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第一部番外・だから東に昇って西に沈んだ。【全45節】
34馬鹿ども同士で評価し続けて出来上がったどうしようもない馬鹿。
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「……ナント、常識的に考えたら今の俺たちが動けるわけがねえのはわかってんだろ。最低でも二日の休養と武器やらの整備と補給の期間が必要だ、このままだと死人を出すことになるぞ」
ジスタは疲れからやや苛立ちながら、ナントカへと返す。
「死人が出てしまうのと、出しに行くのとじゃあ全然違うぞ。前者は過失致死、後者は殺人だ。あんたらは今俺たちを殺そうとしている。ここからは一旦それを理解した上で口には気をつけて続けろよ」
シードッグも珍しく怒りを滲ませて、ナントカへと言葉を向ける。
だが確かにその通り。
万全を期して最善を尽くした上で、人が死ぬのは想定外による事故や単純な失敗によるものだ。
でも、消耗している状態を把握した上で無理を強いるのは殺人だ。
回りくどいが暗殺方法にもある。情報操作で負傷した兵の部隊を大した装備も与えずに苛烈な前線に送り出して、戦死に見せかけて殺すみたいな。
殺されようとしているのか……? 俺たちは。
「進捗率が芳しくないと……、作戦総指揮を取る騎士団から圧力を受けた……。遅れを取り戻す必要があるそうだ……」
歯を食いしばりながらナントカは語り出す。
「……はあ? どう考えても進捗は良いはずだろ? 俺らだけでも二日で一体以上は討伐していて既に十一体、他五つの討伐隊も減ったり増えたり入れ替わりもありつつも何だかんだで三日に一体以上のペースで討伐出来ているし一ヶ月で百は行けるし、まだシャーストにすら届く気配もない。まだ冒険者が集まるだろうし、軍ももうちょい前線に人を送ってくれりゃあ年内には終わるくらいだろ。この規模の氾濫にしちゃあ破竹の勢い過ぎる、相当巻いてるはずだぞ」
他パーティのリーダー、テンプがナントカを睨むように正論を捲し立てる。
ちなみにテンプは初日にキャミィをナンパして俺たちに絡んできたパーティのリーダーだ。わりとタフで、三叉槍に魔法を纏わせる面白い戦い方をする。
「騎士団の想定では…………。過去に騎士団が討伐した大型魔物との戦闘時間から算出して、六つの討伐隊が各自一日三体ペースで討伐し……一日十八体、一ヶ月で五百四十……現状観測されている大型魔物が約千であることから二ヶ月以内にこの大討伐作戦を完了させるつもりだったらしい」
頭を抱えながら、ナントカはとんでもない馬鹿なことを言う。
いや……、マジで言って……え? 大型魔物も様々な種類が居て、強さもピンキリだし相性もある。
今回やった石垣の巨人も俺らとは噛み合わなかったが、バリィんとこみたいにブラキスの過剰な物理火力があれば瞬殺だった。
討伐時間にはバラつきがある。平均は出せるが参考にしかならない。
そりゃ俺らだって噛み合う大型魔物を一体倒すんなら、初日みたいに消耗せず数十分で倒せる。
だが、これは大討伐作戦だ。
氾濫した魔物を全滅させる為に長期的な戦闘継続力が要求される。
余裕があるから一日何体も相手にしていたら、消耗が早くなる。そうなれば結局どこかで無理をしなくてはならなくもなるし、負傷者や死亡者によって討伐自体が滞る。
人が入れ替わると連携を組み直さなくてはならないので、それも時間がかかることになる。
適正ペースを守ることが、大局的に見た最速なんだ。
特に自身の損傷や命を蔑ろにしがちな俺は、ジスタやシードッグにこれらを昔から叩き込まれてきた。
常識を語れるほど自分がマトモな人間だなんて思い上がってはいないが、これは流石に冒険者たちの常識だ。
見ている感じ軍もこのくらいの常識には配慮して動いている。空挺魔法部隊の奴らも、まあまあな連携練度で戦闘状況に対する理解度も高かった。
騎士団は想像以上に馬鹿だ。
スキル至上主義で担ぎ上げられて地位にかまけた幼稚な貴族共の、ままごと遊び。
