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1章 昇竜
第4話 晴れた!
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残るは6日。でも僕達は普通に生活を送っていた。でも、それだからか変化にもすぐに気がついた。
「キャンパス通り、人少ないね」
寮の窓から見下ろすだけでも、人通りは少ない。というより、誰もいなくてガランドウとしている。
「……あのなぁ。あったりまえだろがい! 今外嵐だぜ?」
僕の横にいるテイラが右手親指で外を指しながら大声でそう言い放つ。
あまりの大声に耳を塞ぐほどだ。
「アラン、お前はほんと独特だよな」
「エヘヘ~」
「褒めてねぇよ」
「アッハハハハ……でも、すごい雨」
窓の向こうを見返すと、予報通りに外は大嵐だった。せっかく咲いている桜も、今にも全部散ってしまいそうなほど雨風が強い。
「ハァ……大学もないから遊びに行こうと思ったが、これじゃパーだな」
「そうだね……?」
仕方なくテレビの電源をつけようと思い、窓から背を向けようとしたときだった。雨音がいきなり止まり、背中に温もりが伝わった。
「へ?」
ふと目線を窓に戻すと、まるで組み立てられたパズルが崩れ落ちるかのように雨雲が散り散りになっていく。
そうして青空と春の陽光が姿を現し始めていた。
「ちょ、テイラ! 晴れたよ、晴れた!」
「……まったく。アイツか」
参ったように頭を掻きながら、テイラはそう呟く。この突然の晴れ空に心当たりでもあるかのようだ。
「何、ヒーロー⁉︎ たしか天気を操れるヒーローいたよね⁈」
「お前、ヒーローになると目の色変えるよな。仕方ねぇな、会いに行くか? 今日アイツはフリーだし」
「良いの⁉︎」
「まあお前のことは話してあるし」
それを聞いて、昨日の謎がやっと解けた。
「あのさ、テイラ。モスイさんにも僕のこと話したでしょ?」
「え、なんで分かるんだよ?」
「昨日のバイト帰り、スカウトされた」
「なっ、スカウトすんなってあれほど言ったのに⁉︎」
この感じだと、僕へのスカウトは完全に予想外だったんだろう。テイラは呆れたように眉間にシワを寄せながらため息をついた。
「あ、その……断ったから心配しなくて良いと思う。それに、僕の名前知ってたから気になっただけだし」
「いや、アイツのことだ。何か企んでるに決まってるぜ」
「……あのさ。テイラは、どう思う? 僕が、ディレクターになったら」
「ディ、ディレクターだぁ⁉︎」
僕の一言に対して、テイラは今にも目が飛び出しそうなほどに見開いて驚いていた。
「アイツ……何考えてんだ? まあ良い、それは俺から聞いとくぜ。それよりも、会いに行くんだろ?」
「うん! 多分、あのヒーローだよね。じゃあブロマイドにサインしてもらお!」
僕はブロマイドケースから、おそらくの予想で天候を操れる異能力で有名なヒーロー、「プレイア」のブロマイドを取り出してホルダーに丁寧の仕舞ってポケットに入れた。
そしてテイラと一緒に勢いよく、細々と陽光が差し込む街中へと飛び出した。運良く、とは少し違うけれど嵐がすぐにやんだおかげで、桜は散りきらずずに済んだ。
足元に少し散らばる花びらを、弾む足で撒き散らしながら僕達は駆けていく。その足音は、残り6日という絶望を感じさせることはなかった。
「キャンパス通り、人少ないね」
寮の窓から見下ろすだけでも、人通りは少ない。というより、誰もいなくてガランドウとしている。
「……あのなぁ。あったりまえだろがい! 今外嵐だぜ?」
僕の横にいるテイラが右手親指で外を指しながら大声でそう言い放つ。
あまりの大声に耳を塞ぐほどだ。
「アラン、お前はほんと独特だよな」
「エヘヘ~」
「褒めてねぇよ」
「アッハハハハ……でも、すごい雨」
窓の向こうを見返すと、予報通りに外は大嵐だった。せっかく咲いている桜も、今にも全部散ってしまいそうなほど雨風が強い。
「ハァ……大学もないから遊びに行こうと思ったが、これじゃパーだな」
「そうだね……?」
仕方なくテレビの電源をつけようと思い、窓から背を向けようとしたときだった。雨音がいきなり止まり、背中に温もりが伝わった。
「へ?」
ふと目線を窓に戻すと、まるで組み立てられたパズルが崩れ落ちるかのように雨雲が散り散りになっていく。
そうして青空と春の陽光が姿を現し始めていた。
「ちょ、テイラ! 晴れたよ、晴れた!」
「……まったく。アイツか」
参ったように頭を掻きながら、テイラはそう呟く。この突然の晴れ空に心当たりでもあるかのようだ。
「何、ヒーロー⁉︎ たしか天気を操れるヒーローいたよね⁈」
「お前、ヒーローになると目の色変えるよな。仕方ねぇな、会いに行くか? 今日アイツはフリーだし」
「良いの⁉︎」
「まあお前のことは話してあるし」
それを聞いて、昨日の謎がやっと解けた。
「あのさ、テイラ。モスイさんにも僕のこと話したでしょ?」
「え、なんで分かるんだよ?」
「昨日のバイト帰り、スカウトされた」
「なっ、スカウトすんなってあれほど言ったのに⁉︎」
この感じだと、僕へのスカウトは完全に予想外だったんだろう。テイラは呆れたように眉間にシワを寄せながらため息をついた。
「あ、その……断ったから心配しなくて良いと思う。それに、僕の名前知ってたから気になっただけだし」
「いや、アイツのことだ。何か企んでるに決まってるぜ」
「……あのさ。テイラは、どう思う? 僕が、ディレクターになったら」
「ディ、ディレクターだぁ⁉︎」
僕の一言に対して、テイラは今にも目が飛び出しそうなほどに見開いて驚いていた。
「アイツ……何考えてんだ? まあ良い、それは俺から聞いとくぜ。それよりも、会いに行くんだろ?」
「うん! 多分、あのヒーローだよね。じゃあブロマイドにサインしてもらお!」
僕はブロマイドケースから、おそらくの予想で天候を操れる異能力で有名なヒーロー、「プレイア」のブロマイドを取り出してホルダーに丁寧の仕舞ってポケットに入れた。
そしてテイラと一緒に勢いよく、細々と陽光が差し込む街中へと飛び出した。運良く、とは少し違うけれど嵐がすぐにやんだおかげで、桜は散りきらずずに済んだ。
足元に少し散らばる花びらを、弾む足で撒き散らしながら僕達は駆けていく。その足音は、残り6日という絶望を感じさせることはなかった。
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