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<2022年、福山城は築城400年>
『お城EXPO』の福山城ブース訪問記
しおりを挟む2019年12月22日に『お城EXPO 2019』に行ってまいりました。
本当は殿と行くはずでしたが、タイムマシンの都合でキャンセルとのこと。せっかく横浜の町を案内してさしあげようかと思っていたのに、ちょっぴり残念です。かようなひとりぼっちは慣れっこですから、いいもん(拗ねています)。ランドマークタワーが涙でにじむなぁ。いや、雨にけぶっていました。上ってもよい景色は望めなかったようです。
しかし、殿はちゃっかりしています。「どんなものだったか報せてくれやあ」との伝言が矢文にて(ひらりと避ける)……おっと危ない。さっそくかかりましょうか。
※筆者注……できごとは事実ですが、『殿へのご報告』という設定はフィクションであり、風変わりな感想文とお考えいただきますよう、お願いします。
⚫福山城のブースについて
百聞は一見にしかず、まずはこちらをご覧ください。備後福山藩(広島県福山市)の皆さまにございます。前回は『とんど祭り』の法被だったようにお見受けしましたが、揃いの陣羽織がりりしく、精悍なこと。今回の『お城EXPO2019』から登場したのです。前回(2018年)も伺ったのですが、今回はさらに華やかになっておりました。2022年の築城400年を前に、ますますご城下の皆さまも熱がこもっている感じがいたします。
別の項目でカープ坊やの甲冑姿(Tシャツ)をご紹介しましたが、それだけではないのです。あ、あのカープ坊やは愛らしくて何度も頬ずりいたしました。甲冑では身動きがとれない感じですが、陣羽織はイカしてると思いました。
こちらでは、福山城博物館の学芸員の方がCGを使って福山城を説明されています。殿、じっくり聞きたかったのです。でもわたくしはたいへん恥ずかしがりやで、後ろでこっそりと写真を撮ることしかできなかったのでございます。CGの福山城、なんと美しいことにございましょう。
わたくしも(現地に)行きたくなってしまいます。
さて、殿、こちらがこの前申し上げた福山市のマスコット・キャラクター、『ローラ』ちゃんです。
ご城下である広島県福山市の花が「ばら」であることにちなんで作られました。愛くるしいでしょう。いつもは違う装束なのですが、福山城築城400年にちなんで、「お城」をかたどった装束となっているのです。数年前、中国地方のマスコット・キャラクターが東京タワーに集まるという催しがございまして、そのときにわたくし、初めてご対面いたしました。さすがにわたくしが「わーい!」と行くわけにはいきませんでしたが、子どもが斥候となりハグしていただきました。
しかし殿、そのときにわたくしは見たのです。
東京タワーのマスコット・キャラクター『ノッポン』が中国地方のキャラに押されて出るに出られず、片隅でそっと様子を伺っていたのを。そして、皆が自分に近寄ってこないようだと判断したのか、寂しそうに去っていくのを。アレン・ギンズバーグ風に書いてみました。
ノッポンもがんばれ!とその背中に静かに告げたのでございました。
⚫令和の大普請
さて、殿、『お城EXPO』のお話を前にしたときにも申し上げましたが、今はご城下福山市で『福山城築城400年記念基金 令和の大普請』というものを募っております。そのチラシもブースでいただきましたので、拝見しつつ改めてご説明さしあげたく。
去年始まったこの基金への寄付は、
・福山城天守の外観復元
・福山城博物館リニューアル
・史跡福山城跡の保存・整備
・夜間照明(ライトアップ)整備
・福山城築城400年記念祝賀行事の開催
などに使われる予定だとのことです。
天守の外観のお話は前回いたしましたね。北側に黒い鉄板を張っていたのを復元されようとしているのです。博物館のリニューアルも楽しみです。
実はわたくし、前回福山城に登城したおり、上の方の階をよく見られなかったのです。福山城博物館の事務所のほうで資料のコピーをお願いしておりまして、そちらに詰めておりました。その節は厚かましくも失礼をいたしました。それがあったからこそ、お話の方も何とか書けたというわけです。まこと懐かしいことにございます。
福山城跡の保存・整備とは何じゃ? と尋ねられるでしょうから、こちらもお知らせいたしましょう。