経験値も想像力もないのに、馬鹿ども同士で評価し続けて出来上がったどうしようもない馬鹿。
ナンセンス、いやこの国においてはナンセンスとして捉えることすら出来ていないのか。
……腐りきっている。
ジスタは疲れからやや苛立ちながら、ナントカへと返す。
「死人が出てしまうのと、出しに行くのとじゃあ全然違うぞ。前者は過失致死、後者は殺人だ。あんたらは今俺たちを殺そうとしている。ここからは一旦それを理解した上で口には気をつけて続けろよ」
シードッグも珍しく怒りを滲ませて、ナントカへと言葉を向ける。
だが確かにその通り。
万全を期して最善を尽くした上で、人が死ぬのは想定外による事故や単純な失敗によるものだ。
でも、消耗している状態を把握した上で無理を強いるのは殺人だ。
回りくどいが暗殺方法にもある。情報操作で負傷した兵の部隊を大した装備も与えずに苛烈な前線に送り出して、戦死に見せかけて殺すみたいな。
殺されようとしているのか……? 俺たちは。
「進捗率が芳しくないと……、作戦総指揮を取る騎士団から圧力を受けた……。遅れを取り戻す必要があるそうだ……」
歯を食いしばりながらナントカは語り出す。
「……はあ? どう考えても進捗は良いはずだろ? 俺らだけでも二日で一体以上は討伐していて既に十一体、他五つの討伐隊も減ったり増えたり入れ替わりもありつつも何だかんだで三日に一体以上のペースで討伐出来ているし一ヶ月で百は行けるし、まだシャーストにすら届く気配もない。まだ冒険者が集まるだろうし、軍ももうちょい前線に人を送ってくれりゃあ年内には終わるくらいだろ。この規模の氾濫にしちゃあ破竹の勢い過ぎる、相当巻いてるはずだぞ」
他パーティのリーダー、テンプがナントカを睨むように正論を捲し立てる。
ちなみにテンプは初日にキャミィをナンパして俺たちに絡んできたパーティのリーダーだ。わりとタフで、三叉槍に魔法を纏わせる面白い戦い方をする。
「騎士団の想定では…………。過去に騎士団が討伐した大型魔物との戦闘時間から算出して、六つの討伐隊が各自一日三体ペースで討伐し……一日十八体、一ヶ月で五百四十……現状観測されている大型魔物が約千であることから二ヶ月以内にこの大討伐作戦を完了させるつもりだったらしい」
頭を抱えながら、ナントカはとんでもない馬鹿なことを言う。
いや……、マジで言って……え? 大型魔物も様々な種類が居て、強さもピンキリだし相性もある。
今回やった石垣の巨人も俺らとは噛み合わなかったが、バリィんとこみたいにブラキスの過剰な物理火力があれば瞬殺だった。
討伐時間にはバラつきがある。平均は出せるが参考にしかならない。
そりゃ俺らだって噛み合う大型魔物を一体倒すんなら、初日みたいに消耗せず数十分で倒せる。
だが、これは大討伐作戦だ。
氾濫した魔物を全滅させる為に長期的な戦闘継続力が要求される。
余裕があるから一日何体も相手にしていたら、消耗が早くなる。そうなれば結局どこかで無理をしなくてはならなくもなるし、負傷者や死亡者によって討伐自体が滞る。
人が入れ替わると連携を組み直さなくてはならないので、それも時間がかかることになる。
適正ペースを守ることが、大局的に見た最速なんだ。
特に自身の損傷や命を蔑ろにしがちな俺は、ジスタやシードッグにこれらを昔から叩き込まれてきた。
常識を語れるほど自分がマトモな人間だなんて思い上がってはいないが、これは流石に冒険者たちの常識だ。
見ている感じ軍もこのくらいの常識には配慮して動いている。空挺魔法部隊の奴らも、まあまあな連携練度で戦闘状況に対する理解度も高かった。
騎士団は想像以上に馬鹿だ。
スキル至上主義で担ぎ上げられて地位にかまけた幼稚な貴族共の、ままごと遊び。
経験値も想像力もないのに、馬鹿ども同士で評価し続けて出来上がったどうしようもない馬鹿。
ナンセンス、いやこの国においてはナンセンスとして捉えることすら出来ていないのか。
……腐りきっている。
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