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第二部17・狂ってるやつは狂っているので自分が狂っていることに自覚的じゃあない。【全6節】
01チャンスは一度きり。
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僕、チャコール・ポートマンは……まあ何でもいいか。僕自身、僕がなんなのかよくわからない。
ライラちゃんが攫われた。
相手はテロ組織の【ワンスモア】とかいう奴らだ。
とりあえずこいつらはバリィさんが全員畳むと思うし、多分皆殺しにされる。
僕が考えるべきはライラちゃんの救出だ。
それだけを考えて、それだけの為に動く。
ライラちゃんが攫われた後、帝国全土を魔力感知したが見つけられずに魔力枯渇でぶっ倒れて。
バリィさんに連れられて魔法国家ダウンに行って、魔法族の偉い人に協力を要請した。
したらば。
ライラちゃんは上空四十万メートル、宇宙空間にあるアジトに居るとのこと。
んで、親父やバリィさんと冒険者仲間だった魔動結社デイドリーム開発部長のセツナさんとうちのおふくろポピー・ポートマンで宇宙用の装備を開発。
ライラちゃんが攫われてから、丸二日後。
「ごめんチャコ、あなたに頼るような……でもお願い、ライラを……助けて」
「……チャコ、やれんのか?」
バルーン夫妻からのそんな嘆願に。
「当然だ……!」
僕は目から炎を噴き出しながら答える。
二日間は長すぎだ。
いやわかる『0G対応纒着型強化魔動外装』なんて、この世に無いものを実証実験もなしに造るのに二日は早すぎるってのはわかってる。
僕は、この二日間ただひたすら宇宙空間での作業手順について叩き込んで。
負荷耐性硬化を用いた格闘戦鍛錬を、ぶっ倒れるまで行った。
他に何も出来ないからやれることをやり続けた。
じゃなきゃ僕はとっくに爆発していた、怒りと焦りで、僕は身体の中から焼かれ続けていた。
それがやっとこさ、解放される。
「…………行くぞッ‼」
僕はタヌーさんに言われていた時間に上空四十万メートルへと、跳んだ。
「うお……っ」
跳んだのと同時に目に飛び込んできた絶景に、思わず声を漏らす。
青い、とてつもなく巨大な球体。
美しいだけじゃなくて、質量というか……力を感じる。
静かに、音のない世界でただそこに存在している。
すげえ、とんでもねえな……これが僕たちが住む星なのか。
いや、今はいい。
凄まじい体験だけど、今は置いておく。
とりあえず『0G対応纒着型強化魔動外装』は正常に機能している。呼吸にも体幹温度にも違和感はない、やっぱすげえなデイドリームって。
さあ、緊張しろ。
チャンスは一度きり。
【ワンスモア】のアジトはこの星の衛星軌道上とやらを、秒速七キロメートルでグルグルと回っているらしい。
僕は『0G対応纒着型強化魔動外装』の姿勢制御バーニアと重力魔法や浮遊魔法を駆使して、星の引力にまけないよう計算された座標に留まる。
集中しろ。
空気がないから想像以上に視界がクリアだ。
クリア過ぎて距離感が捕まえない、魔力感知と勘でタイミングを掴め。
集中、集中、集中………………。
ここだ。
僕は疑似加速を発動する。
加速した世界で、目の前にアジトが迫っているのを確認。
疑似加速を使っても動いて見える、すげぇ速さだ。しかもデカい、サウシス魔法学校が丸ごと飛んできたみたいな。
感覚がおかしくなる、星の質量やらこのアジトやら……。自分が小さいと感じるのは久しぶりだ。
僕は姿勢制御バーニアと重力魔法を使って、アジトの壁面に取り付く。
疑似加速で相対速度を限りなくゼロに……っ、間違えたら秒速七キロメートルで進む校舎に轢かれるようなもんだ。まず即死だ。
限りなくピッタリと追従するように、僕はアジトの壁面に張り付く。
