クロックワーカーの遺したモノ

杏珠

文字の大きさ
12 / 30
一章 歪んだ生活

第十二話 見つけた手掛かり

しおりを挟む
 森の方から狼の遠吠えが響き渡る。その鳴き声に反射で本から顔を上げたハロスは暗がりの中、手元のランプを頼りに螺旋階段を降りていった
 いつの間にか日が沈んでいたのか…リーベリアさんが渡してくれた本もまだ読み終えてないし…
「それにしても…さっきの遠吠え、森の方からだよな。何か森で起こったのか?二人共…遅いな」
 ガチャ…ギィィィ
「電気ついてないけど…ハロス君こんな時間に出掛けてるのかな?」
「最近は図書館に籠りっきりだし居ると思うんだけど…あぁほら【アレ】ランプの灯りじゃない?」
 リーベリアが見上げている螺旋階段の一角で淡い光がゆっくりと動いていた
「ホントだ。もしかしてずっと本を読んでたって事?」
「ずっと没頭して読んでるからね…ちゃんと休んだかな?」
「ハロス君の事だから休んでないだろうなぁ…お~い!」
 今声が聞こえた?下か…
「あ、リーベリアさんとエトアルさん今帰ってきたんですね」
「電気もつけずに何してるの…」
「あ~…本を読んでたら日が暮れてることに気付かなくて…というか…それどうしたんですか!?エトアルさん服がボロボロじゃないですか…」
 リーベリアが明かりをつけたことにより二人の姿がはっきりと見えて、エトアルの服が血で赤く染まり右肩の部分に穴が空いているのが分かった瞬間、ハロスは階段を駆け下りた
「あ…これは…狂暴な鹿がいたんだよwまぁ途中で狼が来たから逃しちゃったんだけどね」
「狂暴な鹿…ですか?というか狼って!もしかしてさっきの遠吠え…!」
「アレはまた違うよ。でも俺等が暴れて森を驚かせたせいかもね」
「もうリー君が怪我の治療はしてくれたから大丈夫だよ。取り敢えず私は着替えてくるね」
 治療は済んでるのか…でも…この怪我の跡…見覚えが
「俺も汗流したいし着替えて来ないとな…ハロス君少し待っててくれる?」
「わかり…ました。じゃあ俺は先に植物園に行ってますね」
 図書館の奥へと消えていった二人と階段を登り始めたハロス。長い間ここにいたせいかこの気が遠くなる程の階段にも少しずつ慣れてはいた

「この量の本を持ってここまで来るのは流石にキツいな…取り敢えずさっきはどこまで読んだんだっけ…」
 机の上に本を広げてページをめくっていく。リーベリアが渡した本の一つで帝国の歴史書だった
「328…300…29…このページだ。なんで歴史書なのかと思ってたけど五年前に終わった戦争の事まで載ってる…改訂版だからこんな最近の事まで載ってるのか」
 あれ…この挿絵…戦争時のやつなんだよな?相手の持ってる剣…あの男のモノと似てる
「あぁそう、そのページだよ。王国の人が見たことない武器って聞いて思い出してね。刀って言ったかな?腰に差した細長い剣…ハロス君が見たのってこれで合ってる?」
 いつの間にか着替えて背後から本を覗き込んできたリーベリアがページに載った挿絵を指差して言った
「多分これです…だけどアイツが持ってたのはもっと禍々しかった…絵だからよく分かんないですけど…」
 「【刀】の中でも種類が分かれてるのかもねしれないね」
「東洋の国…俺、他にも文献がないか探してきます!」
「わっ!ハロス君!?行っちゃった…」
「エトちゃんも着替え終わったんだね」
「うん…ハロス君妙に切羽詰まった顔して降りていったけど何か見つけたの?」
 階段を駆け足で降りていくハロスとすれ違いに植物園に来たエトアルは散らばった本に目を落とした
「フィロさんの持ってる武器に辿り着いたんだよw」
「刀だよね?王国書物にその類の文献あったっけ?東洋の国も文献無いでしょ…?というかあったとしてもフィロさんが普段から持ち歩いてるのって妖刀…だよね?」
「まぁあの国が載ってるのはハロスくんに渡した歴史書くらいだね、敗戦国のことなんてわざわざ載せるもんでもないからさ。ただこっちの文化とは大きく異なるから注目されたってだけ…あの戦争からまだそれほど経ってないけど」
「それでも五年経ったんだよね…」
「そう考えるとあの二人は五年間一度も帰郷してないのか…」
「どんな国でも強大すぎる力は恐れられるものなんでしょ…良い思い出なんてあってないようなものなんじゃない?」

 そう呟くと何かを思い出すように下を向いた。元々王都にいた二人は戦争に巻き込まれていた。王都を離れたのもそれがトリガーだ。そして過去の事を町の人間に話さないが誰もこの町に来た理由は尋ねない
この町に集まるものは何かしらの事情があり当時領主に理由を聞かれたさい、リーベリアが【欲にまみれた権力者の馬鹿みたいな考えって聞いてみたいわけ?貴方も同じだろ?】と一括していたのだった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...