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第1部
第16話 好き
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あえて、外して指を動かしていた。
なにをって前立腺をだ。
ようやく三本の指を飲み込むくらいに広げた後孔は蠢くように俺の指を締めつけてくる。
わずかに眉を寄せた夾はギラギラとした目で俺を睨んでいた。
おっかない眼差しだけど怖くはない。
もっと睨んでくれてもいーのに、なんて思う俺はおかしいのか。
「気持ちいい?」
笑顔で笑いかけると、
「いい加減にしろよ?」
って低い声が返ってくる。
でも少し掠れて熱を帯びているその声にもともと緩んでた口元がさらに緩んで、唐突に蹴られた。
そんな強くってわけでもないけど開いていた右足が腹部を蹴ってきて、ちょっと後にのけぞって自然と指が抜けた。
ローションのせいでちゅぽん、と空気を含んだ水音が抜けた瞬間した。
「えー俺頑張ってんのに。気持ちよくなかった?」
俺を蹴ってきた脚を掴んで太股に唇を寄せながら指を再挿入する。
ご機嫌をとるように前立腺を擦りあげてみたらひと際きつく中が締まる。
は、と艶のある息を吐きだし夾は目を眇めるとまた右足を動かして今度は俺の肩を押す。
ぐぐっとわりと強めに押され後手をついたら夾が身体を起こしてきた。
視界が反転して仰向けになった俺に夾が跨る。
「指はもういい」
飽きた、とでも言うように夾が腰を上げて、硬く張りつめた俺の半身を握った。
ぬるり、とした感触が半身から伝わる。
夾の手によって夾の後孔に宛がわれた俺の半身。
その先端がぬるぬると生温かいぬめりに擦られて硬度が増すのを感じた。
朱に染まった夾の引き締まった肌。その腹部がこれからの衝撃を予測してか少し震えて力が込められるのが見て取れて。
「挿れるぞ?」
あれ、どっちが上だっけ? ってくらいの男らしい言葉とともに俺の半身が少しづつ熱に包まれていく。
狭い熱い夾の中にゆっくりと沈んでいく。
自ら腰を落として俺のを飲みこんでいく夾の口元には挑発するような笑みが浮かんでいて、その男らしいのに色香が漂う様に、悔しいけど頭の中のネジがボンボン抜けてくのを感じた。
あー……、ガンガン突きまくりたい。
ぐぐ、っと俺の全部が飲み込まれる。
俺と夾の肌が境なく触れあって、視線が絡み合う。
ぺろり、と夾は自分の唇を軽く舐めると腰を動かし始めた。
視覚的にもかなりやばい。
夾が腰を浮かせれば必然俺のが夾の中から抜けていく。
騎乗位だから結合部ははっきりと見えていて、俺のが出ては飲み込まれていく様子が生々しくてヤらしい。
綺麗についた筋肉が動くさまも、夾の腹部につきそうなくらいに反り勃つ半身も、目眩がするくらいエロくて――我慢できるわけがない。
ずるり、と抜けていく。夾のタイミングで落ちてくる腰。それを俺のタイミングで遮った。
「……ッ」
ドン、と下から打ちつけると不意をつかれたせいか夾の中がぎゅっと締まる。
俺の反撃に目を細める夾にいままでにないくらいの衝動が湧きあがる。
手を伸ばして夾の腰を掴むと突き上げ始めた。でも夾がやられっぱなしになるわけもなくて、すぐにリズムを合わせ腰を揺らしだす。
部屋の中には肉同士がぶつかり合う音が響き渡る。
気持ちよくて、そして足りない。
身体を起こして夾の首に腕を回して引き寄せた。
視線が絡んだのはほんの一瞬。
俺が突っ込んでるのに、目はまるで野獣のようにギラギラしてて噛みつくように唇が触れてきて、俺も貪るように唇をあわせ、舌を絡め合わせる。
理性とか余裕とか思考とかどんどん消えてって、ただ本能だけでキスして腰を打ちつけて、夾の硬くなった半身を扱いて、全部味わっていく。
互いの咥内を舌が行き来して、宙で交わらせて。
俺の手の中で脈打つ夾のものをもっと先走りを溢れさせようと、射精を促そうと強弱をつけながら扱く。
