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第二部16・世界では同時多発的に人生が動き続けているらしい。【全17節】

09男の話だ。

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 俺、ダイル・アルターは警察官だ。

 セブン地域旧公都勤務、階級は巡査長……まあ街のお巡りさんだ。

 道案内や交通整理やら落とし物の受付や酔っ払いの相手や防犯の為の警邏などなど、まあ派出所でそんな仕事をもう十七年くらい続けている。

 別に仕事に不満はない。

 夜勤もあるし、残業はひでぇし、酔っ払いには制服に吐かれたり、説明が分かりづらいと道を教えたご高齢の方にブチ切れられたり、給料も高くはねえ。

 だが超暴力双剣士に毎日ボコされることもなければ、一撃必殺の大斧一振を受けろとか無茶を言われたり、高純度酸素毒で顔中から血が吹き出すことも。

 世界最速最強の怪物と戦うこともないのだから。

 決して高給とはいえないが収入は安定している。

 可愛くも小憎たらしい愛すべき妻。
 可愛くて可愛らしくて可愛い愛娘。 

 そんな家族との日々があるのだから、全くもってこの仕事に文句はない。

 俺と妻のメリッサは、旧セブン公国の勇者パーティだった。

 二十年前に公国は帝国に……いやクロウ・クロスに負けて、俺たち勇者パーティはかなり立場として際どい感じになった。

 単純にいえば戦争犯罪人として裁くか否かってところで、結構ややこしい感じに裁判が行われた。

 まあ色々と普段の素行だとか政治的な関係とか帝国軍への被害やら、本当に色々と調べて精査された。

 んで俺やクライスやポピーは半年ちょっとくらい拘留とほぼ毎日の聴取、だらだらと馬鹿長い裁判を何回か行って。

 政治的な権力なし。
 強力なスキルを失って帝国を脅かす戦力ではないと判断。

 勇者パーティは最大戦力ではあったが、政治的思想があったわけでなくスキル至上主義の象徴としての意味合いが高かった。

 故に裁判の結果、現在の勇者パーティの面々自体には大きな脅威ではないと結論付けられた。

 とりあえず極刑は間逃れて、投獄に関しても見送られたんだが……それでも、旧公国残党が俺たちを利用して反旗を翻すことも考えられたりするわけで。

 さらに一応俺は旧公国貴族家の人間だったことで、かなり強めな行動制限や監視が付くことになった。

 クライスやポピーも似たような制限を受けたが。
 クライスは軍人家系のクラック家のお嬢さんとくっついて身元を保証され医療に従事することで制限をかなり緩和させて。
 ポピーは『携帯通信結晶』や『画面付携帯通信結晶』の技術や特許を帝国に無償で譲り渡して制限を無くすどころか魔導結社デイドリームから仕事頼まれるようにもなった。

 しかして、俺は医学も学んでないし魔道具技師みたいなことも出来ねえ。

 だからまあ仕方ない、身体は動くしなんか適当な肉体労働で食いつないで行けばいいし旧公都から出れなかったり週に何度かの面談くらい別にどうってこともなかった。

 でも、公国が落とされてから二年くらいたった頃にメリッサが聴取や裁判を終えて旧公都へと出てきた。

 メリッサは元勇者。
 俺よりもかなり厳しい制限が設けられた。

 それでも俺はメリッサが好きだったから、二人で生きていければそれで良かったんだが。

 制限で帝国民としての権利である、が出来なかった。

 別にメリッサは形式に拘らなくても良いと言っていたし、俺もそう思った。

 でも、こういうのは覚悟と決意とケジメの問題だ。

 男の話だ、

 まだ身体は動くし、最強なんていうのはおこがましいが弱くはねえと自惚れてはいる。

 だから、クライス経由でちょっと軍の人間に口を聞いてもらって軍務を通して帝国を守ることでメリッサと俺の制限を緩和して貰おうと思った。

 だが流石に、元勇者パーティの戦士が軍務に就くのは出来ないとのこと。

 流石にメリッサと俺は帝国軍人を畳みすぎたので仕方ない。

 でも軍のお偉いさんだったガクラ・クラックは、上手いこと色々と手を回してくれたようで。

 俺は帝国軍傘下の警察組織に所属して帝国内の治安維持を行うということで、制限の緩和をしてもらえることになった。
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