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番外 三十 マルチバース異世界編 猟師のダリオとバグ有テオドール 後日談
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※ マルチバース異世界編の短い後日談です!
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国を出た元猟師のダリオと水饅頭のテオドールは、更になんやかんや短い期間に色々あって(追手をテオドールが半殺しにしたり、鏡のダンジョンで隠し通路を見つけて、変な店にたどり着いたり)、気づけば流れ着いた東の都でカフェを開くことになった。
鏡のダンジョンで見つけた店から、珍しい調味料一式やレシピ本を手に入れ、これはいけるんじゃね? とマヨネーズを和えた卵サンドイッチにしてコーヒーと一緒に出したのが始まりで、今はレパートリーも徐々に増え、固定客もついている。
「テオ、3番テーブルに頼む」
カウンター越しにダリオがトレーを置くと、ヒトデ型になったテオドールが「承知いたしました」と器用に短い両手を上げて、ぴょん、トコトコトコ、と運んでいく。
ジャンプしても、汁物はしずくも零さないのだから、とてつもないバランス感覚だ。
最初、混雑時間帯に対応できるのか危ぶんだのだが、小さいながらも跳躍を駆使した動きが素早く、なんだかんだ問題なく回せている。
ガチムチのおっさん冒険者たちも「はわわ」とか言って行儀よく待ってくれるので、いいのか? まあいいか……とダリオは深く考えないことにしていた。ダリオにはこういうところがある。
というか、冒険者はこの軽食では全然足りなくねーか? とそっちの方が不思議に思う。彼らは看板娘ならぬ看板水饅頭ウェイターを観に来ているのだろうか。
しかもテオドールがトコトコ給仕していると、ガチムチ冒険者の方が「あらー♡」と言って道を開けてくれるのだ。なので、テオドールは人間を避けたことがない。というか、人間のことはカスと思っているっぽい。話しかけられても無視しているし。もう人間は、自分のために自動で道を開けてくれるもの。そう当然のように思っている節がある。
(……まあ、治安もいいし、問題ねーだろ)
パンに軽い焼きめをつけながら、あさってな感想を抱くダリオだ。
今日も1日しっかり働いて、ダリオは店の後仕舞を済ませると、簡単なまかないを作った。空になった店内のテーブルに、ふたりぶんのまかない料理を、とん、と並べる。
「テオ、ご飯食べよう」
「はい、ダリオさん」
水饅頭のテオドールは、ぴょん、とテーブルに乗ると、器用に柔らかなパンをオリーブ油につけて、もっもっもっと食べ始めた。
ダリオは思わず、じっ、と見つめてしまう。貧乏な小屋ぐらしをしていた頃は、たくさんテオドールに食わせてやれなかったのが悲しかった。でも今は違う。
ダリオもあたたかなパンを、オリーブ油に浸して、口に運ぶ。うん、美味しい。
鶏肉のハーブ焼きは、ダリオが切り分けてやって、ふたりで半分こにした。
魔法のフレイザーで作り出した氷たっぷりの水に、レモンの果汁を入れて、ガラスのピッチャーから、ふたりのコップにそれぞれ注ぐ。テオドールのコップはダリオが作ったもので、ちっちゃいおもちゃのような大きさだ。
スープとサラダも飲んだり食べたりして、ふたりで後片付けすると、すっかり幸せになった。
椅子を引いて、お腹いっぱいだなぁ、と満腹感に浸りながら腰を下ろす。
すると、テオドールが、ぴょん、とダリオの膝に乗り上げてきたので、ダリオはやさしく彼の頭を撫でた。
ころん、とテオドールはお腹を見せて、短い腕を口元で揃える。その様子が可愛くて、ダリオが指を伸ばすと、テオドールは短い腕で、はっしと捕まえ、抱え込んだ。
「テオ~」
ますますしっかり挟んで離すまいとするので、笑ってしまった。
「テオ、俺、テオの手を触りたいな」
テオドールはちょっと考え込んで、ゆっくりダリオの指先を離してくれた。それから、短い腕を今度はダリオの方に伸ばすように、ちょこんと垂直に揃えてくる。
ダリオはテオドールの伸ばした両方の手を、それぞれ人差し指と親指で挟み、ぷにぷにしてるなーともんだり擦ったりした。
完全に目尻は下がっているのを自覚する。
ダリオが満足して放すと、
「だりおさん、ぼくの手を放しちゃだめです」
と知能がやや下がったようなテオドールから文句が入った。
「ぼくの手を握っていてください」
「んー、そうだなー。じゃあそのあと、俺がテオを抱っこするから、俺の頬も触ってほしいな」
「……! 今すぐその提案を受け入れます」