キスの合間の荒い息遣いが色づいていて耳に入ってくると、ぞくぞくと背筋が震える。
「もっと、声聞かせてよ」
そう囁けば、色気を滲ませながらも男前さを失わない夾はにやりと口角を上げて俺のを締めつける。
「じゃあもっと追い立ててみせろよ」
どこまでも挑発してくれる夾に応えないわけがない。
夾の身体をベッドに沈め、うつ伏せにさせて今度は後から突き上げる。
しなやかな背中にキスしながら夾の半身を弄り、逞しい胸の頂も弄ってやれば掠れた吐息が悩ましげな響きを含みだして腰がどうしようもなく激しく動いた。
ガツガツと律動を繰り返す中で、
「ッ、ぁ」
呻く声がしたと思ったら俺の掌に熱いものが吐き出され、同時に夾の身体が痙攣する。
ひどく収縮する後孔に俺も一気に持っていかれて欲を吐きだした。
はぁはぁ、と荒い息がどちらのものかわからないくらいに混ざる。
余韻に浸るように夾に覆いかぶさったままでいれば「おい……」と肩越しに振り返った夾が不敵に笑う。
「まだ、終わりじゃねぇよな?」
俺は夾の背中を抱きしめながら、笑った。
まだ埋めたままの半身はまた硬度を持ち出す。
「まだ、これからだろ?」
言いながら、動きだした。
吐きだした白濁とローションの交る水音と、ベッドの軋む音。
肌がぶつかり合う音と、唾液の混ざり合う音と、獣のような息遣いと。
しばらくの間、それらが止むことはなかった。
***
「疲れた!」
狭いベッドの上で大の字になって大きなため息を吐きだした。
もちろんスッキリ大満足だけど、疲れたのは疲れた。
奏くんともヤってはいた。でも本当の意味で男を抱いたって感じたのは今日。
「もっと体力つけろ」
ヤリはじめてどれくらい経ったのか。
三回戦まで立て続けにヤったって、かなり頑張ってない?
そんな思いを込めて視線を向けると、ベッドの端に脚を下ろしていた夾は煙草に火をつけながら鼻で笑った。
情交のあとが色濃く残る部屋の中は暖房がよく効いていて、そこに煙草の匂いが混じりだす。
「毎日ヤってたら体力つくんじゃないかな」
夾の匂いが充満する空気。
シャンプーだとか香水だとかそんな可愛い匂いはまったくないけど落ちつく。
「毎朝ジョギングしろ」
紫煙が俺に向かって吐きだされる。
「朝、寒いなぁ」
真冬の早朝は辛い、と身も凍る朝の冷気を思い出して無理だなって確信。
ヘタレ、と笑う夾に、地味に筋トレがんばります、と返しながら綺麗な筋肉についた赤い痕を眺める。
首筋と、背中と。
手を伸ばして指先でそれに触れて、
「本当によかったの?」
と、なんとなく訊いてみた。
いやならヤらないだろうってのはわかってる。
「あ?」
ただ突っ込んでよかったのかなーと。
夾ってネコなんだろうかって考えるとそうでもないような気もするし。
俺が言いたいことを察したんだろう。煙草をくわえたまま夾はなんでもないことのように笑って言った。
「惚れてる相手になら突っ込まれても構わねぇよ」
本当にあっさりとした、さらりとした口調。
その言葉を咀嚼するのに少し呆けた俺を夾が睨む。
「お前は違うのか?」
「違わない!」
とっさに言えば、夾の口元が当然だろと緩んだ。
俺も、緩む。にやにやしちゃってヤバいくらい、緩む。
「夾、好き」
夾の身体に腕を巻きつけてうなじに唇を寄せた。
言ってしまえば、またヤバいくらいにやけてしまう。
「……おい」
「ってぇ!」
同時に疼きだした身体に、夾の肌へと手を滑らせ始めれば遠慮なしにつねられた。
「シャワー浴びるからやめろ」
「えー? いまの流れって四回戦の合図だろ?」
「違う。ヤんならシャワーと飯食ってからだ」
俺の腕をほどいて煙草を消して立ち上がる夾に俺も一緒に立ちあがる。
「じゃあ俺もシャワー浴びる」
「狭いから来るな」
「だって夾の中に出したやつも掻きださなきゃだろ? 平気平気」
舌打ちしながらしょうがねぇなと、
「大人しくしてろよ、智紀」
ため息をつく夾。
その言葉に――俺が大人しくなるわけがない。
男二人で入れば窮屈すぎるバスルームで密着した身体が離れることはなかった。
