虹虹の音色

朝日 翔龍

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第2章 メインストーリー 

第4話 憧れから生まれたプライド

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「よいしょ! これでステージはできたかな?」
「壮亮! ピンチやから助けてほしいんやけど!」
「こっちも! ヘルプ!」
「えちょ、何何⁉︎」

 なんかいつも通りで助かるや。こっちのほうがかえって落ち着くの、ダメなんだろうけど。

「ベースの弦が切れた! やって!」
「キーボードが上手く立たないんや! 手伝って!」
「あぁ~、はいはい」

 キーボードの伊井 嘗いい こころ、ベース担当の湯川 将斗ゆかわ まさと。あと1人いるんだけど、影薄いからなぁ。
 どこにいるか分からないんだよね。

「壮亮の後ろ」
「ギャアァァァァ⁉︎   ちょ、マジでビックリしたわ」
「ご、ごめんね?」

 エレキギター担当の中野 零なかの れい。これで、僕を含めたダリィの4人勢揃い……本当は5人組だけど、今日は4人で。まだ大阪だからね、仕方ないね。



「よし、準備オッケー。なんとか開始時間前には終わったね」
「良かったわ~、じゃあリハしよか」
「うん。ちょっとでも目立てると良いな」
「零ちゃん、明るく明るく、な!」
「まあ、リハやろっか! 1・2!」



 そしてリハーサルも終わり、いよいよ本番なのだが、既に観客はいっぱいだった。

「す、凄いね。大阪とは大違いだよ」
「せ、せやな。でも怖がってる場合ちゃうで!」
「嘗、キーボード落ちかけてる」
「……何で今になって緊張するかな」

 リハ始まってすぐにお客さん集まってたのに、今更すぎないか? それだけ集中してたってことかもだけど。

「じゃあいくよ。My Road!」
「「ヒアウィーゴー!」」

 
 弾け出すエレキギターとキーボードの音色。ポシャンとは大違いの熱気がいきなり音で姿を見せた。
 ドラムがいなくて物足りなさもあるが、それでも新鮮な何かを響かせている。

「スッゲェ、生のダリィのライブ、こんなスゲェんだ!」
「私達とは大違い…」
「良いなぁ~、あたしよりも曲作り上手だし~」
「流石、私もいたバンド。ちょっと行ってきまーす!」
「えちょ⁉︎」


 そう、残りのメンバーは元音なのだ。だからこそ、4人しかいない。つまりは、かけもち状態で元音はポシャンにいたのだ。

「だからエレキギター上手かったのか」
「しっ、そろそろ歌始まるよ」

 さぁ、聴かせるか。僕たちの歌!

「振り返って意味はあるのか? 過去にすがって何を見つける? 見えない 消えない 傷だけが待ってる
 ちゃっちい幸せなんかより 金が良いって人は言う 本当にそうなら 見つけ出そうぜ 新しいMy Road

 もう無理しなくて良い 自分らしく突き進むんだ 混ざり合った世界で 一緒に同じ景色の中 同じ歌を歌おう

 掴み取った言葉を繋いで 全速力でかき鳴らした6弦 日々の弱さを今だけは 取り壊してくれる 何でもできそうなんだ
 切り開いた未来を信じて どこでだって強く歌い続けるよ 僕ら1人1人 同じで違う人間なんだ 分かちあっていこう 戻れない日々を積み上げて 共に見つけよう」

 これくらいは真剣に歌わないとね。でも、まだまだ手抜き。これは3番からが本番だからね。
 さぁ、いこうか。

「勘違いして進んだこの道 今じゃもう守り抜きたい宝物 大事にすれば見えるはず 僕らだけの光 絶えなき絆と共に
 探していたピースを揃えて 並び替えてできたワンシーンはそう 永遠へと変わる 思い出なんて呼ばせはしない いつまでも一緒に 2つとない日々作り出して 共に歩き出そう」


 ダリィの初となるオリジナルソング、My Road。それは聴いていた人達の世界を一瞬で塗りかえしていた。
 もちろん、それを聴いていた賢信も同様に。だが、彼の顔はより一層決意を固めていたような顔をしていた。

「……皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます! 大阪のダリィ、これからはこっちでお世話になりますので!」
「「よろしくお願いします!」」


 その挨拶と共に、大きな歓声と拍手が響いた。そうしてライブは大成功で終わった。



 翌日-

「それで、どうでしたか?」
「……」


 早速、賢信とポシャンの会議が始まった。

「……分かった、ポシャンは続ける」
「「えっ」」

 あっさりと続けると言った賢信に、全員は唖然とした。あの賢信が意見を変えることなど、普通は考え付かなかった。

「でも、それだけ。颯太くんが復帰次第、君はポシャンを辞めてくれ」
「「えぇっ⁉︎」」
「良いですよ」
「「えぇぇぇっ⁉︎」」


 聞き間違いでなければ、一瞬でものすごい内容の会話が過ぎ去っていた。

「え、えっ⁉︎   良いの?」
「はい! あくまで、代理ですから!」
「めっちゃポジティブだなおい」
「それに、賢信さんも分かっているんでしょ? 僕の本当の居場所!」
「…君は、あのバンドでなきゃ意味がない。そう判断したまでだ。それに、ポシャンを続けるというのは、あくまで本当のポシャンに戻るまでの間。その後でもう一度検討する」

 そういうことか。それでも十分良いよ。それにしても、なんとかなって良かった。これだけでも、ショウニイの役には立てたかな。
 一時はヒヤヒヤしたけど、結果オーライだよね。まあ元音は飛び入り参加だったけど、良い音色してたし。毎日練習してたんだろうなぁ。

「にしても、元音ちゃんダリィのメンバーだったんだね!」
「ビックリしたよ~、だからエレキギター上手かったんだね~!」
「え、えへへ…」
「……僕だって歌上手いですよ~っ!」
「お、嫉妬か?」
「違います~! ちょっとは褒めてほしいだけです~!」
「それを嫉妬と言うんじゃないかな?」
「「アハハハハハハ!」」
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