38 / 45
ナンバー1
しおりを挟む
「ブラフェアのナンバー1が満を持して登場って訳か。」とタクヤがクレハに殺意を剥き出しにして言った。
「ハルと話がしたいから黙っていてくれるか。」
クレハは、タクヤにはまるで興味が無いといった雰囲気でそう言い放った。
「あぁ?舐めてんのかテメ…」
「言葉、通じなかったか?」
クレハは、タクヤの言葉を遮った。
口調こそ強くはなかったものの、まるで人を殺せそうな鋭い目つきをしており、タクヤは思わず気圧された。
「…クレハ…」
ハルは、クレハの顔を見て言った。
「ハル、大丈夫か?来るのが遅くなって本当にすまない。」
クレハは、裸のハルに自らのジャケットを羽織らせると、壁に寄りかからせた。
「クレハがナンバー1…なのか…?」
ハルは驚きを隠せなかった。
「あぁ。そうなんだ。俺も驚いたよ、ハルが同じ組織のナンバー3だなんて。」
「知ってたんじゃないの…?」
「知らなかったさ。構成員の素性を全て知ってるのはブラウン達、司令塔メンバーのみ。ナンバー1と言えど、他のメンバーの事は知らないんだ。まぁそもそも俺があんまりその辺に興味が無いってのもあるけどさ。」
クレハは、笑いながら言った。
その笑顔だけでハルに与えられた安心感は絶大だった。
「そうなんだ…じゃあ僕達、偶然同じ組織に所属してたんだな。」
「まぁ今思うとまったくの偶然って訳でもないかな。あの廃墟には俺も遅ればせながら行ったんだよ。ナンバー3の手助けって司令でな。そしたら爆発に巻き込まれてハルと運命の出会いを果たしたって訳さ。」
「…運命の出会いなんてロマンチックな状況じゃなかったけどな。」
「はは、確かにな。」
クレハとハルは笑い合った。
「ハルが電話くれただろ?その時まさにここへの突入作戦についてブラウンや華月と話をしていたところだったんだ。電話の話し声がブラウン達にも聞こえたみたいで、『ハルと知り合いだったのか?』って聞かれてさ。よくよく聞けばナンバー3だなんて言うもんだから腰を抜かしたよ。冗談だろ?って5回くらい聞いたね。」
「そういうことだったのか…」
「ハルが一人乗り込もうとしてるかもって聞いて慌てて折り返したんだけど、電話出なかったからさ。ブラウン達からの電話も無視してただろ?」
「…わりぃ…」
「もうこんな無茶はしないでほしいな。心臓がいくつあっても足りないよ。でもハル、一人でここまでやるなんて凄いな。作戦なんて立てる必要なかったなって思ったよ。」
クレハは優しく微笑むと、ハルの頭を撫でながら言った。
「ハル、本当によく頑張ったな。あとは俺に任せろ。」
クレハに頭を撫でられ、嬉しさと照れくささと安心感とドキドキと、とにかく色んな感情がごちゃ混ぜになって、何故か涙が零れそうになったからハルは慌てて俯いてコクコクと小さく頷いた。
「話は終わったか?」とタクヤは苛立った様子で言った。
「あぁ、待たせたな。」
「死ぬ前の猶予を与えてやったんだ、感謝しろ。殺れ!」
タクヤがドスの効いた声で生物兵器に命じると無数の触手がクレハに襲いかかった。
が、クレハの剣技によって一瞬のうちにそれらは細切れにされた。
「……は……?」
生物兵器があっという間に破壊され、タクヤは呆然とした。
ハルも「やば…」と目を丸くしていた。
「く、撃ち殺せ!」
構成員達が一斉に銃を向けるが、それよりも速いスピードでクレハは構成員達を次々と切り倒して行く。
「かっこいい…」とハルは目を輝かせていた。
そして、ものの数分で敵はタクヤ1人となった。
「一応言っておくけど、俺結構怒ってるからな?」
クレハがタクヤに放ったその一言にはとてつもない重みと殺意があり、タクヤは一瞬にして圧倒的な実力差を感じとった。
「くそ!幹部"ミゼル"はどうした!」
