俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人

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番外 二十 テオドール『可愛い』の研究

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 ちょっと思考力が停止して、可愛い、えっちしたい、と口から駄々漏れになったダリオである。
 そうしたら、スライム水饅頭のヒトデ形態テオドールが、ウニのような形状になり、あとはもう半分悪夢だった。
 ダリオは腰を抜かして、極彩色の肉壁に膨張展開していくスライムの形骸を呆然と見上げていた。


 触っていいかと聞かれ、なんとか頷いたと思う。
 人形のように持ち上げられながら、ダリオはこれ新しいやつ……とどこかで冷静に思った。
 怖いと言えば怖い。腰も抜かしへたり込んだが、それは初見だからというところもあった。ダリオはいまだに時々、テオドールの想定外な行動や形状変化、怪奇現象に驚かされる。その際、怖い、と思わされることも多い。まあ、これは自然な反応だとダリオは受け止めている。否定しても、すでに怖いものは怖いからだ。しかし矛盾するようだが、その実さほど恐怖を感じていない面もあった。一瞬ぎょっとしたり、顔がひきつったりはするが、まあテオだしな……と恐怖の外で、安心してしまうのである。
 多少形状が恐ろしくても、テオなら俺に酷いことしないし、と力が抜けて、指先まで安堵に包まれる。その上、好き……と何度も好きになってしまうのだった。
 同じ相手に、恐怖を上書きして、何度も恋に落ちるのもどうなのか。
 だって、テオ、どの形になっても優しいし……そんなん好きになる……と毎回繰り返し、新しい相手の姿に、初めてのように恋してしまう。
 そんな相手に、優しくされたらもう駄目だった。
 テオドールは、膨れ上がった後に、肉壁を巨大な人型もどきに形成し、ダリオに断って、『抱っこ』してくれた。
 背後から抱き上げ、膝の上に乗せられるかっこうだ。スライムだか極彩色の肉塊だか、よくわからないボディの腕の中に閉じ込められる。ぬいぐるみにでもなったように、ぎゅうっとされると、ダリオは途方もなく多幸感に包まれた。
 安心する。
「ダリオさん、服の中を触っていいですか」
「うん……」
 するすると、シャツの下に人もどきの指が入ってきて、優しく腹直筋を下から上へ辿ると、すうっと撫で下ろし、腰の輪郭も五指で同じようにする。もうそれだけで気持ちいい。やがて撫で上げていた太い肉塊の指が、ダリオの胸筋に辿り着く。 
「胸も触っていいですか」
 どこから発生しているのか分からないが、耳朶に優しい声が注がれて、うん、うん、と子供のようにダリオは返事した。
 テオドールは、新しい場所に触れるたび、ダリオに確認してくる。ダリオはムードがないなどとは全く思わない。確認してから触れてもらった方が、ずっと安心した。そこは駄目、と言ったら聞いてくれるし、無理に押し進めることは絶対しない。ゆっくり事を運んで、ダリオが嫌がってないか、苦しがっていないか、慎重に確認しながら進め、最後はわけがわからないほど気持ちよくされる。
 やさしい。てお、やさしい。すき。ておになら、なにされてもいい。
 すでに頭がふわふわしてきた。
 嫌らしくてもいいのだが、宝物に触るように大切に触られているのがわかる。圧倒的に力の差があるふたりの間で、人外のテオドールが出した結論は、このような触れ方だったのだ。
 全然常識が擦り合わないのに、テオドールの出した最適解が、ダリオに必ず確認する、なのが胸をいっぱいにさせる。
 普段も、相手を殺していいか、など無茶苦茶を聞いてくるが、あれも同じことで、確認しているわけだ。セックスだけ特別というわけではない。テオドールの考えて辿り着いた基本姿勢なのだ。
「んっ、んっ」
 力を抜いていると、発達した胸筋は柔らかくなる。ダリオは海軍上がりの父親に似たのか、体格がよく、筋肉がつきやすい体質だ。腕も筋張っていないし、体にピッタリしたメイド服やTシャツを着ると、弾性のある筋肉が内側から衣服をパツパツとさせてしまい、ムチムチした影を作る。臀部も締まるべきところはキュッと締まっているが、ムッチリと肉付きのよい部分もあり、ジーンズからはち切れそうなお尻のシルエットをじろじろ見られることもあった。これで恥ずかしがったり、マッチョマウントをする性格なら大変だったのだろう。しかしダリオ本人は、遺伝子のなせるわざだな、そうだからそう、とドライなものだ。もちろん、相手にわかるほど見てくるのは、連邦社会では非礼にあたり、はっきり言うこともある。揶揄されたならなおさらだが、体格のよいダリオに白日堂々ちょっかいをかけてくるものは少ない。ダリオがセクハラされやすいのは、夜のアルバイトでも客層の悪いところくらいのものだ。
