集結する。
「……眠すぎるが…………、行くふぁあ~~……っ」
全員が集まったのを見て、ジスタはほぼあくびの号令をかけた。
そこに。
「あ、見送りに来たよ。こういうの実は嫌いじゃないだろう」
そう言いながらクロウが現れた。
さらにバリィとリコーとセツナとメリッサとブラキス、意外なところでブライも来ていた。
「まあ、あんたらには世話になったからな。居ない間は何とか回すからさっさと帰ってこいよ。忙しいのは嫌いなんだ」
バリィはそう言って不敵に笑う。
「心配とかはないけどさ、寂しいから早く帰ってきなよ」
リコーはそう言ってにこりと笑う。
「……行ってらっしゃい…………お土産は……食べ物がいいかも…………」
セツナは半分眠りながらそう言ってふらふらと揺れるのをクロウがそっと支える。
「……長い付き合いだし、私はあんたらがどんだけマヌケでヘッポコなの知ってるから心配ではあるけど……まあ無様に逃げ帰ってこれたら上々なんだから、行ってきな」
メリッサはそっぽを向きながらそんな軽口を叩く。
「が、頑張って! 俺は臆病だから、一撃必殺しかない馬鹿だから、行けないけど応援はする! 頑張って!」
ブラキスはやや前のめりに熱く、そう言う。
「…………持ったいねえな。もっとテメーらを畳んで血祭りに上げたかったんだが……、次会う時はあの世……まあ地獄か……、せいぜい楽しみにしておくよ」
ブライは少し寂しそうにそう言った。
「……偉く縁起の悪いこと言ってくれんじゃねーかよ。ありがとよ、次会ったらボッコボコに畳んでやるから楽しみにしてろ」
ジスタはブライにだけそう返したところで。
夜が明けて、真っ赤に照らされ。
「じゃあ公都の西まで送るよ」
そう言って、クロウは高速詠唱なんて嘘でしかない無詠唱の範囲長距離転移魔法を使い。
俺たちと共に、公都の西へと跳んだ。
「……は?」
俺はつい間抜けな声を上げてしまう。
「シャーストには一度行ったことがあるんだけど十年以上前だから転移先が潰れてる可能性があってね。すまないがここからは馬車を使ってくれ」
あっけらかんとクロウは言う。
「おまえ……こう朝日を背に町から去るみたいな情緒を…………まあいいさ。実際、こんな朝っぱらに公都に放り出されることに目を瞑れば……まあ助かってはいるからな。ありがとよ、馬鹿野郎」
ジスタは眉間に皺を寄せて、クロウに返す。
まあ……確かに、トーンから公都まで馬車で二週間はかかる。
公都からシャーストなら馬車で十日ほど。
全く疲労せずに二週間前倒し出来るのは、確かに有難い。
「僕が出来るのはここまでってことだ。町は任せろ、僕がいる限りあの町は平和に残り続けるよ。…………じゃあ、また」
そう言ってクロウは転移魔法で跳んでいった。
そこから馬車を借りて、俺たちは西に向かった。
ここで、クロウから共有された概要の確認。
現在西の果てで大型魔物の大量発生、つまり氾濫が確認され東に向かって少しづつ進行中。
既に小さな村などの集落は氾濫に呑まれ、このまま放置すれば公都にまで被害が及ぶ。
故に西の街であるシャーストを最終防衛ライン兼防衛拠点本部として。
さらに西へと討伐拠点を幾つも張って前線を下げながら、シャーストに辿り着くまでに魔物たちを殲滅する。
大型魔物の討伐には三人パーティを八組以上の中隊規模編成を基本とする。
魔物を各個誘導し、中隊規模編成で毎日複数体ずつ討伐をしていく。
作戦総指揮を騎士団が。
各中隊規模編成の現場指揮を軍が。
んで最前線を冒険者が……って。
「……これおかしくないか? 何で納税者の俺らが前線で、税金で食ってる貴族の騎士団やら軍人が後ろなんだよ。俺らが国家存亡に命懸けるわけねえだろ。ヤバかったらトンズラこくに決まってるし、めんどくせえなら騎士団とかを殺しちまえばいいだけだろ。馬鹿が考えてんのかこれ」
俺は馬車の中で、改めて確認した概要に素直な感想を洩らす。
「ああ、そうだ。この国は馬鹿が仕切ってんだぞ。知らなかったのか?」
ミラルドンは揺れる馬車の中で刀の手入れをしながら返す。つーか、こんなところで抜き身を晒すな、危ねえ。
「これは、この国のスキル至上主義の成れの果て。有能なスキルを持つ者やスキルの理解度が高い者を評価して貴族としての地位を与え、人として価値があると信仰としても掲げている。故に優秀なスキルを持つ者たちが生き残ることを前提とした考え方しか出来ない。つまり馬鹿なんだ」
テラが揺れる馬車の中で本を読みながら、付け加えるように言う。いや酔うだろそれ、本は後にしとけ。
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