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三部 神具編
閉ざされた竜王山3
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ゆっくり近づいていた二人は、星霜が唐突に攻撃へ入った。先制をかけるよう出れば、手にしているのは見慣れない剣。
氷刀と呼ばれる片刃の物で、この世界では大変珍しい武器。遥か昔、双子の魔法槍士が使っており、保管されていたのだ。
刃が重なり合い、頭上から襲いかかる雷。それを陽霜の作りあげた氷壁が護る。
星霜が一歩引くのと同時に氷壁が崩れ落ちる。
「氷斬激! 氷凍波!」
本来なら刃が敵に当たれば敵を凍らすことができたが、一撃目は受け流されてしまう。
しかし予測済みだったのか、冷風と共に氷の塊を大量に放つ。
「聖竜白斬雷!」
向かってくる氷を巻き上げ、雷を帯びた一撃が星霜へ向かう。直撃はなんとか逃れるも、星霜は体制を崩した。
「旋冷風!」
迫る琥珀を行かせまいと、いつのまにか背後に回っていた陽霜は冷風の渦へ巻き込む。
陽霜がゆっくりと氷刀を構える。腰を沈め、攻撃体制だ。
渦から解放された琥珀が前後を見る。どちらからやるか、考えているのかもしれない。
造られた使い手に思考能力があるかはまったくの謎であるが。
怪我が響いているのか、星霜はまだ立て直せていない。標的にならないよう陽霜が動く。
刃を重ね合わせ、弾かれる。その隙に二人へ襲いかかる雷。
地面を平然とえぐる雷に、直撃は許されないと二人がギリギリの攻防をする。少しでも威力を落とすため、氷壁を作り避けたのだ。
「陽霜、やるぜ」
「いつでもどうぞ」
二人が同時に同じ構えを見せた。そして、一気に間合いを詰める。
「氷双桜激破!」
メインとなって突っ込むのは星霜。頭上から飛びかかるのは陽霜。上と下から同時攻撃の、同じ力をもつ二人だからできる攻撃だった。
氷となり砕け散る身体。浮いている神具を見ると、二人は少しだけ表情を翳らせた。
「取り戻せば、消えるんだよな」
「新しく、なるんだよ。そう言っていたよ」
新しくなると言えば聞こえはいいのかもしれない。けれど、これは消えてしまう。
初代から天竜王を見守り続けた神具は、消えてしまうのだ。
「覚えてるか」
「うん。いつも見守ってくれていた」
神具が置かれている場所からは、いつも暖かな光を感じた。それが、神具が見守る証だと教えてもらった。
その光を消してしまう。そんな思いが、二人の手を止めさせる。
「けど、このままは苦しいと思う」
「俺達の手で終わらせるしか、ねぇんだよな」
「そして、始めるんだよ」
ここからもう一度、神具と天竜王が歩む道を始めるのだ。
気持ちが定まれば、もう迷うことはない。二人は同時に神具を手にした。
暖かい陽射しに、ゆっくり周りを見てみる。広がるのは見慣れた庭。竜王山内部にある天竜王の住居。
二人はすぐさまどこにいるか気付く。自分達は今、神具の視点で見ているのだと。
「神具の記憶……」
「みたいだな。今まで見てきたものなんだ」
嵐のように過ぎ去っていく記憶の渦。歴代の王。歴代の家族。楽しく幸せな日々。
もちろん、いい記憶だけではなく、悪い記憶もある。
二人の中で印象強かったのは、過去から来た三人と同じ赤混じりの黒髪が特徴な青年が、友人であろう人物の死を見守る姿。
その青年がここへ通う姿。他にも、ちらりちらりと通う姿がある。仲間なのだとすぐにわかった。
そんな中、二人がハッとしたように注目したのは、二人の男女が神具の前に立っている姿だ。
「おい…」
「先程の女性だね」
ならば隣に立つのが聖なる王となる。歴代の中で、一番の支持率を持つ賢王。
――時代が変われば変化があるのは当然。我はすべてを見てきた。ここから、初代天竜王から現在までを。血の繋がりを気にする必要はない――
神具の声なのだと、すぐにわかった。神具が二人へ語りかけている。
そして、これは自分達へも語りかけている。なぜだかそんな気分になった。
「時代が変われば、変化があるのは当然、か……」
「僕達が励まされている気分だね」
「まったくだぜ。やるか」
「はい」
二人は笑みを浮かべると、神具を取り戻すために魔力を放った。
以前、双子の兄妹が神具の試練に打ち勝ち助けてもらった代わりに、今度は双子の兄弟が助けるのだ。
そう、あくまでも助ける。自分達をずっと見守ってくれていた神具。邪教集団により汚されたから助ける。
――ありがとう――
力が消えていく気配と同時に、そんな声が聞こえてきた。神具の最後の声が――――。
誰かが近づいてくる気配に、二人が振り返る。目の前で金色に輝く瞳が二人を見ていた。
神具は始祖竜に戻り、光り輝く玉を差し出される。受けとるかと金色に輝く瞳が言う。
「僕達は二人で一人。だから、これも二人で使いたいんだ」
いいかなと問いかければ、柏羅が頷く。
問題がないとわかれば、二人が同時に光へ手を伸ばす。見守り続けた光が再び身体を包んでいく。
「これが、新しい神具。俺達にぴったりだな」
片刃の武器に二人が笑う。氷刀と同じように、同じ形をした二本の神具が二人の手元に握られている。
「ここから始めよう。新しい神具と歩む、王の道をさ」
「あー、めんどくせぇな。他の奴らにやらせろよ」
無理だろ、との突っ込みをする者はいなかった。ユフィがいれば話は違ったかもしれないが。
