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森の魔女と土地の主
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「で、結局あんたが俺達が探していた聖母の森の魔女ってことでいいのか?」
案内されるままについて行くと、森の開けた場所に魔女の家があった。大きな畑のある庭を抜けて家の中に通されたところで先程のアランの質問であった。
「そうね。森の魔女って呼ばれ方はしっくりこないところだけれど、私があなた達が探していた人物でいいと思うわ」
質問に答えた後、魔女はダイニングテーブルにヴァン達を座らせて、ハーブティーを振る舞った。
「ここの庭で育てたハーブを使っているの。市場にも出しているのよ」
ヴァンは納得した。だから市場で魔女の容姿について知ることができたのだ。市場に商品を卸す際、名前と住所を登録するのが普通である。先日デフィの店でヴァンもそうしたばかりであった。つまり、ハーブを卸した店の店主が聖母の森から絶世の美女が来たと友人にでも漏らしたのが噂の発端であると思われた。
「あの、あなたは僕達のことを知っているんですか?」
ヴァンは多数ある疑問の中から一つを選んで口にした。
「あなたはヴァン君、隣がアラン君、そしてサクラちゃんとハナちゃんね。ごめんなさい。私がガニアンから聞いているのはそれだけ」
やれやれとヴァンは思う。結局祖父はこの聖母の森の魔女のことを最初から知っていたのだ。それで今日孫達が会いに行くと伝えていたのだろう。ハナやサクラの名前まで伝わっているということは、今朝出発するところをどこからか見ていたということだ。
「申し遅れました。小生はグルナイユと申します。ご縁がありましてこの方々と同行しておりました」
名前が伝わっていなかったグルナイユが自己紹介をする。
「ご丁寧だにありがとう。グルナイユさん。私も申し遅れましたが、セヘル・アルカディーマといいます。そしてこちらはヤオシュ・モファさんよ」
ついでに紹介された老婆がヒラヒラと手を振っている。
「突然で大変不躾なのですが、あなた様はこの土地お主様でしょうか?」
「いいえ。私は主ではないわ。だけれど御用があるならばご紹介しましょうか?」
「是非よろしくお願いいたします!」
思わず身を乗り出したグルナイユの表情が明るくなる。はぐれてしまった主人に対して申し開きができる算段がができて嬉しいのだろう。
「では後ほど。毎日家に来てくださるからここで会えますよ」
ヴァンも主に多少の興味があったのでついでに見させてもらおうと思った。
「うちのじいさんはどこだ? いや、それよりじいさんとはどういう関係だ?」
最初セヘルを見たときはさすがにアランも言葉を失っていたが、いつもの怖いもの知らずの態度に戻っていた。アランはもともと美女に弱いというタイプではなかった。ヴァンにしても、絶世の美女というものに興味があったものの、もう興奮は冷めていた。ヴァンは結局のところハナに対して一途であった。
案内されるままについて行くと、森の開けた場所に魔女の家があった。大きな畑のある庭を抜けて家の中に通されたところで先程のアランの質問であった。
「そうね。森の魔女って呼ばれ方はしっくりこないところだけれど、私があなた達が探していた人物でいいと思うわ」
質問に答えた後、魔女はダイニングテーブルにヴァン達を座らせて、ハーブティーを振る舞った。
「ここの庭で育てたハーブを使っているの。市場にも出しているのよ」
ヴァンは納得した。だから市場で魔女の容姿について知ることができたのだ。市場に商品を卸す際、名前と住所を登録するのが普通である。先日デフィの店でヴァンもそうしたばかりであった。つまり、ハーブを卸した店の店主が聖母の森から絶世の美女が来たと友人にでも漏らしたのが噂の発端であると思われた。
「あの、あなたは僕達のことを知っているんですか?」
ヴァンは多数ある疑問の中から一つを選んで口にした。
「あなたはヴァン君、隣がアラン君、そしてサクラちゃんとハナちゃんね。ごめんなさい。私がガニアンから聞いているのはそれだけ」
やれやれとヴァンは思う。結局祖父はこの聖母の森の魔女のことを最初から知っていたのだ。それで今日孫達が会いに行くと伝えていたのだろう。ハナやサクラの名前まで伝わっているということは、今朝出発するところをどこからか見ていたということだ。
「申し遅れました。小生はグルナイユと申します。ご縁がありましてこの方々と同行しておりました」
名前が伝わっていなかったグルナイユが自己紹介をする。
「ご丁寧だにありがとう。グルナイユさん。私も申し遅れましたが、セヘル・アルカディーマといいます。そしてこちらはヤオシュ・モファさんよ」
ついでに紹介された老婆がヒラヒラと手を振っている。
「突然で大変不躾なのですが、あなた様はこの土地お主様でしょうか?」
「いいえ。私は主ではないわ。だけれど御用があるならばご紹介しましょうか?」
「是非よろしくお願いいたします!」
思わず身を乗り出したグルナイユの表情が明るくなる。はぐれてしまった主人に対して申し開きができる算段がができて嬉しいのだろう。
「では後ほど。毎日家に来てくださるからここで会えますよ」
ヴァンも主に多少の興味があったのでついでに見させてもらおうと思った。
「うちのじいさんはどこだ? いや、それよりじいさんとはどういう関係だ?」
最初セヘルを見たときはさすがにアランも言葉を失っていたが、いつもの怖いもの知らずの態度に戻っていた。アランはもともと美女に弱いというタイプではなかった。ヴァンにしても、絶世の美女というものに興味があったものの、もう興奮は冷めていた。ヴァンは結局のところハナに対して一途であった。
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