【完結】白雪くんはりんごアレルギー〜家政夫だと思っていたら嫁入りでした!

墨済

文字の大きさ
33 / 41
6章 毒のりんごを食べてしまい

6-(6)

隆平は、隣県の櫛田の家へ向かう車の中で、窓の外を眺めていたが、焦りと苛立ちが抑えきれず、寛治に問いただした。

「父さんは、由起也のことを調べさせてただろ? そん時にわからなかったのかよ」
隆平は、由起也が花城家で働くことが決まった時に、寛治が身辺調査をしていたことを思い出していた。あの時の茶色い封筒の中には、櫛田につながる情報があったのではないか?

寛治は小さくため息をついた後、答えた。
「身辺調査では、ずいぶん前に絶縁している親族のことなんて、わからないよ」
寛治は悔しそうな声が出そうになるのを押し隠し、冷静を装って言った。

「社長は悪くありませんよ、隆平さん。それはわかっておられるでしょう?」
運転をしながら高木が助け舟を出した。
「完全に櫛田の逆恨みです」

そんなことはわかっている。わかってはいるが、隆平の焦りは募るばかりだ。
――由起也……。無事でいてくれ。
隆平は拳をさらにぐっと強く握り込みながら、窓の外を見やった。けれど、夜に呑まれつつある街並みはまったく目に入ってこなかった。

***

隆平たちがナビを頼りに櫛田の家に着くと、早くも警察が静かに包囲していた。パトカー2台に、覆面らしき乗用車も2台来ていて、住宅街の狭い道路にひしめいている。隆平たちとほぼ同時に、救急車が少し離れた場所に到着したのを見て、隆平は顔色を変えた。
「まさか……。由起也が怪我でも……」
「落ち着いてください、隆平さん。救急の待機は念の為だと思います」
高木からそう言われた隆平はひとまずほっとしたが、由起也が何らかの暴力を受けることを警察が想定していることに気付き、焦燥感が増した。

櫛田の家の中からは生垣で見えない道路の隅で、警察官らしき人たちが打ち合わせをしていた。高木が声をかけ、自己紹介を手早く済ます。

「では、こちらが白石さんのご家族の方ですか?」
「はい!」
「そうです」
隆平と寛治は異口同音に言った。高木は苦笑して、簡潔に訂正する。
「いえ、白石くんは身寄りがなく、こちらの私どもの社長の家で住み込み家政夫をしています」
「なるほど?」
「ところで状況は?」
高木が私服警官に水を向けた。
「家の中にいるのは間違いないようです。どうやら、容疑者の甥が来ているようで、今、裏に回ったうちの者が中の様子を伺っています」

隆平がガレージの方を見ると、小洒落た小さな青い外国車が停まっているのが見えた。なるほど、愛車も勘違い野郎が選びそうな車種だな、と心の中で毒づく。

ピンポーン。門扉の横のインターホンを、警官が押した。
「櫛田さーん。いらっしゃいますよね。警察です。開けてもらえませんかー」
警官が二人、玄関ドアの前に張り付き、大きな声で呼びかける。しかし当然、返事は返ってこない。

隆平はそっと寛治と高木のそばを離れ、家の裏手へ回った。
荒れ果てた庭は、玉砂利のところ以外は雑草が生い茂り、何の木が植っているのか判別できない。隆平は足音を立てないよう慎重に進んでいくと、カーテンの隙間から灯りが漏れる窓のそばで、警官と刑事が、腰を屈めて中の様子を伺っていた。

その時、ガシャン!と何かが割れる音が中から聞こえた。
警察官も隆平も、ハッと身構えた。

「櫛田さん! 今の音は何ですか? 中の安全を確認します。応答してください!」
家の表側から、警官が呼びかける声と、扉を叩く音が聞こえてくる。
その次の瞬間、

「助けて!!!」

と叫び声が中から聞こえてきた。
由起也の声だ!!

「裏、破壊許可! 突入!」
そばにいた刑事がそう言った時には、隆平はもう動き出していた。隆平は右肩で窓ガラスに体当たりをした。
ガシャァン!!
割れた窓から突っ込むと同時に、隆平は叫んだ。

「由起也!!!」


感想 0

あなたにおすすめの小説

ガラス玉のように

イケのタコ
BL
クール美形×平凡 成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。 親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。 とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。 圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。 スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。 ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。 三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。 しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。 三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。

新生活始まりました

たかさき
BL
コンビニで出会った金髪不良にいきなり家に押しかけられた平凡の話。

【完結】君が笑うから、俺は諦められない

Lillyx48
BL
職場の先輩と後輩の恋のお話

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

好きです、今も。

めある
BL
高校の卒業式に、部活の後輩・安達快(あだち かい)に告白した桐越新(きりごえ あらた)。しかし、新は快に振られてしまう。それから新は大学へ進学し、月日が流れても新は快への気持ちを忘れることが出来ないでいた。そんな最中、二人は大学で再会を果たすこととなる。 ちょっと切なめな甘々ラブストーリーです。ハッピーエンドです。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?