王を他の奴らにやらせろとは、どうやれば出てくる発想なのか。一同は苦笑いしながら双子の天竜王を見た。
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氷刀と呼ばれる片刃の物で、この世界では大変珍しい武器。遥か昔、双子の魔法槍士が使っており、保管されていたのだ。
刃が重なり合い、頭上から襲いかかる雷。それを陽霜の作りあげた氷壁が護る。
星霜が一歩引くのと同時に氷壁が崩れ落ちる。
「氷斬激! 氷凍波!」
本来なら刃が敵に当たれば敵を凍らすことができたが、一撃目は受け流されてしまう。
しかし予測済みだったのか、冷風と共に氷の塊を大量に放つ。
「聖竜白斬雷!」
向かってくる氷を巻き上げ、雷を帯びた一撃が星霜へ向かう。直撃はなんとか逃れるも、星霜は体制を崩した。
「旋冷風!」
迫る琥珀を行かせまいと、いつのまにか背後に回っていた陽霜は冷風の渦へ巻き込む。
陽霜がゆっくりと氷刀を構える。腰を沈め、攻撃体制だ。
渦から解放された琥珀が前後を見る。どちらからやるか、考えているのかもしれない。
造られた使い手に思考能力があるかはまったくの謎であるが。
怪我が響いているのか、星霜はまだ立て直せていない。標的にならないよう陽霜が動く。
刃を重ね合わせ、弾かれる。その隙に二人へ襲いかかる雷。
地面を平然とえぐる雷に、直撃は許されないと二人がギリギリの攻防をする。少しでも威力を落とすため、氷壁を作り避けたのだ。
「陽霜、やるぜ」
「いつでもどうぞ」
二人が同時に同じ構えを見せた。そして、一気に間合いを詰める。
「氷双桜激破!」
メインとなって突っ込むのは星霜。頭上から飛びかかるのは陽霜。上と下から同時攻撃の、同じ力をもつ二人だからできる攻撃だった。
氷となり砕け散る身体。浮いている神具を見ると、二人は少しだけ表情を翳らせた。
「取り戻せば、消えるんだよな」
「新しく、なるんだよ。そう言っていたよ」
新しくなると言えば聞こえはいいのかもしれない。けれど、これは消えてしまう。
初代から天竜王を見守り続けた神具は、消えてしまうのだ。
「覚えてるか」
「うん。いつも見守ってくれていた」
神具が置かれている場所からは、いつも暖かな光を感じた。それが、神具が見守る証だと教えてもらった。
その光を消してしまう。そんな思いが、二人の手を止めさせる。
「けど、このままは苦しいと思う」
「俺達の手で終わらせるしか、ねぇんだよな」
「そして、始めるんだよ」
ここからもう一度、神具と天竜王が歩む道を始めるのだ。
気持ちが定まれば、もう迷うことはない。二人は同時に神具を手にした。
暖かい陽射しに、ゆっくり周りを見てみる。広がるのは見慣れた庭。竜王山内部にある天竜王の住居。
二人はすぐさまどこにいるか気付く。自分達は今、神具の視点で見ているのだと。
「神具の記憶……」
「みたいだな。今まで見てきたものなんだ」
嵐のように過ぎ去っていく記憶の渦。歴代の王。歴代の家族。楽しく幸せな日々。
もちろん、いい記憶だけではなく、悪い記憶もある。
二人の中で印象強かったのは、過去から来た三人と同じ赤混じりの黒髪が特徴な青年が、友人であろう人物の死を見守る姿。
その青年がここへ通う姿。他にも、ちらりちらりと通う姿がある。仲間なのだとすぐにわかった。
そんな中、二人がハッとしたように注目したのは、二人の男女が神具の前に立っている姿だ。
「おい…」
「先程の女性だね」
ならば隣に立つのが聖なる王となる。歴代の中で、一番の支持率を持つ賢王。
――時代が変われば変化があるのは当然。我はすべてを見てきた。ここから、初代天竜王から現在までを。血の繋がりを気にする必要はない――
神具の声なのだと、すぐにわかった。神具が二人へ語りかけている。
そして、これは自分達へも語りかけている。なぜだかそんな気分になった。
「時代が変われば、変化があるのは当然、か……」
「僕達が励まされている気分だね」
「まったくだぜ。やるか」
「はい」
二人は笑みを浮かべると、神具を取り戻すために魔力を放った。
以前、双子の兄妹が神具の試練に打ち勝ち助けてもらった代わりに、今度は双子の兄弟が助けるのだ。
そう、あくまでも助ける。自分達をずっと見守ってくれていた神具。邪教集団により汚されたから助ける。
――ありがとう――
力が消えていく気配と同時に、そんな声が聞こえてきた。神具の最後の声が――――。
誰かが近づいてくる気配に、二人が振り返る。目の前で金色に輝く瞳が二人を見ていた。
神具は始祖竜に戻り、光り輝く玉を差し出される。受けとるかと金色に輝く瞳が言う。
「僕達は二人で一人。だから、これも二人で使いたいんだ」
いいかなと問いかければ、柏羅が頷く。
問題がないとわかれば、二人が同時に光へ手を伸ばす。見守り続けた光が再び身体を包んでいく。
「これが、新しい神具。俺達にぴったりだな」
片刃の武器に二人が笑う。氷刀と同じように、同じ形をした二本の神具が二人の手元に握られている。
「ここから始めよう。新しい神具と歩む、王の道をさ」
「あー、めんどくせぇな。他の奴らにやらせろよ」
無理だろ、との突っ込みをする者はいなかった。ユフィがいれば話は違ったかもしれないが。
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