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本編
12.人間の残酷さを知る
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以前にもぼくは、ラグナを見送った。
そのときラグナはぼくが寝ている間に去っていったこともあって、ずっと待っていたわけじゃなかった。
夢のようなものだったのかもと思い込んで、忘れようとしたこともあった。
でも今はちがう。
「待っていてくれるか」と聞かれて、ぼくはうなずいた。
きっとラグナは戻ってきてくれる。
そう思えたから、ぼくはラグナが戻るのを待つことにした。
山には、ふもとを見下ろすのにちょうどいい場所がある。
木々がたくさん生えている急な山肌の途中、かつて地すべりがあって木が流されたところは、背の低い木や草しか生えていなくて見通しがいい。
地すべりにも負けずに残った一本だけの針葉樹が目印だ。
ぼくはおさんぽコースを変えて、一本木のところをかならず通るようにした。
あの木の下でふもとを見下ろして、空の色が変わっていくのを見つめて、ラグナの姿がないのを探してから帰る。
「人間って、こんなにいっぱいいるんだなぁ……」
ふもとを見下ろすと、新しくできたという村を見ることになる。
四角いものがいくつも建っていて、砂利のような小ささの人間がうろうろと出入りしている。
あれが人間の住処なんだろう。
人間たちの多くは、朝早く起き出して山へ向かう。
行き先はこちらではなく、向こうの山だ。
ごつごつした岩肌の多い向こうの山には貴重な鉱石がたくさん埋まっていて、それを目当てに人間たちが住み着いたのだという。
鉱石を求めて住み着いた人間たちが、いつかぼくの結晶の体に目をつける。
山のみんなはそれをおそれているらしい。
「どうしたらいいのかなぁ」
一本木にもたれてとりとめなく考えごとをしていると、人間たちの動きがいつもとちがうことに気がついた。
「この山に、入ってきてる?」
ぼくはあわてて斜面を駆け下り、泉へ向かった。
泉のヌシのナマズさんも、人間たちが入ってきたことに気づいていた。
「ナマズさん、人間が、人間がいっぱいっ……!」
「落ち着けアメトリン。事態は把握しておる」
「どうしよう……また追い返す?」
「いや……」
ナマズさんは考え込んで、少しずつ話してくれた。
じっくりと考えこんでいるようだった。
「アメトリンがあやつと約束したであろう。ラグナと言ったか。今回の人間たちにあやつは含まれておらんから、おそらく人間側の連携がうまくいっていないのだろう。かつてあやつは仲間の人間に、アメトリンと協力したいと伝えたと言っておったそうだ。つまり、アメトリンがどういう気質の魔物であるかは、人間側も知っているはず。ということは……」
アメトリンと協力したいというラグナの気持ちに反する人間が山に入ってきた、ということ。
「もしかして、狙いはぼく?」
「そうかもしれん。もしくは、アメトリンの前にわれらを排除しようと考えているか……」
「絶対だめっ!」
そんなおそろしいことは想像したくもない。
「まぁ待て、落ち着けと言っておろうが。冒険者でもない人間に害されるほどわれらは弱くない。とはいえ、ラグナの手前、人間どもを殺して退けるのも避けたい。どうすればよいか、わかるか?」
「ぼくが行って、人間を説得する?」
「うーん、力に頼らない方法を考えついたのはえらいぞ。しかしやつらは対話に応じないだろう。あのラグナという男は相当に稀有だ。魔物が話せるからと言って、魔物と話そうとはならんのだ。普通はな」
ではどうすればいいのだろう。
魔物のみんなは強いから、人間に対抗できる。
でも山のいきものみんながそうじゃない。
