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6章 毒のりんごを食べてしまい
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隆平は、リビングで警察官から聞き取りを受ける家政婦の加奈子のそばに立って、拳をギリギリと握りしめていた。
買い物に出た由起也が帰ってこないと加奈子から連絡を受け、急いで家に戻ったら、家の前の道路に由起也のエコバッグが落ちていた。中身をぶちまけた状態のそれを見て、隆平はただ事ではないことを悟り、すぐさま父・寛治に連絡をした。
寛治の指示で警察に連絡をしたところ、すぐに2名の警官が駆けつけてきた。程なくして寛治も、法務部の高木を伴って帰宅した。高木は花城邸に着くなり、防犯カメラの映像記録を探り始めた。今は、その作業と同時進行で、警官からの聞き取りが行われている最中だ。
「その白石さんという家政夫さんは、花城社長の息子さんと間違えて連れ去られたんですかねぇ」
「……そうかもしれません」
そう寛治が答えるのを聞いて、隆平はますます拳を強く握りしめた。だったら、ちゃんと俺を拉致しろよ! なんで由起也が被害者にならなきゃならないんだ! 隆平は犯人に対して、そして自分にも憤る。
「ありました!」
高木が、由起也が誘拐された瞬間の映像を見つけ出した。ダイニングテーブルに広げられた高木のノートパソコンに、警官を含めたみんなが群がった。
そこには、腕を掴まれ、頬を殴られ、車に押し込められた由起也の様子が、遠目だがはっきり写っていた。それを見た警官は、すぐさま県警本部へ連絡をとり始めた。
「くそっ!!」
隆平は拳をリビングの机にガンッと打ちつけた。それでもなお、胸に怒りと焦りがふつふつと溢れ、沸騰しそうだ。
その映像をじっと見て、首を少し傾げた高木が、寛治に小声で話しかけた。
「社長。この方、確か……」
「ん? どうした高木。見覚えがあるのか?」
「はい」
寛治が少し体をかがめると、高木は寛治の耳元に小声で何かを言った。
「なんだって!?」
少し大きな声で、父が驚きの声をあげた。
「どうかされましたか?」
警官の一人が尋ねると、寛治は驚くべきことを言った。
「その映像に写っているのは、櫛田守信さんではないか、と部下が言っています」
櫛田……守信だって? それって由起也のお祖父さんの名前じゃないか! 父の口から意外すぎる名前が出て、隆平は唖然としてしまった。
「少し前に、弊社とお取引があった方なんですが、後になって不服を申し立てて来られたんです」
「社長に会わせろとか、警察に訴えるぞと叫びながら、本社の玄関で暴れ出したことが2度ほどありました」
「父さん! 俺、聞いてないよ!」
「しかし、櫛田さんはなぜ私の自宅までやって来たんだ?」
そこで隆平は、ハッと思い出す。
「……駅前のカフェの、由起也のお父さんの従兄、確か、健臣……!」
「ああ、あの趣味の悪いカフェをやってる甥ですか」
高木がそう返す。
「なぜ隆平さんが、櫛田さんの甥御さんをご存知なんですか?」
「おい、隆平。それはどういう……」
「ちょっといいですか?」
警官の一人が、隆平たちの会話に割って入った。
「私たちにもわかるよう、説明していただけますか?」
そこから高木が、櫛田守信から土地を買い取った経緯について説明を始めた。物流拠点建設事業の一環で、複数の地権者と交渉しており、そのうちの一人が櫛田守信であったこと、適正価格で売買は確かに成立していること。しかし後から不服を訴え本社に乗り込んできたことが数回あることなどを、高木は端的に説明した。
「交渉段階から、担当の営業がかなり困っていたよ。あのあたりの地価は、もうずいぶん前に下がっているんだが、一向に聞き入れてくれなくてね。他よりも少し高い値で買わざるを得なかったくらいなんだが」
寛治が隆平に向けて、高木の説明に補足をした。
「それで、お前はなぜ、櫛田さんのことを知ってたんだい?」
寛治がそう隆平に水を向けられたので、隆平は由起也の父について調べていたことを話した。
由起也の父は、おそらく櫛田守信の息子、由信であろうこと。大学の図書室で由信の出身地を見つけたので隣県を訪問したこと。そこで健臣と偶然出会ったこと……。
「お前たち、そんなことをしてたのか」
「結局、由信さんは亡くなってたし、……あ、俺、あの時、名刺交換した……」
「そこで、花城の関係者ということがバレてるんですね?」
高木が冷静に隆平に確認する。
「……それはバレてます。くそっ!」
隆平は自分の迂闊さを呪った。俺がもっと慎重に動いていれば……! やりきれない気持ちが熱を持ちぐるぐると胸を駆け巡った。
「なるほど。……櫛田守信が逆恨みで、白石さんを拉致した可能性が非常に高いですね。隣の県警に、広域捜査協力要請をかけます。その櫛田さんのご自宅の住所はわかりますか?」
「はい。すぐに」
高木と警官が、由起也の保護に向けて具体的に動き始めた。
「父さん、行こう」
「そうだな。行くぞ、隆平」
短い言葉で、隣県の櫛田の家に向かうことを合意した隆平と寛治だったが、
「待ってください! 私も行きます」
と高木が一時ストップをかける。
「社長。自ら飛び込んでいくのはやめてください、といつも申し上げているのを、お忘れですか?」
若干、声を尖らせて社長を嗜める高木の様子を見て、隆平は少しガス抜きができ、自分もちょっと反省しようと思った。
警察への情報提供を手早く終わらせ、隆平と寛治は高木の運転する車で、隣県の櫛田家へと向かった。
――由起也、無事でいてくれ……!
