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微熱
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例えば記憶が氷だったなら、忘れたい記憶は溶かしてしまえるし、楽しかった記憶は冷凍保存しておけばいい。
でも自分には冷凍保存したい記憶などない。
両手の平に置かれたいくつかの氷。
それらが音もなく溶けていく。
そんな夢を見ていた。
目を覚ましたハルの脳内は状況整理に翻弄する。
ハルは、白を基調とした整理整頓された部屋のベッドに横たわっていたのだ。
「どこだここ…服も…」
随分大きめのTシャツと、少し小さめのハーフパンツを履いている自分に気付いた。
少なくとも自分の服では無い。
「昨日の夜…あ…クレハ…」
薄ぼんやりとしていた昨夜の記憶が徐々に鮮明になってきた。
熱っぽさを感じて路地裏で蹲っていた所をクレハに声を掛けられた。
その後の記憶があまりない。
ベッドから立ち上がると軽い目眩がし、微熱を感じた。
小綺麗な部屋のドアを開けると、階下に続く階段があり、そろりそろりと降りて行った。
驚いた事に、1階は小さなバーになっていた。
木目調のオシャレな内装に、観葉植物が飾られている。
開店前の朝だからか客はおらず、バーカウンターに目を向けるとクレハが立っていた。
「ハル、大丈夫か?」
ハルの姿を確認するやいなや心配そうに声をかけてきた。
「あぁ…。あのさ、昨晩の記憶があやふやで…。」
「ハル、あの後気を失ったんだよ。奇跡の再会を果たしたと思ったら急に倒れるもんだから流石の俺も焦ったよ。とりあえず、背負って連れて帰った。随分熱があったみたいだったけど、体調はもう平気か?」
「そうだったのか。わりぃ、迷惑かけて。まだちょっと熱っぽいけどまぁ何とかって感じ。」
「それなら良かった。あの後、全然起きないからさ。服脱がせてシャワーで体を温めてから俺の服を着せた。半ズボンはたまたま小さいのがあったけどTシャツは俺のしかなかったからブカブカに…。」
「ちょ…待ってくれ…服を脱がせた……?」
「ん?あぁ。そりゃそーだろ。びしょ濡れのままにしておく訳にいかないしさ。」
それを聞いたハルはみるみる顔を赤らめた。
「ハル?どうした?顔が赤いけど?」
「…いや…別に…熱のせいかな…」
「あー。もしかして裸見られたぁぁとか思って恥ずかしくなっちゃった?」
イタズラっぽく笑うクレハに図星をつかれたハルはますます顔を赤らめた。
「大丈夫大丈夫。俺も焦ってたし、そんなに見てないよ。」
「…ほんと…か…?」
「うん。随分色が白いんだなとか、細く見えるのにゴツゴツしてなくて柔らかいんだなとか、体毛全然ないんだなとか、乳首めちゃくちゃ可愛いピンク色してんだなとか、ちっちゃくて可愛いもんがぶら下がってるなーとか思ったけどね。」
「見てんじゃねーか!」
ハルは恥ずかしさのあまり顔から火を吹きながら絶叫した。
「ハハ、ごめんよ。でもチラッと見ただけでガン見はしていないよ?」
「そういうことじゃねーよ!変態野郎!」
「ほー。命の恩人に随分な言い草だね。」
「別に勝手に野垂れ死ぬから放っといてくれて良かったのに。」
「まーたそういうこと言うんだから。もっと自分を大事にした方がいいよ。」
「うるさい。」
「相変わらず口が悪いなぁ。あんなに可愛いおちんちんしてるくせに。」
「な…ッ」
ハルは羞恥死にしそうになった。
「ハル、顔がトマトみたいだよ?」
「…トマトは嫌いだ…」
「え、そこ?」
「…アンタも嫌いだ…う…っ 」
少し目眩を感じてハルがよろけた。
クレハはすかさず駆け寄り、ハルの華奢な体を支えた。
「大丈夫か?もう少し休んで来た方がいい。」
「…アンタの指図は受けない…」
「ごめんよ、少しからかい過ぎた。嫌いなんて言わないで欲しいな。結構グサッときたよ。」
「…じゃあ…もうイジワル言わないでよ…」
ハルはクレハの顔を見上げて言った。
少し意識が虚ろになってぽろっと出たハルの言葉、微熱で赤らんだ頬、虚ろな目。