 その存在感のあるおっぱいもどきを、下から包むようにされて、やわやわとくすぐったいくらいの力で触られると、むずがゆく感じてくる。
 全く触られていない乳頭がつんと尖ってきて、かゆいように腫れて色づいてくるのがわかった。
 優しく胸筋を揉んでいた指が、次第に沈み込むように揉みしだいてきて、乳首はもう痛いほど立ち上がっていた。
「テオ、テオ……」
 呼ぶと、テオドールの腕がもう一本伸びてくる。三本目だな、と頭のどこかでカウントするダリオだ。
 その手のひらをつかむと頬を寄せ、それから断って口づけた。
 もっと、という意思表示に、完全に受け入れる姿勢で、自らはぷはぷと肉塊の表面に唇を這わせる。テオドールの体が、ざわざわっと波打ったが、すぐにもう一本腕を生やして、ダリオが唇を這わせているところに「ダリオさん、」とどこか熱に浮かされたようなもどかしそうな声が響く。ダリオも顔を上向かせた。
「てお、きす、きすした……したい……」
 体液管理はテオドール任せで、ダリオからはあまりできない。居間の原型がかろうじて残る極彩色の光景に、たぶん現実サイドだよな、と判断して控えたダリオだ。したい、と必死に要望すると、大きな影が落ちてくる。顎を持ち上げられ、ダリオも受け入れるようにする。頭部に口ができていた。唇がムニ、っと食まれると、長い舌がダリオの短い舌をすくい取って絡ませ、吸ったり舐めたりしごいたりする。
「は、んっぅ、ふぁ」
 短い舌を、長いそれで絡めてぞりぞり擦られていると、舌の付け根から後頭部、うなじ、背骨を伝って、腰の中心まで、高熱に浮かされるような官能が走り抜けた。臀部から腰を通って背骨まで、辿るように、ざりりっと、太い指紋の指の腹でなぞられ、ゾクゾクとした快感と、どこから何の気持ちよさが生じているのかわからなくなって、ただ舌を吸われる。
「ん、んんっ、っは」
 いつの間にか、耳を塞がれていた。腕何本目、ともう数がわからない。互いの舌が擦れあう音が、鼓膜に直接注ぎ込まれるように反響している。胸をいじられ、腰に溜まった熱は、更に降りてきて、指二本を入れて第二関節部分くらいの位置にある場所をじくじくさせた。
 割り開かれた両足の間に相手の太ももが入り、前後に揺するようにして胸も愛撫される。
「っ、ふ、ぅ、ん゛~~っ」
 胸筋をすくうように下から上へ揉まれ、ほとんどマッサージする動きだが、性感ばかりが育てられて高まっていく。
 やがて、乳頭だけ避けて揉み込んでいた手のひらが、圧迫しながらそこを通り過ぎた時、びりびりと疼痛めいた甘い官能が、性器の付け根の奥まで差し込んだ。そしてまた、ぐるりと胸の先端へ戻ってくる。
「っ、んんっ」
 そうしたら、繊細な手つきで、ぎゅうっと先端をつままれ、挟んだ乳頭を絞るように扱かれて、パチパチと目の前が白くなった。
「~~~っ?!?!」
 腰が何度か跳ね上がり、悶えるように前後に動いた。性器を直接扱かれたわけでもないのに、乳首をちょっと触られただけで、絶頂を決めてしまったダリオである。
 舌先を吸われながら、びくびくと快感を逃していると、臀部の下で硬いものの感触があった。
(あ、なに……)
 わからなくて、ぼうっと鋭い快感から余韻を味わっていると、キスが解かれ、少し寂しいような気もする。
 呼吸が、ぜぇぜぇと荒いのに気づいて、あ、気遣われたのかと合点がいった。
 酸素が段々足りてきて、やはり硬いものの感触が気になり、もぞもぞと臀部を動かし、気がついた。
(え、テオ、硬くしてんのか?)
 そのスライムだかなんだかわからんボディでどういう原理?! とは思うが、衝撃が去ると、嬉しさの方が爆発的に生じた。
 ダリオは珍しく涙目になる。
 ふたりの性欲の違いを今更嘆いたりはなかったが、テオドールが興奮して硬くしてくれているのはストレートに嬉しい。
 愛情表現や仲良くする方法として、セックスだけに偏重するものではないけれども、ふたりは十分セックスでもコミュニケーションのとれる関係だ。だから、ダリオにもわかる方法で、テオドールがインサートのためではなく、自発的に興奮で性器を硬くしてくれているのは嬉しかった。
 あ、もしかして、俺に寄せてくれたのか……と理解する。
