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第二部11・世界は顧みないが家族は顧みる。【全9節】
03なんで。
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「てめぇんとこの馬鹿ガキが、世界最強の怪物に挑みてぇんだってよ」
「……おまえ、言ったのかシロウに……はあ……――――」
そんな会話をして父が残像を置いて消えたのと同時に。
ブライさんは手足をへし折られて、両肩に鉄製の変な槍のような武器が突き刺さった状態で貼り付けられた。
な、何も見えなかった……。
速すぎるというか……時間軸そのものがズレているような……。ただ、ぶっ飛ばされたブライさんが壁に激突するまでに剣を抜いていたのは流石だと思った。
でも『纒着結界装置』を付けていない人間に対してこんな容赦なく……、なんだ? 何が起こってるんだ?
「後でクリアかパンドラちゃんを呼んでやるからそこで寝てろ、医者が来てからもう三回畳むからな。いい歳こいて馬鹿が…………で、シロウ」
父は完全に気を失ったブライさんにそう言ってから、俺の方に向き直して。
「やるんだろ? やってみろよ、軍人になるんだろうがあッ‼」
凄まじい圧力で、声を荒らげる。
これは、誰だ?
俺の父親って、こんなんだったのか?
おっかねえ……、なんだよこれ。
「何やってるんですかクロウさん‼ 何が――」
訓練場に入ってきてただならぬ空気を感じたジャンポール師匠がそう言いかけたところで。
父は残像を置いて消えて、同時に師匠も残像を置いて消えて。
さらにほぼ同時に、師匠は剣を握ったまま訓練場の高い天井へと突き刺さった。
「悪くない動きだったねジャンポール君、でも衰えた僕なんかに団長様が畳まれてんじゃねえぞ。もっと鍛えろ馬鹿」
父はエプロンをはたきながら天井から垂れ下がる師匠へと言う。
ああ、怪物だ。
帝国最強がこんなにも容易く……、父は本当に世界最強なんだ。
強すぎるというか、格が違う。
どうやったらこんな強さを得られるんだ?
何のために? 過剰すぎる強さだ。
そんな怪物が、師匠やブライさんを鍛えた……。
納得した。まざまざと証明を目の当たりさせられてしまった。
だからこそ納得ができない。
なんで俺には何も教えてくれなかったんだ?
なんで息子の俺は鍛えなかった?
なんで強さを隠していたんだ?
なんで主夫なんかしてるんだ?
納得と共に疑問が吹き出して、疑問は疑念に変わり、疑念は不満に変わり、不満は怒りに変わる。
腹が立ってきた。
やってやるよ、ふざけんじゃあねえ。
怒りが心に火を点けて、目から炎が漏れ出る。
まず『纒着結界装置』を起動して、武具召喚で剣を喚び出しながら身体強化をかけて魔力感知を最大に働かせて視力強化を使う。
どう動いても反応してやる。
これでもブライさんにも師匠にも何発かいいのが通るようになってきているんだ。
それに『纒着結界装置』が働いている間は俺には攻撃が通らない、その間になんとか動きを見切れば――――。
痛み。
思考をぶった切って、おでこに軽い痛みが走る。
目の前には、一瞬で接近して人差し指を突き出した父の姿。
……え? デコピンをされたのか?
なんで……デコピンが『纒着結界装置』を貫いているんだ?
「……魔法融解だよ。あらゆる魔法を魔力に戻して散らす魔法だ。『纒着結界装置』は無敵じゃあない、消滅魔法や魔法融解、いくらでも攻略方法はある。実戦では当然、このくらいの対策は誰でも行う」
父はさらりと俺の頭の中の疑問符に答える。
「僕が悪い人だったら、君はこれで死んでいた。軍人になるってことは何の拒否権も持たずに、ただ相手より弱いってだけで死ぬことになる仕事なんだ。競技とは違う」
続けて、真摯な眼差しで俺にそう語る。
「……おまえ、言ったのかシロウに……はあ……――――」
そんな会話をして父が残像を置いて消えたのと同時に。
ブライさんは手足をへし折られて、両肩に鉄製の変な槍のような武器が突き刺さった状態で貼り付けられた。
な、何も見えなかった……。
速すぎるというか……時間軸そのものがズレているような……。ただ、ぶっ飛ばされたブライさんが壁に激突するまでに剣を抜いていたのは流石だと思った。
でも『纒着結界装置』を付けていない人間に対してこんな容赦なく……、なんだ? 何が起こってるんだ?
「後でクリアかパンドラちゃんを呼んでやるからそこで寝てろ、医者が来てからもう三回畳むからな。いい歳こいて馬鹿が…………で、シロウ」
父は完全に気を失ったブライさんにそう言ってから、俺の方に向き直して。
「やるんだろ? やってみろよ、軍人になるんだろうがあッ‼」
凄まじい圧力で、声を荒らげる。
これは、誰だ?
俺の父親って、こんなんだったのか?
おっかねえ……、なんだよこれ。
「何やってるんですかクロウさん‼ 何が――」
訓練場に入ってきてただならぬ空気を感じたジャンポール師匠がそう言いかけたところで。
父は残像を置いて消えて、同時に師匠も残像を置いて消えて。
さらにほぼ同時に、師匠は剣を握ったまま訓練場の高い天井へと突き刺さった。
「悪くない動きだったねジャンポール君、でも衰えた僕なんかに団長様が畳まれてんじゃねえぞ。もっと鍛えろ馬鹿」
父はエプロンをはたきながら天井から垂れ下がる師匠へと言う。
ああ、怪物だ。
帝国最強がこんなにも容易く……、父は本当に世界最強なんだ。
強すぎるというか、格が違う。
どうやったらこんな強さを得られるんだ?
何のために? 過剰すぎる強さだ。
そんな怪物が、師匠やブライさんを鍛えた……。
納得した。まざまざと証明を目の当たりさせられてしまった。
だからこそ納得ができない。
なんで俺には何も教えてくれなかったんだ?
なんで息子の俺は鍛えなかった?
なんで強さを隠していたんだ?
なんで主夫なんかしてるんだ?
納得と共に疑問が吹き出して、疑問は疑念に変わり、疑念は不満に変わり、不満は怒りに変わる。
腹が立ってきた。
やってやるよ、ふざけんじゃあねえ。
怒りが心に火を点けて、目から炎が漏れ出る。
まず『纒着結界装置』を起動して、武具召喚で剣を喚び出しながら身体強化をかけて魔力感知を最大に働かせて視力強化を使う。
どう動いても反応してやる。
これでもブライさんにも師匠にも何発かいいのが通るようになってきているんだ。
それに『纒着結界装置』が働いている間は俺には攻撃が通らない、その間になんとか動きを見切れば――――。
痛み。
思考をぶった切って、おでこに軽い痛みが走る。
目の前には、一瞬で接近して人差し指を突き出した父の姿。
……え? デコピンをされたのか?
なんで……デコピンが『纒着結界装置』を貫いているんだ?
「……魔法融解だよ。あらゆる魔法を魔力に戻して散らす魔法だ。『纒着結界装置』は無敵じゃあない、消滅魔法や魔法融解、いくらでも攻略方法はある。実戦では当然、このくらいの対策は誰でも行う」
父はさらりと俺の頭の中の疑問符に答える。
「僕が悪い人だったら、君はこれで死んでいた。軍人になるってことは何の拒否権も持たずに、ただ相手より弱いってだけで死ぬことになる仕事なんだ。競技とは違う」
続けて、真摯な眼差しで俺にそう語る。
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