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第3章 MIRA CREATE!
第19話 仮面
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去っていく後ろ姿を茫然と眺める僕。後ろから、そんな僕を呼ぶ声がする。でももう、何も聞こえない。僕はまた、全て失ったから。
「武尊、何かあった?」
「……もう、良い。バンド、続ける意味……なくなったから」
「え、ちょっと待って。バンド、辞めるってこと?」
おそるおそる優姫はそう僕を見ながら尋ねる。僕は頷いて答えた。
「……バカ」
「おま、武尊になんてこと言った⁉︎」
「お、落ち着きなようーちゃん」
「何かあったから話聞くぜ?」
「……アイツか」
でも、僕の求めていた一言を優助くんが発してくれた。心の奥底に閉じ込めていた思いを、拾ってくれた。
「おい和矢! 聞こえてんだろ、返事しろ!」
「……負け犬が吠えんな。みっともない」
「! 優助くんは、負け犬じゃない!」
咄嗟の僕の反論に、一番驚いた顔をしたのは優助くんだった。
「……かーくん。僕は、君に見つけてもらったあの日から何も変わってないよ。不器用で、上手く物事言えない僕。でも君は変わった。人を見下す、普遍に」
言いたいこと、たくさんあって選べられない。あれこれと溢れ出す言葉に埋もれ、その苦しさで僕は泣いた。それでも言葉を紡ぎ出す。優助くんの今までを、集めるために。
「でも、優助くんは違う。誰も見下さないで、認めてくれる。ここにいるみんな、同じ。チグハグしてても、決して普遍には飲まれない!」
「……側から見れば、陰キャの集まりだな」
「もういい。行こ、武尊」
「……セントリ。嫌い?」
かーくんは僕の質問に答えることなくまた歩き出した。もう違う別の道を歩いていると言わんばかりだった。
「放っとけ、あんなやつ」
「飽きた、帰る」
「ちょ、ちょっと待った遥歩! 新しいゲームあるが、来るか?」
「ほぉぉぉ! 行く!」
さっきまで無表情だった遥歩くんの瞳がキラキラと輝きだす。恥じらうことなく好きなものに釣られるその様子に、僕は無意識のうちにシャッターを上げていた。
どんなに僕がシャットアウトしても、この場所はそんな僕を笑わせてくれる。この繰り返しは、セントリと同じだけど、どこか違う。柔らかくて、温かくて、包んでくれて、まるで毛布のようだ。
もしかしたら、鳥が残してくれた羽で出来上がっているのかもしれない。
「ごめん。僕、バンドやる。続ける。みんなとなら、できる気がする」
震えた僕の言葉で、全員はゆっくりと笑顔を咲かせる。それなのに僕はどんな顔をしているのだろう。自分で自分が見えないのが、これまた悔しい。
「タケッチ。あのバカのことは気にすんな。俺達でやろうや」
「うん。やろう」
「……そうだね。新しいバンドで頑張ろっか!」
僕達は今、ようやく決別を受け入れたと思う。自信とかは、よく分からないけれど、この場所を信じていけば、きっと明るい未来へ辿り着く。そう信じて。
「武尊、何かあった?」
「……もう、良い。バンド、続ける意味……なくなったから」
「え、ちょっと待って。バンド、辞めるってこと?」
おそるおそる優姫はそう僕を見ながら尋ねる。僕は頷いて答えた。
「……バカ」
「おま、武尊になんてこと言った⁉︎」
「お、落ち着きなようーちゃん」
「何かあったから話聞くぜ?」
「……アイツか」
でも、僕の求めていた一言を優助くんが発してくれた。心の奥底に閉じ込めていた思いを、拾ってくれた。
「おい和矢! 聞こえてんだろ、返事しろ!」
「……負け犬が吠えんな。みっともない」
「! 優助くんは、負け犬じゃない!」
咄嗟の僕の反論に、一番驚いた顔をしたのは優助くんだった。
「……かーくん。僕は、君に見つけてもらったあの日から何も変わってないよ。不器用で、上手く物事言えない僕。でも君は変わった。人を見下す、普遍に」
言いたいこと、たくさんあって選べられない。あれこれと溢れ出す言葉に埋もれ、その苦しさで僕は泣いた。それでも言葉を紡ぎ出す。優助くんの今までを、集めるために。
「でも、優助くんは違う。誰も見下さないで、認めてくれる。ここにいるみんな、同じ。チグハグしてても、決して普遍には飲まれない!」
「……側から見れば、陰キャの集まりだな」
「もういい。行こ、武尊」
「……セントリ。嫌い?」
かーくんは僕の質問に答えることなくまた歩き出した。もう違う別の道を歩いていると言わんばかりだった。
「放っとけ、あんなやつ」
「飽きた、帰る」
「ちょ、ちょっと待った遥歩! 新しいゲームあるが、来るか?」
「ほぉぉぉ! 行く!」
さっきまで無表情だった遥歩くんの瞳がキラキラと輝きだす。恥じらうことなく好きなものに釣られるその様子に、僕は無意識のうちにシャッターを上げていた。
どんなに僕がシャットアウトしても、この場所はそんな僕を笑わせてくれる。この繰り返しは、セントリと同じだけど、どこか違う。柔らかくて、温かくて、包んでくれて、まるで毛布のようだ。
もしかしたら、鳥が残してくれた羽で出来上がっているのかもしれない。
「ごめん。僕、バンドやる。続ける。みんなとなら、できる気がする」
震えた僕の言葉で、全員はゆっくりと笑顔を咲かせる。それなのに僕はどんな顔をしているのだろう。自分で自分が見えないのが、これまた悔しい。
「タケッチ。あのバカのことは気にすんな。俺達でやろうや」
「うん。やろう」
「……そうだね。新しいバンドで頑張ろっか!」
僕達は今、ようやく決別を受け入れたと思う。自信とかは、よく分からないけれど、この場所を信じていけば、きっと明るい未来へ辿り着く。そう信じて。
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