「…………よし」
一旦成功して、心を撫で下ろす。
冒険者になる為に鍛えてきた成果がこんなところで役に立つなんて……、無駄にならず良かった。鍛えておくもんだな。
ライラちゃんが攫われた。
相手はテロ組織の【ワンスモア】とかいう奴らだ。
とりあえずこいつらはバリィさんが全員畳むと思うし、多分皆殺しにされる。
僕が考えるべきはライラちゃんの救出だ。
それだけを考えて、それだけの為に動く。
ライラちゃんが攫われた後、帝国全土を魔力感知したが見つけられずに魔力枯渇でぶっ倒れて。
バリィさんに連れられて魔法国家ダウンに行って、魔法族の偉い人に協力を要請した。
したらば。
ライラちゃんは上空四十万メートル、宇宙空間にあるアジトに居るとのこと。
んで、親父やバリィさんと冒険者仲間だった魔動結社デイドリーム開発部長のセツナさんとうちのおふくろポピー・ポートマンで宇宙用の装備を開発。
ライラちゃんが攫われてから、丸二日後。
「ごめんチャコ、あなたに頼るような……でもお願い、ライラを……助けて」
「……チャコ、やれんのか?」
バルーン夫妻からのそんな嘆願に。
「当然だ……!」
僕は目から炎を噴き出しながら答える。
二日間は長すぎだ。
いやわかる『0G対応纒着型強化魔動外装』なんて、この世に無いものを実証実験もなしに造るのに二日は早すぎるってのはわかってる。
僕は、この二日間ただひたすら宇宙空間での作業手順について叩き込んで。
負荷耐性硬化を用いた格闘戦鍛錬を、ぶっ倒れるまで行った。
他に何も出来ないからやれることをやり続けた。
じゃなきゃ僕はとっくに爆発していた、怒りと焦りで、僕は身体の中から焼かれ続けていた。
それがやっとこさ、解放される。
「…………行くぞッ‼」
僕はタヌーさんに言われていた時間に上空四十万メートルへと、跳んだ。
「うお……っ」
跳んだのと同時に目に飛び込んできた絶景に、思わず声を漏らす。
青い、とてつもなく巨大な球体。
美しいだけじゃなくて、質量というか……力を感じる。
静かに、音のない世界でただそこに存在している。
すげえ、とんでもねえな……これが僕たちが住む星なのか。
いや、今はいい。
凄まじい体験だけど、今は置いておく。
とりあえず『0G対応纒着型強化魔動外装』は正常に機能している。呼吸にも体幹温度にも違和感はない、やっぱすげえなデイドリームって。
さあ、緊張しろ。
チャンスは一度きり。
【ワンスモア】のアジトはこの星の衛星軌道上とやらを、秒速七キロメートルでグルグルと回っているらしい。
僕は『0G対応纒着型強化魔動外装』の姿勢制御バーニアと重力魔法や浮遊魔法を駆使して、星の引力にまけないよう計算された座標に留まる。
集中しろ。
空気がないから想像以上に視界がクリアだ。
クリア過ぎて距離感が捕まえない、魔力感知と勘でタイミングを掴め。
集中、集中、集中………………。
ここだ。
僕は疑似加速を発動する。
加速した世界で、目の前にアジトが迫っているのを確認。
疑似加速を使っても動いて見える、すげぇ速さだ。しかもデカい、サウシス魔法学校が丸ごと飛んできたみたいな。
感覚がおかしくなる、星の質量やらこのアジトやら……。自分が小さいと感じるのは久しぶりだ。
僕は姿勢制御バーニアと重力魔法を使って、アジトの壁面に取り付く。
疑似加速で相対速度を限りなくゼロに……っ、間違えたら秒速七キロメートルで進む校舎に轢かれるようなもんだ。まず即死だ。
限りなくピッタリと追従するように、僕はアジトの壁面に張り付く。
「…………よし」
一旦成功して、心を撫で下ろす。
冒険者になる為に鍛えてきた成果がこんなところで役に立つなんて……、無駄にならず良かった。鍛えておくもんだな。
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