みんなはひっそりと、したたかに、自分の命をがむしゃらに生きているだけだ。
そんな彼らを、彼らの住処を、人間が無遠慮に踏み荒らすのか────。
「ほら、われらのかわいいアメトリン。その物騒な魔力をしまいなさい」
「えっ」
ナマズさんの声で、自分の意識がどこか遠くへ行きかけていたのに気づく。
ふと見ると、足元にはさっきまではなかった小さな結晶がいくつも生えていた。
カラスさんの羽を切られたときに似ている。
ぼくはいつの間にか、攻撃になるような魔法を放とうとしていたらしい。
「おぬしが、山もわれらも守ろうとしてくれるのはうれしい。だが、おぬしが一匹で背負い込むことではない」
「……うん。ぼくはどうすればいい?」
「今回はひとまず、対話も攻撃もせん。おいで、アメトリン」
ナマズさんが呼ぶのは、泉の中だった。
いつのまにか肩にとまっていた小鳥さんたちが、草混じりの泥をくちばしにつまんでいる。
それをぼく亀裂に詰めて、すきまから水が入らないようにしてくれた。
「この泉はわれの領域。人間には気づけまい。ここでやつらをやり過ごそう」
水の中へ下りる。
足をすべらせて落ちたとき、泉はちょっとだけ怖かった。
でも、自分から足を踏み入れた泉の中はとても冷たくて、透明できれいで、静かだ。
「水の中って、体が軽いね」
「そうだ。水が体を持ち上げてくれるからな」
「へぇ、水ってすごいんだ」
ゆったりと泳いできたナマズさんは、長い体をぼくに巻き付けた。
「水の中に光は届きにくい。見よ、光が揺らいで見えるであろう」
見上げると、水面にはゆらゆらと光がたゆたっている。
ふしぎな景色だ。
「水はあらゆるものを溶かし、歪め、暴く。隠されているものを洗い流すのもまた、水だ。だが、水の中にすべての真実があるとは限らん」
「むずかしいよ、ナマズさん」
「まぁ、そうよな。アメトリンは地の生き物。いつか水のゴーレムにでも会ったら極意を聞くといい。さて……水は目を惑わせるものだが、音はな、陸より遠くまで聞こえるものなのだ」
「音?」
ぼくに巻き付いたナマズさんの体がぼくの顔や胴をおおうと、どういうわけか視界がなくなった。
代わりに音が聞こえてくる。
水の中のぼわんとした、不確かな音じゃない。
遠くから響く、こだまのような、でもたしかにその場にあるような、聞いたことのない音色。
「われはこの泉にあって、山のすべてを知るもの。それはこの泉に山中の音が集まるからなのだ。アメトリンにも聞かせてやろう」
聞こえてくる音に集中すると、それは、たくさんの足音だった。
地を踏む音が、がさがさと枯れ葉を砕き、草を払いのけながら進んでいる。
「────ゴーレムが出るというのはこのあたりか」
びくりと震えてしまって、泥でふさいだ亀裂から泡が漏れる。
ナマズさんがヒレで抑えてくれなければ、ぼくはまたおぼれてしまっただろう。
それくらいびっくりしたんだ。
「これ……山に入ってきた人間の声?」
「そうだ。やつらの狙いを突きとめるぞ」
ぼくたちは耳をすまして、人間たちの音を聞き取る。
「────ここに宝石のようなゴーレムが立っているのを見た」
「なにもいないぞ」
「いや、見ろ。なにか大きな生物の痕跡だ」
「でかいな。俺たちだけで倒せるのか?」
ゴーレムを倒す、という会話にまたびっくりしたけれど、ぼくはもう泡を吐き出さなかった。
「────倒すことはできなくても、腕や足の一本で莫大なカネになる」
「だがゴーレムってのは凶暴で、人間を見るなり襲ってくるというぞ」
「やっこさんはそうじゃないらしい。何日か前、ギルドの冒険者とかいう若造が来ただろう。あいつの調査で、ここのゴーレムは穏やかな気質だとわかったとか」
「へぇ、襲ってこないなら宝石や魔石と同じだな。しかも最上級品確定ときた」
「あぁ。冒険者なんかにやるのは惜しい。俺たちで狩っちまおう」
