虹虹の音色

朝日 翔龍

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1章 サイドストーリー Daily Smile

第1話 アイドル始動!

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 タレント事務所、タテヤマプロダクション。そこに所属しているモデルの4人が、とある1室に呼ばれて集まっていた。

「新しい仕事?」
「モデルじゃなく、ですか?」
「そう。君たちには、歌手アイドルになってもらいたい」
「「えぇ⁉︎」」

 
 予想だにしていなかった話に、4人は耳を疑った。だが、スタッフの目は本気だった。

「アイドル……瑛夢ちゃん、どうする?」
「私? 莉華ちゃんは?」
「私はやっても良いかな。伊千佳ちゃんは?」
「私は、スケジュール的に無理だと思うんですけど」
「大丈夫! 楽器は音ハメで演技だし歌も口パクだけ! 簡単でしょ?」
「なら、まあ大丈夫です。それより清花が心配なんです」
「それも大丈夫! 夜の現場にしか呼ばないので!」


 夜更かし癖のある清花にも、仕事でスケジュールいっぱいの伊千佳にも問題が起きないようにスケジュールが組まれていた。



 そうして、Daily Smileの結成初の収録日。ライブ番組のため、多くの観客や記者がいた。

「それではここで、タテヤマプロダクション初のバンドアイドルによるパフォーマンス! 曲は、“pop pop summer !!”」

「1・2!」


 幕の後ろで演奏家が奏でている音がスピーカーを通して会場に響き渡った。
 そして、曲に入ろうとしたとき。

「きゃっ⁉︎」
「ちょ、莉華⁉︎」

 ヴォーカルの莉華が転んでしまった。メンバー全員の目線がそっちに行ってしまい、演奏のフリをしていた手がそこで止まった。
 だが、その状態を知らない幕裏の演奏は止まらない。つまり、会場が矛盾しているのだ。誰も弾いていない楽器の音が響き渡る。
 その状況に、会場がざわついた。

「ど、どうしよ……これ演技だって、スタッフさんが言ってるから大丈夫だとは思うけど」
「皆さん! お見苦しいところをお見せしてしまいました。ですが、私達が楽器の演奏の演技をしていることは、今朝の時点で皆さんも承知かと思われます。なので、もう一度続けさせてください」


 伊千佳がことの事情を冷静に観客に伝えた。しかしそれが余計に会場を騒がせてしまった。

「え、演奏が演技って聞いてた?」
「ううん、今知った」


 スタッフから聞いた情報だと、たしかに観客を集めるための広告に演技のことは載せたと聞かされていた。
 そのため、あっさりとそれを告げたのだが現実は違った。その情報は、今ようやく知られたのだ。

「ね、ねぇ。どういうこと? スタッフさん達、本当に広告に私達の演奏のこと載せたんだよね?」
「そのはずだけど……どうしよう!」
「焦らないで! 伊千佳と私に任せといて」
「さ、清花ちゃん!」
「皆さん、今日は申し訳ありません。今後について、もう一度事務所と話させていただきますので、今日はここで!」


 清花は、深々と頭を下げて謝罪した。普段の彼女とは大違いの振る舞いだが、流石は芸能人。



 なんとかステージを終わらせて、4人は控え室で反省会をしていた。

「ごめんね、私のミスのせいで」
「ううん、それよりも先のことを考えないと」
「一応、スタッフからの話だと載せ忘れてたみたい」
「えぇ⁈   でも載せたって!」
「私達の不安を煽らないようにって嘘ついたみたい」


 演者に不安を与えないのはたしかにスタッフの役目だが、だといえども自分達のミスを隠していたことには流石に全員は許せなかった。



 そして、翌日。タテヤマプロダクションの会議室でデイスマは社長からある連絡を受けた。

「まず、良い知らせから。あのスタッフ達は辞めさせたよ。我が社にはあってはならない事態を招いたわけだからね」
「ありがとうございます。私達もそれについては同感です」
「それと、まずはってことは悪い知らせもあるんですよね」
「そう、君たちのスケジュールだけど、全部キャンセルになってね」
「それについては提案があります!」


 莉華が思い切り手を上げて、その場の空気を変えた。

「やっぱり、私達で演奏したいです!」
「ちょっと瑛夢、勝手なこと言わないで」
「そう言う伊千佳ちゃん、バイオリン弾けるでしょ!」
「そ、それはできるけど…」
「莉華だってピアノ弾けるし、清花もギターできるし!」
「でも、私はそんな暇ない。俳優だってやってるし、バラエティ番組にニュースコーナーの出演。譜面を覚える暇なんてないに等しいの」
「じゃあこのままで良いの⁈」

 伊千佳ちゃんって、なんでこうなの。いっつも自分最優先だけど、これからは1つのチームとして動くんだから少しは合わせてほしいんだけど。

「そこまで言うなら、伊千佳は辞めたら? 別に、3人組のアイドルも珍しくはないでしょ?」
「で、でも……館山たてやま社長、どうなさいますか?」
「この計画を決めたのは、僕じゃなくてプロデューサーだから、そっちに聞いてくれ。それじゃあ、頑張ってくれよ。君たちには我が社の信頼も任せているんだからね」
「「はい!」」

 いきなり苦難からスタートしちゃったけど、タテヤマプロダクションのためにも、そして他の所属者さんにも迷惑かけないように!
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