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第1章〜ウロボロス復活〜
第13話「買い物2」
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「なんであるか?あれ」
「変な乗り物」
「ちがいますよ、移動販売車ですよ」
サエラの間違いを速攻で訂正してきたシオン曰く、あれは移動できる行商人の店であるらしい。馬車に商品を詰め込み、そのまま店としての機能も貼り付けたと言ったら良いだろうか。我は初めて見るので、物珍しくそれを眺めた。
あれが今の行商人の形態か。といっても、普通の行商人は大きなカバンや馬などに背負わせてるのが普通らしい。ああいう移動販売車とやらを支えるのはそこそこ大きな商会だからだと。
シオンが男に挨拶をしながら、毛皮を積んだリュックを地面に置いた。
「マンドさんこんにちわー!」
「おぉ‥‥‥おお、こりゃまた随分とでかい荷物だな」
シオンにマンドと呼ばれた中年の男は、挨拶し返そうとした片手を止め、呆れた視線で毛皮の山を見上げる。我と同じ反応だ。やはり普通ではないらしい。
「こんにちは」
「こんにちはである」
一足遅く追いついた我とサエラも同じく挨拶する。我は初めて会うので、少々声を小さく。
マンドは元気な二人を見て、野生動物のような獰猛そうな顔を歪めて笑い、挨拶をし返した。
大柄でスキンヘッドだからか強面がより強調されてて、見た目だけなら山賊の頭のような顔である。
しかし雪山でも半裸でいそうな野蛮人の外見とは裏腹に、厚手の防寒具を着込んでいる。都市からレッテルまで来るのにだいぶ寒さにやられたらしい。目の中には子供は元気だなという、若さを羨ましがるような文字が浮かんでいる気がした。
「よおっ、て、なんだ?また変な生き物拾ったのか?」
マンドの視線が我に向く。マンドの言葉につられたのか、村人たちの視線も我へと向いた。
ちょっと待て、変な生き物って我のことか?
このプリチーな尻尾を見てそんなことを言うのか。良かろう戦争だ。
「ウーロ、ステイ」
「きゅーん」
暴れないからサエラ、羽の付け根を摘まないでくれ。そこ竜の弱点じゃから。
ちょうど肉がなくて皮膚が伸びてる部分だから、可動域以上に皮が引っ張られると痛いの。やめて。
「ウーロさんはドラゴンなんですよ!」
なぜかシオンが胸を張りながら言うと、マンドは「ははは」笑いながら受け流した。
「おーそうか、売ってくれないか」
「ダメです!」
「はっはっはっ」
シオンの言葉に軽口で答えるマンド。さては信じてないな?まぁ信じてもらえない方が騒ぎにならなくて都合がいいが。
「まぁたしかに喋る魔物は珍しいけどな。‥‥‥にしてもまぁ、すげえ量だな。いつもの二倍くらいあるんじゃないか?」
マンドの言葉に周囲にいた村人たちも、改めて毛皮の多さに驚く。いつもよりは多いらしい。
まぁ、量としては大変な数と言えよう。そもそも常人が荷車なしに運べる量ではないからの。
無論これらは我が村に来てから数日で集まったわけではない。半年くらい前から貯蔵してあった分が大半である。
「全部売ってくれるのか?」
「当然。ただ上に乗ってるのは毛皮が大きい」
「あ?どれどれ‥‥‥っと、こいつは」
マンドが積み重なった毛皮の一番上を取り、それを広げて感嘆の息を吐いた。
毛皮は一般的なシカのものではなく、シマウマのような黒いリボン状の模様の入った毛並みをしていた。
そしてその大きさ。実にシカ2頭分に相当するだろう。その毛皮が4枚もある。
「こいつぁ、魔物か?」
「うん。グレート・ディアー」
その毛皮がただの動物ではなく、魔物の素材だと言うことがわかると、マンドも周りの村人も驚き声を上げた。
なぜかシオンが我が身のことのように嬉しそうしているのに対し、サエラはドライに無表情である。