車窓の外の景色に目をやりながら、隆平は由起也の無事をひたすら祈った。
買い物に出た由起也が帰ってこないと加奈子から連絡を受け、急いで家に戻ったら、家の前の道路に由起也のエコバッグが落ちていた。中身をぶちまけた状態のそれを見て、隆平はただ事ではないことを悟り、すぐさま父・寛治に連絡をした。
寛治の指示で警察に連絡をしたところ、すぐに2名の警官が駆けつけてきた。程なくして寛治も、法務部の高木を伴って帰宅した。高木は花城邸に着くなり、防犯カメラの映像記録を探り始めた。今は、その作業と同時進行で、警官からの聞き取りが行われている最中だ。
「その白石さんという家政夫さんは、花城社長の息子さんと間違えて連れ去られたんですかねぇ」
「……そうかもしれません」
そう寛治が答えるのを聞いて、隆平はますます拳を強く握りしめた。だったら、ちゃんと俺を拉致しろよ! なんで由起也が被害者にならなきゃならないんだ! 隆平は犯人に対して、そして自分にも憤る。
「ありました!」
高木が、由起也が誘拐された瞬間の映像を見つけ出した。ダイニングテーブルに広げられた高木のノートパソコンに、警官を含めたみんなが群がった。
そこには、腕を掴まれ、頬を殴られ、車に押し込められた由起也の様子が、遠目だがはっきり写っていた。それを見た警官は、すぐさま県警本部へ連絡をとり始めた。
「くそっ!!」
隆平は拳をリビングの机にガンッと打ちつけた。それでもなお、胸に怒りと焦りがふつふつと溢れ、沸騰しそうだ。
その映像をじっと見て、首を少し傾げた高木が、寛治に小声で話しかけた。
「社長。この方、確か……」
「ん? どうした高木。見覚えがあるのか?」
「はい」
寛治が少し体をかがめると、高木は寛治の耳元に小声で何かを言った。
「なんだって!?」
少し大きな声で、父が驚きの声をあげた。
「どうかされましたか?」
警官の一人が尋ねると、寛治は驚くべきことを言った。
「その映像に写っているのは、櫛田守信さんではないか、と部下が言っています」
櫛田……守信だって? それって由起也のお祖父さんの名前じゃないか! 父の口から意外すぎる名前が出て、隆平は唖然としてしまった。
「少し前に、弊社とお取引があった方なんですが、後になって不服を申し立てて来られたんです」
「社長に会わせろとか、警察に訴えるぞと叫びながら、本社の玄関で暴れ出したことが2度ほどありました」
「父さん! 俺、聞いてないよ!」
「しかし、櫛田さんはなぜ私の自宅までやって来たんだ?」
そこで隆平は、ハッと思い出す。
「……駅前のカフェの、由起也のお父さんの従兄、確か、健臣……!」
「ああ、あの趣味の悪いカフェをやってる甥ですか」
高木がそう返す。
「なぜ隆平さんが、櫛田さんの甥御さんをご存知なんですか?」
「おい、隆平。それはどういう……」
「ちょっといいですか?」
警官の一人が、隆平たちの会話に割って入った。
「私たちにもわかるよう、説明していただけますか?」
そこから高木が、櫛田守信から土地を買い取った経緯について説明を始めた。物流拠点建設事業の一環で、複数の地権者と交渉しており、そのうちの一人が櫛田守信であったこと、適正価格で売買は確かに成立していること。しかし後から不服を訴え本社に乗り込んできたことが数回あることなどを、高木は端的に説明した。
「交渉段階から、担当の営業がかなり困っていたよ。あのあたりの地価は、もうずいぶん前に下がっているんだが、一向に聞き入れてくれなくてね。他よりも少し高い値で買わざるを得なかったくらいなんだが」
寛治が隆平に向けて、高木の説明に補足をした。
「それで、お前はなぜ、櫛田さんのことを知ってたんだい?」
寛治がそう隆平に水を向けられたので、隆平は由起也の父について調べていたことを話した。
由起也の父は、おそらく櫛田守信の息子、由信であろうこと。大学の図書室で由信の出身地を見つけたので隣県を訪問したこと。そこで健臣と偶然出会ったこと……。
「お前たち、そんなことをしてたのか」
「結局、由信さんは亡くなってたし、……あ、俺、あの時、名刺交換した……」
「そこで、花城の関係者ということがバレてるんですね?」
高木が冷静に隆平に確認する。
「……それはバレてます。くそっ!」
隆平は自分の迂闊さを呪った。俺がもっと慎重に動いていれば……! やりきれない気持ちが熱を持ちぐるぐると胸を駆け巡った。
「なるほど。……櫛田守信が逆恨みで、白石さんを拉致した可能性が非常に高いですね。隣の県警に、広域捜査協力要請をかけます。その櫛田さんのご自宅の住所はわかりますか?」
「はい。すぐに」
高木と警官が、由起也の保護に向けて具体的に動き始めた。
「父さん、行こう」
「そうだな。行くぞ、隆平」
短い言葉で、隣県の櫛田の家に向かうことを合意した隆平と寛治だったが、
「待ってください! 私も行きます」
と高木が一時ストップをかける。
「社長。自ら飛び込んでいくのはやめてください、といつも申し上げているのを、お忘れですか?」
若干、声を尖らせて社長を嗜める高木の様子を見て、隆平は少しガス抜きができ、自分もちょっと反省しようと思った。
警察への情報提供を手早く終わらせ、隆平と寛治は高木の運転する車で、隣県の櫛田家へと向かった。
――由起也、無事でいてくれ……!
車窓の外の景色に目をやりながら、隆平は由起也の無事をひたすら祈った。
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