なので、テオドールを抱き上げたダリオに、水饅頭のテオドールは、ぴと、と短い手でダリオの頬に触れて、自分の頬も寄せてくれたのだった。
おわり
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国を出た元猟師のダリオと水饅頭のテオドールは、更になんやかんや短い期間に色々あって(追手をテオドールが半殺しにしたり、鏡のダンジョンで隠し通路を見つけて、変な店にたどり着いたり)、気づけば流れ着いた東の都でカフェを開くことになった。
鏡のダンジョンで見つけた店から、珍しい調味料一式やレシピ本を手に入れ、これはいけるんじゃね? とマヨネーズを和えた卵サンドイッチにしてコーヒーと一緒に出したのが始まりで、今はレパートリーも徐々に増え、固定客もついている。
「テオ、3番テーブルに頼む」
カウンター越しにダリオがトレーを置くと、ヒトデ型になったテオドールが「承知いたしました」と器用に短い両手を上げて、ぴょん、トコトコトコ、と運んでいく。
ジャンプしても、汁物はしずくも零さないのだから、とてつもないバランス感覚だ。
最初、混雑時間帯に対応できるのか危ぶんだのだが、小さいながらも跳躍を駆使した動きが素早く、なんだかんだ問題なく回せている。
ガチムチのおっさん冒険者たちも「はわわ」とか言って行儀よく待ってくれるので、いいのか? まあいいか……とダリオは深く考えないことにしていた。ダリオにはこういうところがある。
というか、冒険者はこの軽食では全然足りなくねーか? とそっちの方が不思議に思う。彼らは看板娘ならぬ看板水饅頭ウェイターを観に来ているのだろうか。
しかもテオドールがトコトコ給仕していると、ガチムチ冒険者の方が「あらー♡」と言って道を開けてくれるのだ。なので、テオドールは人間を避けたことがない。というか、人間のことはカスと思っているっぽい。話しかけられても無視しているし。もう人間は、自分のために自動で道を開けてくれるもの。そう当然のように思っている節がある。
(……まあ、治安もいいし、問題ねーだろ)
パンに軽い焼きめをつけながら、あさってな感想を抱くダリオだ。
今日も1日しっかり働いて、ダリオは店の後仕舞を済ませると、簡単なまかないを作った。空になった店内のテーブルに、ふたりぶんのまかない料理を、とん、と並べる。
「テオ、ご飯食べよう」
「はい、ダリオさん」
水饅頭のテオドールは、ぴょん、とテーブルに乗ると、器用に柔らかなパンをオリーブ油につけて、もっもっもっと食べ始めた。
ダリオは思わず、じっ、と見つめてしまう。貧乏な小屋ぐらしをしていた頃は、たくさんテオドールに食わせてやれなかったのが悲しかった。でも今は違う。
ダリオもあたたかなパンを、オリーブ油に浸して、口に運ぶ。うん、美味しい。
鶏肉のハーブ焼きは、ダリオが切り分けてやって、ふたりで半分こにした。
魔法のフレイザーで作り出した氷たっぷりの水に、レモンの果汁を入れて、ガラスのピッチャーから、ふたりのコップにそれぞれ注ぐ。テオドールのコップはダリオが作ったもので、ちっちゃいおもちゃのような大きさだ。
スープとサラダも飲んだり食べたりして、ふたりで後片付けすると、すっかり幸せになった。
椅子を引いて、お腹いっぱいだなぁ、と満腹感に浸りながら腰を下ろす。
すると、テオドールが、ぴょん、とダリオの膝に乗り上げてきたので、ダリオはやさしく彼の頭を撫でた。
ころん、とテオドールはお腹を見せて、短い腕を口元で揃える。その様子が可愛くて、ダリオが指を伸ばすと、テオドールは短い腕で、はっしと捕まえ、抱え込んだ。
「テオ~」
ますますしっかり挟んで離すまいとするので、笑ってしまった。
「テオ、俺、テオの手を触りたいな」
テオドールはちょっと考え込んで、ゆっくりダリオの指先を離してくれた。それから、短い腕を今度はダリオの方に伸ばすように、ちょこんと垂直に揃えてくる。
ダリオはテオドールの伸ばした両方の手を、それぞれ人差し指と親指で挟み、ぷにぷにしてるなーともんだり擦ったりした。
完全に目尻は下がっているのを自覚する。
ダリオが満足して放すと、
「だりおさん、ぼくの手を放しちゃだめです」
と知能がやや下がったようなテオドールから文句が入った。
「ぼくの手を握っていてください」
「んー、そうだなー。じゃあそのあと、俺がテオを抱っこするから、俺の頬も触ってほしいな」
「……! 今すぐその提案を受け入れます」
なので、テオドールを抱き上げたダリオに、水饅頭のテオドールは、ぴと、と短い手でダリオの頬に触れて、自分の頬も寄せてくれたのだった。
おわり
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