殿、江戸時代が終わったのち、明治という元号になりまして、武士というものはなくなったのでございます。大名も家老もございません。そのときにお城というのはずいぶん肩身が狭くなりました。藩は県になり、それらの政務は新しい建物でされることになった。お城はもはや用済みということになったのです。そのときにお城が壊されたり、敷地が別の用途に使われるようになりました。福山城がそのまたのちの空襲まで残っていたことは前にもお知らせしましたが、二之丸西側の石垣などは明治の頃になくなったようです。
それを150年ぶりに復元することをはじめ、お城の保存・整備をされるということなのです。
殿、2年後の福山城を楽しみにお待ちくださいませ。
⚫ご城印はブーム傾向のようです
こちらは、殿に申し上げてもおそらく、かっかっかと笑い飛ばされた上で、「ええんじゃなかろうか」とおっしゃるに決まっていますので、書かずにおこうと思ったのですが……書きます。
福山城のみならず他でも同じなのですが、今回は『ご城印』というものがたくさん出されておりました。簡単に申し上げると、神社でいただく『御朱印』のお城版でございます。太閤(秀吉)さまが次々と発給されていた『朱印状』ではございませんので誤解なされませんよう。
わたくし、殿への報告に取りかからんとし、試しにネットというもので「ご城印」と検索したのでございます。すると、出るわ出るわ出るわ出るわ……競売やら有料で譲ります(オークションやフリマアプリなどのことです)といった告知の数々。この業界を殿にご報告するために例えるならば、「何でも売るぞ!の楽市楽座」というところでしょうか。石川五ェ門が浸かった釜も売っているかもしれません(それはないし、イヤです)。平蜘蛛の茶釜とか(それは……松永弾正さんが……)、釜にこだわり過ぎました。徳川の埋蔵金とか(本当にあるのですか? 教えてください)……殿、人の欲とは、はかなく哀れを誘うものでございますね。
そういえば、わたくし、寺社に多々詣でておりますが、御朱印をいただいたことがないです。
大々的なご城印の発布や収集は比較的最近の流行だと思いますが、「わーいわーい!」と喜んで押しいただいたご城印が、値段を付けて売られているのを見ると何気に悲しくなるのです。
インフレーションが起こらないよう、心から祈念しております。
⚫まとめのかわりに
殿、わたくしの生国は備後でも安芸でも備中でもございませんが、殿のことを書いてからとても親しみを持って見つめているのです。いいえ、もっと古いです。小学生のころは世良公則さんのファンでしたし(福山出身)、井伏鱒二さん(福山出身)のご本も読んでおりました。長じてはTHE GROOVERSさん(メンバーのお二人が福山出身)のファンです。そもそものご縁があったから、殿のところまで行き着いたのだと思っております。
お話を書き終えてから、わたくしの伯母が備後神辺城主だった杉原氏の子孫であることも分かって驚いたしだいです。他の項目にも書きましたが、これには本当に仰天しました。杉原氏は藤井氏と対立されていましたから……神辺城の争奪戦では毛利も入っておおごとになりました。おとくさまは本当にたいへんな時に生まれたのでした。
わたくしはしばらく、藤井氏と神辺城のことを書いていると伯母に言えなかったのでございます。後で恐る恐る伯母に伝えたところ、
「そんな昔のこと! あなたって面白いわね」と一笑に付されました。
杉原氏のことは伯母が調べていたようですが、世羅町の辺りで庄屋格を得ていたようです。戦国時代は一族滅亡のような悲劇がそこらじゅうにあったようですが、きっと殿は在地の豪族もこれまでと変わらず、対立した者同士の過去に関わりなく大切にされたのですね。刈屋(刈谷、愛知県)の家臣も備後の家臣も殿の治世ではあつれきを生じなかったように思います。
そのような意味でも、福山城はシンボルだったのだとわたくしは考えております。櫓(やぐら)の多さや天守の豪壮さだけが城ではない。戦国の世を終えて、城は戦の場ではなく、「和」の象徴にもなったのでございましょう。難攻不落の山城も人びとの普請(工事)の苦労が思い起こされて素晴らしいと存じますが、平時の平城もかつてのいくさの反省をこめて築かれたものだった。そう思うと、また見る目も新たになるように思うのです。
そこには必ず人がいる。
人と人との関わりがある。
それが今、わたくしの考えていることにございます。殿のお考えはいかがにござりましょうや。
さて、この辺りでわたくしのご報告を締めさせていただきます。
最後にご城下(福山市)のみなさま、写真を撮らせていただいて、本当にありがとうございました。
尾方佐羽
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