こうして、高二の冬、俺と夾は付き合いだしたのだった。
【第1章 了】
なにをって前立腺をだ。
ようやく三本の指を飲み込むくらいに広げた後孔は蠢くように俺の指を締めつけてくる。
わずかに眉を寄せた夾はギラギラとした目で俺を睨んでいた。
おっかない眼差しだけど怖くはない。
もっと睨んでくれてもいーのに、なんて思う俺はおかしいのか。
「気持ちいい?」
笑顔で笑いかけると、
「いい加減にしろよ?」
って低い声が返ってくる。
でも少し掠れて熱を帯びているその声にもともと緩んでた口元がさらに緩んで、唐突に蹴られた。
そんな強くってわけでもないけど開いていた右足が腹部を蹴ってきて、ちょっと後にのけぞって自然と指が抜けた。
ローションのせいでちゅぽん、と空気を含んだ水音が抜けた瞬間した。
「えー俺頑張ってんのに。気持ちよくなかった?」
俺を蹴ってきた脚を掴んで太股に唇を寄せながら指を再挿入する。
ご機嫌をとるように前立腺を擦りあげてみたらひと際きつく中が締まる。
は、と艶のある息を吐きだし夾は目を眇めるとまた右足を動かして今度は俺の肩を押す。
ぐぐっとわりと強めに押され後手をついたら夾が身体を起こしてきた。
視界が反転して仰向けになった俺に夾が跨る。
「指はもういい」
飽きた、とでも言うように夾が腰を上げて、硬く張りつめた俺の半身を握った。
ぬるり、とした感触が半身から伝わる。
夾の手によって夾の後孔に宛がわれた俺の半身。
その先端がぬるぬると生温かいぬめりに擦られて硬度が増すのを感じた。
朱に染まった夾の引き締まった肌。その腹部がこれからの衝撃を予測してか少し震えて力が込められるのが見て取れて。
「挿れるぞ?」
あれ、どっちが上だっけ? ってくらいの男らしい言葉とともに俺の半身が少しづつ熱に包まれていく。
狭い熱い夾の中にゆっくりと沈んでいく。
自ら腰を落として俺のを飲みこんでいく夾の口元には挑発するような笑みが浮かんでいて、その男らしいのに色香が漂う様に、悔しいけど頭の中のネジがボンボン抜けてくのを感じた。
あー……、ガンガン突きまくりたい。
ぐぐ、っと俺の全部が飲み込まれる。
俺と夾の肌が境なく触れあって、視線が絡み合う。
ぺろり、と夾は自分の唇を軽く舐めると腰を動かし始めた。
視覚的にもかなりやばい。
夾が腰を浮かせれば必然俺のが夾の中から抜けていく。
騎乗位だから結合部ははっきりと見えていて、俺のが出ては飲み込まれていく様子が生々しくてヤらしい。
綺麗についた筋肉が動くさまも、夾の腹部につきそうなくらいに反り勃つ半身も、目眩がするくらいエロくて――我慢できるわけがない。
ずるり、と抜けていく。夾のタイミングで落ちてくる腰。それを俺のタイミングで遮った。
「……ッ」
ドン、と下から打ちつけると不意をつかれたせいか夾の中がぎゅっと締まる。
俺の反撃に目を細める夾にいままでにないくらいの衝動が湧きあがる。
手を伸ばして夾の腰を掴むと突き上げ始めた。でも夾がやられっぱなしになるわけもなくて、すぐにリズムを合わせ腰を揺らしだす。
部屋の中には肉同士がぶつかり合う音が響き渡る。
気持ちよくて、そして足りない。
身体を起こして夾の首に腕を回して引き寄せた。
視線が絡んだのはほんの一瞬。
俺が突っ込んでるのに、目はまるで野獣のようにギラギラしてて噛みつくように唇が触れてきて、俺も貪るように唇をあわせ、舌を絡め合わせる。
理性とか余裕とか思考とかどんどん消えてって、ただ本能だけでキスして腰を打ちつけて、夾の硬くなった半身を扱いて、全部味わっていく。
互いの咥内を舌が行き来して、宙で交わらせて。
俺の手の中で脈打つ夾のものをもっと先走りを溢れさせようと、射精を促そうと強弱をつけながら扱く。
キスの合間の荒い息遣いが色づいていて耳に入ってくると、ぞくぞくと背筋が震える。
「もっと、声聞かせてよ」
そう囁けば、色気を滲ませながらも男前さを失わない夾はにやりと口角を上げて俺のを締めつける。
「じゃあもっと追い立ててみせろよ」