「4人目の幹部の事かしら?私が縛り上げておいたわよ。」
入口の方から、鎖をジャラジャラと引き摺りながら華月がやってきた。
「華月さん…!」とハルが声をかけた。
「羅夢くん、無事でよかった。一人でコイツらをここまで追い詰めるなんて流石ね。でもこういう無茶はもうしないでよ?」
「すいません…華月さん、腕!血が…」
「あぁ、大丈夫よ。ちょっと手こずっただけ。」
華月は幹部との戦いで左腕を負傷していたが、涼しい顔でそう答えた。
「ふざけるなよお前ら…俺が作り上げたグランギニョールを…終わりになんてさせねぇからな!!」
タクヤは大型のナイフを取り出し、クレハに襲いかかるがクレハはそれらを軽やかにかわしていく。
「ハル、目をつぶっててくれ。」
クレハに言われ、ハルは目をつぶった。
それを確認したクレハは、タクヤの腹に剣を突き刺した。
「ぐはッ…」
「殺しはしない。ハルに酷いことをしたから殺してやりたいところだが、ハルが望んでいない気がしたからな。」
タクヤは刺された腹を抑え、倒れ込んだ。
華月に「もういいわよ」と言われ、ハルは目を開ける。
「クレハ…ありがとう。」とハルは小さく言った。
「ハル…ゲホッ!助けてくれ…」
血を流すタクヤがハルに救いを求めた。
「…あの時、僕は誰にも助けて貰えなかったよ。」
ハルはタクヤに冷たく言い放った。
「ブラフェアが制圧したあとに警官隊が来ることになってる。牢獄で死ぬほど反省するんだな。」
そう言い残すと、クレハはハルの元に行き、またハルを姫抱きにした。
「…ッ、クレハ!僕歩けるよ…」
「無理しちゃダメだよ。それに俺がこうしたいんだ。王子様みたいだろ?」
「…自分で言うなよ…」
ハルはジャケットで体を隠しながら、顔を赤らめてそっぽを向いた。
そんな2人の様子を見た華月は「なるほど、美少年の恋の相手は彼だったってことね。」と妙に納得した表情を浮かべた。
「ハルと話がしたいから黙っていてくれるか。」
クレハは、タクヤにはまるで興味が無いといった雰囲気でそう言い放った。
「あぁ?舐めてんのかテメ…」
「言葉、通じなかったか?」
クレハは、タクヤの言葉を遮った。
口調こそ強くはなかったものの、まるで人を殺せそうな鋭い目つきをしており、タクヤは思わず気圧された。
「…クレハ…」
ハルは、クレハの顔を見て言った。
「ハル、大丈夫か?来るのが遅くなって本当にすまない。」
クレハは、裸のハルに自らのジャケットを羽織らせると、壁に寄りかからせた。
「クレハがナンバー1…なのか…?」
ハルは驚きを隠せなかった。
「あぁ。そうなんだ。俺も驚いたよ、ハルが同じ組織のナンバー3だなんて。」
「知ってたんじゃないの…?」
「知らなかったさ。構成員の素性を全て知ってるのはブラウン達、司令塔メンバーのみ。ナンバー1と言えど、他のメンバーの事は知らないんだ。まぁそもそも俺があんまりその辺に興味が無いってのもあるけどさ。」
クレハは、笑いながら言った。
その笑顔だけでハルに与えられた安心感は絶大だった。
「そうなんだ…じゃあ僕達、偶然同じ組織に所属してたんだな。」
「まぁ今思うとまったくの偶然って訳でもないかな。あの廃墟には俺も遅ればせながら行ったんだよ。ナンバー3の手助けって司令でな。そしたら爆発に巻き込まれてハルと運命の出会いを果たしたって訳さ。」
「…運命の出会いなんてロマンチックな状況じゃなかったけどな。」
「はは、確かにな。」
クレハとハルは笑い合った。
「ハルが電話くれただろ?その時まさにここへの突入作戦についてブラウンや華月と話をしていたところだったんだ。電話の話し声がブラウン達にも聞こえたみたいで、『ハルと知り合いだったのか?』って聞かれてさ。よくよく聞けばナンバー3だなんて言うもんだから腰を抜かしたよ。冗談だろ?って5回くらい聞いたね。」
