俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人

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番外 四十三 花

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 正直に言って、前回の婚礼靴事件で少し落ち込んでしまったダリオである。
 ダリオは全てを救わねばと思うタイプではない。ただ、自分の目の前や、関係した人の身に起きたことについては、それなりに心が動く。なんなら体も動いてしまい、たびたび身体を張っては危険な目にあいかけた。そのため、周囲にそれとなく忠告を受けたこともあったくらいだ。
 それは、子供の頃に、犬のテオドールが殺処分されるきっかけを作ってしまったことに大きく心理的な依拠を持っていた。
 青年のテオドールからも指摘され、もう自分をゆるしてやってくれと言われたことでもある。
 ダリオはあまり自責するタイプでもないが、行動の根拠に大きなショックを受けた事件はやはり人並みには原体験化してしまうのだ。
 まあ、犬の件は、周囲やテオドールのおかげで少し自分でも見つめ直して整理できたと思う。
 当時はあまりにも悲しくて、大人になってから自分の筋力や上背に物を言わせて色々と我が身の危険も顧みずに介入してしまう反射的な行為を繰り返してしまった。
 今でも、自分よりフィジカルの弱い人が酷い目に遭っていたら、咄嗟に割って入ることはする。でも、他にも方法がないか視野は広げた方がよいのだと思えるようにはなった⋯⋯たぶん。
 あと、心理的なダメージを負ったら、それをないことにしていたが、ちょっとはテオドールに甘えてもいいのか⋯⋯と思えるようにもなった⋯⋯はずだ。
 自分の味方をしてくれる人がいるって本当に嬉しいものだ。これまでだって、たくさん助けてくれる人たちはいたけれど、みんな日が暮れたら家に帰ってしまう。
 だから、わきまえて、甘えては駄目だとダリオは思ってきた。
 そんなことしたら、相手の迷惑だ。人の時間は無限ではない。彼らの余力や仕事として、与えられる寛容を、無限にもらうことはできないと思っていた。
 際限なく与えてほしかったわけではない。
 ただ、家に帰ったら、あたたかな部屋で、誰かが、おかえりなさい、とダリオをハグしてくれたらいいのになと思っていた。
 もちろん、施設や里親が一度もそうしてくれなかったというのも違う。
 けれども、ダリオは里子に出された先で騒動を起こす常習犯だった。
 事件が起きるたびに、里親たちは不気味なものを見るような目でダリオを恐れ、遠ざけることになった。
 施設に返される繰り返しで、ついにはどこにも引き取られることはなくなったのだ。
 身体が早くに成長したダリオは、施設でも誰かの面倒を見る方が多く、居残り組の年長者となって、なおさらその傾向は加速した。
 ダリオだって、誰かが自分を愛してくれたらいいのになぁ、と子供の頃は、マッチをすったらあたたかな空想の世界が炎の向こうにひろがるかのようにそれらを楽しんだことはあるのだ。
 空想だとわかっていたから、きっと誰にも迷惑をかけないはずだと思った。
 もうじゅうぶんにダリオは迷惑をかけてきたので。
 ダリオは、自責して落ち込む性質の子供ではなかったから、自分を中心に起こる奇妙な出来事と人々の奇異の目も、あるいは数々の損害や迷惑も、心底恥じていたわけではない。
 シンプルに、自分には与えられることのないプレゼントがあって、それがもらえたらとても嬉しいけれども、難しいことなのだと理解していただけだ。
 だから、一人で空想のマッチをすって、楽しんでいただけ。
 そうしたら、大人になった時に、本当に空想が現実化したような存在が現れ、ダリオを愛してくれた。
 一緒に事件を解決したり、守ってくれたり、時にダリオが肌寒くないかと心配してくれ、上着をかけてくれたり、生まれて初めて金銭を気にせずに旅行に行ったりもした。
 楽しすぎて、夢みたいだなぁという感覚がしばらく抜けなかった。
 なので、いつ夢が覚めてもおかしくないように線引きをしていたのである。
 でも、テオドールという規格外の存在と暮らす内に、相手はダリオの夢ではないと、ようやく理解した。
 現実に存在する一人の他者なのだと。
 実感が伴ってくるに従い、彼の望みや愛を自分がうまく受け取る準備ができていないのだともわかってきた。
 ダリオなりに頑張っているつもりだが、これ頑張る類のことなんだろうか⋯⋯という疑問も抜けない。
 つまり──ダリオは。
 「まさか」と思われるほどには、テオドールに心を許していなかった。
 いや、正確には、一度だけ、全部張り巡らした垣根がぶっ飛んでしまったことがあるにはあった。しかし、それを除いて、常にどこか第三者目線でいる自分もダリオは自覚していた。
 本来自分はそうそう人前で涙を流す人間ではなく、テオドールの前で何度も泣いてしまったので、たぶん誰よりも心の柵の内にこの青年を近づけている。
 そのことは疑いもない。
 でも、多分どこかで、絶対に内側には入れないようにしている自分も、ダリオは理解していた。
 依存したいわけではないから。
 でもこれってなんかどうなんだろうな。
 そんな風に考えてる矢先で、転機が訪れた。
 《マジック・アイテム・ショップ・トリックスター》の店主、ヘルムートがへらへらとあるチケットを差し出したことによって──
 

 
 
 
 
 
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