そんな美少年の姿に悩殺されかけたクレハは、ポリポリと後頭部を掻きながら「…まいったな…」と呟いた。
でも自分には冷凍保存したい記憶などない。
両手の平に置かれたいくつかの氷。
それらが音もなく溶けていく。
そんな夢を見ていた。
目を覚ましたハルの脳内は状況整理に翻弄する。
ハルは、白を基調とした整理整頓された部屋のベッドに横たわっていたのだ。
「どこだここ…服も…」
随分大きめのTシャツと、少し小さめのハーフパンツを履いている自分に気付いた。
少なくとも自分の服では無い。
「昨日の夜…あ…クレハ…」
薄ぼんやりとしていた昨夜の記憶が徐々に鮮明になってきた。
熱っぽさを感じて路地裏で蹲っていた所をクレハに声を掛けられた。
その後の記憶があまりない。
ベッドから立ち上がると軽い目眩がし、微熱を感じた。
小綺麗な部屋のドアを開けると、階下に続く階段があり、そろりそろりと降りて行った。
驚いた事に、1階は小さなバーになっていた。
木目調のオシャレな内装に、観葉植物が飾られている。
開店前の朝だからか客はおらず、バーカウンターに目を向けるとクレハが立っていた。
「ハル、大丈夫か?」
ハルの姿を確認するやいなや心配そうに声をかけてきた。
「あぁ…。あのさ、昨晩の記憶があやふやで…。」
「ハル、あの後気を失ったんだよ。奇跡の再会を果たしたと思ったら急に倒れるもんだから流石の俺も焦ったよ。とりあえず、背負って連れて帰った。随分熱があったみたいだったけど、体調はもう平気か?」
「そうだったのか。わりぃ、迷惑かけて。まだちょっと熱っぽいけどまぁ何とかって感じ。」
「それなら良かった。あの後、全然起きないからさ。服脱がせてシャワーで体を温めてから俺の服を着せた。半ズボンはたまたま小さいのがあったけどTシャツは俺のしかなかったからブカブカに…。」
「ちょ…待ってくれ…服を脱がせた……?」
「ん?あぁ。そりゃそーだろ。びしょ濡れのままにしておく訳にいかないしさ。」
それを聞いたハルはみるみる顔を赤らめた。
「ハル?どうした?顔が赤いけど?」
「…いや…別に…熱のせいかな…」
「あー。もしかして裸見られたぁぁとか思って恥ずかしくなっちゃった?」
イタズラっぽく笑うクレハに図星をつかれたハルはますます顔を赤らめた。
「大丈夫大丈夫。俺も焦ってたし、そんなに見てないよ。」
「…ほんと…か…?」
「うん。随分色が白いんだなとか、細く見えるのにゴツゴツしてなくて柔らかいんだなとか、体毛全然ないんだなとか、乳首めちゃくちゃ可愛いピンク色してんだなとか、ちっちゃくて可愛いもんがぶら下がってるなーとか思ったけどね。」
「見てんじゃねーか!」
ハルは恥ずかしさのあまり顔から火を吹きながら絶叫した。
「ハハ、ごめんよ。でもチラッと見ただけでガン見はしていないよ?」
「そういうことじゃねーよ!変態野郎!」
「ほー。命の恩人に随分な言い草だね。」
「別に勝手に野垂れ死ぬから放っといてくれて良かったのに。」
「まーたそういうこと言うんだから。もっと自分を大事にした方がいいよ。」
「うるさい。」
「相変わらず口が悪いなぁ。あんなに可愛いおちんちんしてるくせに。」
「な…ッ」
ハルは羞恥死にしそうになった。
「ハル、顔がトマトみたいだよ?」
「…トマトは嫌いだ…」
「え、そこ?」
「…アンタも嫌いだ…う…っ 」
少し目眩を感じてハルがよろけた。
クレハはすかさず駆け寄り、ハルの華奢な体を支えた。
「大丈夫か?もう少し休んで来た方がいい。」
「…アンタの指図は受けない…」
「ごめんよ、少しからかい過ぎた。嫌いなんて言わないで欲しいな。結構グサッときたよ。」
「…じゃあ…もうイジワル言わないでよ…」
ハルはクレハの顔を見上げて言った。
少し意識が虚ろになってぽろっと出たハルの言葉、微熱で赤らんだ頬、虚ろな目。
そんな美少年の姿に悩殺されかけたクレハは、ポリポリと後頭部を掻きながら「…まいったな…」と呟いた。
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