「そういうことだったのか…」
「ハルが一人乗り込もうとしてるかもって聞いて慌てて折り返したんだけど、電話出なかったからさ。ブラウン達からの電話も無視してただろ?」
「…わりぃ…」
「もうこんな無茶はしないでほしいな。心臓がいくつあっても足りないよ。でもハル、一人でここまでやるなんて凄いな。作戦なんて立てる必要なかったなって思ったよ。」
クレハは優しく微笑むと、ハルの頭を撫でながら言った。
「ハル、本当によく頑張ったな。あとは俺に任せろ。」
クレハに頭を撫でられ、嬉しさと照れくささと安心感とドキドキと、とにかく色んな感情がごちゃ混ぜになって、何故か涙が零れそうになったからハルは慌てて俯いてコクコクと小さく頷いた。
「話は終わったか?」とタクヤは苛立った様子で言った。
「あぁ、待たせたな。」
「死ぬ前の猶予を与えてやったんだ、感謝しろ。殺れ!」
タクヤがドスの効いた声で生物兵器に命じると無数の触手がクレハに襲いかかった。
が、クレハの剣技によって一瞬のうちにそれらは細切れにされた。
「……は……?」
生物兵器があっという間に破壊され、タクヤは呆然とした。
ハルも「やば…」と目を丸くしていた。
「く、撃ち殺せ!」
構成員達が一斉に銃を向けるが、それよりも速いスピードでクレハは構成員達を次々と切り倒して行く。
「かっこいい…」とハルは目を輝かせていた。
そして、ものの数分で敵はタクヤ1人となった。
「一応言っておくけど、俺結構怒ってるからな?」
クレハがタクヤに放ったその一言にはとてつもない重みと殺意があり、タクヤは一瞬にして圧倒的な実力差を感じとった。
「くそ!幹部"ミゼル"はどうした!」
「4人目の幹部の事かしら?私が縛り上げておいたわよ。」
入口の方から、鎖をジャラジャラと引き摺りながら華月がやってきた。
「華月さん…!」とハルが声をかけた。
「羅夢くん、無事でよかった。一人でコイツらをここまで追い詰めるなんて流石ね。でもこういう無茶はもうしないでよ?」
「すいません…華月さん、腕!血が…」
「あぁ、大丈夫よ。ちょっと手こずっただけ。」
華月は幹部との戦いで左腕を負傷していたが、涼しい顔でそう答えた。
「ふざけるなよお前ら…俺が作り上げたグランギニョールを…終わりになんてさせねぇからな!!」
タクヤは大型のナイフを取り出し、クレハに襲いかかるがクレハはそれらを軽やかにかわしていく。
「ハル、目をつぶっててくれ。」
クレハに言われ、ハルは目をつぶった。
それを確認したクレハは、タクヤの腹に剣を突き刺した。
「ぐはッ…」
「殺しはしない。ハルに酷いことをしたから殺してやりたいところだが、ハルが望んでいない気がしたからな。」
タクヤは刺された腹を抑え、倒れ込んだ。
華月に「もういいわよ」と言われ、ハルは目を開ける。
「クレハ…ありがとう。」とハルは小さく言った。
「ハル…ゲホッ!助けてくれ…」
血を流すタクヤがハルに救いを求めた。
「…あの時、僕は誰にも助けて貰えなかったよ。」
ハルはタクヤに冷たく言い放った。
「ブラフェアが制圧したあとに警官隊が来ることになってる。牢獄で死ぬほど反省するんだな。」
そう言い残すと、クレハはハルの元に行き、またハルを姫抱きにした。
「…ッ、クレハ!僕歩けるよ…」
「無理しちゃダメだよ。それに俺がこうしたいんだ。王子様みたいだろ?」
「…自分で言うなよ…」
ハルはジャケットで体を隠しながら、顔を赤らめてそっぽを向いた。
そんな2人の様子を見た華月は「なるほど、美少年の恋の相手は彼だったってことね。」と妙に納得した表情を浮かべた。
1
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる