水野勝成 居候報恩記

尾方佐羽

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六左衛門、勝成に駒を進める

水野日向守勝成 刈屋で妻子を待つ

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 その後、六左衛門は父の遺領である刈屋を安堵され、さっそくかの地に帰った。
 彼が始めに忠重以来の家臣団に述べたのは、意外にも自身の名についてであった。
「わしは皆とともに新たな一歩を踏み出す一助に、名を変えることとした。六左衛門はもうしまいじゃ」

 水野勝成、と書いた紙を広げて一同に示した。

「これから皆に教わることばかりだで、どうかよろしく頼む」
 多少危惧していた家臣との関係もまずは順調に滑り出した。勝成はまず多少傷みの目立つ刈屋城の改修に着手した。
 関ヶ原翌年の慶長六年(一六〇一)、勝成は従五位を授けられ日向守となった。奉公構の流れ牢人が官位を得るに至ったのである。


 そのことを成羽の三村親成は本人からの書状で知った。
 書状には、「日向守皆おじ気つき辞退する者大なれど、どうどう受けたり」とあって親成を笑わせた。
「何が書かれてあったのでございますか」
 長吉を膝の上に乗せたおとくが尋ねる。長吉は三つ、言葉もたくさん出るようになった。
「日向守とは、織田信長公に謀反を起こした明智光秀公のものじゃった。縁起が悪いゆうて、皆受けんかったのじゃろう。長吉の父御はそんなもん気にせんちゅうことじゃ」
「たしかに、気にされないでしょう」とおとくも笑う。
「ああ、愉快じゃ。こうして、長い長い戦世を乗り越えて新しい時代が来る。六左は、いや日向守勝成はその最初の世代になるのじゃな」と親成は嬉しそうに言う。
 おとくははっとした。
「お屋形様、もしや勝成とは、勝成の成は、成羽の?それともお屋形様の」
「さあ、どうじゃろうのう」
 とぼける親成の目尻にきらりと光るものが見えた。

 勝成はその書状を含め、再三に渡り親成に家老として来てほしいと懇願していたが、親成は返事を出さなかった。当然ながら、妻子であるおとくと長吉は刈屋に呼ばれていた。ふたりは長吉が旅に耐えられるまで成羽で過ごすとしていたが、その実慣れ親しんだ地を離れがたい気持ちになっている。
 何より親成やおさんと離れることが辛かった。

 長吉は三村家で大切に養育されている。長吉はおとくに似たのか穏やかな子で、親成を「じじ」と呼んで大層慕っていた。おさんと親良もよく相手をしていたが、おさんはこの頃あまり健康がすぐれず、伏せっていることが多い。
「みんなで一緒に刈屋にいけるといいのですけれど」
 おとくがそう言うと、おさんは笑って否定した。
「私はまっぴらよ。もう嫁に行くあてもないのだから、ここにいるわ。それにみんなが刈屋に行ってしまったら、成羽はどうなるの。あなたは私のかわいい妹だと思っているけれど、藤井の家を忘れてはいけない。私などより父御の好恒様を家老に取り立ててもらいなさい」
 おさんの言うことはもっともだった。

 しかし、もう一度、皆が揃って暮らすことができたらどれほどいいだろう、とおとくは願わずにいられないのだった。


 しかし、時の流れは急であった。
 道を決めねばならない時はすぐにやってくるのである。

 備前・美作・備中の東半分は関ヶ原の戦いの後流罪になった宇喜多秀家の後、小早川秀秋の所領となっていたが、慶長七年(一六〇二)、齢二十一にして亡くなった。そして池田輝政が備前岡山藩主となり改めて区分けの見直しが行われた。その結果、備中は天領と小国に分割されることとなった。成羽もこれを免れず、新たに山崎氏が成羽を領することとなったのである。
 仰天したのは勝成である。刈屋に親成を迎える話が進んでいないのに、三村家が成羽を追われてしまったらどうするのだ。勝成は慌てて家康に三村の所領安堵を願い出た。しかし、家康は決まったことだと相手にしなかった。
 勝成は途方に暮れた。しかしそれでは納得がいかない。大の上に大がつくほどの恩人、三村家を宿無しの立場にするなどありえん、とばかり江戸城に出向いていった。
「三村の親父が成羽を追われるなど。たかが三千石の小国じゃぞ、なぜ取り上げる必要がある」と断固として抗議した。それに対して、家康の態度は冷淡であった。
「日向守よ、宇喜多や毛利はじめ西軍は皆咎を負ったのじゃ。それに備中は西国の要所、天領として召し上げるのがわれわれにとって好都合なのじゃ。美作には森、安芸と備後には福島正則を立てる。おまえは刈谷城主でそのまま変わらんからそれでよかろう」
 それで済ますわけにはいかぬ。
 それならわしに備中をよこしたらええ、とまではさすがに言えなかった。
 つい先頃まで放浪生活を送っていて、内府家康の目に見える戦功を立てているわけではないのだから。
 しかし勝成はさらに訴えた。