「おいおいマジかよ。この歳で仕留めちまうか」
毛並みを触り、それが本物であると悟ったらしいマンドが冷や汗をかきながら呟く。
魔物とは通常の動物と異なり、魔力と呼ばれる特殊なエネルギーを宿す生物たちだ。我らドラゴンも含まれる。
魔物は魔力を操り超常現象‥‥‥いわゆる魔法を使ったり、身体を極限まで強化したりと、例外なく強力な力を有しているのだ。
エルフたちが狩りをするベヒモスウォールの森にもこの類の魔物は生息している。
当然、子供が仕留められる獲物ではない。ウサギやネズミではないのだ。
「サエラ、本当にグレート・ディアーを仕留めたんですか?」
村人の中から年若い金髪のエルフが、そう言いながら出てきた。誰だろう?サエラとシオンの知り合いだろう。
大人しそうで、部屋で本でも静かに読んでそうな男だ。見るからにひ弱っぽい。顔は‥‥‥驚愕に染まっているな。おそらく知識としてグレート・ディアーを知っているのだろう。
グレート・ディアーはその名の通り大きい・シカ。つまり巨大なシカだ。
体長は子供でも5メートルは超え、頭部の角は大人2人分ほどの大きさがある。好戦的な魔物ではないが、攻撃されれば反撃するタイプの魔物だ。
実際我は狩猟‥‥‥というか、戦闘を見たのだが、サエラの戦闘能力は予想以上のものだった。
丸太ほどのサイズのあるぶっとい首をへし折ってたのである。サエラも大概バケモノだ。
「うん」
「‥‥‥」
軽々と返答したサエラに、エルフの青年が固まる。ありえないって顔だ。
うん、気持ちはわかる。我も最初見た時失禁しそうになったのだ。
するとサエラは我の両脇を掴み、高らかと持ち上げはじめた。なんじゃ、高い高いか?
「ウーロの追跡能力のおかげ」
「いや我、罠に引っかかってただけなのだ」
「謙遜しなくていいよ」
本気で。確かに見失った獲物を追うことには貢献できたとは思うが、その度に罠に引っかかって時間をロスしてるので。
「なるほど、毛皮の量が多いのも、グレート・ディアーを4頭も仕留めたからか。ふむ」
しっかり防腐が施され、触り心地も野生の名残りが一切ない毛皮を撫でて、マンドは考えるように黙り込んで、次にこう言った。
「サエラ、冒険者と会ってみないか?」
「変な乗り物」
「ちがいますよ、移動販売車ですよ」
サエラの間違いを速攻で訂正してきたシオン曰く、あれは移動できる行商人の店であるらしい。馬車に商品を詰め込み、そのまま店としての機能も貼り付けたと言ったら良いだろうか。我は初めて見るので、物珍しくそれを眺めた。
あれが今の行商人の形態か。といっても、普通の行商人は大きなカバンや馬などに背負わせてるのが普通らしい。ああいう移動販売車とやらを支えるのはそこそこ大きな商会だからだと。
シオンが男に挨拶をしながら、毛皮を積んだリュックを地面に置いた。
「マンドさんこんにちわー!」
「おぉ‥‥‥おお、こりゃまた随分とでかい荷物だな」
シオンにマンドと呼ばれた中年の男は、挨拶し返そうとした片手を止め、呆れた視線で毛皮の山を見上げる。我と同じ反応だ。やはり普通ではないらしい。
「こんにちは」
「こんにちはである」
一足遅く追いついた我とサエラも同じく挨拶する。我は初めて会うので、少々声を小さく。
マンドは元気な二人を見て、野生動物のような獰猛そうな顔を歪めて笑い、挨拶をし返した。
大柄でスキンヘッドだからか強面がより強調されてて、見た目だけなら山賊の頭のような顔である。
しかし雪山でも半裸でいそうな野蛮人の外見とは裏腹に、厚手の防寒具を着込んでいる。都市からレッテルまで来るのにだいぶ寒さにやられたらしい。目の中には子供は元気だなという、若さを羨ましがるような文字が浮かんでいる気がした。
「よおっ、て、なんだ?また変な生き物拾ったのか?」
マンドの視線が我に向く。マンドの言葉につられたのか、村人たちの視線も我へと向いた。
ちょっと待て、変な生き物って我のことか?
