虹虹の音色

朝日 翔龍

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第1章 メインストーリー

第6話 繋がる

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 その階段を降りた先には、【控え室】と書かれている板が貼り付けられた大きな部屋が広がっていた。
 そして何より、たくさんの人が彼らを待っていた。

「えぇ⁉︎    って、この人たちって…!」
「もしかして、あたし達以外のバンド~?」
「そ! 今ここには、ぼくたちカラフルリバティを含めて3つのグループが入ってるんだよね」
「3つ……見た限り、カラリバとデイスマしかいないような」
「お久しぶりです、ポシャンの皆さん。今日から宜しくお願いします」
「あ、この前の……えっと?」

 そういえば、この人と話してる最中に賢信が来たから名前聞いてなかったっけ。

「あ、あのときはそうでしたね。私は、デイスマの……まあ、統率係? の、大美野 伊千佳おおみの いちかです」
「統率係? リーダーじゃなくて?」
「はい、まあメンバーがメンバーなので」

 あぁ、デイスマのあの個性って、リアルであれなんだ。キャラづけだと思ってた。

「もーう! いっちゃんばっかりズルい~! みんなの自己紹介の時間だよ!」
「ちょっと莉華! 毎度毎度ごめんなさい、距離感がない子で」
「もう瑛夢~、お姉ちゃんみたいなこと言わないで!」
「ふわぁ~。もう待ちくたびれて眠いよ」
清花さやか? この前寝坊して遅刻して挨拶できてないでしょ。ちゃんと挨拶するまで、罰は継続だよ」
「もう、伊千佳は真面目ちゃんだよね。えっと、高林たかばやし清花です、趣味は寝ることです」
「こら! もう、なんでこうもゴチャゴチャしてるんだか」

 なんか、デイスマって結構苦労してるんだ。でも、リーダーは莉華なんだよね。統率係とのギャップがすごい。

「じゃあ、デイスマはこれで最後かな。次、カラリバの出番だね。ぼくは自己紹介済みだし、誰でも良いよ」
「はいはーい! じゃあ、私から! ピアノ担当の望月 智郷もちづき ちさとです!この前のライブ、まじ最っ高でした!」
「あはは、ちさちゃんこの前からずっとそれじゃん。あ、あたしはドラム担当の厚賀谷 雪巳あつがや ゆきみ。よろしくね」
「以上3人のバンドだ、絶賛メンバー募集中! ってくらいに人手不足」

 たしかに、ピアノ、ドラム、ギターヴォーカルってかなり単調な音になっちゃうよね。なのに人気があるって、やっぱりcolor’sって凄いんだな。

「それともう一つ! ここは、color’sに認められたバンドしか入れない部屋! てなわけで、君達ポシャンもその一員だよ!」
「「えっ……えぇ~⁉︎」」

 う、嘘。認められたって、もしかして事務所入りとかってやつ⁈

「あ、いや。認められたって言っても、スカウトじゃなくて! あくまで評価が高いってだけ。しかも、割と最近始めたことだし、君達が初めてだけどね」
「あ~、通りでプロの人しかいないんだ~」
「オススメのバンドとか、バンドやりたいって子、ジャンジャン勧めてほしいんだ!」

 つまりは、交流の場ってことだよね。面白そう、もっと輪が繋がりそう。

「たしかに、バンドの向上を考えると、そういう場も悪くない」
「賢信がそう言うなら、間違いなしってことだね! 私も賛成!」
「みーちゃん、張り切るね~。あたしも、楽しそうだし良いよ~」
「お前ら、一応相手プロなんだから敬語使えっての」
「良いじゃん、俺たちらしいし」
「それで良いの? 私からしたら、かなり違和感なんだけど」

 こんな感じで、俺たちどころかバンド同士の輪が生まれた。俺たちの手で、この輪がもっともっと広がりますように。
 あ、このフレーズ良いな。歌詞候補にしておこっと。

「それじゃ、ポシャン。時間貰っちゃって悪いね。練習再開と行こうか」
「「はい!」」



 そうして、まだ見えぬライブに向けて、新たな練習が始まった。

「ん~! 美琴の紅茶美味しい!」
「あたしの家、喫茶店だからね~。これくらい当然当然~」
「本当に美味しいです! でも、これが練習なんですかね?」
「ただの休憩……だよな?」
「でも、まったりできるおかげで詩に専念できるよ」
「たしか、チームワークを鍛える練習って言われてたけど」

