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第2章〜不死編〜

第85話「Sランカーとダンジョンに」

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 なんと不思議なこともあるものだ。声の聞こえる方へ顔を向けると、そこには齢にして10にも満たないであろう幼子の少女2人が、手を繋いで歩いていたのだ。
 そこまでは不思議でもないのだが、なんか見た目が不思議なのだ。まず武器を持っていて、次に同じ服装に同じ顔。声もまるきり同じである。まるで分身のように2人は瓜二つなのだ。

 まさか、冒険者なのか?武器はおもちゃというにはよくできてるし、間違いなく本物だ。
 それに武器の握る部分が使い慣れていることを証明するように汗の跡が付いている。手で握る柄には、握りやすいように革の包帯が巻かれているのだ。

「ふ、ガルム。ついにやつかれの力が必要になったのだな?」

「あーそうそうお前の力がヒツヨウデスー」

 ガルムがメアリーを脇に抱えて戻ってきた。メアリーは嬉しそうに笑っている。やはり構ってもらいたかったらしいな。
 ガルムはやれやれと目を伏せていたが、途端に我らの前を横切りそうに歩く幼女2人を見ると、サァッと顔を青くした。

「うわあああああああああ!?!?」

 うわぁ!?なにビックリし

「(嘘だろ嘘だろこんなことってあるかよ!とにかくウーロを目に入らないように)‥‥‥し、シオン!ウーロが漏らしてるぞ!‥‥‥でかい方!」

 はっ?

「うぇっ!?ぎゃぁあ!ウーロさんばっちい!!」

 ガルムにそう言われたシオンは、我を思いっきり‥‥‥その剛力でボールを放るかのように投げ飛ばした。

「のおおおおおおおおおおおおお!?」

 風を切った。悲鳴はすれ違うかのように我の軌道線に置いていかれ、我は目線の先にあるゴミ袋が積まれたゴミ捨て場に頭から衝突する。
 反射的に我を投げたシオンも、一部の理性でクッションになりそうな場所に投げてくれたのだろう。
 おかげで我はゴミ袋の山に、突き刺さった。

 つーか、一つ言っていいか?我、糞とか漏らしてない。

「あ、悪りぃ悪りぃ。漏らしてなかったわ勘違いだったわ。なんかウーロが気持ちよさそうにニヤニヤしてたんで勘違いしちまった」

「え?あぁそうなんですか。もう、紛らわしいことしないでくださいよぉ~ウーロさん」

「てめらぁぁあああああ!何してくれとんであるかぁぁぁぁあああああ!!」

 ズボォっとゴミ袋の山から顔を出した我は、シオンとガルムに向かって怒りのままに吠えた。
 お前ら!仲間をなんだと思ってる!豪速球で投げられるなんて生まれて初めての経験だぞ!?

「ごめんなさい。でもだってウンチ漏らしてるとか聞いたら、離しちゃいますよ」

「離してねーんじゃよ!投げてんのだ!お主はカタパルトか!!」

「ウーロさんナイスな重さで投げやすかったですよ」

 やかましい!



「ぬ?」

「どうした。カタワレ」

「今。何か聞こえたぞ?」

「竜の気配とは関係ないだろう。それより竜を探すのだ」

「うむ」



「‥‥‥ふぅ、助かった」

「助かってねぇんじゃって!おらガルム!聞いてんのかお主!?」

 全く。一体なんだと言うのだ。第一に我が漏らすわけがないだろうが。我は腕を組んでフンと息を吐き、不機嫌さをあらわにした。

「昨日のことあるし、姉さんもビビったのかも」

「へ?」

 サエラ、今‥‥‥なんと?すると彼女は我の肩にそっと手を添えた。

「体は赤ちゃんだから、しょうがないよ」

「いやいや待て待て。どういうことだ?詳しく聞かせろサエラ」

「ドンマイ」

 ねぇ、何?昨日我何したの?ちょっと、サエラ、サエラァァァァァァア!!




本当に、昨日は何があったのか‥‥‥記憶もないしさっぱりである。サエラもシオンも答えてくれないので、我はモヤモヤとした気持ちを残してダンジョンに降り立った。
 いや、流石に冗談だろう。いくら我の肉体が幼子といえど、我はもう一万歳の大古老でるぞ?大人の中の大人だ。そんなそんなまさかまさか。
 はははは、ハハ。

「じゃ、今日はよろしくな」

「ふふふ、やつかれの熟練の魔法戦技の数々‥‥‥汝らにご覧になっていただこう。参考にしてもいいぞ!」

「‥‥‥ゆうてこの場にいる魔法使いお前だけだけどな」

「えっ?シオンは?」

「わたしヒーラーです」

「‥‥‥あぁ、そう」

 Sランカーの戦士とAランカーの魔法使いと一緒にダンジョン探索するとは思えない会話である。まぁ、我らだしゆるい空気になっても仕方ないだろう。側から見ていてそう思った。

 まぁ、本来は「よろしくお願いします!ガルムさん!」とでも言うべきなのだろうな。ダンジョンに降りる際、昨日以上の注目を集めたものだ。
 みんな羨ましそうに我らを見ていた。やっぱりガルムはただのSランカーというだけではないらしい。面倒見もいいので、新米の頃に世話になった者が多いのかもしれんな。
 それくらい、我らとダンジョンに向かうガルムを見る目は憧れに満ちていた
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