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6章 毒のりんごを食べてしまい
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居間に入ってきた健臣は、手にビニール袋を下げていた。ビニール袋は、買ってきた食料らしきもので重そうに膨らんでいる。
「伯父さぁん、由起也くんを連れてこれたんだって?」
「ユキヤぁ? 誰だぁ、それは?」
「嫌だなぁ、伯父さんの孫だよ。由信の息子」
そう言って健臣は、台所で座り込んだままの由起也の方を向いて、胡散臭い笑顔を見せた。
「やあ、由起也くん。改めて自己紹介するよ。君のお父さんの従兄、健臣だよ」
その芝居がかった挨拶に、由起也はどう返事をしていいのか分からず黙ったままでいた。
「で、もうお気づきだと思うけど、この人が君のお祖父さんだ」
あごでさし示しながらそう言った健臣を、信じられない思いで由起也はただ見つめた。
「いやぁ、正月早々びっくりしたよぉ。由信が生き返ったのかと思った」
「……そんなに似てますか?」
小さな声でそう言った由起也に、健臣はニヤニヤと笑みを浮かべてこう返した。
「ああ! そーっくりだとも! 血のつながりって恐ろしいねぇ」
あの不鮮明な大学新聞の写真を見た隆平も似てると言っていたが、そうか、自分は父さんに似ているのか、と由起也は思った。こんな状況じゃなければ、もっと喜べたのに、とも。
由起也が複雑な表情をしたのを見て、嘲笑うように片頬を上げた健臣は、スーパーで買ったらしい惣菜をいくつか取り出してこたつ机の上に並べ始めた。
「伯父さん、また差し入れを買ってきたよ」
その次にビニール袋から出てきた物を見て、由起也はギョッとした。ウイスキーのボトルだ。
こんなアル中にウイスキーを持ってくるって、頭おかしいんじゃないの!?
そんな由起也の心中などお構いなしに、健臣は流し台へ近づき、そこに転がっていた汚れたグラスを軽く水で洗い、守信の目の前に置いた。すると、守信が礼も言わず、ウイスキーの封を切ってグラスになみなみと注ぎ、ぐいっと飲み始めた。健臣は、その様子をニヤニヤしながら見ている。台所の隅から二人の様子を見ていた由起也は、薄寒い思いがした。この人を早死にさせる気かよ!?
「今日はねぇ、もう一つあるんだ」
そう言った健臣が、ビニール袋からもったいぶった様子で取り出したのは、赤く熟れたりんごだった。
「もう時期も終わりだからさぁ、探すのに苦労したよぉ」
何で、わざわざりんご? と由起也が思っていたら、守信がボソリと呟いた。
「ふん。りんごかよ」
呂律の回らない口でブツブツと守信は続けた。
「由信の野郎、りんごごときが食えないとか抜かしやがって。軟弱にも程があるわ」
父さんも、りんごが食べられなかったんだ。オレはそんなところまで父さんに似たのか……。
由起也は、ますます複雑な心境になった。そして何故今、わざわざ買ってきたんだろ? と、健臣の意図の読めなさに顔をしかめた。
そんな由起也の表情を目の端で捉えた健臣は、「ふーん」と一言小さく呟いた。
「伯父さん。たまには食事もしないと。ほら、りんごも剥いてあげるから」
「いらん」
「あっそ? 由起也くん。君も一緒にどうだい? ほらぁ、せっかく家族が揃ったんだから、一緒に食べようよ」
突然こちらに話を振られた由起也は、この状況でそんなことを言える健臣が恐ろしくなって、ますます台所の隅に縮こまった。
由起也の反応を見た健臣は、もう嘲笑う表情を取り繕わなくなった。
「でさぁ、由起也くんに聞きたいんだけど……。どうして君は、花城エステートに取り入って、櫛田の土地を買わせたんだい?」
「え?」
何の話かさっぱり分からない由起也は困惑した。パパさんの会社が、櫛田の土地を買った? どういうこと?
