【完結】白雪くんはりんごアレルギー〜家政夫だと思っていたら嫁入りでした!

墨済

文字の大きさ
27 / 41
5章 魔女に襲われ

5-(4)*

しおりを挟む
万里子の葬儀は、由起也の知る葬儀からはかけ離れた大規模なものだった。
パパさんの会社の規模を考えれば、できるだけ小規模にしたのだろうとは思う。が、親族はもちろん、グループの主だった役員や社員、取引先が次々と訪れる。葬儀の差配は本社の人たちがやってくれたとは言え、由起也も何かと忙しかった。ずらりと並んだフラワースタンドは百合や胡蝶蘭が主で、万里子にとても似合っていると、由起也は思った。

葬儀が終わってしばらく経った時、由起也は意を決して、パパさんに今後のことについて話をした。由起也の仕事は、花城家の家事はもちろんだが、万里子の世話にも大きな比重がかかっていた。万里子が亡くなった今、このまま花城家にいてもいいのか、由起也は性格的にきちんと確認しないわけにいかなかった。

リビングのソファにゆったりと腰をかけ、由起也が入れたコーヒーを飲みながら、寛治はどこか遠い目をして答えた。
「万里子の最後の願いは、私たち家族が幸せに暮らしていくことなんだよ」
そして寛治は由起也の方へくるりと顔を向けて、言い聞かせるように言った。
「その中にはね、由起也くんも含まれているんだよ。だから、ここを出ていくなんてことは考えないでほしいな」
「パパさん……。ありがとうございます!」

由起也は俯いて涙を堪えようとしたが、できなかった。鼻を啜りながらパーカーの袖口で涙を拭う。
パパさんと隆平、そして万里子にどのように感謝を伝えたらいいのだろう。家族と言える人をみんな失った由起也を、家族のように迎えてくれた花城家の人たち。そして、万里子の最後を通じて深くつながれた。
この感謝をどう言葉にすればいいのかわからなくて、代わりに涙ばかり溢れてくる。

「ほら、泣き止んでくれないと、私が隆平に怒られてしまうよ」
そう笑いながら、頭を撫でてくれたパパさんの手は、とても温かかった。

***

大学は春休みに入った。ようやく落ち着いてきたところで、由起也は公務員試験の勉強を再開した。遅れを取り戻さねばと、春休み期間中は勉強に打ち込むことにしていた。
そんな時、事件は起こった。

加奈子に頼まれて買い物に出た由起也が、花城邸の通用門を開けようとしたその時だった。
腕をぐいっと強く掴まれ、たたらを踏んで振り返った。振り返った先には、見知らぬ老人がギラついた目をして由起也を睨みつけていた。無精髭が生えた顔の色は悪く、目の周りが赤黒い。
「だ、誰?」
「こんなところにいたのか!」
黄色く濁った目でギョロリと由起也を睨んだ老人は、由起也の腕を掴む力を強めた。

「痛いって! 誰ですか、あなたは!?」
「何言ってるんだ! さぁ、来るんだ、由信!!」
父の名前で呼ばれ、由起也はひゅっと息を呑んだ。
この人、多分……父さんのお父さんだ……!

その時、頬に衝撃を受けた。
「ぐぁっ!」
老人が由起也を拳で殴ったのだ。
由起也は痛みよりも驚きで固まってしまった。腕をひっぱられ、すぐ近くに停めてあった車へと引きずられていく。

「い、いやだ……! 離せ……っ」
「いいから来い!」
由起也は必死で抵抗したが、老人の力は強く、揉み合ううちに左の手首を捻られ、激痛が走る。
「いたっ!」
治りきっていない左手首の痛みで、エコバッグを落としてしまい、買ってきた野菜が道路に散らばる。あっと思った時には車のドアが開けられ、由起也は後部座席に押し込められそうになった。由起也は乗せられてはダメだとさらに抵抗したが、はずみで開口部にガツンと頭をぶつけてしまった。

「っ……!」
由起也がくらりとした隙に背中を押され、とうとう後部座席に押し込められてしまった。バタンと閉まったドアを、由起也は必死で開けようとした。しかし、ガチャガチャとレバーを何度引いてもドアが開かない。その間に、老人は運転席に座り、無情にも車は発進してしまった。

由起也は朦朧とする頭で思った。おそらく今から連れて行かれるのは、櫛田の家だろう。この人――お祖父さんはなぜ自分を連れて行こうとしているんだろう。
「もしもし。……お前の言う通りだった。由信を捕まえたぞ」
電話? 相手は誰? オレは父さんじゃない……。
そんなことを考えているうちに、由起也は意識を失ってしまった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています

水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」 王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。 一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……? 勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!

優等生αは不良Ωに恋をする

雪兎
BL
学年トップの優等生α・如月理央は、真面目で冷静、誰からも一目置かれる完璧な存在。 そんな彼が、ある日ふとしたきっかけで出会ったのは、喧嘩っ早くて素行不良、クラスでも浮いた存在のΩ・真柴隼人だった。 「うっせーよ。俺に構うな」 冷たくあしらわれても、理央の心はなぜか揺れ続ける。 自分とは正反対の不良Ω——その目の奥に潜む孤独と痛みに、気づいてしまったから。 番なんて信じない。誰かに縛られるつもりもない。 それでも、君が苦しんでいるなら、助けたいと思った。 王道オメガバース×すれ違い×甘酸っぱさ全開! 優等生αと不良Ωが織りなす、じれじれピュアな恋物語。

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

君に二度、恋をした。

春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。 あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。 ――もう二度と会うこともないと思っていたのに。 大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。 変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。 「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」 初恋、すれ違い、再会、そして執着。 “好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか―― すれ違い×再会×俺様攻め 十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...