始まりの竜

朱璃 翼

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三部 神具編

閉ざされた竜王山2

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「街だが、住民は眠っているだけで危害は受けていなかった」

 深夜、部屋に集まり報告をする二人。事前に星霜から聞いた話もあり、一部は確認してきた結果だ。中にいた邪教集団は、すべて氷漬けになっていたことも確認済みだ。

 住民は二人で眠らせたと星霜は言った。その後の安全確認だけをして、二人は偵察を続けていた。

「朱華は中にいなかった。たぶん、あの氷が溶けたら中にくるんだと思う」

 陽霜と星霜。二人の王により作られた氷。いくら力があっても簡単には溶かせないのだろう。

 中へ入るにも、どちらかの力を借りなくてはいけない。朱華を始め、逃げた邪教集団は入れないのだ。

「氷を溶かさず神具を取り戻す。それから溶かし、内部にいる邪教集団を追い払う。それが一番だろう」

 連戦は避けられないが、氷がある限り安全なら利用するべきだ。

「氷は氷穂、陽霜殿の代わりにやれるな」

「えぇ。あるものを支えるだけでいいなら、私にもできる」

 念のため護衛にユフィを残すことを決めると、残りは竜王山内部を目指すことで一致した。

 話が決まれば、彼らはすぐさま動いた。休憩をとるかと問われ、柊稀と黒耀は問題ないと言ったためだ。

 氷漬けにされた街。星霜が身体に触れると、ひんやりとした感覚が身体を包む。

 たったそれだけで街へ入れるようになる。それをしなければ、街へ入ったとたんに身体が凍るのだと、彼は説明した。

「陽霜はこっちにいる」

 複雑な裏道を通り抜け、一軒の家へ入っていく。さらに床を剥がし、地下への階段を降りていけば星霜に似た青年がいた。

 違いがあるとしたら、星霜は乱暴そうだが陽霜は頼りない、弱々しい雰囲気だということ。

「来たね。さっき聞いていたから、すぐに来るとは思っていたよ」

 柔らかい声が発せられる。ただ、意味はよくわからなかった。

 柊稀と黒耀の二人は、陽霜とは会っていない。会えれば会いたかったが、居場所がわからなかったからだ。

 暖かい眼差しを追えば、飛狛達に向かっている。さすがに視線を逸らす三人。

「いや、なに……昔の遊び場に行ってみたらよ」

「彼がいたんですよね」

「参るよね。まさか、俺達が遊んでいた場所にいるなんて、思わないし」

 いや、なぜ街に入れたという視線と、なにしに来たんだという視線を浴びながら、三人が苦笑いを浮かべる。

「残ってるもんなんだなぁ」

「えぇ、よく狛琉が閉じ込められていましたね」

 笑いながら昔を懐かしむ双子に、ため息をつく飛狛。それは知らないと言いたいようだ。

 自分よりも悪戯をしていたのだと、改めて知った瞬間である。

「ここは、陽霜が床抜いて落ちたんだよ。で、みつけた。家はずっと空き家としてあったぜ」

「へぇ、そうなんだ。懐かしいな……」

 けれど、懐かしいと言いながらどこか寂しげな表情だった。それに気付いたのは双子と黒欧だけ。

 空気を切り替えるようユフィが手を叩く。

「じゃあ、氷穂と俺が残るから、あと頼むな!」

「残り二つ。そして、無事に朱華さんを取り戻してください」

「うん。取り戻すよ」

 力強く答えると、柊稀は陽霜を見る。

「話は聞いているよ。だから、僕は関わらないから安心して」

 事前に飛狛達と接触したことで、彼はすべてを理解していた。自分達を襲った女性が、実はどのような存在なのかも。

 それでも傍にいてほしい。そう願う柊稀の気持ちを知り、関わらないと約束もしていたのだ。

「行こうぜ。俺と陽霜で、まずは光の神具だ」

 説明の手間が省けたと星霜は笑う。時間との勝負だと思っていただけに、最悪戦いながら話す覚悟だったのだ。

「わかったよ。戦闘は任せたけど」

「ずるっ」

「得意だろ」

 ぶつぶつと文句を言う星霜に、陽霜は笑いながら家から出ていく。

「こんな氷を維持しといて、戦えないわけないじゃない」

 疲れた様子も見せない青年に、瑚蝶は世界は広いと実感していた。

 裏道から表通りへ行き、真っ直ぐと竜王山を目指す。すると竜王山手前の野原に、一人の女性がいた。

 遠目からもわかる銀髪の美しい女性。その手に強い力を放つ剣を握り。

「琥珀姉さんだ。光の神具使い手。聖なる王の双子の妹。強力な攻撃魔法を得意とする」

「俺らも全盛期の力、知らねぇな」

「子供産んでから、身体壊しましたからね」

 興味深いと三人が楽しげに見る体制に入り、柊稀達が苦笑い。この三人は本当に楽しんでいるようだ。

「聖なる王の妹かぁ。楽しいじゃん。魔法は任せたからな」

「わかってるよ」

 みんながえっ、と慌てるなか、二人は気にした素振りも見せずに近寄っていく。

「大丈夫だ。陽霜殿も星霜殿も強いから」

「さすが。仕える王のことは理解してるか」

 楽しそうにニヤリと笑う秋星に、彼は当然だと頷いた。仕える王は見た目で判断してはいけない。誰よりもわかっていた。





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