もう聞いていられなくて、ぼくはふるふると頭を振った。
音が遠ざかっていって、ナマズさんの体がはなれる。
「どうして?」
思わずつぶやいた声が震える。
「ぼくは……この山で、みんなと生きていたいだけなのに……」
泉の底に座り込む。
ナマズさんと、泉に住む小さなものたちが集まってきた。
うつくしい尾ビレで泳ぐ魚さんや、小さな足でぼくの腕をのぼるカニさんを見ていると、ただどうしてと、悲しみがわき起こる。
みんなを守りたかっただけ。
みんなといっしょにいたかっただけなのに。
ぼくがいるだけで悪いことを遠ざけられるなんて、夢のまた夢だった。
現実は、ぼくを目当てに嫌な目つきの人間が山に入ってきて、みんなを危険にさらしている。
「あぁ、泣くなアメトリン。人間はおそろしい生き物だと、これでわかったろう」
ぼくは、泣いているのだろうか。
自分ではよくわからない。
泣くとは涙を流すことで、ぼくに水を流す機構はないように思う。
それとも、胴の中心が刺すように痛いこれが、泣くということなんだろうか。
「ラグナは奇特な男であったが、あやつのみが奮闘したところでなにも変わらん。村の人間は山を拓くだろうし、アメトリンを対等な存在と見てはくれんだろう」
「でもラグナは、人間たちと相談するって。ぼくたちを傷つけないって」
「ラグナにはそれだけの力はなかった。そういうことであろう」
「うぅ……」
悲しくて悲しくてうつむくぼくの代わりに、ナマズさんは耳をすまして音を聞いていた。
やがて人間たちは、ぼくを見つけることができずに山を降りていった。
いつのまにか泉に映る空は赤みを増して、やわらかい光がゆらめくようになっている。
「時間がかかってもよい。これからどうするか、どうしたいか。おぬしの考えを聞かせておくれ」
ナマズさんはそう言ってぼくを送り出した。
ゆっくりと寝床へ帰る道で、ぼくはどうしたいか、たくさん考える。
星がまたたきはじめた空を見つめて、その日はいつまでも眠れなかった。
そのときラグナはぼくが寝ている間に去っていったこともあって、ずっと待っていたわけじゃなかった。
夢のようなものだったのかもと思い込んで、忘れようとしたこともあった。
でも今はちがう。
「待っていてくれるか」と聞かれて、ぼくはうなずいた。
きっとラグナは戻ってきてくれる。
そう思えたから、ぼくはラグナが戻るのを待つことにした。
山には、ふもとを見下ろすのにちょうどいい場所がある。
木々がたくさん生えている急な山肌の途中、かつて地すべりがあって木が流されたところは、背の低い木や草しか生えていなくて見通しがいい。
地すべりにも負けずに残った一本だけの針葉樹が目印だ。
ぼくはおさんぽコースを変えて、一本木のところをかならず通るようにした。
あの木の下でふもとを見下ろして、空の色が変わっていくのを見つめて、ラグナの姿がないのを探してから帰る。
「人間って、こんなにいっぱいいるんだなぁ……」
ふもとを見下ろすと、新しくできたという村を見ることになる。
四角いものがいくつも建っていて、砂利のような小ささの人間がうろうろと出入りしている。
あれが人間の住処なんだろう。
人間たちの多くは、朝早く起き出して山へ向かう。
行き先はこちらではなく、向こうの山だ。
ごつごつした岩肌の多い向こうの山には貴重な鉱石がたくさん埋まっていて、それを目当てに人間たちが住み着いたのだという。
鉱石を求めて住み着いた人間たちが、いつかぼくの結晶の体に目をつける。
山のみんなはそれをおそれているらしい。
「どうしたらいいのかなぁ」
一本木にもたれてとりとめなく考えごとをしていると、人間たちの動きがいつもとちがうことに気がついた。
「この山に、入ってきてる?」
ぼくはあわてて斜面を駆け下り、泉へ向かった。
泉のヌシのナマズさんも、人間たちが入ってきたことに気づいていた。
「ナマズさん、人間が、人間がいっぱいっ……!」
「落ち着けアメトリン。事態は把握しておる」
「どうしよう……また追い返す?」
「いや……」
ナマズさんは考え込んで、少しずつ話してくれた。
じっくりと考えこんでいるようだった。
「アメトリンがあやつと約束したであろう。ラグナと言ったか。今回の人間たちにあやつは含まれておらんから、おそらく人間側の連携がうまくいっていないのだろう。かつてあやつは仲間の人間に、アメトリンと協力したいと伝えたと言っておったそうだ。つまり、アメトリンがどういう気質の魔物であるかは、人間側も知っているはず。ということは……」
アメトリンと協力したいというラグナの気持ちに反する人間が山に入ってきた、ということ。
「もしかして、狙いはぼく?」
「そうかもしれん。もしくは、アメトリンの前にわれらを排除しようと考えているか……」
「絶対だめっ!」
そんなおそろしいことは想像したくもない。
「まぁ待て、落ち着けと言っておろうが。冒険者でもない人間に害されるほどわれらは弱くない。とはいえ、ラグナの手前、人間どもを殺して退けるのも避けたい。どうすればよいか、わかるか?」
「ぼくが行って、人間を説得する?」
「うーん、力に頼らない方法を考えついたのはえらいぞ。しかしやつらは対話に応じないだろう。あのラグナという男は相当に稀有だ。魔物が話せるからと言って、魔物と話そうとはならんのだ。普通はな」
ではどうすればいいのだろう。
魔物のみんなは強いから、人間に対抗できる。
でも山のいきものみんながそうじゃない。
みんなはひっそりと、したたかに、自分の命をがむしゃらに生きているだけだ。
そんな彼らを、彼らの住処を、人間が無遠慮に踏み荒らすのか────。
「ほら、われらのかわいいアメトリン。その物騒な魔力をしまいなさい」
「えっ」
ナマズさんの声で、自分の意識がどこか遠くへ行きかけていたのに気づく。
ふと見ると、足元にはさっきまではなかった小さな結晶がいくつも生えていた。
カラスさんの羽を切られたときに似ている。
ぼくはいつの間にか、攻撃になるような魔法を放とうとしていたらしい。
「おぬしが、山もわれらも守ろうとしてくれるのはうれしい。だが、おぬしが一匹で背負い込むことではない」
「……うん。ぼくはどうすればいい?」
「今回はひとまず、対話も攻撃もせん。おいで、アメトリン」
ナマズさんが呼ぶのは、泉の中だった。
いつのまにか肩にとまっていた小鳥さんたちが、草混じりの泥をくちばしにつまんでいる。
それをぼく亀裂に詰めて、すきまから水が入らないようにしてくれた。
「この泉はわれの領域。人間には気づけまい。ここでやつらをやり過ごそう」
水の中へ下りる。
足をすべらせて落ちたとき、泉はちょっとだけ怖かった。
でも、自分から足を踏み入れた泉の中はとても冷たくて、透明できれいで、静かだ。
「水の中って、体が軽いね」
「そうだ。水が体を持ち上げてくれるからな」
「へぇ、水ってすごいんだ」
ゆったりと泳いできたナマズさんは、長い体をぼくに巻き付けた。
「水の中に光は届きにくい。見よ、光が揺らいで見えるであろう」
見上げると、水面にはゆらゆらと光がたゆたっている。
ふしぎな景色だ。
「水はあらゆるものを溶かし、歪め、暴く。隠されているものを洗い流すのもまた、水だ。だが、水の中にすべての真実があるとは限らん」
「むずかしいよ、ナマズさん」
「まぁ、そうよな。アメトリンは地の生き物。いつか水のゴーレムにでも会ったら極意を聞くといい。さて……水は目を惑わせるものだが、音はな、陸より遠くまで聞こえるものなのだ」
「音?」
ぼくに巻き付いたナマズさんの体がぼくの顔や胴をおおうと、どういうわけか視界がなくなった。
代わりに音が聞こえてくる。
水の中のぼわんとした、不確かな音じゃない。
遠くから響く、こだまのような、でもたしかにその場にあるような、聞いたことのない音色。
「われはこの泉にあって、山のすべてを知るもの。それはこの泉に山中の音が集まるからなのだ。アメトリンにも聞かせてやろう」
聞こえてくる音に集中すると、それは、たくさんの足音だった。
地を踏む音が、がさがさと枯れ葉を砕き、草を払いのけながら進んでいる。
「────ゴーレムが出るというのはこのあたりか」
びくりと震えてしまって、泥でふさいだ亀裂から泡が漏れる。
ナマズさんがヒレで抑えてくれなければ、ぼくはまたおぼれてしまっただろう。
それくらいびっくりしたんだ。
「これ……山に入ってきた人間の声?」
「そうだ。やつらの狙いを突きとめるぞ」
ぼくたちは耳をすまして、人間たちの音を聞き取る。
「────ここに宝石のようなゴーレムが立っているのを見た」
「なにもいないぞ」
「いや、見ろ。なにか大きな生物の痕跡だ」
「でかいな。俺たちだけで倒せるのか?」
ゴーレムを倒す、という会話にまたびっくりしたけれど、ぼくはもう泡を吐き出さなかった。
「────倒すことはできなくても、腕や足の一本で莫大なカネになる」
「だがゴーレムってのは凶暴で、人間を見るなり襲ってくるというぞ」
「やっこさんはそうじゃないらしい。何日か前、ギルドの冒険者とかいう若造が来ただろう。あいつの調査で、ここのゴーレムは穏やかな気質だとわかったとか」
「へぇ、襲ってこないなら宝石や魔石と同じだな。しかも最上級品確定ときた」
「あぁ。冒険者なんかにやるのは惜しい。俺たちで狩っちまおう」
もう聞いていられなくて、ぼくはふるふると頭を振った。
音が遠ざかっていって、ナマズさんの体がはなれる。
「どうして?」
思わずつぶやいた声が震える。
「ぼくは……この山で、みんなと生きていたいだけなのに……」
泉の底に座り込む。
ナマズさんと、泉に住む小さなものたちが集まってきた。
うつくしい尾ビレで泳ぐ魚さんや、小さな足でぼくの腕をのぼるカニさんを見ていると、ただどうしてと、悲しみがわき起こる。
みんなを守りたかっただけ。
みんなといっしょにいたかっただけなのに。
ぼくがいるだけで悪いことを遠ざけられるなんて、夢のまた夢だった。
現実は、ぼくを目当てに嫌な目つきの人間が山に入ってきて、みんなを危険にさらしている。
「あぁ、泣くなアメトリン。人間はおそろしい生き物だと、これでわかったろう」
ぼくは、泣いているのだろうか。
自分ではよくわからない。
泣くとは涙を流すことで、ぼくに水を流す機構はないように思う。
それとも、胴の中心が刺すように痛いこれが、泣くということなんだろうか。
「ラグナは奇特な男であったが、あやつのみが奮闘したところでなにも変わらん。村の人間は山を拓くだろうし、アメトリンを対等な存在と見てはくれんだろう」
「でもラグナは、人間たちと相談するって。ぼくたちを傷つけないって」
「ラグナにはそれだけの力はなかった。そういうことであろう」
「うぅ……」
悲しくて悲しくてうつむくぼくの代わりに、ナマズさんは耳をすまして音を聞いていた。
やがて人間たちは、ぼくを見つけることができずに山を降りていった。
いつのまにか泉に映る空は赤みを増して、やわらかい光がゆらめくようになっている。
「時間がかかってもよい。これからどうするか、どうしたいか。おぬしの考えを聞かせておくれ」
ナマズさんはそう言ってぼくを送り出した。
ゆっくりと寝床へ帰る道で、ぼくはどうしたいか、たくさん考える。
星がまたたきはじめた空を見つめて、その日はいつまでも眠れなかった。
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