「わしは成羽で四年も世話になり、妻子もおるのじゃ。それなりの禄があってもよかろう」
「それならば、おぬしが刈屋に迎えればよかろう」と家康がこともなげに言う。
「そんなことを言っているのではない。旧来の領地におることが肝要なんじゃ。じゃけえ旧領を安堵せよと申しておる」

 家康はため息をひとつついた。
「おぬしがわしの血縁で引き立てられておると噂する者もあり、それが火種になりかねない。わしもできるだけ公明正大にことをすすめたい。こたびの戦でおぬしが、いや、実は備中の方で陰に陽に働いたことは十分承知しておる。それに報いたいが、やはり誰もが納得する形に持っていかねばならない」
 婉曲的な言い方ではあったが、誰が横鑓を入れているのか、勝成には痛いほど分かった。
「あいわかった。すべてわしの不徳の致すところ、三村家にできることを思案しよまい」
 ふと、前に親成が言ったことばが浮かんできた。

「身内を補佐し国や民を守るのが天命じゃとずうっと思ってきた……」

 内府殿は天下を取ったんじゃろうが、わしは違う。六左衛門は目の前がぱっと開けたような気分になった。わしは何を迷っておるのだ。自分の道をいく。
 どんなことをしても皆を呼べばええんじゃ。刈屋を新たなふるさとにしてもらえばええんじゃ。それからふっと家康を見て、かつて親成にしたような問いを投げた。

「天下を何のため得られたのか教えてほしい」と勝成は家康に問うた。
 家康は即座に答えた。
「この戦世を終わらせるために決まっとるがや」
 勝成は黙ってうなずく。それ以外の理由であってはならない。
「敬服いたす。立派なお仕事にござる。内府様とわしの関係は生涯変わらぬ。内府様にも水野の血が流れておるのだ。だからわしが徳川家を裏切ることは決してない。生涯忠誠を尽くすことを約束しよう。ただし、わしのやり方で尽くすで、よろしくお願い申す」
 六左衛門がこれほど堂々と家康に忠誠を誓ったことはなかった。
 さすがの家康も感心したように勝成を見た。

 しかし、勝成自身の希望が叶うことは難しくなった。

 刈屋に戻ったら成羽の皆を呼ばねばならない。その算段をしていると、親成からの書状が早馬で届いた。そこにはこう書いてあった。

「於登久女長吉三村親良と藤井靭負(ゆきえ)付け刈屋に向かわせ候。靭負於登久甥なり。あい済まぬ儀なれど、親良靭負の仕官方願いたく候。若き男子なれば、役立つべし。親成於柵備前児島に移らむ。在所領主厚情なり。憂慮なく過ごされたし」

 以前と変わらない、見事な筆の跡を眺めながら、勝成は涙がこみ上げてきた。
 おとくと長吉を、おとくの甥である藤井靭負と親良を付けて刈屋に向かわせる。済まないが親良と靭負を刈屋で仕官させてくれるようお願いしたい。若いから役に立つ。私とおさんは備前児島の領主が世話してくれるという。厚情である。勝成殿は憂いなく過ごしてほしい。

 おさんと親成が刈屋に来ることはない。これは親成の決めたことなのだ。


 親成の決定におさんは素直に応じた。きよを里に戻すことにも同意した。
「私も生国のほど近くでお世話になれるなら、何も申しあげることはございません」とおさんは微笑む。
「おさん、相済まぬ。おまえをしかるべきところに嫁に出すことが叶わず、このじじいとともに去らねばならぬとは」と親成が心から詫びる。
「いいえ、病を得ている身ですから。それより、私がお側にいるのはお邪魔になりませんこと?」とおさんも親成を気遣って聞く。
「いや、おさん……おまえこそわしを恨んではおらぬか」
 おさんは首を横に振った。
「兄姉たちのことはまことに悲憤やる方なく、叔父上のせいと思いこんでいたときも確かにございました。ただ、一族があえて敵味方に分かれ血脈を残すというのは戦世の常でございます。もとより、兄に諫言した叔父上のお考えは間違いではなかった。その心を推し量れなかった私が浅はかだったのです。今はただただ感謝しております」
 親成はおさんの優しい言葉を心からありがたいと思った。
「わしを刺してもよかったのじゃ。その方がわしも楽だったかもしれぬ」
「叔父上、あまりご自身を責められませぬよう、さんからお願いいたします。成羽の日々は私にとって、本当に楽しく幸せな日々だったのですから」
 親成は目をしばたかせ、庭を見やった。
「そうじゃな。親宣を亡くし途方に暮れておったが、おとくがいて、六左が来て、長吉が生まれて、まことに楽しかったのう」