 テオドールは、ダリオの好意だけで、フェロモン粒子のように快感を受け取る感覚器官を備えている。
 実体験させられはしたが、ダリオが以前悩んでいたから、色々考えて寄せてきてくれたのではないか。
 ダリオがそう尋ねると、少しテオドールは考えて、こくり、と頷いた。
「うまくできているかは分かりませんが、リアルタイムに僕の興奮や快感をダリオさんにお伝えする方が、コミュニケーションしやすくなるかと思いまして」
 ダリオがテオドールと長く生きる方法を色々考えているように、テオドールも考えてくれていたのだろう。ああ、だから、急にこのタイミングで『可愛い』も研究しだしていたのか。この館も、テオドールが考えてくれる料理、衣装、与えられる気遣い。
 ふたりが暮らしやすいように、模索している。
 好きだと言って、おとぎ話のように幸せな永遠が約束されるのではない。日々の暮らしの中に、生活の中に、思考の中に、愛が存在し、与えられているのを感じた。
 それはそれとして、テオドールの興奮がわかるのが嬉しい。
「ダリオさん、下も脱がせてよろしいですか?」
「うん」
 下着が自分のカウパーと愛液でぐちょぐちょになっている。さすがに気持ち悪くなっていた。自分で脱いでも良かったけれど、テオドールはダリオの着脱にフェティシズムがある。任せることとした。
 大きな手でボトムスを抜き取られていく。意図してないのだろうが、二本足をまとめて上に引き上げられ、脱がされた格好で、会陰から後孔まで前方に晒している。誰に見られるわけでもないが、ひくひくと胸から腹にかけて波打たせていると、テオドールの頭部と思しき部分が、ぼこんと陥没した。
「?!?!」
 今度こそびっくりしたダリオだが、前方の虹色の油膜から、すうっと泉の妖精のように普段の青年のテオドールが頭部から太ももあたりまで出てきて、叩いたら飛び出るそういうおもちゃかよ……と目が遠くなる。
 以前、テオドールが自分自身の末端でも、ダリオに深く触らせるのが嫌なようなことを言っていたので、頭部と肉壁巨大ボディで1つの身体とする認知のためにやったのかもしれない。
 ただ、状況としては、ぴったりと太ももを閉じて纏め上げられた二本の足の裏、ムチっとしたハムストリングスから会陰や後孔まで今度こそ丸見えだった。
 予期せぬ形で見られてしまい、さすがにダリオも「ん……」と隠すように膝頭を折り曲げた。子供がおとなに抱えられて、外で小水をたす時の格好にだいぶん近い。太ももをぴったり閉じているかいないかの違いだ。背後の巨大ボディ頭部陥没テオドールに膝裏を抱えられ、眼の前の青年テオドールに真顔で見られている状況はかなりシュールである。
 その上、座り込んだ下でテオドールが硬くなっているのを感じ、ダリオは自分で恐る恐る後孔の下から自分の臀部を両手で支え持つように少し開いた。
 だって、テオ、興奮してくれてる……とまた睨むように涙目になる。怒っているわけではなく、泣きそうなのでそうなってしまう。
「テオ、硬くなってるの、嬉しい、から、ここ、ここに入れて」
 はたと、そっちのテオも大きくなってる? と聞くと、青年のテオドールがダリオの横に手をついてのしかかって来た。
 腰をこすりつけるようにされ、う、と思うまで1秒もかからない。
 海中の底で揺らめく紫の炎が、青年の目に熱を帯びて灯っている。うつくしいが、どこか禍々しいような、悪夢の炎だ。
 でも、ダリオはもう悪夢であっても、テオドールなら構わない。
 悪夢の化身に、ダリオ・ロータスは自ら手を伸ばした。人間離れした美貌の青年の首に腕を巻きつける。
 至近距離で目が合い、正気でなくなるような気がした。気の狂うような極彩色が、居間を侵食して渦巻き、崩壊し、曼荼羅めいた砂絵と油膜と虹色の世界を造っている。
 人間ではない青年のそそり勃ったものが、ダリオは死ぬほど嬉しい。
 二本の指を後孔にそわせて、いつかのように、くぱぁ、と開いてみせた。
「おれのここで、ておもいっぱい、きもちよくなって」
 ぽと、と涙が溢れた。
「おれ、ておに、いっぱい、きもちよく、なってほし」
 侵食されているのは空間なのか、自分の頭の中なのか。
 舌先が痺れてうまく喋れないのに気づく。
 でも伝えたくて、どうにか舌を動かす。
「すき……すき……あいしてる」
 青年の目が見開き、耐え難い異音がして、柔らかな黒髪のかかる彼のこめこみから、汗の珠が頬骨から顎先をつたい、ダリオに落下した。
 そうしたら、もう何もかもが極彩色に侵されて、わけがわからなくなった。