このプリチーな尻尾を見てそんなことを言うのか。良かろう戦争だ。
「ウーロ、ステイ」
「きゅーん」
暴れないからサエラ、羽の付け根を摘まないでくれ。そこ竜の弱点じゃから。
ちょうど肉がなくて皮膚が伸びてる部分だから、可動域以上に皮が引っ張られると痛いの。やめて。
「ウーロさんはドラゴンなんですよ!」
なぜかシオンが胸を張りながら言うと、マンドは「ははは」笑いながら受け流した。
「おーそうか、売ってくれないか」
「ダメです!」
「はっはっはっ」
シオンの言葉に軽口で答えるマンド。さては信じてないな?まぁ信じてもらえない方が騒ぎにならなくて都合がいいが。
「まぁたしかに喋る魔物は珍しいけどな。‥‥‥にしてもまぁ、すげえ量だな。いつもの二倍くらいあるんじゃないか?」
マンドの言葉に周囲にいた村人たちも、改めて毛皮の多さに驚く。いつもよりは多いらしい。
まぁ、量としては大変な数と言えよう。そもそも常人が荷車なしに運べる量ではないからの。
無論これらは我が村に来てから数日で集まったわけではない。半年くらい前から貯蔵してあった分が大半である。
「全部売ってくれるのか?」
「当然。ただ上に乗ってるのは毛皮が大きい」
「あ?どれどれ‥‥‥っと、こいつは」
マンドが積み重なった毛皮の一番上を取り、それを広げて感嘆の息を吐いた。
毛皮は一般的なシカのものではなく、シマウマのような黒いリボン状の模様の入った毛並みをしていた。
そしてその大きさ。実にシカ2頭分に相当するだろう。その毛皮が4枚もある。
「こいつぁ、魔物か?」
「うん。グレート・ディアー」
その毛皮がただの動物ではなく、魔物の素材だと言うことがわかると、マンドも周りの村人も驚き声を上げた。
なぜかシオンが我が身のことのように嬉しそうしているのに対し、サエラはドライに無表情である。
「おいおいマジかよ。この歳で仕留めちまうか」
毛並みを触り、それが本物であると悟ったらしいマンドが冷や汗をかきながら呟く。
魔物とは通常の動物と異なり、魔力と呼ばれる特殊なエネルギーを宿す生物たちだ。我らドラゴンも含まれる。
魔物は魔力を操り超常現象‥‥‥いわゆる魔法を使ったり、身体を極限まで強化したりと、例外なく強力な力を有しているのだ。
エルフたちが狩りをするベヒモスウォールの森にもこの類の魔物は生息している。
当然、子供が仕留められる獲物ではない。ウサギやネズミではないのだ。
「サエラ、本当にグレート・ディアーを仕留めたんですか?」
村人の中から年若い金髪のエルフが、そう言いながら出てきた。誰だろう?サエラとシオンの知り合いだろう。
大人しそうで、部屋で本でも静かに読んでそうな男だ。見るからにひ弱っぽい。顔は‥‥‥驚愕に染まっているな。おそらく知識としてグレート・ディアーを知っているのだろう。
グレート・ディアーはその名の通り大きい・シカ。つまり巨大なシカだ。
体長は子供でも5メートルは超え、頭部の角は大人2人分ほどの大きさがある。好戦的な魔物ではないが、攻撃されれば反撃するタイプの魔物だ。
実際我は狩猟‥‥‥というか、戦闘を見たのだが、サエラの戦闘能力は予想以上のものだった。
丸太ほどのサイズのあるぶっとい首をへし折ってたのである。サエラも大概バケモノだ。
「うん」
「‥‥‥」
軽々と返答したサエラに、エルフの青年が固まる。ありえないって顔だ。
うん、気持ちはわかる。我も最初見た時失禁しそうになったのだ。
するとサエラは我の両脇を掴み、高らかと持ち上げはじめた。なんじゃ、高い高いか?
「ウーロの追跡能力のおかげ」
「いや我、罠に引っかかってただけなのだ」
「謙遜しなくていいよ」
本気で。確かに見失った獲物を追うことには貢献できたとは思うが、その度に罠に引っかかって時間をロスしてるので。
「なるほど、毛皮の量が多いのも、グレート・ディアーを4頭も仕留めたからか。ふむ」
しっかり防腐が施され、触り心地も野生の名残りが一切ない毛皮を撫でて、マンドは考えるように黙り込んで、次にこう言った。
「サエラ、冒険者と会ってみないか?」
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