 ただの休憩にしか思えないんだよね、これ。チームワークって、これで鍛えられるのかな。

「あのさ~。ちょっと良い~?」
「どうかしました?」
「うん~。ちょっと、みーちゃんの家に寄りたいんだよね~。ほら~、商店街の果物屋さん~」
「急に? なんか欲しいものあったっけ?」
「イチゴが欲しいんだよね~。手作りケーキでも一緒にやらない~?」
「あ、良いじゃんそれ! 紅茶にも合うし!」
「お、俺はパス! そういうのはパスだぜ!」
「勝喜~? チームワークの練習でパスはなしだよ」
「ちょ、そういうのマジ苦手なんだ! 頼むから、な!」

 そういうことか。チームワークって言っても、あくまで兼友さんがくれたのは、必要最低限の物だけだったんだ。
 あとは自分達でってやつ。そういうのはカラリバのイメージに合わないけど、まあ良いか。

「よし、じゃあ商店街行こうか」
「行こ~行こ~!」



 昼下がり、商店街-

「みーちゃんのお店行く前に~、ちょっとパンでも買ってこ~?」
「そうですね! お腹すいちゃいました」
「お昼だし、たしかにお腹が空く時間か」
「って、ただ新商品の確認をしたいだけでしょ美琴は」
「あ、バレてた~?」
「そりゃバレるだろ。お前、あのパン屋の新商品が出る日知ってるしな」
「第1週と最終週の火曜日だっけ? ほんと、詳しいよね」

 どこから情報を集めてくるのか本当に不思議だよ。美琴って一体何者なんだろ。

「それとね~……? ねぇ、向こうから歌声聞こえない~?」
「……本当だ。美琴、耳いいね」
「声がするのは、この先の公園の方っぽい。ギターみたいな音もするし、バンドか? この間の話もあるし、行ってみる価値はありそう」
「ケンケンがそう言うなら、パン屋の前に行ってみようか~」



 桜羽公園-

「どう? 結構良い感じだったと思うけど」
「ん~、もう1セッションやってみよ」
「分かった、これも仲直りのため! ちゃんとやろ!」


 見慣れない2人の高校生らしき女子が、楽器を持ちながらそう話していた。
 その姿を見るに、先程聞こえた歌声は彼女らのものだろう。

「あの子達か~。どこの学生だろ~?」
「ぼくは見たことない。おそらく、他校の生徒だと」
「でも、仲直りってなんのことですかね?」
「っ⁈   ちょっと、そこの人達!」

 ヤバっ、覗き見してたのバレちゃった!

「何ですか? 覗き見なんて、良い趣味してますね」
「ちょ、ちょっとキョウカ! その人たち、ポシャンじゃない?」
「えっ? 本当だ。すみません、私なんかが詰め寄っちゃって」

 ポシャンって知った途端に顔岩変えられても、さっきの恐怖は拭えないよ。
 なんか、髪色が赤いせいで不良みたいだし。

「えっと、この辺じゃ珍しいですよね。私たち、隣町の朝日華学園でバンドやってまして」
「その……まあ、喧嘩しちゃってて、ムシャクシャしててつい当たりが強くなってました。ごめんなさい」
「朝日華学園って~、軽音部で有名だよね~」
「私たちは、軽音部じゃなくて、個人でバンドやってて」
「俺たちみたいな感じってわけか?」
「それよりも、ケンカしたって? あまり、良いことじゃないし」

 賢信って、デリカシーないのかな。出会っていきなりそれ聞いちゃうの?

「まあ…ポシャンなら話しても良いかな」
「その前に、私たちの自己紹介しないと! 私は、佐原 冬胡さはら とうこっていいます」
「私は、近衛 杏香このえ きょうかです。冬胡と他のメンバーと一緒に、Bloom Sunsetってバンドをやってます」
「とりあえず~、パンでも食べながら話聞くよ~」


 一同は、話し合いも兼ねてパン屋へと向かった。
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