 声が枯れるほど、中を擦られて、ダリオは、しゅき、だいしゅき以外言えない生き物にされた。かろうじて、テオドールの名前は呼べたが、いっぱい、前立腺や奥の結腸からペニスの先端まで気持ちいいを通電させられて、精液や潮、お漏らしまで押し出され、やっぱり、しゅき、だいしゅき、すき、すき、と手足を巻きつけて他に言えない生き物にされた。
 気づいたら、脚を割られて、腰を入れられながら、彫刻のような筋肉の隆起した肉体が自分の上で動いている。
 身動きの取れない状態で、閉じ込められていた。段々クリアになる思考とは裏腹に、ダリオは息を呑む。テオドールは愁眉をきつくよせ、快感をこらえる表情をしていた。あるいは、滅多に見ないような苦しそうな顔で、顎先からも、喉仏、隆起する胸筋、腹直筋まで、汗の珠が流れ、妖艶にも苦痛に耐えているかのように見えた。
「ダリオさん、苦しくないですか?」
 圧しかかりながら、少し隙間を開けるように体を浮かされる。
「くるしくない……だいじょうぶ……」
 やっぱり優しい。好きだ。腕と脚を巻き付け、自ら引き寄せるようにする。ぴったり体の凹凸にそうようくっついていたのに、離れるのは嫌だった。


■■■


 事後、快感から現実に接続するようアフターケアまでしっかりしてもらい、落ち着いて元の場所に戻ってから、飲み物を貰いつつダリオはもごもごと提案した。
「あのさ……いつものテオドールともしてーけど、せっかく研究してくれたし、ちっちゃいテオになって、俺の懐に入れて一緒にお散歩とかデートする……?」


 To be continued……?(終わり)
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