【完結】白雪くんはりんごアレルギー〜家政夫だと思っていたら嫁入りでした!

墨済

文字の大きさ
31 / 41
6章 毒のりんごを食べてしまい

6-(4)*

しおりを挟む
由起也は、じりじりと食器棚の方へ後ずさったが、数センチほどで背が付いてしまった。
ニタリと笑みを浮かべた健臣は、由起也が慄く様子にますます笑みを深めた。
「伯父さん、こいつを縛っておいて、明日、警察に突き出そうよ」
「そうだ! は、花城の奴らを、う、訴えてやる!」

守信を焚き付けながら、健臣はその辺に転がっていたベルトを拾い上げた。
まずい! 由起也はそう思って逃げようと考えたが、それには目の前の二人を突破しなければならない。一か八かだが体当たりするため、立ち上がろうとしたが、先ほど散々蹴られたせいで足が動かない。よろよろと立ち上がり、前へ一歩踏み出した時には、健臣に肩を押され、また台所の床にバタンと転がってしまった。

「無駄な足掻きだねぇ」
そのまま二人がかりで押さえつけられた由起也は、なんとか逃げ出そうと腕と足を激しくばたつかせた。
「や、やめろ! 離せ!」
「うるせぇ!!」
そう叫んだ守信の拳が、また由起也の顔に飛んで来た。抵抗も虚しく、ベルトで腕と胴をぐるりと縛られ、足首もシャツで一括りにされてしまった。ご丁寧にタオルで猿轡までされてしまう。
「むぐーー! んぐ! んーー!!」
「あ、明日、警察に突き出してやる。この裏切り者!」

裏切り者ってなんだよ! お前らのことなんて、ついこないだ知ったばっかだよ! 家族だとも思ってねーよ!!
由起也はそう言い返してやりたかったが、猿轡のせいでうめき声しか出せない。悔しさに涙が滲んできそうだったが、こいつらに涙なんて見せてたまるかと、必死に我慢した。

由起也を縛り上げて満足したのか、守信はまた定位置に座り込み、ウイスキーをガブガブと飲み始めた。健臣は、捕らえた虫でも観察するように、床でもがく由起也をしばらく見つめた後、こたつのところに置いてあったりんごを手にして、台所へ戻ってきた。そして、流し台の下の扉を開け、小さな包丁を取り出して、りんごを剥き始めた。

「ほんと、今更だよねぇ。由信に子どもがいたなんて、本当に迷惑だよ」
りんごをくし切りにしながら、健臣は由起也に聴かせるでもなく、話し始めた。

「俺の親父は、守信伯父さんの弟でね。櫛田の土地は相続しなかったんだよ。だから櫛田の資産はほとんどが守信伯父さんのものになったんだ。親父がうまくやってたら、半分は手に入って、それが俺のものになるはずだったんだよねぇ。けど、親父は何一つ残しちゃくれなかった」

健臣は器用に手を動かしながら、話し続けている。
「俺にだって、櫛田の土地をもらう権利はあるはずなのに、法律では全部由信のものになっちまう。理不尽だよねぇ」

法学部の学生である由起也は、授業で聞いた相続の順について思い出した。法律的には、息子の由信が生きていれば、守信の財産が甥の健臣に行くことはない。けれど、由信は亡くなってしまった。その財産はどこに行くかと言えば……。

「10年も行方をくらましていた由信が戻ってきた時の俺の気持ちがわかる? じっと待っていればそのうち、ぜーんぶ転がり込んできたはずだったんだよ」

――代襲相続。死亡者に子がいなければ兄弟に、その兄弟が死亡していればその子、つまり甥姪に相続権が移る。

「だからさ。由信には消えてもらったんだよ」

由起也は一瞬、何を聞かされたのか飲み込めなかった。次第に、健臣が父を殺したと告白したのだと気づき、血が逆流するような怒りが湧いてきた。

「んむぅぐー! んぐーー!!」
必死で叫ぶが、猿轡が邪魔をして、健臣をなじることができない。フーフーと荒い息がタオルの端から漏れる。
――ふざけんな! ふざけんな! ふざけんな!!
由起也は拘束された体を捩り、なんとか抜け出そうとするが、固く閉められたベルトは全く外れそうにない。

床の上でもがく由起也を冷めた目で一瞥した健臣は、皿に入れたりんごを持って、こたつの方へ行く。そこでは守信がこたつに突っ伏し、小さないびきをかいて眠っていた。
「あーあ。伯父さん、寝ちゃったかぁ」
そう言って立ったままりんごを一切れかじる。しゃくっという音の後、咀嚼音が聞こえてくる。健臣はりんごをゴクリと飲み込んだ後、仕方なさそうな声音で言った。

「これだけ深酒してたら、弾みで人を刺しちゃうことだって、あるよねぇ」

そうだ。オレが父さんの子、守信の孫なら、守信の財産は全部、こいつのところではなく、オレのところに来る……!

由起也はようやく健臣の意図に気づき、戦慄した。
こいつ、オレを殺す気だ……!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています

水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」 王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。 一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……? 勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!

優等生αは不良Ωに恋をする

雪兎
BL
学年トップの優等生α・如月理央は、真面目で冷静、誰からも一目置かれる完璧な存在。 そんな彼が、ある日ふとしたきっかけで出会ったのは、喧嘩っ早くて素行不良、クラスでも浮いた存在のΩ・真柴隼人だった。 「うっせーよ。俺に構うな」 冷たくあしらわれても、理央の心はなぜか揺れ続ける。 自分とは正反対の不良Ω——その目の奥に潜む孤独と痛みに、気づいてしまったから。 番なんて信じない。誰かに縛られるつもりもない。 それでも、君が苦しんでいるなら、助けたいと思った。 王道オメガバース×すれ違い×甘酸っぱさ全開! 優等生αと不良Ωが織りなす、じれじれピュアな恋物語。

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

君に二度、恋をした。

春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。 あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。 ――もう二度と会うこともないと思っていたのに。 大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。 変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。 「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」 初恋、すれ違い、再会、そして執着。 “好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか―― すれ違い×再会×俺様攻め 十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...