どこまでも挑発してくれる夾に応えないわけがない。
夾の身体をベッドに沈め、うつ伏せにさせて今度は後から突き上げる。
しなやかな背中にキスしながら夾の半身を弄り、逞しい胸の頂も弄ってやれば掠れた吐息が悩ましげな響きを含みだして腰がどうしようもなく激しく動いた。
ガツガツと律動を繰り返す中で、
「ッ、ぁ」
呻く声がしたと思ったら俺の掌に熱いものが吐き出され、同時に夾の身体が痙攣する。
ひどく収縮する後孔に俺も一気に持っていかれて欲を吐きだした。
はぁはぁ、と荒い息がどちらのものかわからないくらいに混ざる。
余韻に浸るように夾に覆いかぶさったままでいれば「おい……」と肩越しに振り返った夾が不敵に笑う。
「まだ、終わりじゃねぇよな?」
俺は夾の背中を抱きしめながら、笑った。
まだ埋めたままの半身はまた硬度を持ち出す。
「まだ、これからだろ?」
言いながら、動きだした。
吐きだした白濁とローションの交る水音と、ベッドの軋む音。
肌がぶつかり合う音と、唾液の混ざり合う音と、獣のような息遣いと。
しばらくの間、それらが止むことはなかった。
***
「疲れた!」
狭いベッドの上で大の字になって大きなため息を吐きだした。
もちろんスッキリ大満足だけど、疲れたのは疲れた。
奏くんともヤってはいた。でも本当の意味で男を抱いたって感じたのは今日。
「もっと体力つけろ」
ヤリはじめてどれくらい経ったのか。
三回戦まで立て続けにヤったって、かなり頑張ってない?
そんな思いを込めて視線を向けると、ベッドの端に脚を下ろしていた夾は煙草に火をつけながら鼻で笑った。
情交のあとが色濃く残る部屋の中は暖房がよく効いていて、そこに煙草の匂いが混じりだす。
「毎日ヤってたら体力つくんじゃないかな」
夾の匂いが充満する空気。
シャンプーだとか香水だとかそんな可愛い匂いはまったくないけど落ちつく。
「毎朝ジョギングしろ」
紫煙が俺に向かって吐きだされる。
「朝、寒いなぁ」
真冬の早朝は辛い、と身も凍る朝の冷気を思い出して無理だなって確信。
ヘタレ、と笑う夾に、地味に筋トレがんばります、と返しながら綺麗な筋肉についた赤い痕を眺める。
首筋と、背中と。
手を伸ばして指先でそれに触れて、
「本当によかったの?」
と、なんとなく訊いてみた。
いやならヤらないだろうってのはわかってる。
「あ?」
ただ突っ込んでよかったのかなーと。
夾ってネコなんだろうかって考えるとそうでもないような気もするし。
俺が言いたいことを察したんだろう。煙草をくわえたまま夾はなんでもないことのように笑って言った。
「惚れてる相手になら突っ込まれても構わねぇよ」
本当にあっさりとした、さらりとした口調。
その言葉を咀嚼するのに少し呆けた俺を夾が睨む。
「お前は違うのか?」
「違わない!」
とっさに言えば、夾の口元が当然だろと緩んだ。
俺も、緩む。にやにやしちゃってヤバいくらい、緩む。
「夾、好き」
夾の身体に腕を巻きつけてうなじに唇を寄せた。
言ってしまえば、またヤバいくらいにやけてしまう。
「……おい」
「ってぇ!」
同時に疼きだした身体に、夾の肌へと手を滑らせ始めれば遠慮なしにつねられた。
「シャワー浴びるからやめろ」
「えー? いまの流れって四回戦の合図だろ?」
「違う。ヤんならシャワーと飯食ってからだ」
俺の腕をほどいて煙草を消して立ち上がる夾に俺も一緒に立ちあがる。
「じゃあ俺もシャワー浴びる」
「狭いから来るな」
「だって夾の中に出したやつも掻きださなきゃだろ? 平気平気」
舌打ちしながらしょうがねぇなと、
「大人しくしてろよ、智紀」
ため息をつく夾。
その言葉に――俺が大人しくなるわけがない。
男二人で入れば窮屈すぎるバスルームで密着した身体が離れることはなかった。
こうして、高二の冬、俺と夾は付き合いだしたのだった。
【第1章 了】
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