その時、ダンッ!とグラスをこたつ机に叩きつけた守信が、突然叫び出した。
「花城ぉ! お、俺の土地を、バカみたいな金額で騙し取りやがって!!」
守信は立ち上がり、足をダンダンと踏みつけながら、しばらく叫び続けた。
由起也はその守信の激昂ぶりも恐ろしかったが、守信をニヤニヤしながら見ている健臣を、もっと恐ろしく感じた。
「まぁまぁ、伯父さん。落ち着いて」
そう言って健臣は、口先だけは守信を宥めながら、由起也の方を指差した。
「花城の手先がね、……ほら、そこにいるよ」
くるりと向けられた顔には、弱い獲物を見つけた捕食者のようなゾッとする笑みが滲んでいた。
由起也の背筋が、氷を押し当てられたように冷たくなった。
「伯父さぁん、由起也くんを連れてこれたんだって?」
「ユキヤぁ? 誰だぁ、それは?」
「嫌だなぁ、伯父さんの孫だよ。由信の息子」
そう言って健臣は、台所で座り込んだままの由起也の方を向いて、胡散臭い笑顔を見せた。
「やあ、由起也くん。改めて自己紹介するよ。君のお父さんの従兄、健臣だよ」
その芝居がかった挨拶に、由起也はどう返事をしていいのか分からず黙ったままでいた。
「で、もうお気づきだと思うけど、この人が君のお祖父さんだ」
あごでさし示しながらそう言った健臣を、信じられない思いで由起也はただ見つめた。
「いやぁ、正月早々びっくりしたよぉ。由信が生き返ったのかと思った」
「……そんなに似てますか?」
小さな声でそう言った由起也に、健臣はニヤニヤと笑みを浮かべてこう返した。
「ああ! そーっくりだとも! 血のつながりって恐ろしいねぇ」
あの不鮮明な大学新聞の写真を見た隆平も似てると言っていたが、そうか、自分は父さんに似ているのか、と由起也は思った。こんな状況じゃなければ、もっと喜べたのに、とも。
由起也が複雑な表情をしたのを見て、嘲笑うように片頬を上げた健臣は、スーパーで買ったらしい惣菜をいくつか取り出してこたつ机の上に並べ始めた。
「伯父さん、また差し入れを買ってきたよ」
その次にビニール袋から出てきた物を見て、由起也はギョッとした。ウイスキーのボトルだ。
こんなアル中にウイスキーを持ってくるって、頭おかしいんじゃないの!?
そんな由起也の心中などお構いなしに、健臣は流し台へ近づき、そこに転がっていた汚れたグラスを軽く水で洗い、守信の目の前に置いた。すると、守信が礼も言わず、ウイスキーの封を切ってグラスになみなみと注ぎ、ぐいっと飲み始めた。健臣は、その様子をニヤニヤしながら見ている。台所の隅から二人の様子を見ていた由起也は、薄寒い思いがした。この人を早死にさせる気かよ!?
「今日はねぇ、もう一つあるんだ」
そう言った健臣が、ビニール袋からもったいぶった様子で取り出したのは、赤く熟れたりんごだった。
「もう時期も終わりだからさぁ、探すのに苦労したよぉ」
何で、わざわざりんご? と由起也が思っていたら、守信がボソリと呟いた。
「ふん。りんごかよ」
呂律の回らない口でブツブツと守信は続けた。
「由信の野郎、りんごごときが食えないとか抜かしやがって。軟弱にも程があるわ」
父さんも、りんごが食べられなかったんだ。オレはそんなところまで父さんに似たのか……。
由起也は、ますます複雑な心境になった。そして何故今、わざわざ買ってきたんだろ? と、健臣の意図の読めなさに顔をしかめた。
そんな由起也の表情を目の端で捉えた健臣は、「ふーん」と一言小さく呟いた。
「伯父さん。たまには食事もしないと。ほら、りんごも剥いてあげるから」
「いらん」
「あっそ? 由起也くん。君も一緒にどうだい? ほらぁ、せっかく家族が揃ったんだから、一緒に食べようよ」
突然こちらに話を振られた由起也は、この状況でそんなことを言える健臣が恐ろしくなって、ますます台所の隅に縮こまった。
由起也の反応を見た健臣は、もう嘲笑う表情を取り繕わなくなった。
「でさぁ、由起也くんに聞きたいんだけど……。どうして君は、花城エステートに取り入って、櫛田の土地を買わせたんだい?」
「え?」
何の話かさっぱり分からない由起也は困惑した。パパさんの会社が、櫛田の土地を買った? どういうこと?
その時、ダンッ!とグラスをこたつ机に叩きつけた守信が、突然叫び出した。
「花城ぉ! お、俺の土地を、バカみたいな金額で騙し取りやがって!!」
守信は立ち上がり、足をダンダンと踏みつけながら、しばらく叫び続けた。
由起也はその守信の激昂ぶりも恐ろしかったが、守信をニヤニヤしながら見ている健臣を、もっと恐ろしく感じた。
「まぁまぁ、伯父さん。落ち着いて」
そう言って健臣は、口先だけは守信を宥めながら、由起也の方を指差した。
「花城の手先がね、……ほら、そこにいるよ」
くるりと向けられた顔には、弱い獲物を見つけた捕食者のようなゾッとする笑みが滲んでいた。
由起也の背筋が、氷を押し当てられたように冷たくなった。
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