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鈴山 零一

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第1話

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ある日、男が一人死んだ。

それはありきたりな「病死」であり、その死は極々自然のことであった。
だが、そんなありきたりな話であれば何故私がこれを語る必要があるのだろうか。
理由というものを語るには大層長い話を大袈裟に話さなければならないが、簡潔に語るとすると…。

その日、世界は「過去」になった。

何を当たり前なことを言っているのか君は、という罵声が聞こえそうだが、それは我々と諸君らの住む世界線或いは時間軸、または惑星が異なるのであって、我々が示す「過去」は「現在」であり同時に「未来」なのだ。

「過去」が「現在」。そして「未来」。

「何故か」と問われるとやはりもう既に物言わぬ骸となった彼が非常に大きな鍵を握り、そしてその鍵こそが真実であり、それこそが「過去」「現在」或いは「未来」なのだ。

では此処で、「彼」について語ろうと思う。「唐突だ」と思って結構。だが、聞いてほしい。

「彼」は大層な富豪でもなければ貧民でもない、よくある極々一般的な家庭に生まれ、極々一般的な学生生活を過ごした後、極々一般的な社会生活を過ごした、ある種、「彼」の他に「一般的」という言葉が当て嵌まる者はいないのではないかと考えられる人物である。だが一点、「彼」には他の者よりも大層秀でた才能があった。
―諸君らでいうところの「超能力」である。
その能力については現在のところ不明である、というより検証が不可能である。それは「彼」が亡くなっていることもそうであるが、我々の持つ技術ではその「超能力」を調べることができないということである。唯一つ、「彼」が遺した日記のみがその「超能力」を保有していたことを示す唯一無二の物的証拠である。
だが、その日記もとうの昔に無くなっていたがな。

失礼。話は何処までだったかな。嗚呼そうだったな。では続けるとしよう。

「彼は超能力者であった。しかし能力については不明である。」
此処までは理解して頂けたかな。
宜しい。では続ける。
ある日ー何時だったか。もう数年経つと思うが、
「彼」が急死した。若くして亡くなったことは覚えているよ。何歳だったか。そうあれは私がまだ若い時だったからーまあ、今も若い気ではいるのだがな。
つまるところ、「彼」の急死。これが総ての始まりだった。

「彼」の急死から数日、まるで呪いのように「彼」の両親、「彼」の親友、「彼」の彼女が次々のだ。これを「呪い」の他に形容できる言葉はあるかね。きっとないだろう。
「彼」の親近者が、全く同じ死因で死亡するとは一体どんな確率かい。それこそ天文学的確率だ。
その「事件」のさらに数日、世界で同時多発的に「破綻」した。

―あゝ、諸君は「金」の方の破綻を想像しただろうが、確かにそれもあっただろう。だが今回に限っては大きく異なる。文字通り「破綻」したのだ。世界が同時多発的に。まあ当然世界は大混乱。

ええ何だね。ー成程、この「破綻」はどうやったら「彼」に結びつくのか、かい。

これは推察に過ぎないが、「彼」の能力は「安定」または「平定」などの「世界」を安定化させる形の能力ではないかと考えている。でなければこんな事にはならないからね。

話を戻す。
「破綻」からまた数日、各国で次々と生物学的危機、即ちバイオハザードが発生した。さらに同時にゲリラテロが発生。まさに世界は大混乱というものに陥っていくわけだが、さらに世界が破滅に向かう決定的な出来事が起きる。某財団風に言えば、「支配種シフト」が発生した。内容は分かっていない。文明が崩壊したからね。

ここまで、「彼」が死んでから僅か数週間。

「彼」の死というものは正しく「パンドラの箱」を開けることに等しいものだった。

運命による試練か神の罰かは分からん。


だが、数週間後、突如として「破綻」が沈静化する。
原因はこれははっきりと断定できた。




そうだろう、「諸君」
ようこそ、「我々」の世界へ。
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