 いっときはぎくしゃくしたこともあった。しかしもう、水に流してもよいほどの時間が流れたのではないか。それに、笑えた日々もたくさんあったのだから。

 そして、おとくが旅立つ日がやってきた。
 兄の市兵衛と美作を経って十二年、美作を発つときはまだ何も分からない子供で、だからこそ何も考えずにのんびりと新しい暮らしに入ることができた。そして、三村家の人々によくしてもらって、六左衛門と出会い、子供を産み……本当にいろいろなことがあった。新しい生活には不安がある。三村家の人々と別れなければいけないことが本当に辛い。おとくはこれまでのことを思い出し、辺りをぐるりと見回した。
 見慣れたなだらかな段々に映る山々、鶴首城、成羽川の穏やかな流れ、このさして大きくない郷がおとくにとってはかけがえのない第二の故郷だった。
 数えで五歳になる長吉は大好きな親成やおさんと別れるのがいやで、目に涙をためていた。
「道中気をつけるのじゃぞ。あまり駄々をこねて、母御を困らすでないぞ」と親成がくしゃくしゃと長吉の頭を撫でる。長吉は泣きそうな顔で頷き、親成に尋ねた。
「じじ様、あとで必ず刈屋に来てください。来られますね?」
 親成は長吉の肩に手をかけて、「そうじゃな、じきにじじも行くぞ。その時までいい子にしとるんじゃ」と優しく応えた。
「本当に?」
「ああ」
 おとくは本当にそうなることを心から願った。
 おとくは懐に入れた小さな袋をなでていた。美作を発つとき、弁蔵(武蔵)からもらったどんぐりが入っている。おとくにとってはずっと大切なお守りだった。
 あぁ、武蔵様にお伝えしなければならんのに、今いずこにおられるんじゃろ。
 刈屋のある三河は備中からはるかに遠い。

「お屋形様、本当に長らくお世話になりました。この家から嫁に出るなど私には過ぎたる幸せにございますが、精一杯努めてまいります」
「何の何の、今日の日を迎えられて、わしも感無量じゃ。おとくもよう待った。幸せになるのじゃぞ」
 おとくは頷き、おさんの方を見た。
「おさん様、お側に仕える身でありながら、つとめを全うできず、とくはお詫びのしようもございません」
 おさんは微笑んで首を横に振った。もう、おとくは大切な妹以外の何者でもなかった。
「おとく、あなたがいてくれて私は本当に嬉しかったの。六左殿、いいえ勝成殿でしたか。あの方とは縁がなかっただけ。あなたは堂々としていなさい。それより、いつかは豊姫様のお墓に私のことをお参りしてくれて、ありがとう。あなたはいつまでも、私の可愛い妹です」
 ふたりはぎゅっと抱き合って、涙をこぼした。
 親良と靭負に連れられ、おとくと長吉は旅立つ。見つめる親成とおさんはその後ろ姿をいつまでもいつまでも見送っていた。


 おとくたちが刈屋に到着する前にばたばたと仕度をするさなか、勝成は急ぎ徳川秀忠にあいさつに赴いた。勝成にとって、秀忠はいとこの子ということになる。秀忠は勝成に尋ねた。
「のう、おぬしは男子がおるのじゃな」
「うむ、備中から刈屋に今向かうているところじゃ。じきに着くで」と勝成は嬉しそうに答える。
 秀忠が身を乗り出して言う。
「どうじゃ、江戸に寄越さぬか」
 勝成は仰天してかぶりを振る。
「え、幼き吾子を奪わんで下され。やっとともに暮らせるのじゃ。養子は勘弁じゃ」
 おろおろする勝成を見て秀忠はおかしくなった。養子とは言っていない。
「いやいや、十になったら江戸に上げてくれたらよい。それで譜代としての箔もつく。水野家はわしの祖母の家、おぬしは乳兄弟じゃ。息子ともども、ぜひわしのために働いてくれまい」
 小姓として江戸城に来い、ということだった。勝成はにかっと笑い、ひれ伏した。
「合点承知、それなら結構でござる」

 妻と子が刈屋に到着したとき、勝成は喜び勇んで出迎えたが、長吉が父を認められず母の後ろに隠れてしまったことには苦笑するしかなかった。乳飲み子のときに別れたのだからいたしかたない。おとくも少し困っていたが、立派に成人した親良が、「長吉、とと様じゃ。一緒にあいさつせんといけん」と手を引き、可愛いあいさつを述べた。

 勝成は笑顔で皆を城に招き入れた。
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